December 24, 2011

ncRNAネイティブ

分子生物学会のシンポジウムはおかげさまで盛況のうちに終了することが出来ました。
長鎖ノンコーディングRNAがらみのシンポジウムは最終日の午後だったこともあり、どれぐらい人が集まるか心配だったのですが、予想外、のたくさん方々に足を運んでいただいて、正直ビックリしました。特に海外スピーカーの方のネームバリューというのがかなり大きかったのかなと思いますが、生マティックさん見れると思ってきたのにいないじゃねーかよー、別枠すっぽかしてきたのにどーしてくれんだよー、という不満の声もちらほらと聞こえてきましたが、Mattick研のバイオインフォを一手に行き受けてきたDingerさんが来てくれたということで、ご勘弁を。実際、レビューばっかり書いているけどあの人誰?、という失礼な印象をもたれがちなMattickさんのところからばんばんオリジナル論文が出始めたのは、彼が加入してからのような気がします。

リッキー黒川さんがいみじくも最後の締めでまとめておられましたが、長鎖ノンコーディングRNAの面白い特色の一つは、様々なバックグラウンドを持った人たちが集まってきてああでもないこうでもない、とやっているところのような気がします。ちなみに学会のシンポジウムのclosing remarkというのはほとんどの場合わらわらと席を立つ人が多く、なんとも落ち着かない雰囲気になるのが常なのですが、さすがは黒川さん。骨太の締めの言葉にほとんどの人が耳を傾けてました。このあたりの貫禄というのはなかなか身につけようと思っても身につかないですね。

様々なバックグラウンドは全くその通りで、それぞれの人にこの分野に入ったきっかけというのをお伺いして、結構興味深かったです。Dingerさんは、なんと古細菌の生化学がオリジン。全然バイオインフォじゃありません。ニュージーランド出身の彼は、大学院時代は地元の海の鉱泉にすまう古細菌の研究をしていて、進化に興味があって、おとなりはオーストラリアのMattick研に飛び込んだとか。Mattickさんはイントロンの研究をしていて、イントロンが捨てられてしまう、というのが気に食わなかったとか。それでタンパク質をコードしない領域に目が向いていったそうです。Kanduriさんはクロマチンの研究。太田さんはDNA修復。黒川さんは転写。廣瀬さんはじつはいろいろ隠れた過去が、、、あるわけではありませんがRNAプロセシングのin vitroの系の研究。僕はニワトリ屋。そもそも研究分野としてもかなり新しいのでまったくもってその道の専門家、というのは居ないわけですし、だれでもそこに飛び込んでいけるというのが魅力の一つなのかな、という気もしています。誰も母国語を話していない国で研究している感じです。

とはいえ、これからはノンコーディングRNAネイティブ、の人たちがどんどん入ってくるのでしょう。個人的には、John RInnさんやHoward Changさんたちは、ncRNAネイティブ、というような気がします。古くさい常識にとらわれないあたり特に。若い学生さんたちの中にもすくすくと人材が育っていっていると思います。あと10年ぐらいしたら、すっかりncRNAネイティブの人たちの時代になっているのかもしれません。

中川

December 16, 2011

第8回 Tokyo RNA Clubのレポートその2

「『I君、S君、早くアップしなさい。早くしないと領域代表に言いつけるぞお』って中川さんが書いてるよ」と領域代表のTさん(注1)に言われ,小学生のような心を持つ僕(注2)は,脅しに震えて第8回Tokyo RNA Clubレポートを書くことにしました.

12月8日(木)に開催された第8回Tokyo RNA Clubは大盛況でした."Tokyo" RNA Clubであるにもかかわらず,わざわざ京都からトークを聞きに来られた方もいると聞いてびっくりです.そろそろ,Japan RNA Clubと呼び名を格上げしてみてはどうでしょうか? 会場には熱気があふれ,人があふれ,コーヒーブレイクのコーヒーがあっという間になくなって,僕は飲みそびれました.無念です(注3).

さてさて,脅されたもう一人=岩崎君が各トークの内容をしっかりまとめてくれたので,僕はちょっと違う視点から今回のTRCをレビューしたいと思います.

今回のTRCはメインゲストの一人,David Bartelさんの講演で始まりました.実はトークの前に,僕と岩崎くん,中川さんは,BartelさんとガールフレンドのSabbyさんを交えて,5人でランチを食べに行ってきました.中川さんとBartelさんのlincRNA話に,論文誌のエディターをつとめるSabbyさんもいくつも質問を飛ばし,非常に盛り上がった結果,気づけば「トークの開始時刻に間に合わないんじゃ……?」という時間に.みんな小走りで会場に戻り,そのまますぐにBartelさんはトークを始めることになったのですが,そこはさすがのBartelさん.慌てて帰ってきたばかりなどとは微塵も感じさない発表なのでした(注4).

学会で,セミナーで,あるいは授業で誰かの話を聞く時に,皆さんはどんなことを楽しみにしていますか? こんなことを聞くと「トークの内容に決まってんだろ!」と怒られてしまいそうなのですが,僕はひそかに「どんなスライドなのか?」ということを楽しみにしています.スライドのデザインや構成には,発表者のパーソナリティがはっきりと浮かび上がると思っているからです.Bartelさんのスライドは,白背景に黒のゴシック体フォント(注5)という,パワーポイントのデフォルト設定でした.背景に写真や色をつけることもなく,タイトルもスライド上部に最大2行で書いているのみ.シンプルで奇をてらわないオーソドックスなデザインは,しかし,Bartelさんの研ぎ澄まされたロジックに呼応するものだったと思います.

そういえば,懇親会の場で学生に囲まれて質問攻めにあっていたBartelさんは,意外にも質問に流暢に答えていたわけではありませんでした.むしろ,自分の話を何度も途中で止め,考え込み,少しの沈黙の後に言い直す,という姿が印象的でした.1つ1つの論理的なつながりを考えながら,ゆっくりと言葉を紡ぐBartelさんの姿から,常にシンプルな答えを導こうとする強い意志を感じた第8回Tokyo RNA Clubなのでした.


佐々木

注1:ボス.無類の辛い物好き.
注2:東大・分生研の泊研究室で日夜,生体高分子とにらめっこしています.
注3:でも懇親会の料理は非常に豪華でした.満足です.
注4:しかも,始まるまでのわずかな時間にスライドを差し替えていました.
注5:たぶんHelveticaだったと思うのですが,自信はありません.

December 15, 2011

第8回 Tokyo RNA Clubのレポートその1

先日のTokyo RNA Club128日)のレポートを仰せつかりました、分生研泊研のいわさきです。個人の独断と偏見が多少コンタミしているかと思いますがご了承ください。

まずはいわずと知れたRNAサイレンシング界の大御所David Bartelさんの発表がありました(僕から見ればボスのボスのボスにあたります)。彼の発表はDroshaがどのような基質特異性をもっているかの最新の知見を紹介されていたのですが、その手法がなんとも賢い。Droshaとその基質としていろんな種類のRNAを一気に混ぜ、反応させます。その後に反応が上手く進んだRNAだけをシーケンス出来る様な手法を用いて、もはやおなじみdeep sequencerでババッと読んでしまう。そうするとDroshaで上手く反応が進んだ基質の特徴がわかるという寸法です。生化学とインフォマティクスの美しい組み合わせ。うーんカッコイイです。

2番目の発表は菅先生です。環状人工ペプチドを合成させる人工翻訳系を駆使し、特定のタンパク質に強く結合する環状ペプチドをスクリーニングする仕事とその応用例に関しての仕事です。これまた圧倒的な仕事の数々。もうこれだったら、どんなタンパク質に対しても阻害剤、薬剤が作れちゃうじゃん、とわくわくしてしまいます。特に僕個人が感動したのは、目指す「系」を構築するのに10年かかった、という話です。そこの10年があったからこそ今のものすごい成果があるわけだと思いますが、もし自分だったらそのような忍耐と信念をもって研究できるか、ということを思うと頭が下がりっぱなしです。うーん、カッコイイですね。

3人目は東大宮園研の鈴木さんです。ヌクレアーゼの一種であるMCPIP1というタンパク質がpre-miRNAのループ部分を分解することでmiRNAの生合成を負に制御するというお話を発表されていました。(詳細は最近Mol Cellに発表されています。)これまでもいつくかのRNA結合タンパク質が直接miRNAの前駆体に結合し、miRNAの生合成を阻害したり促進したりという例は知られているので、MCPIP1のように今後もたくさん見つかるのではないかなと、またそれらが疾患に関係づけられるのではないかなーと期待させていただける発表でした。

4人目は我らが研究室の岩川さんです。植物のmiRNAは当初標的RNAの切断しかしない、と思われてきました。しかしながら最近の研究によって動物の様に翻訳抑制も引き起こすのではないか、ということを示唆する報告がされています。それではそのメカニズムを研究してやろう、ということでmiRNAによる翻訳抑制を再現できるin vitro系を自分でつくって解析したというお話です。自分で系をつくって、自分で解析する、という言わば生化学の王道です。

5人目はValerio Orlandoさんです。ショウジョウバエやヒトでRNAサイレンシングは細胞質内で転写「後」に働くものである、というのは誰もが疑いない所となっていますが、酵母や植物で起こるように転写レベルも制御しうるのではないかというお話でした。確かに以前から、ショウジョウバエやヒトで転写レベルにサイレンシングが起こるということを支持する報告はいくつかあるのですが未だあまり市民権を得られていないなーというのが現状だったと思います。Valerio Orlandoさんの報告(最近Natureに発表されています)でさらにこのあたりの議論が活発なってくるのでしょう。


当研究室佐々木氏が「いわさきくんが真面目なことを書くなら、僕はちょっと違った視点で書いてみるよ」とのことなので、そちらの方もご覧になっていただければと思います。(近日アップ予定?)

いわさき

December 13, 2011

班会議

九州大学の佐渡さんのところで仕事をしております坂口と申します。X染色体不活性化の分子機構を解明することを目標に仕事をしております。このブログに文章を投稿することになりまして,今度とも宜しくお願いします。
平成23年11月25日―26日に東京大学で班会議があり,昨年(2010)に引き続き出席させていただきました。偉い先生方がお越しになられていましたが,とてもフランクな雰囲気の中で執り行なわれて,大きな学会には無いものでした。
一日目;武田先端知ビルというところが会場でした。発表が始まると,なぜか同じスライドが左右2つ並んで投影してあり,右のスクリーンを見ながら説明を聞いていても,レーザーポインターで示してくれない。で,ふと左のスクリーンに目をやると,ポインターがせわしなく動いていてそれに気づくまで数分間。当然発表者はどちらかにだけしかレーザーポインターをあてられないですが,発表者によって左か右かが変わるので,どっちを見なくてはならないのか,始めの一歩が肝心でした。そして,座長が佐渡さんに代わり,ある発表が終わったあと,数秒間の沈黙。あれ?座長は?と思った瞬間,佐渡さんが慌てて壇上へ。久しぶりに慌てる姿を見ました。続いてポスター発表。non coding RNAのテーマとはちょっとずれた研究内容について発表させていただきました。興味を示してくれた人に感謝です。一日目の終わりの懇親会。お酒が入りながらのポスターの説明は,シラフの時でさえまともな日本語をしゃべれないので更に拍車がかかり,何を言っているのか自分でもよくわからなくなり,今後の課題としようと思いました。懇親会後は,東大の中の洒落たBARと学外の居酒屋に行きまして,普段なら朝4-5時までのところ,佐渡さん,N山さん,Deレックさん,ジンムさんが次の日に発表ということで,おとなしく12時にお開きとしました。
二日目;きれいな銀杏並木を見ながら会場である工学部の講堂へ向かいます。講堂へ入ってスクリーンを見ると今日は1つ。これなら惑わされなくて済みます。発表は滞りなく進行し,時間はプログラムどおり,ほぼ定刻。会議終了後は,飲み会に誘っていただき,これからという時に,飛行機の時間の関係で18時半においとましました。
今回が2回目の班会議出席ですが,昨年同様non coding RNAの分野は現在とても熱く,そしてこれからもっと熱くなるのは間違いなく,時代の流れに乗り遅れないようにしなくては,と思いました。
来年は佐渡さんが世話役とのこと,サポートがんばります。

December 9, 2011

9th Tokyo RNA club

第8回 Tokyo RNA Clubの熱気もさめやらぬまま、来週月曜日(12月12日)は第9回 Tokyo RNA Clubが開催されます。第8回のレポートは近日中にアップされるはずです。というかI君、S君、早くアップしなさい。早くしないと領域代表に言いつけるぞお、と小学生みたいな脅しをかけときます。

今回はChandra Kanduriさんの紹介です。

長鎖ノンコーディングRNAの生理機能として最も良く調べられているのは、エピジェネティックな発現制御に関わる一群の遺伝子でしょう。この研究分野のさきがけとなったのはX染色体の不活性化を制御するXistで、これはもう超有名なスーパースター、印籠を見せるだけで人々がひれ伏す水戸のご老公なのですが、助さん格さんなみに有名なのが、インプリンティング領域から転写されている長鎖ノンコーディングRNA、AirnとKncq1ot1です。
母方のゲノムと父方のゲノムで遺伝子の発現が違う、いわゆるインプリンティングを受ける遺伝子座は現在マウスで100ぐらいが知られていますが、興味深い事に、そのような領域ではしばしば長鎖ノンコーディングRNAが転写されています。AirnはII型のIGF受容体のアンチセンスRNAとして、Kcnq1ot1は電位依存性KチャネルのアンチセンスRNAとして、それぞれ同定されていますが、どちらもその領域の母方、もしくは父方ゲノム特異的な遺伝子発現を制御しています。KanduriさんはKncq1ot1遺伝子についてこれまで詳細な解析をしてきており、レポーターのベクターを用いてインプリンティングに必要なドメインを同定してきたり、そのノックアウトマウスを使った解析をしてきたり、最近ではKncq1ot1がクロマチン制御因子であるG9aやPRC2と相互作用していることを示したり、と、まさにKncq1ot1とともに歩んできた、方であります。長鎖ノンコーディングRNAはクロマチン制御因子をゲノムに呼び込むことで遺伝子発現制御をしているーこの考え方は最近広く受け入れられつつあると思うのですが、そのアイデアの確立に、間違いなく大きな貢献をされたのが、Kanduriさんであるといって良いかと思います。

ちなみにKncq1ot1って、どう読むのでしょう。僕自身は「けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん」と言っていますが、見るからに舌をかみそうな名前ですよね。ところが不思議なもので、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、と念仏を唱えるように繰り返していると、いつの間にかこの名前がしっくりと来るようになるのです。九九を覚えるようなものですね。で、やっと覚えたこの名前、Kanduriさんが全然違う呼び方をしていたら、、、ちょっとショックです。

ちなみに、Kncq1ot1は転写産物が大事なのではなくて、その領域をRNA polymerase IIが走ることが大事だ、と言っている論文もあります。Kanduriさんらのノックアウトマウスを使った論文やクロマチン制御因子との相互作用を示した論文を真っ向から否定しているような論文ではありますが、実際のところ、転写産物そのものが大事なのか、転写されること自体が大切なのか、を見分けるのは非常に難しいことではあります。この論文では例のごとくRNA干渉を使ってKncq1ot1(ほら、すらっと言えたでしょう?)をノックダウンしているのですが、一体真実はどうなんでしょうか。Xistについても、これだけ論文が色々発表されているのに、まだ統一見解が出ていないところも色々とあるようです。学問とはかく奥深し、といったところでしょうか。

その他にも、第9回Tokyo RNA Clubには様々なゲストが来られます。小さなncRNA関係では、Elissa Leiさん、Isidore Rigoutsosさん、Markus Hafnerさん、と、あれっ?どこかで聞いたことのある名前だな、という方々がわんさかわんさか。国内からは東工大の相澤康則さんが来られます。懇親会もありますし、皆さんぜひお越し下さい。

中川

December 3, 2011

出張ダイエット失敗。

 先週、領域会議がありました。九州から久々に東京(地元)へ。そして約1 kg太りました。20代前半とは一線を画す基礎代謝の低下を感じる今日この頃、微々たる変化とはいえ侮ることはできません。そもそも出張すると普段とは寝食のリズムが多少変わるので、体重の増減(しかも1kg)など所詮誤差なのかもしれません。が、実験室を往復するのと出張、どちらの方が運動量が多いのか、に加え、ちょっとした心掛け次第で出張ってむしろ痩せられるんじゃないか、と気になってきたので、ゆるく振り返って考えてみます。
 一日目
 海外Q州から東京は遠く、飛行機での移動。フライトは8:00。福岡空港は市街地に本当に近いのでチャリで行く事が出来ます。(約25分の運動。)何だかんだで出発ギリギリの時間に保安検査所に行くと、そこは朝ラッシュによる長蛇の列。うっかり受付時間を過ぎたにもかかわらず運悪くCAさんに絶妙な放置プレイをかまされた結果、
「お客さまこちらです」という名目の300 mダッシュを要求される。ダッシュはラボではそうそうできる事ではないので、大変良い運動でした。
 当然朝ごはんなど食べてないわけですが、極度の飛行機恐怖症である私は登場と同時にすかさず発作発動。それにより食欲はほぼ0、空港で買ったスタバのラテしか飲めない。大変良い食事制限でした。
 無事東京につき、気付けば昼ということで、東大近辺のパスタ屋へ。ランチセットにはサラダが付いてきました。空腹時に糖度の高いものを食べると一気に血糖値が上がって何か良くないらしい、しかし、花田勝がちょっと前にテレビで言っていた「サラダとか野菜の後にメインディッシュを食べる、これで自分は痩せた」という言葉を頑なに信じる私はサラダを食べきった上でパスタへ。ここで食べ過ぎは禁物(というか発作の影響が残りまだ微妙に食欲なし)なのでお残しする(パスタさんごめんなさい)。というかそもそも一人前って普通の女子には量多いと思います。何はともあれgood jobな判断。
 その後会場に着くも、ミーティング開始まで約1時間の空きがあり、すかさず、東大内をうろうろする。約40分の散歩。
 そして、いよいよ班会議が始まり、色々なアツいお話が始まる。どんなに喋り手がうまくても発生させてしまうふとした聞き逃し、聞き間違いはするまいと、緊張感を持って集中。糖分消費@脳。
 また、ポスター発表をきっかけに、brainstormingしていただいたり、motivateされたり、自分の説明下手さと圧倒的な勉強不足に凹んだり、他の人のポスターを見て励まされたり、わくわくしたりしました。糖分消費@脳。
 ここまでとってみれば、体の運動量、メンタルおよび頭の運動量、摂取量ともに、ダイエッターの私には非常に素晴らしい内容が続いていました。
 明確な異変に気付いたのは、佐渡さんが座長をし始めた頃ぐらいのことでした。
 くしゃみが止まらない。
 最初は、普段とはちがうホコリの存在するであろう環境に対して、軽いアレルギー性鼻炎反応が起こったものと思っていました(ネコ、ホコリに抗体有)。が、コレはちょっといつもとは違った頻度のくしゃみ。くしゃみってこんなに出るものなのか?そう言えばのども…痛いっていうんじゃないかコレは…、アレ、そう言えばなんかダるい気が…。
 というわけで風邪でした。
 もう体重どころじゃない。病弱な私にとって、風邪等の体調不良が起こった場合の対処は、すみやかに完治させるために寝食リズムを万全に整える方向にpriority siftすること。
 即ち、風邪からくる食欲不振への対抗策として、ごはんをしっかり食べる、が含まれるという悪夢のシチュエーション。
 絶望一直線と思いきや、しかし、素晴らしい事に、くしゃみは意外とカロリーを消費するのです(ってテレビで言っていた気がする)。google先生に聞くと、2~4 kcal/回はあるんじゃない?的な(不確かではある)検索結果が。と言う事で安く見積もってもかなりの運動をしたはず。牛乳が嫌いな私はもうくしゃみで肋骨折れるんじゃないか、と心配しましたが杞憂でなによりでした。(500 kcalの消費)
 さりとて、せっかくの会を風邪にかまけてぼんやり過ごしてはもったいない、と、ときどきこっそりホールで一人鼻をかみまくって休んだりしながら、楽しい懇親会をとても楽しく過ごし、二次会へ。東大のオシャレ・barは大変オシャレで、こんなん学内にあるなんて、やっぱ東大はすごいんだな…、と思いながら、N先生の絶妙な話さばき、つっこみを拝見したり、天皇陛下の先祖に近しいと思しき方に謁見したり、プラナリアは水が汚いと溶ける、というすばらしい情報を手に入れたり、大変楽しく(メンタルは)元気になれるような時間を過ごしました。しかし、風邪は一向に良くなるはずもなく、あえなく3次会は辞退。無念。
 さて、夕食のカロリーは、懇親会は揚げ物をやや控えたのでまぁまぁ抑えめな感じに。しかし、二次会で脂質分の高い豆類を食べ過ぎた気が。いやしかし酒にはつまみがどうしても欲しくなると思います。ビールとフレンチフライを過剰摂取してもまったく太る気配のない佐渡さんが激しくうらやましいです。
 
二日目
 風邪をひきずりつつ、引き続きアツいお話を聞く。糖分消費@脳。
 昼食はあきらかに東大生以外の人だらけの食堂で赤門なるものを食す。風邪で味が分からない。しかし、トウガラシ的なものを感じたので、とりあえずカプサイシン的効果はあったものと信じる。
 のどがアカン感じになっていたので、常時のど飴を投入し続けた結果、200円くらいで袋いっぱい入っているのど飴を一日で完食。意外とすさまじいカロリー。コレはいけなかった。
 無事会は終わり、帰る前に飲み屋に誘っていただき、そこはかとなくカロリーは低いが栄養のありそうなものを食べつつ、田畑の手入れは重労働という話や、キャッチなタイトルで人を引き付ける事は生き抜く上でとても大切だと言う貴重なお話を聞く。
 そして、飛行機へ。
 いそいそとチャリをこいで帰宅(約30分の運動)。大変良い夜運動でした。
 反省すべきは、家に付いた後に食べた、持って行ったにも関わらず食べなかったおやつたちでしょうか。まぁでも風邪なので仕方ない。
 雑感を混ぜつつまとめてみると、
・出張すればそれなりにいつもより運動量が上がる気はする。
・しかし夜は飲むので、普段は気をつけている深夜の摂食行動に繋がり危険。
・原因は特定できないがとりあえず今回の出張では太った。
・ダイエット中に風邪をひいてはいけない。
・そもそも、普段ラボに居る時も、実験量ややり方次第で運動量は変わる。ベンチは座ってる事も多いが激しく動きまわる事も意外とある一方、出張先では移動の労力を除くと、目的地到着後は座って話を聞いている時間が割と長い。
 ということで、本題であっただろう、ラボに居るのと出張するのとどっちが痩せる要因が多いのかについては良くわかりませんでした。
 ちなみに、鼻水と帰ってきてから現れた咳の症状は若干長引き、居室の隣の人、向かい側の人、斜め前向かい側の人、二つ後ろの人が、のどの痛みを訴えたり、妙に咳込んだりしている気がするのですが、自意識過剰や被害妄想等は体に良くないし、一応謝罪もしたので、あまり気にしない事にします。私は元気です。
 なにはともあれ、班会議はinspireされる事が本当に多く、とても充実し、楽しい時を過ごす事が出来ました。こんな中学生みたいな感想書いていいのかと思いつつ、来年の会議もスムーズに運営されるよう、必要な場面でしっかり働こうと思います。
九大・生医研 D1 SKT

November 30, 2011

Tokyo RNA clubまつり

師も走る12月になりました。12月と言えば分子生物学会、分子生物学会と言えばTokyo RNA Club。今年も豪華ゲストを招いて信濃町は慶応大学でTokyo RNA Clubが豪華に、しかも2週連続で開催されます。第一弾は12月8日。メインゲストはDavid BartelさんとValerio Orlandoさん。第二弾は分子生物学会前日の12月12日で、メインゲストはMarcel Dingerさん、Chandra Kanduriさん、Elissa Leiさん、Isidore Rigoutsosさん、Markus Hafnerさんです。第一弾の方は分子生物学会とは直接関係ありませんが、第二弾のゲストは学会のシンポジウムの招待講演者でもあります。

さて、このうち、MarcelさんとKanduriさんは学会最終日の午後という、おそらくものすごく集まりが悪くなるであろうシンポジウムで話をされるので、ちょっとここで宣伝を、、、

まずは今回はMarcelさんから。実は今回のシンポジウムでは、Marcelさんの元ボスであるJohn Mattickさんが来られることが決まっていたのですが、年明けにシドニーにある研究所のヘッドになる話が急に決まったとかで、ブリスベンからの引っ越しやらなんやらで、てんやわんや、すまん、本当に行きたかったのに、と、いわゆるひとつのドタキャンをされてしまいました。まあ大御所には良くある話だよねー、というのは、そういう面もほんのちょっとはあるのかもしれませんが、こればっかりは仕方がありません。それよりも、エコノミーでスイマセンというお願いにも関わらず、行く!行く!!絶対行く!!!サンキューベイビーと、最初は言ってくれていたJohnさんに、僕自身は深く感謝しています。

Johnさんがキャンセルされたということで、他に誰か良い人はおられますか?と聞いて、間を入れず推薦されたのがMarcel Dingerさんです。John Mattickさんという方は、長鎖のncRNAの研究の業界ではちょっとしたlegendになっているにちがいないと思うのですが(僕自身は業界歴が短いので定かではありませんが)、それほど長鎖ncRNAが人口に膾炙していなかった頃から盛んにその重要性についてちょっぴりprovocativeな主張をしておられていて、ようやく最近になってその予言が多くの研究者の結果、特に大規模ゲノムワイドな解析のちょっぴりprovovativeな結果によってサポートされるようになってきていて、そういう意味では、間違いなく僕の中ではscientific heroです。ただ、実際にあったことも無いし、論文しか読んでないし、というか総説しか読んでいないし、でも一目会いたい、会って話をしたい、その夢がもう少し叶うというところで、、、お楽しみはまたこの次です。

とはいえ、このMarcelさん、これがまた論文でしか名前を知らなかったのですが、Johnさんのところから出てくる論文には必ず名前が二番目か三番目に入っている、ということで、ずっと脳内旧知の仲の人でした。これまでにも何か機会があれば日本に来てもらいたいなあと思っていたいたので、ひょうたんから駒、ではないですが、Johnさんの代役なんていったら役不足!かもしれません。Johnラボのバイオインフォマティクス解析を一手に引き受けていたのがMarcelさんで、今の時代、そういう人がどれだけ貴重な存在になりつつあるのかは、自分でプログラミングをして挫折した人ならとても良くわかると思います。100行のスクリプトを書くのはngオーダーのエタ沈より百倍難しいです。石器人にとっては。

このMarcelさん。実はホームページFacebookのページもこっそり公に持っておられます。WikipediaなんかもncRNA関連の管理人になっているみたいですね。今風に言えばクラウドnativeとでもいうのでしょうか。ラボに居たらピペットマンとピンセットしか握らない僕からすると、完全に新感覚の人です。ですので、とっても楽しみ。世代的にも極めて若いし、ぜひぜひ、若い人も、そうでない人も、Tokyo RNA Clubに、また、分子生物学会の最終日のシンポジウムの方に足を運んでいただければ、と思います。

次回は、もう一人のシンポジウムの海外招聘講演者、Chandraさんのお話です。

ちょっとその前に、つい先日行われた領域会議の感想戦が、学生さんとか、ポスドクさんとか、あたりから、ある、はずです。

中川

November 17, 2011

ポスドク募集!!!!!!!!って

海外ポスドクの話題が出ていましたが、海外から日本へ、熱い視線のポスドク募集がちらほら来ています。
このあたりとか、このあたりとか。前者は僕の知り合い、後者はムッキーこと筋肉ムキムキN山さん(伏せ字の意味なし)の知り合いです。ですので一応公式(?)ブログのここに貼付けても良いかな、と。

 海外に限らず、ポスドク先を探す場合、大きく分けて自分で何らかの奨学金に応募して行く場合と、先方の研究室の人件費(ポスドク用経費)を当てにしてゆく場合の二つがあります。僕の知り合いはほとんど前者ですし、僕自身も実際そうでした。別にこれは奨学金とれたぜベイビーなどと中学生でもしないであろう自慢をしたい訳では全然なく、むしろ僕自身のことを振り返ってみれば、「ポスドク募集!!」という広告を出している研究室に飛び込むだけの勇気がなかった、ただそれだけのことのような気がします。往々にして、ポスドク募集をしているラボというのは、ポスドク候補の学生さんが見向きもしないラボなんですよね。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、一厘の真理ぐらいはあるでしょう。飛ぶ鳥を落とす勢いの研究室には、次々とポスドクに行きたいーっつ!!というラブレターが殺到し、山積みにされ、2、3週間興味を持たれずに放置されれば地層的にはオルドビス紀ぐらいまでいってしまうと聞き及んでいます。そういったラボには勿論ポスドクを雇用するに十分な予算がある訳ですが、その多くは、得体の知れぬ新人ではなく、奨学金を持ってきて研究していたけれどもその期限が切れてしまった、でもぜひうちで継続して研究してもらいたい、という人を雇用するために使われている、従ってポスドク募集のような広告をわざわざ出さない、というようなイメージがあります(まちがっていたらごめんなさい、というか例外多数あると思いますが)。ポスドク募集!!!のびっくりマークの数に応じてブラック度が増すと言いますか、ちょっとヤバそうな雰囲気を勝手に想像し、知らず知らずのうちに避けてしまうという心理効果が働くが故に、ポスドク募集!!!!!!という広告の出ている研究室にポスドクで行った知り合いがほとんど居ない、ということになっているのでしょう。


 ポスドク募集!(n)の広告を出すラボというのは、然り而して、立ち上げてほやほやのラボが実に多い気がします。そこに行くというのは、ベンチャー企業に就職するのと似たところがあるのかもしれません。ハイリスク・ハイリターン。といけば良いのですが、ハイリスク・ノーリターンだったりして。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、二、三厘の真理ぐらいはあるでしょう(しつこい)。

 誤解されないように最後に補足しますが、ポスドク募集!(n2)の広告を出しているラボは、切実に一緒に仕事をしてくれるメンバーを渇望しているのは事実だと思います。お金は寂しがりやだから金持ちは益々富むわけですし、ポスドクも寂しがりやだから大きなラボはますます膨張するのかもしれません。だからといって、小さなラボが面白くない訳では決して無い。とうちのラボの披露目をしている場合ではありませんが、興味がピタリと合うようならば、どんどんそういうところに飛び込んでいっても良いと思います。お金を自分で持っていこうが、先方のお金で雇用されることになろうが、ポスドク先で微分不可能な成長を遂げて脱皮しなければいけないのは変わらない訳ですから。

中川

November 13, 2011

うらやましい論文

ついに、というか、満を持して、というか、噂の論文が世に公開されました。
転写因子の分野の大御所、Rosenfeld研からの仕事です。
普通にウェブで公開されているのでその図を貼付けても良いのでしょうが、いちおう書き直したまとめがこちら。もっとまともな図はリンク先をご覧ください
ポイントは、血清刺激によって発現がオン、オフされる一群の遺伝子がある訳ですが、それらの遺伝子座がポリコーム体と核スペックルという核内構造体を往復することによって発現制御がなされている、というところです。しかも、その際にPC2と言うタンパク質のメチル化のオンオフが伴っており、それぞれの核内構造体に存在するノンコーディングRNA、TUG1とMALAT1が遺伝子発現制御に必須の役割を果たしていることを示しています。遺伝子座そのものを核内で移動させることによる転写制御があり、そこにノンコーディングRNAが関わっているという、非常に興味深い報告です。


 正直言って、こういう仕事を出したいなあ、とおもっている論文を他のラボから出されてしまうと、とても悔しいですね。遺伝子の機能と、分子レベルのメカニズムと、そして細胞生物学レベルでの知見がぴたりと合うような仕事というのは滅多にお目にかかれるものではありません。Gomafuもこういう形でまとめられれば良いのですが、、、

 ただ一点、どうしても引っかかるのは未発表のMalat1のノックアウトマウスの表現型で、これがいまのところ何一つ見えていないのですね。僕の所を含めて世界で3ラインほど作られているようですが、どこも同じような状況のようです。これをどう考えるのか。Malat1の劇的な機能を示した論文は以前ここでも紹介したPrasanthらによるものなどありますが、いずれも培養細胞株を使ったものです。培養細胞、特にガン由来のものではMalat1は過剰発現している傾向にありますから、細胞株になるときにMalat1の機能が必要だった、だから細胞株でMalat1をたたくといろいろな表現型が出てくる、という解釈をすることも出来るかもしれません。

 もう一つの可能性は、これはつまらん方の可能性ですが、核内にAgo-siRNAの複合体を「異所的に」持ち込んでしまうことによる二次的な影響です。siRNAは高等真核生物においてはヒストンのメチル化等は引き起こさない、というのがコンセンサスになっていると思うのですが、特に核内に大量に存在するMalat1ようなノンコーディングRNAに対してsiRNAを使った場合、本来核内には「無い」はずのAgo-siRNAの複合体が、核スペックルなり、なんなりに異所的にたまってくることが予想されます。そうするとなにか別のことが起きないのかな?という気もしてくるのですが。高等真核生物においても「siRNA (miRNA)ーエピジェネティック制御」があるのではないか、という可能性は、有名雑誌に掲載された論文がリトラクションされたこともあり、完全に無視されている状況ですが、あの話にも一分の真実は含まれていたのかもしれないと、思うこともあります。

 核内のノンコーディングRNAに対してsiRNAを使うのが本当に正しいアプローチなのかについては、いちど、きちんと検証してみなくてはいけないと思っているのですが、なかなか手が回らないのが現状。。。です。

中川

November 1, 2011

行くゼ海外

こんにちは、河岡です。中川さん、泊さん、三嶋さんがそれぞれ海外留学について書かれた、
「ああ海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post.html)」
「されど海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_15.html)」
「やはり海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_19.html)」。
実際に海外留学をされた先達からのメッセージに引き続くかたちで、海外留学を決めたいち学生の目線で「行くゼ海外」を書いてみようと思います。数年経てば状況がまったく変わってしまう昨今、リアルタイムの情報が役に立つことがあれば幸いです。

僕は、来年3月に卒業してすぐの4月から、アメリカはニューヨーク州ロングアイランドにある某非営利研究所の研究員として、がんを研究することを決めました。海外留学について具体的に考えはじめたのは博士課程に入ったときです。僕は5-30年くらい先までものごとを妄想する性質があるので、海外留学をするかどうか、というよりは、博士号を取得したあとにどうしよう、ということを考えたときの選択肢のひとつとして、という感じでした。最初のころの悩み方は、ざっくり述べると以下のような感じです。

(1) 国内か国外か
(2) 分野を変えるか変えないか
(3) ビックラボかスモールラボか
(4) ポスドクか、(あれば)よりパーマネントっぽい職か
(e.g. 国内で分野を変えずにビッグラボでポスドクをする)

まあ、僕のぐだぐだした思考回路をたどってもしかたがありません。しばらくして、悩み方がおかしいことに気がついて、最終的には、以下のような結論にたどり着きました。

「エキサイティングでさえあれば」
(1') 場所はどこでも良い (どの場所でもできる!!)
(2') 分野は何でも良い (どの分野でもできる!!)
(3') ラボの規模もどうでも良い (アクティビティはラボの規模に左右されない!!)
(4') いまは定着する時期ではなく、来るべきときに向けて地力をつける時期 (少なくとも現状維持を優先するときではない!!)

エキサイティング、というのはあらゆる意味においてです。僕は単純なので、海外留学に単に憧れていました(海外生活かっこいいじゃん、くらいの)。なので、単純にそういうレベルのエキサイティングさだけを求めれば、海外に行こうぜ、となるわけです(実際はそうは単純にはいかないですけれど)。分野は、経験値なんて考慮しないで考えれば良いし、規模なんてどうでもいいです。4)はちょっと性質が違いますが、今回は置いておきます。定着=守り、ということではまったくないです。

結果的には、留学先はほんとうにゼロベースで探した、と言って良いと思います。フェローシップをもって、ということを決めていたわけでもないので、いわゆるひとつの「ポスドクハント」をしたと思います。

(a) 興味のある大学や研究所をリストアップ
(b) 生物系のファカルティのページは「全部」みる
(c) ファカルティページに少しでも興味をもったら論文を最低1報読む
(d) イイ、と思ったら、「本気でラボに参加する気になって」、その町をgoogle mapでみて、不動産情報や物価なんかを調べて、生活を想像してみる (これは僕にとってはかなり重要なプロセスです)
(e) 時によって気分が変わるので、同じプロセスを最低3回は繰り返す
(ファカルティ単位でいったら100以上はチェックしたと思います)

ちなみに、より深くチェックした「分野」は以下です。
相互排他的ではありませんが(実際、僕のやりたいサイエンスはある一群に集約されています)、ざっくりとしたイメージで分けました。しつこいですが、ここでも、各分野を本気でやるつもりで結構勉強しました。具体的には、レビューを読んだり、和書を購入したり、その分野のひとの話を聞いたり、です。要するに自分がどんな問題にアプローチしたいか、ということを考えたわけで、このプロセスでだいぶ自分の興味の指向性を知ることができました。

(い) 非コードRNA (small RNA)
(ろ) がん
(は) システムバイオロジー
(に) 生殖細胞/幹細胞
(ほ) 神経科学
(へ) 発生

加えて、用いる生物も熟慮しました。これも、決断前にじかに見ていない生物はいません。やっぱり好きな生物でないと、と思っていたわけです(最初はいちばん嫌だった(iv)をやるという奇妙)。実際に見学をさせてくださった国内のラボがいくつかあります(本気で国内、と思って見学を積極的にしていた時期もあります)。ありがたいことです。

(i) ゼブラフィッシュ
(ii) 線虫
(iii) キイロショウジョウバエ
(iv) マウス

最終的にアプリケーションを送ったファカルティは6つ((ほ)と(へ)、そして(i)以外)。ひとつはまったく返事が来ず、ふたつは少しのメールのやりとりでダメ、ひとつは結構長い間メールしていたけどダメ、ふたつは面接に呼んでくれて、また、オファーをくれました。面接に至るプロセスも二者二様。かなり性質の異なるふたつのラボでかなり悩みましたが、これまで自分が考えてきたプロセスをきちんと見直して、決断をしました。国外で分野を変えてスモールめのラボでポスドクをする、マウスでがんをやる、と、こういうわけです。

思い返してみれば、自分はこのプロセス自体を楽しんでいたように思います。また、このプロセスそのものによって自分が成長したと感じました。かなりいろんな分野の知識が入りましたし。結果論から言えば、自分のビジョン/ポリシーに照らして自ら自分の人生の舵をとる限りにおいては、悩み(1)-(4)なんてどうでもいいのだと心から思いました (誤解を恐れず言えば、この時代、海外留学自体はすごくもえらくもなんともないと思います)。情報と選択肢が溢れ返っているからこそ、ビジョン/ポリシーを持つことが最も重要だと再認識しました。

大事なこと。自分ひとりで考えたみたいに書いていますが、いろいろな方々のサポート/後押しがあっての決断でした。また、こういう方向に思考したのも、当然環境依存的であったと思います。感謝してもしきれません。

各種情報が欲しい、もっと詳しい話がききたい (エキサイティング、の他にも、向こう15年を考えたときに、といういわゆる戦略的((4)に関連)な理由も結構ありました)、という方がいましたら、遠慮なくご連絡ください。来年度以降、この領域で培った経験を活かし、活躍の報を届けられるように頑張ります。

河岡

October 13, 2011

公募研究

当領域では現在2回目の公募研究を募集しています。中川さんの言うとおり、様々な研究者との、(それこそお酒を飲みながらの)何気ないほんのカジュアルな会話が発端となり、自分一人では気づかなかったような新しい考え方や手法、ひいては自分一人では到底なし得なかった様な共同研究につながることは決して珍しくありません。このような交流こそ、グループグラントの一番の醍醐味であり、領域終了後にもずっと残る大きな財産となると思います。「非コードRNA」をキーワードとして、ぜひぜひ幅広い分野からの新しいアプローチを用いた意欲的な公募提案と、1+1が3にも10にもなるような新しい交流を、心よりお待ちしています。

領域代表
泊 幸秀

September 30, 2011

公募の季節

せっかく再会したカイコの連ドラの直後の投稿すいません。旬のある話なので、、、ぜひページの下の方のエントリーの方から先にお読みください。

さて。

世の中の至る所に壁はあります。我々の業界ならば、まずは自分の心の壁、研究室の壁、研究領域の壁、分野の壁、などなど。かつては助手、助教授、教授、と同じ箱の中でキャリアを重ねながら研究を進めてゆく文化もあったようですが、このごろではそのような道筋を辿る人はかなりレアで、いろいろな研究室で経験を積んでゆくことが、己の視野を広げるためにも、また自分の関わる分野を発展させるためにも必要である、ということが広く受け入れられつつあるような気がします。そもそも研究室を変わらなかったにせよ、次々と開発される新しい技術なり解析手法なりを積極的に導入してゆかなければ、なかなか新しいことが分からないというのが現実です。また、いろいろな研究室を渡り歩いて多様な文化を吸収したとしても、いざラボを持ってから自分の研究室の中に閉じこもってしまったら何の意味もありません。

 いろいろある壁のなかでも、研究室の壁というのは意外と大きいような気がします。特に学生さんが10人も20人もいる大きな研究室の場合、その研究室の中だけでそれなりに多様な社会が出来てますから、あえて外に空気を吸いに出かけなくても息苦さを感じることは少ないかもしれません。メンバーが二人でお互い仲悪かったらいやでも外に友達を作るでしょうが。そういう剣呑な雰囲気でなければ、他の研究室の人と交流するとしても、せいぜいソフトボール大会や駅伝大会ぐらい、という人は珍しくはないのではないでしょうか。同じ学部であったり教室であったりすればその手の交流会で顔をあわす機会がなんとかあるにせよ、学部を超えて、さらには大学を超えて交流、ということになると、かなりこれは難しいことになってきます。

 交流というのは社交的な人の場合自然に生まれるものですが、人見知りが激しかったり、孤独僻があったりすると、そうそう生まれるものではありません。また困ったことに研究者には、自分がそうだから良くわかるのですが、そういう傾向を持った人が、またそういう傾向を持っていることをむしろ誇りに思っている厄介な輩が、特にオス個体で実に多い。交流の場というものを無理矢理にセッティングしないと、きっかけすら生まれないことが多いのが現実です。

 そういう意味では、新学術であったり、ちょっと前でしたら特定領域であったりといったグループグラントは、この上ない交流の環境を提供してくれているような気がします。お金に群がるだけなら樹液に群がるカナブンと変わりませんが、こちとら人間様。同じサイエンスを志すものが集まれば、やはりそこには様々な交流が生まれるはずです。かつて、RNAのアの字も知らなかった頃に特定領域のRNA情報網に参加させてもらって、どれだけ色々なことを教えてもらったか。大きなカテゴリーでは同じ分子生物学に属していても、それぞれの研究分野ではデーターの並べ方や実験の進め方に特定の作法があります。裏千家と表千家みたいなものですね。思いもしなかったテクを持っている人がいたり。自分の中ではほとんど役立たずと思っていた知識や手技が他のラボではどうやら役に立つこともあるらしいことが分かったり。当新学術でも、着実に共同研究の芽は生まれ始めているような気がします。

 秋、公募の季節です。どのような新しいメンバーが参加してくださるのか、今からとても楽しみです。僕自身も壁を越えて、色々なことに挑戦してゆきたいと思っています。

中川

September 29, 2011

カイコドラマチック(10)

だいぶ間があきました。
コンプリートせずに終わるのもなんなので、不定期更新。。。
問題集はさいごの1ページを必ずやらない、というタイプでした。
宣伝ですが、トリミング論文オープンです!!ぜひご覧ください(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21925389)。

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今回は性染色体に由来するpiRNAのお話です。
カイコの性はW染色体という性染色体の存否によって強力に決定されます。
Wがひとつあると、Zがいくつあろうと雌になります。
そこで、多くの研究者が、「Wのには雌決定遺伝子がある!」と考え、精力的に研究を行ってきました。
ところが現在まで、Wに存在するはずの雌決定遺伝子はおろか、単一のタンパク質コード遺伝子さえも見つかっていません。
それどころか、Wに由来する転写物さえ、ひとつも見つかっていませんでした。

なぜか?実は、Wには厄介な特徴があります。
Wは、トランスポゾンや反復配列に占拠された染色体なのです。
Wの断片配列をのぞいてみると、トランスポゾンのなかのトランスポゾンのなかのトランスポゾンのなかにトランスポゾンがはいっている、なんていう、とんでもなく複雑ないれこ構造になっていることが分かります。
しかも、似たような配列が常染色体にも散らばっているために(トランスポゾンですねえ)、雌ゲノムDNAをゲノム解析に供してしまうと、配列のアセンブリが困難になります(なので、カイコゲノム情報は、雄DNAに由来しています)。

piRNAの多くはトランスポゾンに由来していますので、Wが実はpiRNAのソースなのではないか?というのはそう難しいアイデアではありませんでした。
そこでまず、雄と雌のpiRNAをシークエンスして、単純にその組成を比較してみました。
すると、見つかるわ見つかるわ、雌にたくさんあって雄には少ない、あるいはないpiRNAがやまのように見つかりました。
そして、それらは、Wに存在するトランスポゾンに由来することが多いことが、すぐに分かりました。
逆にいえば、piRNAの組成をみると、そのトランスポゾンがWにいるかどうかが分かりそうだ、ということをがいえます。

そこで、カイコの遺伝資源を活用しよう、ということで、Wが小さくなった系統とか、Wの一部が雄の染色体に転座した系統などのpiRNA情報をみることで、性を決める領域に偏って存在するpiRNA、トランスポゾンの存在を突き止めました。実は、これらのpiRNAがどのような役割を持ちうるか、ということに関しては、弱いながらも種々の傍証があって、それらを含めたもりだくさん論文を投稿していたのですが、蹴られに蹴られました。
piRNA屋さんにはカイコわからね、といわれ、カイコ屋にはpiRNAよくわかりません、と言われる感じで、もちろん、論文書きの能力のせいも(多々)あるのでしょうが、ぼこぼこでした。
しょうがないのでなるべくデータをへらして、メッセージをシンプルにして、もういいや、何部作、みたいな感じにしよう、ということで、ついこのあいだようやく第一部が受理されて、いまin pressです(領域のHPにはアップされています)。

いまだ謎だらけのW染色体ですが、piRNAという方向から、すこしだけその実体が分かってきました。はてさて、性を決める、という大きな能力が何によって達成されているか、というのはいつ分かるのでしょうか。。。

ほんとうはここで終わりかな、と思っていたんですけど、もうすこし書けることがありそうです。随時、不定期更新ということにします。

(たぶんつづく)

September 15, 2011

第7回 Tokyo RNA Clubが開催されました

力のこもった宮田さんの投稿に続いて、もうひとり若手の会に参加した学生さんからのメッセージ、近日中に掲載予定です。

ちょっとその前に、、、

先日、東京は信濃町で第7回目のTokyo RNA Clubが開催されました。今回のホストはおなじみ慶応大学の塩見の春さん美喜子さん。お題は、侵略者への対抗策としての小さなRNA。ショウジョウバエでRNAサイレンシングがウイルスに対抗する「免疫」として働いているという一連の仕事をしてこられたUCSFのラウルさんのトークを皮切りに、農業生物資源研の吉川さん、名大の佐藤(豊)さん、川沿いの照英さん、いやUC RiversideのShou-weiさんたちが、背骨の無い生き物(含植物)でのRNAサイレンシングについて最新の持ちネタをいろいろ話してくださいました。小さなRNAの話は毎週のように新発見が相次ぎなかなかフォローしきれない、というか全くフォローしていないのが実情なのですが、たまにこのようにまとまった話を聞くと今更ながらそのアクティビティーの高さに驚いたり感心したり。長鎖のノンコーディングRNAもいつの日かそれだけでまとまった会が開かれれば、と常々思っていましたが、来る12月の分子生物学会で、埼玉医科大学のリッキー黒川さんが長鎖ノンコーディングRNAの話題に絞ったシンポジウムを開催されます。ドンキホーテの8階で応援していたアイドルがテレビデビューするのを見るというのは多分こういう気分なのだろうなあ、と、何となく思っているのですが、それは余談。

Tokyo RNA Clubは元々は塩見春さん美喜子さんの声かけで首都圏のRNA研究者が定期的に集まって親交を深めましょう、その中でなにかしらの文化が生まれれば良いですね、という趣旨で始まり、今のところ日本で開催される何らかの学会や研究会に来日された海外ゲストとの親睦会を兼ねた国内の若手研究者の登竜門、みたいな感じで回が重ねられているようです。一昔前は海外のゲストと本当の意味で膝を突き合わせて話をする機会などというのは良くて一年に一回、僕自身の大学院生活を振り返ってみても2、3回しかなかったような気がするのですが、このごろでは様々な催しで海外の一流研究者の息遣いを間近に感じられる機会が圧倒的に増えてきました。非常に素晴らしいことだと思うのですが、そのぶん希少価値は薄れてきてしまったという見方もあるのかもしれません。とはいえ、研究者同士の交流に希少価値という要素を持ち込むというのも変な話ではあります。

大変個人的な話で恐縮ですが僕自身思春期を男子校というかなり異常な環境で過ごしたので、大学に入って同じ生活空間に女性がいるというその状況、ただその状況に舞い上がって、今から思えば何をあんなに必死こいていたのだろうと思う無理をあちらこちらで重ねていたような気がします。NHKラジオのフランス語講座のテキストも、毎年購入していました。4月号だけですが。かわいいもんと言えばかわいいもんなのですが、全ての行動基準が、本来の目的をはずれているというのは、あまり健全な姿とは言えません。さすがに大学院に入る頃にはそのような状況には慣れてきましたが、今度は逆にサイエンスにおける欧米という、また別の希少価値が待っていました。

希少価値に対するときめきというのは非常に大きなモティベーションにはなりますが、それほど長く続くものではありません。物事が当たり前になってから何が出来るか、何をするか、というところが結局のところ一番大事なことであるような気がします。良い仕事をされている方々の「凄み」というのは、日常の中で当たり前のように高いモティベーションを持続して持っておられるところだと思います。大学院に進学することも珍しいことではなくなってきましたし、博士号を取るということも、それほど珍しいことではなくなってきました。海外の研究者とも、機会を求めさえすれば、国内に居ながらにしていろいろ接触できる時代にもなってきました。Skypeなんてものもありますし。technology greatです。分かりやすい刺激が無いということは、むしろ本当の意味で自分のやりたいことを見つめるための、最高のコンディションなのかもしれません。

中川

September 10, 2011

RNAフロンティアミーティング2011(若手の会)と“脱皮”

初めてこのブログに登場させていただきます。京大ウイルス研・大野研究室・博士課程学生の宮田淳美と申します。

私は、8/30から9/1まで、愛知で行われた「RNAフロンティアミーティング2011(若手の会)」に参加させていただきました。特別講演も入れて63個のトークがあり、うち39個は学生によるものでした。学生の皆さんの発表は、みな完成度が高く、同じ学生として大変刺激を受けました。また先生方のハイクオリティな質問が飛び交うなか、学生の皆さんも果敢に良い質問をしていて、すごいと思うと同時に、自分も頑張ろうという気持ちが生まれました。

私はM1で初めて若手の会に参加したときから思っていますが、学生の皆さんは、是非とも若手の会に参加すべきです。特に“質問する姿勢を身につける”という点において、非常に良いトレーニングになります。若手の会には学生の質問をencourageする雰囲気があり、周りが「我も、我も!」と質問しているのを見ていると、自然と「自分も質問したい(できる)」という気持ちになってきます。私は今回、M1で出席して以来、7年ぶりの参加でしたが、7年前と比べて、学生の皆さんが自ら質問する姿が自然になっていました。これはきっと、企画者の先生方が長い年月かけて、学生の皆さんをencourageしてこられた結果だろうと思います(質問することの大切さについては、November 4, 2010, 影山先生の「学会での質問」をご参照ください)。

さて、今回私は、中川先生からブログへの投稿を依頼していただき、「私だからこそ書けることは何だろうか」と考えました。“M1で初めて若手の会に参加してから7年ぶり”。先でこう書いたので、もうおわかりだと思いますが、私はD6です。そして実は、今回が初めての学会口頭発表でした。今回のブログでは、こんな出来の悪い、そして諦めの悪い私が、人生初の学会口頭発表を終えたいま考えていることを、中川先生が前回のブログ「夏休み」で書かれた“脱皮”という言葉をキーワードにお話ししてみることにします。

私は今回、「マウス細胞内における28S rRNA上に生じた紫外線損傷の修復」という演題で発表させていただきました。RNAには変異原によってDNAと同様の損傷が生じます。また変異が入ったDNAを元に異常なmRNAが合成されたりもします。これらの異常なRNAに対処する機構として、細胞はNMD, NSD, NGD, RTD, NRD etc…といった多様な分解機構を備えています。しかし修復機構については、まだ数例しか報告されておらず、Mammalにおけるin vivoでの報告例は見当たりません(もしご存じでしたら、教えていただければありがたいです。よろしくお願い致します)。私は今回、「マウス線維芽細胞(NIH3T3)に紫外線を照射したとき、28S rRNA上に紫外線損傷が生じ、その一部が修復されている可能性がある」という新しいRNA修復の現象を見つけたので、その解析結果をご報告させていただきました。そして皆様に興味を持っていただくことができ、光栄にも、ベストプレゼンテーション賞をいただくことができました。

しかし今回の報告に至るまでの日々は、本当に大変なものでした(私が「新しいRNA修復機構を見つけたい」と考えるに至った経緯や、今回の発表までに経験した苦労などは、いつか書かせていただく機会があるかもしれないので、今回は省かせていただきます)。

今回の特別講演でお話しくださった、渡邉嘉典先生と塩見美喜子先生のお話も、たくさんの素晴らしい研究成果の裏に多くの困難があったことがうかがわれるお話でした。また、美喜子先生がお話しされた、「Joan SteitzがFrancis Crickのラボに居たとき、Crickから『ベンチは男のものだ』と言われて、ベンチを与えてもらえなかった」というエピソードも、非常にショッキングなものでした。

しかし、先生方は、どんな困難に遭っても、研究することを諦めませんでした。
『知りたいことがあるから、とにかく諦めない。』

渡邉先生は、とにかく興味を持った“減数分裂”という現象を、どんな困難に遭っても諦めずに追い続けてこられたのだとわかりました。美喜子先生は、数年間のテクニシャン時代や、“結婚・出産・子育てと研究の両立”という難しい問題を経験されても、柔軟に対応し、かつ、ひたすら真摯に研究に打ち込んでこられたのだと感じました。Joan Steitzも、ベンチを与えられないという、あまりに酷い目に遭いながらも、研究をやめず、素晴らしい研究成果を発表し続けています。皆さん、なんとすごいのだろうかと感動します。

私自身も、自分のこれまでを振り返ってみて、「これまでよく研究テーマ・研究自体を諦めなかった」と思うほど辛かったですが、それでもなお今、「やっぱり、私はこの研究に出会えて幸せだ」と思っています。私に関していえば、もちろん自分に至らないところがあるから苦労してきました。でも、「やはり苦しい経験から何かを学んで、“脱皮”をして大きくなることこそに意味がある」、「またそういう姿勢を保たなければならない」というのが、私の得た結論です。「自分には能力が無いかもしれないけれど、それでも、この現象について知りたい」、「この現象を追究していくだけの研究能力を身につけたい」、今はそう思います。“脱皮”を繰り返しながら、少しずつでも大きくなっていけば、一生を終える瞬間までに、何かを成し遂げられているかもしれません。またこの世界について、自分なりの理解が深まっているかもしれません。研究することは、哲学を構築していくことに通じますから。

最後に素敵な話を一つ。
京大名誉教授の由良隆先生(1992年退官)、伊藤維昭先生(2007年退官)は、今も場所を探して、自ら実験されています。由良先生は、「老眼でよく見えないんだよ~」とおっしゃりながら、大腸菌プレートをつつかれていました。伊藤先生は、ウイルス研のRI室で毎日のように実験されていました。先生がRI室を使う頻度が高かったため、掃除当番が当たってしまうほどでした。さらに由良先生は、2007年にFirst AuthorでPNASに論文を発表されました。私が由良先生に「この前First AuthorでPNASに論文出されていましたね!すごいですね。」と言うと、「そうなんだよ~、これから面白くなりそうで。」とニコニコしていらっしゃいました。いつまでも研究に夢中な先生方の姿は、とても素敵でした。

私以外の学生の皆さんも、きっとそれぞれ、大変な辛さ、挫折感を味わってこられたことと思います。でも、私たちから見て完璧に見える先生方でも、中川先生のブログ「夏休み」からうかがわれるように、今なお一生懸命、成長しようと頑張っていらっしゃいます。由良先生も、伊藤先生も、今なお研究に情熱的に取り組んでおられます。私たち学生も、そんな先生方の背中から色々なことを学ばせていただきながら、どんな困難があっても諦めずに、頑張っていこうではありませんか!そして、まだまだわからないことだらけで、面白い発見がたくさん隠されているRNAの世界を、共に開拓していこうではありませんか!開拓には、困難に負けない強い情熱が必要です。

August 23, 2011

夏休み

夏休みー学生さんを頻繁に見かける大学と異なり、理研などの研究所にいると夏休みなどの学休期間を実感することは少ないのですが、今年は節電の夏日本の夏の影響もあり、お盆から少しずらして3日間の一斉休業、仕事も実験もやらないでね、というお達し。半ば強制的に取らされた夏休みですが、またこういうときに限っていろいろ〆切を抱えていたりするものですが、せっかくですから羽を休めることも大切なことかと、、、

来週はいよいよ愛知県は大布で、RNA若手の会が開催されます。
いろいろな意味でこの会には大変にお世話になっていて、現在僕の研究室のプロジェクトの半分以上、いや、もしかしたら8割ぐらいが、この会がなければ無かった出会いによって支えられています。若手の会依存症か!とか突っ込まれそうですが、それだけこの会を最初に設立された方々の意思が高く、それだけの人が集まる会が続いている、ということに他ならないのでしょう。研究者は言ってみれば旅人で、多くの場合孤独な時間を過ごす訳ですが、砂漠の中のオアシスともいえる学会や研究会ででしばし羽を休め時間をともにし、また荒野に旅立っていくわけです。夏休み明けといえば、ある人は急に逞しくなっていたり、ある人は一体何があったのだろうとびっくりするぐらい大人びていたりして多くのサプライズがある訳ですが、多くの困難に出会った人ほど大きく変わるのは間違いありません。学生さんは脱皮を繰り返しながら成長して、学位を取ってポスドクというサナギになって、それからうまいこと羽化できれば晴れて研究者として羽ばたいてゆく訳ですが、中身をそっくり作り替えて一気に成長するサナギの期間、これは研究人生のなかで何回訪れるのでしょう?昆虫は人生で一回こっきりですが、願わくば何回もサナギになって(何回もポスドクをするという意味ではない)、大きなバージョンアップを続けていきたいものです。

中川

August 10, 2011

Outreach in Science - a follow up

Derek Goto (Hokkaido University)

I wrote previously about some of the outreach activities were are involved in, particular the "Future Scientists Training Program" program that provides select high school students the chance to conduct research in a University lab for almost a year (original post). The term for the student we had has just finished, so I thought I'd provide some follow up!

I was a bit worried at first since I decided to give the student his own project different to other research in the lab, rather than just work together with current lab members. The advantage was that he would get the chance to set up and optimise the experiments and discover something new on his own, rather than something where we already knew the outcome or just helping someone else in the lab. However, the worry was also that the experiments might not turn out at all and he could be left with either negative data or no usable data at all. Fortunately the project turned out to be successful in the end and he ended up getting some very nice preliminary data supporting the original hypothesis!

A few weeks ago was the final presentation, which was held in the lobby of Kinokuniya bookstore right in the middle of Sapporo. This is an extremely public place, with big glass windows so even everyone in the street walking past could see what was going on, a pretty big hurdle for a high school student, but they all handled it very well!



One of the things that was great to see, was how he developed confidence about the project and himself over the course of the year. Several months ago he gave a small mid-term presentation within the university where he did a good job preparing the slides but was obviously nervous and had trouble interacting with the audience, particularly during the question session. It was obvious he learnt from that experience and I was quite surprised by just how much he improved. I thought he gave a very good talk and did a great job conveying the logic of the problem, what the data was and meaning, and also answering questions from general public. Obviously I wasn't the only one who thought so, because he won the "Best Presentation Award" by vote!



I'd like to think that we have managed to contribute to a young student becoming more interested in pursuing science, it would be great to see him at a conference or publishing something in 5 yrs time! It is important to remember that this has also been a great experience for myself and my lab members - nothing forces you to think about communicating science more than to mentor a high school student project while training them to explain their research in a public forum!



Fortunately, this program is ongoing and a new group of high school students have already been selected to start next month. Our lab was invited to act as a possible host again, which we happily agreed to. I have just found out that one of the new students chose our lab to join, so we will have another high school student joining us soon - will keep you posted!


thanks

Derek Goto (Hokkaido University)

I was originally going to write about a different topic today, but realised I also wanted to say some comments about the recent RNA meeting, so this will be the first of two posts today!

First, I really want to convey my thanks and appreciation to everyone involved in organisation of the recent 2011 RNA Meeting (Kyoto, 14-18 June 2011). I thoroughly enjoyed the meeting, not only did I learn so much new information, it was a great chance for informal and stimulating discussions about our research both with old friends and new friends made during the meeting.

There were two things I was really surprised about for various reasons:
1) How smooth everything actually ran. Of course I couldn't see all aspects and sessions of the meeting, but one of the impressive things was how there never seemed to be any confusion about where to go and there was an abundance of helpful staff to guide attendees and provide support. I am also not aware of any instance of computer trouble in a presentation - at your average meeting I think at least one person ends up having some kind of trouble, considering the number of presentations at the RNA meeting, this alone speaks about how smooth things ran! Sure, there may have been some murmurs about amount of food, but it is important to put this in context with the actual cost of the meeting - it was extremely cheap relative to other meetings of similar quality. Considering the quality of the English-competent support staff and meeting venue, the fact that there was even good quality lunch and dinner, the fantastic final night banquet, and the abundant opportunities for interaction, I rate both the cost and quality of the meeting excellent!

2) The large international attendance
I was also very surprised to see such a large international attendance, particularly in light of recent disaster in the Tohoku region and ongoing concerns about safety. I am sure the organisers had to deal with a deluge of requests for more information and sudden changes in planned schedules etc. Considering other international meetings were cancelled this year due to loss of international attendance, the organisers did a stunning job to keep this meeting running. I was expecting only small international attendance, and I am not sure of the actual numbers, but it felt like at least 60% of attendees were from overseas. I am very grateful to overseas RNA scientists who made the decision to continue through with coming to Japan and attending the meeting. I certainly benefited from meeting new overseas RNA researchers, and I am sure this was an invaluable experience for students in Japan who were able to attend.

The meeting also served as a timely reminder for me about the importance of interaction. I had some great stimulating conversations with scientists from the UK that provided very helpful ideas for our research. I met them almost by chance - I noticed one of them looking at my poster when I walked past the poster hall during a lunch break, so I went up to them to explain that this was my poster and would be happy to explain or answer any questions either then or later. Even though they work on a different topic, we ended up talking a lot during the meeting and it turns out we have a lot of colleagues in common - not only did I gain much helpful discussion I also consider that I made new friends to look forward to meet again in the future.

My only regret from the meeting was that my students weren't able to attend. Fortunately there seem to be many opportunities for RNA scientists to interact in Japan, such as the upcoming RNA Frontier Meeting 2011. One of my students will be attending that, so please say hello if you see him there!

August 5, 2011

カイコドラマチック(9)

こんばんは、河岡です。

さすがに書くほうもマンネリ化してきていますが、いつもコメントをくださる中川さん、影山さん、ありがとうございます。
続編を催促してくれた中條くん、キャッチャー木村くん、Dicerつつみくん、あたりがきっといつかコメントをくれる、そう信じての第9話です。

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in vitro編で簡単に説明しましたが、piRNAの生合成に関しては、Siomi lab、そしてHannon labから提示されたモデルが有名です。
そのモデルでは、ひとたびpiRNA複合体がつくられると、「最初のpiRNA複合体」は標的RNAを切断し、その切断反応によって「新しいpiRNA複合体」がつくられます(in vitro編ではまさに、「最初のpiRNA複合体」がつくられるしくみを明らかにしたわけです)。
つまり、piRNA複合体による切断反応に依存してpiRNAがつくられる、というモデルであり、これはping-pong model、あるいはping-pong amplification loopなどと呼ばれています。
これは必ずしも正確ではありませんが、「最初のpiRNA複合体」に含まれるpiRNAは「トランスポゾンをやっつけるためのpiRNA」であり、それによって切断されてできる「新しいpiRNA複合体」に含まれるpiRNAは、「やっつけられたトランスポゾンの残骸」、と理解すると、今回のお話は分かり易くなります。

さて、生体における「最初のpiRNA複合体」は、まったく別の視点から定義することができます。
じつは、カイコ、ショウジョウバエの卵には、母親から受け継がれたpiRNA複合体が含まれているのです。
人生、もとい、虫生を通してみたときには、

「最初のpiRNA複合体」=「母性的に受け継がれたpiRNA複合体」

ということになります。

さて、カイコの胚発生を通したpiRNAプロファイリングの結果についてです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21628432)。

カイコの受精後0時間の卵に由来するpiRNAを調べてみると、その殆どが「トランスポゾンをやっつけるためのpiRNA」であることが分かりました。
カイコの受精後0時間から、その個体ではじめて転写が起こるまでの6時間のあいだでは、piRNAの組成はまるっきり変わらず、「新しいpiRNA複合体」がつくられている様子は認められませんでした。

ところが、面白いことに、受精後12-24時間になると、急に一群のpiRNAが増えてくるのです。
調べてみると、その一群のpiRNAは、ある種のいくつかのトランスポゾンに由来するもので、まさに、「やっつけられたトランスポゾンの残骸」タイプのpiRNAたちでした。
よくよく調べてみると、これらのpiRNAがまさに切断反応によってつくられたものである、ということが分かりました。
これはまさに、生体でpiRNAがつくられていくさまを、タイムコースに従って観察できた、ということになり、これまで提唱されていたモデルが生体で起こっていることを強力に支持します。

さて、なぜ決まった時間に「やっつけられたトランスポゾンの残骸」タイプのpiRNAができてくるのでしょうか?
その答えはかなりシンプルで、一群のトランスポゾンの発現が、受精後12-24時間で活性化する、というものでした。
やっつけられるために発現しているようなものです。

さてさて、piRNA生合成ではなく、トランスポゾンをやっつける、という観点からみると、この研究はこうまとめることもできます。

母性的に受け継がれた「トランスポゾンをやっつけるためのpiRNA」は、子のゲノムから新規なトランスポゾンの発現が起こるのをじっと「待って」いて、トランスポゾンが出てくるや否や、そいつらをずたずたにしている。
免疫みたいですね。
母は偉大なり。

子のゲノムから新規に発現してきたトランスポゾンに対するpiRNAが準備されていない場合にはいわゆる雑種不妊が起こります。
母性的に受け継がれるpiRNAと子ゲノムに含まれるトランスポゾン組成の関係が種分化の機構のひとつである、と考えるのはそう飛躍した話ではないでしょう。

もっとマニアックになりますが、タイムコースをとったこの実験から、ある時系列においてのみのプロファイリングで、あるトランスポゾンに由来するpiRNAの作られ方を論じることには危険がつきまとう、なんてことも言えます。

地味なお話ですが、カイコ生体の特徴を活かし、きちんとしたタイムコースをとって、piRNAがつくられていくさま、トランスポゾンがやっつけられていくさまを観察したこの論文、僕はお気に入りです。

(ちなみにこの論文、キイロショウジョウバエで観察されている現象がカイコでは観察されない、というパートも含んでいます。興味のある方はぜひご覧ください。)

次回は性染色体パートです。

(つづく)

July 31, 2011

カイコドラマチック(8)

こんばんは、河岡です。

ここまでの7話(!?)で、カイコでpiRNAをはじめた経緯、BmN4という相棒の発見、そしてそれを使ったin vitroにおけるpiRNA生合成研究の進展、をお話してきました。
今回以降は、カイコを使ったin vivoの研究についてお話させていただきたいと思います。

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ある段階で、カイコならではの研究をしよう、と強く思った、というのは前述の通りです(http://ncrnablog.blogspot.com/2011/07/2.html)。
BmN4細胞はpiRNA研究におけるカイコの明確な「ならでは」を提供してくれたわけですが、他にも「ならでは」はたくさんあったのです。

カイコ生体の良さのひとつ、それは、大きい、ということです。

修士のときにある講義で、カイコのたまご1個の上にショウジョウバエの成虫がちょこん、と乗っている写真を見たのですが、そのくらい違います。
piRNAが発現している生殖巣の大きさも、カイコの卵巣1個体ぶん=ハエの卵巣数百個体(以上?)ぶんなのではないでしょうか (1.5mLチューブに1個体ぶんいれたら、250ulのところくらいまで埋まるでしょうか)。
エレガントな遺伝学やゲノム情報の充実といった面ではハエのほうがまったくすごいですが、カイコにはカイコの良さ。
その大きさ故に、細かなステージングをしたり、(僕はやっていないですけれど)生理学をしたり、ということにはとても適しているのです。
余談ですが、材料の手に入り易さというのは本当に重要で、有名な脱皮ホルモンであるエクダイソンなども、カイコをはじめとする「大きな」鱗翅目昆虫が良き材料としてはたらいて、その同定に至りました。

さて、僕がカイコの生体を使ってやったことのひとつは、受精後時間によってステージングしたカイコの卵におけるpiRNAの特徴の変化を追った、ということです。
昆虫遺伝研究室では、やすはらくん、あらいくん、はらさん、そしていまはしょうじくんといった学部、修士の面々とともに研究をしています。
この研究では、あらいくんと一緒に実験をしました。

この実験は、何か大きな目標があった、というよりはむしろ、面白いことが分かりそうな気がしてやってみた、というタイプの実験です(本当は、心の底では性決定関連のプロジェクトとの絡みを狙っていたのですが、それはまた後述します)。

というわけで、やったことはいたってシンプル、受精後0時間、6時間、12時間、24時間の卵に存在するpiRNAの配列を網羅的に決めて、その特徴を調べました。
同一ステージの群に含まれる卵同士の受精後時間は、かなりの精度でぴっちり揃っています。

どうしても話がそれて長くなってしまいます(まあ、そもそも、論文では読めない余談が趣旨ということで)。
大量に配列を決定してその特徴を解析する、というステップには、どうしてもバイオインフォマティクスなる分野に関連した手法が必要になります。
はじめは、以前登場した友人(http://ncrnablog.blogspot.com/2011/07/2.html)と一緒にやっていたのですが、彼が卒業してしまってからは、彼の残したデータベースをMySQLで解析するくらいのことはしていたものの、新規なデータベースは扱えませんでした。
そこで、勝間ボスとともに東大農学生命科学研究科のアグリバイオインフォマティクス教育研究プログラム所属の門田先生に共同研究のお願いをし、解析をしていただくことにしました。

自分でできないことを共同研究としてお願いする場合、そこに自ら赴き、最終的にはある程度自分でできるようになれ、というのが勝間ボスの教育方針です(僕がふらふらできるのはこのためです)。

インフォマティクスの場合、高度なコードを作ることはできなくても、人様の作ったコードを理解し、コードを走らせ、結果を見てコードを微調整する、くらいのことはできるように、というわけです。

実験をしていて思いますが、実験の途中ではいろんなことが起こります。
そのいろんなことによって、あたらしい疑問が想起されたり、あたらしい展開がうまれることがあります。

インフォマティクス解析だって、その途中段階でいろいろな思いつきがあるはずだし、何より、思いついたことを気軽に自分で試せたほうが気分が良いです。

そこで、門田先生には申し訳なかったのですが、もうほんとにうしろに張り付いて、先生がコードを書けば、先生、これはどういう意味ですか、とか、直せば、どうしてそこをこう直したんですか、という具合に、勝手に、インフォマティクススーパー講義を作って、修行をしました(このときは、昆虫遺伝、泊研、そしてアグリバイオインフォマティクス教育研究プログラムの3カ所をうろうろしていたということになります)。
こんな僕につきあってくださった先生にはとても感謝しています。

それまでもインフォマティクスを勉強しようと思って本を買ったり読もうとすれど、どうにもうまくいかなかったのですが、プロの仕事をみる、というのは最高の教科書で、結構、ポイントが分かるようになりました。

扱うデータセットがいかに大きくとも、1ステップ1ステップ、高度なコードに頼らず、自分の目で自分が行った作業のアウトプットを確認すること、がかなり大事でした。
実験とまったく一緒ですね。

そんなこんなで、アマチュアなれど、piRNAに関する解析に関しては一通りの手技を(たぶん)身につけることに成功したわけです。

さて。
生化学の実験で痛感したことですが、反応のタイムコースをとる、ということはそれ単独でとても重要です。
ここでは、受精後のタイムコースをとったことによって、生体においてpiRNAが作られていくさまをこの目で捉えることに成功したのです。

だいぶ長くなってしまったので、詳細は次回紹介させていただきます。

(つづく)

July 27, 2011

カイコドラマチック(7)

こんばんは、河岡です。
あと2,3回で打ち止めでしょうか。

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ブレイクスルーはひょんなところから。
細胞を壊した液をきれいにしないで実験に使う、というのがキモでした。
その後、この活性は、1,000gの遠心でも溶けない画分にしずむこと、そして、可溶化するのがものすごく難しいことが分かったわけです。

さて、問題は、

この反応によってうまれた27塩基のRNAが、ほんとうに成熟型piRNAにあたるものなのか?

ということです。

生体に存在するpiRNAは、3'末端にメチル化修飾が入る、ということが知られています。
in vitroでつくったpiRNA'らしきもの'の3'末端を調べてみると、メチル化修飾が確かに入っている、ということが分かりました。

この実験の結果、当時泊研にいたかわまたさんと一緒に結果をみたのをよく覚えています。
結構夜遅かったのですが、携帯で写真を撮って、速攻で泊さんにメールをしたのが懐かしいです。
このときのゲルは割れませんでした。

と、いうわけで、この時点で、in vitroでpiRNAをつくることができた、ということを確信しました。

こうなるとやること、やれることはたくさん出てくるわけで、いろいろなことが比較的つぎつぎと明らかになっていきました。

要約すると、以下のようになります。

• おしりをかじる反応は、3'から5'方向へのエキソヌクレアーゼ反応である
• おしりをかじる反応にはマグネシウムが必要である
• おしりをかじる反応が起こらないと、3'末端の修飾がはいらない
• 3'末端の修飾がなくてもpiRNAの長さは勝手に決まる

こう、さくっと書いてしまうと若干あじけないかも分かりません。
しかし、自分で言うのも何ですが、大事なことほど、ひとたび分かってしまえばすとんと、自明なことであるかのように思えてしまうものではないでしょうか。

さて、ここではじめて明らかになったpiRNAがつくられるしくみ。
(5-7)で記したことを、いまいちど最初から述べてみます。

1番目の塩基がUであるRNAがカイコのPIWIであるSiwiに取り込まれます。
しかるのちに、はみ出たRNAの3'側が、エキソヌクレアーゼ反応によって'トリミング'されます。
トリミングが完了すると、それと連動するかたちで3'末端にメチル化が入ります。
これで、PIWIとpiRNAの複合体の完成です。

言い換えれば、1番目がUのRNAはだれだってpiRNAになれる、ということです。
これは、現在までに知られている二本鎖型中間体を経てつくられる低分子RNAとはまったく異なる、まったくもって無骨なものでした。

2009年、昆虫遺伝研究室で行った研究によって、カイコという非モデル生物の培養細胞が、piRNAという新しいRNAの研究に有用であることが分かりました。
その後、さまざまな縁、幸運に恵まれて、泊さんの指導のもとにこの手でBmN4細胞を調理し、piRNAという低分子RNAがどうやってできるのか、ということを明確に明らかにすることができました。
まだ研究をはじめてそんなに時間は経っていませんが、なんとまあ良い体験をしたな、と思うばかりです。
BmN4は本当に有用なヤツで、もしかしたら、piRNA研究のために生まれてきたのかもしれません(ウイルスの宿主として使っている勝間ボスに怒られそうですが(笑))。
BmN4細胞を使ったその他種々のお話については、またいずれ。

さてさて、もういいよ、という声もあるかもしれませんが、いけているのはBmN4細胞だけではありません。
そう、カイコ生体だって、使いようによっては面白い知見を与えてくれるのです。

次回は、カイコ生体を材料として展開した研究について、またまたいろいろな縁に関することを交えながら、簡単にお話しようと思います。

(つづく)

July 24, 2011

カイコドラマチック(6)

こんばんは、河岡です。
またまた間が空いてしまいました。

前回のエントリに書いた、

「まず、成熟型のpiRNAよりも長い、1UのRNAがSiwiにくっついて、しかるのちに3'側が削られる」

この仮説に対して、どんな実験を行っていったのか、書きたいと思います。

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ここまでで、カイコのPIWI、Siwiが、1番目がU(1U)のRNAが好き、ということが分かっていました。
そこでまず、RNAの長さを、成熟型piRNAを模した26塩基から、50塩基に変え、Siwiをくっつけてみました。
面白いことに、50塩基の長さにしても、やはりSiwiは1Uが好き、ということが分かりました。

もっと長いRNAが適当に分解されると、当該RNAの塩基の組成に偏りがないとして、25%の確率で1UのRNAができてくることになります。
この実験結果から、これがSiwiにくっついて、piRNA前駆体となる、というシナリオが、いよいよもっともらしく思えてきました。

50塩基というのは成熟型のpiRNAよりも長いわけですから、何となく、RNAの3'側のおしりがSiwiからはみだしたような状況がイメージできます。
もし、たてた仮説が合っているとするならば、ここにタンパク質抽出物(ライセート)を入れたら、おしりがかじられて、成熟型piRNAができる、ということになります。

わくわくしながら、この予想が正しいかどうか、試してみました。

はたして。

おしりはまったくかじられませんでした。
じっと待っても、50塩基は50塩基のままでした。

しつこいですが、その段階で、piRNAがどのように作られるか、ということは全く分かっていませんでした。
つまり、仮説が正しい、という保証はどこにもなかったのです。
実験が「うまくいかない」ことが「正しい」のかもしれません。
まあ、そんな簡単じゃないよね、というような気もしました。
ここで実験は一時ストップして(1,2回しかトライしていませんが)、手を広げがちな僕は別のプロジェクトにずいぶん時間を使うことになります(別のプロジェクトについては後述します)。

しかし、心のなかでは、仮説が正しくないからうまくいかない、ということはないのではないか、と感じていました。
自分たちの仮説は、そのくらい、ものすごく合理的に思えたのです。
もし仮説が正しいのであれば、実験の方法が間違っているということになります。

ここで、泊さんに最初に言われたことが思い出されました。

「それこそ、ライセートの作り方から検討しなきゃいけないねえ」

このことを考えると、ことによると、僕のライセートの作り方が良くないのかもしれないー仮説は正しい、つまり、Siwiに結合した長いRNAのおしりをかじる活性はあるのだけれども、その活性が、使っているライセートには存在しない、あるいは活性が失われている、可能性が考えられたのです。

ここで、ライセートなるものについて、簡単なバックグラウンドをお話します。
ライセートというのは、なにがしかの方法でバッファー中で細胞を壊したあとに、遠心分離によってバッファーに溶け出してきた画分と、溶けなかった画分に分離してつくります。
いわゆる溶け出してきた画分をライセート、と呼んでいるのです。
すなわち、ライセートにした時点で、細胞のもっていた一部のものを「捨てて」いることになります。

さてさて、もう、オチが分かった方もいるのではないでしょうか?
ある昼下がり、別の実験の相談をしていたときだったのではないかと思いますが、泊さんに、

「例の実験だけれど、遠心しない状態で仮想piRNA複合体とまぜてみたら」

ということを言われました。

細胞を壊したぐじょぐじょの液は、細胞のあらゆるものが入っていて汚くて、これで実験するひとはあまりいません(たぶん)。
しかし、何も捨てていないわけですから、そこにはすべてが入っているはずです。
よしゃ、と思って、だめもとで、そのぐじょぐじょの液を仮想piRNA複合体とまぜてみました。

その日のことはよく覚えています。

僕は実験(?)が下手で、ゲル板からゲルがもれてゲルを作り直したり(いまだにもれますが、ピーターによって画期的な解決法が提示され、作り直すことは減りました)、ゲルがわれることもしばしばしば、です。
その実験のゲルも、乾燥機から取り出したあとにビキビキに割れてしまい、あーあ、またやっちゃった、とへらへらしていました。
しかし、そのゲルこそが、最初に実験が「うまくいった」ゲルとなったのでした。

ビキビキに割れてはいたけれど、はっきりと分かりました。

そう、ぐじょぐじょの液とまぜると、Siwiに結合した50塩基のRNAの3'側が削られて、27塩基くらいの長さになったのです。

(つづく)

July 13, 2011

カイコドラマチック(5)

こんばんは、河岡です。
若干途切れてしまいました。
見る人が見たら、これを書く時間があるなら論文を早くしろ、と言われそうですが、論文より大事なことだってあるのです。
全編通してそうですが、より分かり易いエントリを目指して、明らかになったことの時系列が前後している場合があることをご了承ください。
こんなふうにすんなりすべてがうまくいったらしあわせです(つまらないかも)。

**************************************

かくして、この手でpiRNAをつくるべく、生化学の実験がスタートしました。
まずはともあれ、タンパク質抽出物(以下ライセート)を作って、系を構築することになります。
まさにこれが要のステップであり、御大将、泊さんに最初に言われたことが深く印象に残っています。

「それこそ、ライセートの作り方から検討しなきゃいけないねえ」

一通りの分子生物学実験は勝間ボスに仕込まれていたものの、そういうことはやったことが(考えたことが)ありませんでした。
すなわち、キットか、論文か、そういうリファレンスに、こうやるとうまくいくで、と書いてあることをやっていたことがほとんどだったわけです。
そもそも、やりたいことをやるのにそれでじゅうぶんでした。
確かに、どうやってできるか分かっていないものを作ろう、というのですから、その材料たるライセートの作り方を検討する、というのは至極もっともだな、と納得したわけです。

ところが、僕は相当のめんどくさがりで、いわゆるハードワーカーでもありません。
そこで、いまや好敵手であり心友という、まさにジャンプ的な関係だと勝手に思っているいわさきさんがいつもやっている方法をならって、常法にてライセートを調製し、それでまずは遊んでみることにしました。

話はそれますが、僕といわさきさんの会話は、ときにシリアス (15%)、ときに高尚 (2%)、ほとんど漫才 (83%)、という内容で、(あの)よださんにあきれられるくらいで、一緒に実験していると、口ばっかり動いてしまいます。
そのせいで(?)起こした事件は数知れず、セミドライのブロッタを落として破壊したり、ウェットのブロッタを高熱にさらしてしまったり、、、思い出せばきりがありません。
実験室にひとあらば必ず口が動くのが僕なのですが、事件が起きるのはいわさきさんspecificなので、お互いに何かあるのだと考察しています。

さて、とにかく最初につくったライセート、いちおう、FlagタグをくっつけたカイコのPIWI、Siwiは、そのなかで心地よく過ごしているようでした。

ちょっとバックグラウンドを書かなければなりません。
piRNAの生合成経路はとにかく不明な点だらけなのですが、2007年に、ひとたびpiRNA複合体ができると、piRNA複合体による標的の切断を通して新しいpiRNAがどんどんできる、という、Ping-pong modelと呼ばれる魅力的なモデルがSiomi lab、そしてHannon labから発表されています。
が、「最初のpiRNA複合体」がどうやってできるか、という情報はほとんどありませんでした。

このことを考えるにあたって使えそうだった情報は以下のふたつ。

1) 二本鎖RNAからつくられるsiRNAやmiRNAとちがって、piRNAは一本鎖RNAからつくられる
2) ある種のPIWIは1番目の塩基がU (1U)であるRNAに好んで結合する

これだけです。
カイコの場合、Siwiは1Uが好きで、BmAgo3はそうではない、ということが、deep sequencingの結果から分かっていました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19460866)。

というわけで、まず最初に、一本鎖のRNAをライセートにまぜるとSiwiとくっつくのかどうか、そして、1U RNAが好き、ということを再現できるのか、ということを試しました。

すると、確かに、生化学的にもSiwiは1U RNAが好きで、BmAgo3はそうではない、ということが分かりました。
生体内で起こっていることを生化学的に再現できるというのは美しいものです。
またまた話がそれるのですが、現泊研のささきさんが、「僕がタンパク質だったら、よほどちゃんと教えてくれないと1Uが好きとか分からない」みたいなことを言っていて、やけに納得したのを覚えています。

なにはともあれ、これで一歩前進です。

上述の通り、

1) siRNAやmiRNAとちがって、piRNAの前駆体は一本鎖RNAである

わけです。

一本鎖のRNAから成熟型のpiRNAができる、という反応は、「両端をどうやって決めるか」、ということに他なりません。
成熟型のpiRNAの5'側がどう決まるか、ということに関しては、シンプルに、Siwiが1Uを好きだから、ということによって説明できそうです。

3'側はどうでしょう?
Deep sequencingのデータをよく見てみると、piRNAの3'側は非常にヘテロ、すなわち、同じ5'末端でありながら、3'側の長さが異なるものがたくさんある、ということが分かります。
5'側は1Uでかっちり決まっているようにみえるのに、3'側は適当に決まっているようにみえたのです。

このことから、つぎのような作業仮説を立てました。

「まず、成熟型のpiRNAよりも長い、1UのRNAがSiwiにくっついて、しかるのちに3'側が削られる」

1U好き実験で使っていたRNAの長さは、成熟型piRNAを模した26塩基でした。
そこで、オリゴの値段と相談しつつ、適当に、1Uで50塩基のRNAを使って、上記仮説を検証してみることにしました。

つづく

July 10, 2011

カイコドラマチック(4)

こんばんは、河岡です。
どこまで続くか連続投稿。

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時系列的にはBmN4/piRNAの論文が世に発表される前のお話になります。
東大で、東京大学生命科学ネットワークシンポジウムなるものが開催されました。
毎年やっているイベントで、学部/研究科を越えて、学内の研究交流を深めよう、というものです。
そこで僕は、BmN4/piRNAに関するポスタを出しました。

運命というのはあるもので、そのシンポジウムに、泊研のいわさきさんがポスタを出していたんですね。
いわさきさんのポスタはキイロショウジョウバエArgonaute1, 2の翻訳抑制メカニズムに関するものでした(参照: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19268617)。
昨日紹介したお気に入りのレビュー(piRNAs-- the ancient hunters of genome invaders: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17639076)の著者である泊さんのところにいる学生さんらしい、ということで、話してみたいな、と思っていたところにさらなる偶然があって、いわさきさんは修士時代、僕のサークル時代の後輩と同じラボで研究をしていたのです。
これはラッキィ、ということで、彼に渡りをつけてもらったりして、いわさきさんと話をすることができました(別に普通に話しかけりゃいいのですけど(笑))。

最初、このひといけずやわ、と思った、というのは内緒の話で、後日いわさきさんと東大の近くでごはんを食べていろいろ話して、泊さんと話してみたらどうか、という話になりました。
早速泊さんにメールをして、勝間ボスと、泊研におじゃましてみたわけです。

驚いたのが、その近さでした(笑)。
僕のデスクがあった居室と泊研は、建物こそ違うものの、歩いて2分もかからない距離にあったのです。
BmN4をうまく利用して生化学をやりたい、生化学のノウハウを教授してもらえないか、というお願いをしてみたところ、泊さんは快く引き受けてくれました(やった!)。
以降、昆虫遺伝研究室と泊研を行ったり来たりする生活がはじまります。

当時泊研は発足してそれほど時が経っていなかったころで、メンバも、泊さんを含めて5,6人、でしたでしょうか。
いまも一緒に切磋琢磨しているよださんや、ポスドクのかわまたさんなどがいて、少数ながらも非常にアクティビティの高い研究室で、RNA-induced silencing complex、いわゆるRISCがどうやって組み立てられるか、そして、どうやってはたらくか、という方向に、皆で向かっている感じがしました。
昆虫遺伝研究室は扱うテーマが多様で(昆虫なら何でもアリ)、皆がいろんな方向に向かっていたので、面白いコントラストでした。
その後、泊さんにつれられてRNAiまわりの国際学会にも顔を出すようになり、僕は、Insect、RNAi、両方の領域に顔を出すようになったわけです。

そう、このとき、異なる分野に顔を出すことの重要性に気がつきました。
どの分野にも良いところがありますし、その分野の一線で活躍している研究者には哲学があります。
一生の友人も得られるかもしれません。
ふたつのタイプの研究室/研究領域を「同時に」体験できたことはほんとうに素晴らしいことで、そこで得たこと、考えたことは、僕がサイエンスというものを考えるときのひとつの礎になっているように思います。

さて、本筋に戻りましょう。
そんなこんなで、機は熟せり。
かわいいBmN4細胞を材料にして、どう料理しようか。

昨日紹介した「RNAi A GUIDE TO GENE SILENCING : edited by Greg. Hannon」の5章に記されている通り、というか科学一般に、対象を「つくることができる」、というのはすごく重要です。
つくることができれば、かなりのことを理解できるはずです。

そう、お料理の名前は、「in vitroでつくったpiRNA」、でした。

つづく

July 9, 2011

カイコドラマチック(3)

こんばんは、河岡です。
前回の連載は打ち切りになってしまいましたが、今回はまだクレームはありませんので、続けたいと思います。

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「カイコだからこそ」をやるぞ、と意気込んではみたものの、どんな方向に進めば良いか、なんてことがすぐ分かるはずもありません。

そこで、piRNAの論文をいまいちどさらってみると、piRNAに関する知見の多くは、

(1) PIWI遺伝子の変異体の表現型を解析する
(2) piRNAの配列を次世代シーケンサで大量に決める

というものが多数派である、ということに気がつきました。

そして、ふと、修士1年生のときに自費で購入した「RNAi A GUIDE TO GENE SILENCING : edited by Greg. Hannon」の日本語版に記されていた、とある章を思い出したのです。
それが、第五章 「小さなRNAの大きな生物学 : RNAiの生化学的解析 (by Gregory J. Hannon and Philip D. Zamore)」でした。

この章には、RNAiという研究分野において、キイロショウジョウバエの胚抽出物、あるいはS2細胞をはじめとする培養細胞由来のタンパク質抽出物を用いたin vitroの生化学が、いかに大きな貢献をしたか、ということが魅力的に記述されていました。

さらに、当時お気に入りだったpiRNAに関するこのレビュー(piRNAs-- the ancient hunters of genome invaders: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17639076)は、こんなふうに締めくくられていました。

Genetic experiments and large-scale sequencing have been extremely informative, but the next breakthrough may well come from biochemical experiments that recapitulate the loading of Piwi subfamily proteins, and maybe even the biogenesis of piRNAs, in vitro.

確かにそうやな、と思いました。
逆に、どうして、そういう論文がたくさんでてこないのだろう?と感じたわけです。

カイコでもやっぱりそうでしたが、piRNAの発現は生殖巣にかなり特異的です。
モデル生物たるキイロショウジョウバエの生殖巣はカイコよりも全然小さくて、ガチ生化学には厳しそうだな、と感じました。
さらに、どうも、piRNA経路を発現しているような培養細胞がないらしい、ということを知りました。

つまり、in vitroの研究は絶対大事なのだけれども、それをやるのに良い材料がない、ということなんだな、という結論に達しました。

クドクド書いてきて、ようやく、このエントリのヤマにたどり着きました。
そう、うちの研究室はカイコの研究室で、卵巣由来の培養細胞であるBmN4という培養細胞が、とくに勝間ボスの専門であるバキュロウイルス絡みのプロジェクトで、普通に使われていたのです。
卵巣由来、卵巣由来、、、おお、卵巣由来!!!

スットコドッコイ、これ、BmN4細胞がpiRNA経路もっていれば、こんないい材料はないんじゃないか??

勝間ボスとそんな話になり、じゃ、BmN4細胞をきちんと調べてみよう、ということになりました。

.....

いろいろあって、結局、BmN4細胞は、piRNA経路の全てをもっているように見える、ということが分かりました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19460866)。
ここもさらっと書きましたが、PIWIタンパク質を認識する抗体を作ってみたり、免疫沈降物からpiRNAライブラリを作って次世代シーケンサで配列を決めて解析したり、、、piRNAラボなら普通なことでも、やるのはとても大変でした。
次世代シーケンサに由来するデータが、まさに「piRNA生合成」がBmN4細胞で起こっていることを示していると理解したときは、本当に興奮しました。
論文は、いろんな雑誌にふられふられて(昔からふられるのには慣れていたので別に、という感じでしたが)、レフェリーにはthis work is surprisingly incompleteとかいわれたりして、もうハチャメチャでしたが、苦難の果てに、ようやっと、piRNA研究の材料としてのBmN4細胞、を世に売り出すことができました。

書いてみると、この後僕が体験した進展は、少しずつ、少しずつ試行錯誤しながら研究をしたこの時期なくしては語れない、ということを改めて実感します。

さてさて、そんな感傷は置いといて、こんなかわいい愛着のある材料でも、うまく料理してやらねば、宝のもちぐされです。
どう料理したものか。

純粋にどんな科学的事実を明らかにしたか、という話として、おお!、となっていくのはまさにここからです。
そして、ここから先のお話は、みなさんご存知の泊さん、泊ラボとの出会いなくしては、語ることができないのです。

次回は、この運命的な出会いについて語りたいと思います。

つづく

ちょっと休憩に

河岡君の渾身の自戦記の合間に、、、

こんな論文が出ています。発生生物学の業界では知る人ぞ知る。ノックアウトマウス作製技術と組換え技術を自在に使ってしてホメオボックス遺伝子の機能を突き詰めているDenis Dubouleさんの仕事です。

PLoS Genet. 2011 May;7(5):e1002071. Epub 2011 May 26.
Structural and functional differences in the long non-coding RNA hotair in mouse and human.
Schorderet P, Duboule D.

長鎖のノンコーティングRNAの中でも最近大きな注目を浴びているのは、次世代シークエンサーなどの最新の技術を駆使して機能が明らかとなってきた「クロマチン制御因子と相互作用することで遺伝子発現を制御する低発現量の遺伝子群」であるわけですが、その代表選手、宝塚だったら後ろに大きな羽がひらひらしているうんちゃら組のトップHOTAIRを含む遺伝子領域を欠失したノックアウトマウスの表現型の解析です。

彼らの主張はアブストラクトに明確に書かれているのでそちらを参考にしていただきたいのですが、「ヒトとマウスってやっぱり違うんかねえ」というものです。HOTAIRはHOX-Cクラスターから転写されてHOX-Dクラスターの遺伝子の発現をトランスに制御しているところが一つの売りな訳ですが、ヒトの培養細胞を用いた実験で見られていたクロマチン修飾の変化も見られないし、遺伝子発現の変化も見られない。そこでHOTAIRなんておとぎ話につきあわされたオレの青春を返せー、とか言っている訳では決して、決してなく、慎重に、結果の違いについてサイエンティフィックに検証を重ねています。非常にクオリティーの高い論文です。

僕自身は次世代シークエンサーやマイクロアレイを駆使した解析は追試不可能なのでHOTAIRを始めとした最近のアイドルたちは少し距離を置いて見ているのですが、一番大切なことは、こうして実験的な証拠を重ねていきながら(できれば遺伝学的な検証を重ねながら)、結果の差異について慎重に検証を重ねていくことだと思っています。かつて、ニワトリの神経冠細胞の業界では、オレゴンとパリでは水が違うんだとか言う良くわからない結論になったりしたこともあったようです???それはちょっと、、、という気もしますが、先日も取り上げた、「チャオ」ゼッペさん。「いやむかし、このラボと、このラボで、このタンパク質がCajal bodyにあるか、ないか、議論になったんだ。でもね、お互い、使ってる細胞を交換して、みてみたんだ。何が起きたと思う?」(3歩後退)「彼らの結果は!」(2歩後退)「なんと!!!完全にお互いにお互いの結果を再現したんだ!!!!」

こういうことがあるからサイエンスは面白いと思うのです。大事なことは、やはり実験的な検証を加えてゆくこと。ただ単に実験のやり方が悪かったり、もしくは同じ結果が出ているのにそれに気づかない、見る目が無いために結果が再現できないことはありますが、何かしら底に真実は隠されているはずです。個人的に思うのは、次世代シークエンサーを用いた解析は感度が高すぎるし、僕が日常的に使っている古典的なノックアウトマウス作製と組織学の解析は、感度が低すぎる、その中間ぐらいで、うまいこと感覚的に違和感が無い解析方法があれば、スッキリするのになあ、ということですが。

ともあれ、一石を投じる論文であることは間違いありません。今後も目が離せません!

中川

July 8, 2011

カイコドラマチック(2)

こんばんは、河岡です。
ひまなわけでは決してないのですが、第二部です。
今日の金曜ロードショーは魔女の宅急便ですよ!

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学生としての公式テーマをpiRNAに据えたのは2007年、修士1年生のときでした。

駆け出しの学生にできることと言えばそれはもう限られているわけでして、、、
まずは、カイコのPIWI遺伝子とpiRNAってどんな感じなのだろう、ということで、カイコのPIWIをクローニングして、その性状を解析してみました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18191035)。
後に、この事実がカイコのpiRNA経路に関する議論を分かり易くする一助となるわけですが、Piwi, Aubergine, Ago3という3つのPIWI遺伝子を持っているキイロショウジョウバエに対して、カイコはPIWI遺伝子をふたつしか持っていませんでした。
マウスのPIWIはMiwi, Mili, Miwi2、その響きのおしゃれ感に影響されて、ふたつの遺伝子のひとつをSilkworm PiwiでSiwi、そして、カイコの学名であるBombyx moriも残してやるか、ということで、もうひとつをBmAgo3、と名付けたわけです。
ホモログとっただけ、と言ってしまえばそれまでなのですが、flybaseのような素晴らしいウェブサイトがあるわけでもなく、比較的研究者人口の少ないカイコ界にあって、遺伝子ふたつとるのは、RACEしたり、EST解析したりして、結構大変だったことが懐かしく思い出されます。
加えて、カイコのボディの大きさを活かして、こまかーく遺伝子発現のプロファイルを調べたりもしました。
調べるべきステージが多いと、解剖してRNAとってcDNAつくってqPCRして、というのも結構な労働で、ひとりで作業するのが寂しかったので、いたいけな学部学生の後輩を捕まえて、一緒に実験していました。

さて、今度は、肝心のpiRNAです。
実は、前述の博士課程の先輩が卵巣のトランスクリプトーム解析をしているさなか、30塩基くらいの小さいRNAが発現してるよ、ということを明らかにしていました。
では、ということで、ぴかぴか光るそれらの小さなRNAをクローニングして、「前」世代シーケンサで一生懸命4万リードくらい配列を決めました(僕が4万リード読んだわけではありません)。
配列を決めたら、今度はなかみを解析する必要があります。
piRNAは、配列が異常に多様で、読んでも読んでも新しい配列が出てくることが知られています。
とてもとても、人力のみで解析できる代物ではありませんでした。
そんな事情もあって、別の研究室で研究をしていたコンピュータ好きな同期の友達を捕まえて、彼の力を借りて、一緒になってわいわい解析をしてみたわけです。

さてさて、コンピュータができる彼の力を借りたとて、どんなガイドラインでものを調べればいいか、ということがさっぱり分かりません。
piRNAを研究している人がまわりにいなかったので、続々出てくるショウジョウバエ、マウスなどの論文を読みながら、ああでもない、こうでもない、といろいろ試行錯誤する必要がありました。
苦難のはてに、どうやらとったものはpiRNAだ、カイコにもこのパスウェイはあるんだ、という、結論っぽいものを得ることができました(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18801438)。
書いてみるとなんやねんという感じですが、こんな小さなことでも言うのは大変だなあ、学ぶは真似ぶとも言う、なんていうけど、真似するってのも大変なもんだな、と強く感じたことを覚えています。
このときすでに、本研究領域の課題ともなっている、性決定染色体由来のpiRNAの存在には気がついていたわけですが、それは後述します。

さてさてさて、そんなこんなで、もう、2008年になっていました。
個人的には、カイコでpiRNAをやる、という土台はできたなあ、と、一定の満足を覚えていたように記憶しています。
が、上で述べたような研究には、そこに、「カイコだからできたんだ」という売りがほとんどありませんでした。
そのことを認識して、自分に対して、強烈な不満を感じ、いらいらしたりしていました。
論文を読んで真似るだけではなく、カイコを材料にして、いや、したからこそ、こんな研究ができたんだ、と胸をはれる研究をしよう、と思ったのは、このときです。

つづく

July 7, 2011

カイコドラマチック(1)

こんばんは、東大・昆虫遺伝研究室所属の河岡です。
書こう、書こう、と思っていて、機を逸していましたが、中川さんの一連の投稿に触発されて、カイコを材料としたpiRNAの研究について、ちょっとずつ書いていきたいと思います。
昆虫遺伝研究室という、昆虫メインの研究室にいながらにして、なぜpiRNAという分野に入っていくことになったのか、、、そこには、さまざまな出会い、縁がありました。

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さて、僕が所属している昆虫遺伝研究室は、1906年に動物でメンデルの法則を発見した外山亀太郎が在籍していた、歴史の古い研究室です。
研究室には、昆虫好きな人や、昆虫を操るウイルスが好きな人が集まっていて、多様な研究が展開されています(バキュロに操られたカイコの行動は必見です)。

僕はいまから6年前に研究室に参加したのだと記憶していますが、参加当時は、研究室の流れにのって、カイコが持っている抗菌タンパク質の機能(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18076111)とか、鱗翅目昆虫が持っているグロビン遺伝子について(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19059317)とか、まさに昆虫!というような研究をしていました。
そこから低分子RNA、というのはずいぶんギャップがあるなあ、と我ながら思いますが、当時博士課程に在籍していた先輩によって、僕はpiRNAという低分子RNAの存在を知りました。
2006年当時、piRNAはトランスポゾンに相補的な配列を持っていて、トランスポゾンをやっつけてゲノムを守っているのだ、というコンセプトがどんどん出てきていたときでした。

低分子RNAに関する知識があったわけではないのですが、ムシムシした研究をしていた僕にとって、それはずいぶん「おしゃれな」感じのする研究だったのです。
当時は明確なビジョンを持っていたわけでは決してなくて、何となく、かっこよさそうだったので、やってみよかな、と思った、そんなところです。
指導教員の勝間ボスも、ちゃんとやるならどんどんやんなさい、と言ってくれるボスで、恐いもの知らずで、とりあえず先人の真似をしながら自分でできそうなことをやってみることにしました。

つづく

6th Tokyo RNA Club

怒濤のRNAweekが終わり、余韻(?)のTokyo RNA Club 6th meetingも無事終了しました。前回の5th Tokyo RNA Clubは当新学術の総力(?)を結集した華々しいものでしたが、今回のTokyo RNA ClubもGiuseppe Biamontiさんをお迎えして、これぞscientific communicationと言った感じの、ほっこりとした会になりました。

Biamontiさん。そもそもは細胞生物学会のシンポジウムでRNA学会会長のS見さん(ほとんど伏せ字にする意味なし)がゲスト講演者に招待されて、そのついでに東京に立ち寄ってくださったのですが、さすがレオナルドダビンチの国。挨拶からして「チャオ」ですから違います。ハローとかヘイとかヨーとかオラァッなら慣れていますが、いきなりチャオです。今度から使ってみたいな、慣れない人間が使ったらやけどする挨拶だな、と思いつつ。

またこのBiamontiさん、質疑応答のときの振る舞いが面白くて、だんだん、一歩ずつ下がっていって、マイクから離れて、下がるたびに熱がこもってきて、声が大きくなるのですね。それは別に壇上だけでなく、普通に会話していてもスイッチが入ると、後ずさり。トータルで言うと「距離に比例して大きくなる声/距離の二乗に反比例して小さくなる声=だんだん小さくなる声」を拾うのが大変だったのですが、こだわりと言いますか、研究対象に関する「愛」がとても強く感じられて、これだけの愛を持っているだろうかと、ふと我が身を振り返ってしまった次第です。

最新の結果は勿論のことなのですが、僕が一番印象的だったのは、以下の下りです。

「hnRNPってあるだろ。チャオ。でも、こいつら、別になんか保存されたドメインが有るとか、そういうんじゃないんだよね。でも、同じ名前がついている。機能的にも共通なのはRNAに結合しているってだけなのに。でも、なんで同じカテゴリーに入っているか知ってるかい。こいつら、免疫沈降すると、全部一緒に落ちてくるんだ。AからUまで。ん、もちろん分解しないようにそーっと落としたときだけね。そーっと、そーっとね。分解したら、狙ったタンパク質だけ。そーっと落とすと、全部、いっつも一緒に落ちてくる。それがhnRNPsなんだ。」

「でもHuRとhnRNPAって、ほっとんど同じドメイン構造持っているじゃないですか。RRMの配列とか、違ったりするんですか?」

「ふっつふっつふ。しらんけどね。なんか違うんかね。不思議だね。でも、一緒に落ちてくるのがhnRNPsなんだ。生体内で同じコンプレックスを作っているか、それは知らんよ。じゃ、またね。チャオ。」

これほど明快なhnRNPsの説明を聞いたことがかつてあったでしょうか。hnRNPsという名称は、ゆとり世代とか、僕らの世代だと新人類とか、なんか適当にくくってみました、おいおいそんなに単純なもんではないでしょう、でも一分の真理は含んでいますね、みたいな曖昧なものなのかもしれません。サイエンスとしては、この、何か共通なものがありそうでそれが何か分からない、というところに、この上ない魅力を、感じでしまいます。ncRNAも、やっぱりhnRNPsと複合体を作っているのでしょうか。そもそもhnRNP-RNA複合体は、lysateを作るための生化学的な操作できる副産物に過ぎないのでしょうか。ものすごくきれいなhnRNPsのオートラジオグラフィーのスライドが、いまだに目の底に焼き付いています。

中川

July 4, 2011

学会の英語化は必要か?

RNA meeting など、イベントづくしの感があった6月も終わり、気がつけば夏真っ直中の暑い日が続きます。皆様お元気でしょうか。

本郷三丁目の飲み屋での一言から始まったこのblogも、気がつけば31,000ページビューとなりました。試験運用から20ヶ月ですので、一日あたり50ページビューです(最近に限ればもっと多いですけれど)。これを多いと見るか少ないと見るかは見方によりますが、非コードRNA領域のホームページが通算で40,000ページビューであることを考えると、まずまずの数字ではないかと思います。

それはさておき、このところ国際学会あるいは英語化された国内学会に参加する機会が多くなり(残念ながら RNA meeting には参加できませんでしたが)、そのときに感じたことを書いてみます。あらかじめ書いておきますが、自分なりの答があるわけではありませんので、いつも通り書きっぱなしです。

英語化のメリットはたくさんありますが、運営する側から言えば、外国からのゲストスピーカーを呼びやすくなることがまず挙げられます。日本語一辺倒の学会は来て下さいとお願いするのはやはり心苦しいものがあり、来てもらう際には相手側にも何らかのメリットがあるように気を配らなければなりません。この点、学会が英語化されていれば、学会そのものを楽しんでもらうことも出来るわけで、それほど気を遣わなくてもいいことになります。安直かもしれませんが、たくさん有名人(=各分野のリーダーサイエンティスト)を呼ぶことが出来れば、それだけで学会のクオリティが上がる(=学会の存在価値が高まる)ので、この点は結構重要であると思います。

一方、一般参加者にとっては、外国の参加者が増えるために発表の認知度が上がる(≒論文を通しやすくなる)というメリットがあります。RNA meeting などは最たるもので、その分野の大御所をはじめとした多くの人達にアピールできるのですから、その効果は絶大でしょう。

また、学生を含む 若い人達にとっては、英語で自分の研究内容を説明するよい機会になります。だったら海外の学会に参加した方がよいと言われそうですが、海外の学会に参加する場合は自分の英語の拙さだけを実感して終わることもあるのに比べ(経験あり)、日本(あるいは他のアジア諸国)で行われる学会の場合は、参加者のほとんどが non-native ですから、まわりに気後れせずに存分に broken English(Janglish)を話すことが出来る、というメリットは、確かにあると思います。

デメリットの方はどうかというと、なにより知らない分野の話について行けないという点が挙げられるでしょう。何となく聞いているとすぐにおいていかれてしまいます。日本に住んでいる限り、日本語の情報量の方が多いのは仕方ないので、特になじみの薄い分野は日本語の方がわかりやすいというのは事実であるように思います。学会を楽しむ、あるいは視野を広げるという観点からすれば、これは学会の存在意義にも関わる大きな損失であろうと思われます。また、英語でのコミュニケーションには気合いが必要という人には、気楽に参加するという気分ではなくなるのも確かです。プレゼンターの力量にもよりますが、自分の専門分野以外の話題が気軽に楽しめないのはやはり困ります。

なお、質問がしにくい、議論が深まらないと思う方もいるかもしれませんが、よく言われるように、そういう人は日本語でやってもおそらく質問しないと思いますし、深い議論をしたいときには英語は大して妨げにならないと思います。その発言は捨てておけないとか、何とか留学先を見つけたいとか、どうしても論文を通したいとか、本気で伝えたいときには、英語であろうが日本であろうが必ず伝わるもんです。

学会の英語化がよいのかどうかについては、相反する要素を含んでいるのも確かで、実際のところよくわからないでいるのですが、積極的に英語化のメリットを利用しようとしている学生の姿がこのところ目に付くようになったような気がしています。それが気のせい(年のせい?)でないとすれば、最近減少しつつある海外への留学機会を補うものになるのかもしれません。もしもそうならば、英語化にやや偏重しつつある最近の風潮もあながち間違いではないのかも、と思います。

影山裕二/岡崎統合バイオ

June 26, 2011

Science is so social

 初めまして、東京大学大学院新領域創生科学研究科メディカルゲノム専攻 RNA機能研究分野 博士課程1年の吉川真由と申します。めくるめくRNA week を終えても、いまだ余韻冷めやらぬ状態です。私は、613日に開催されたTokyo RNA Clubおよび614日から18日にかけての国際RNA学会に参加しました。これまでの人生で最も多くのscientistsと交流した一週間であり、”Science is so social” (James Watson)という言葉を、身をもって体験しました。

 Tokyo RNA Clubは当研究室の泊さんが主催者ということもあり、講演者の方々を空港に迎えに行くことから始まりました。私は、Molecular Cellの編集者であるJohn Pham氏をお迎えし、ホテルまでお送りしました。贅沢にも、成田エクスプレスの中でじっくりと、RNA研究やPham氏のキャリアパス、米国での研究生活の話を伺うことができました。翌朝、Tokyo RNA Club当日は、講演者の方々をホテルまでお迎えに上がりました。「ボスのボスを、ボスと迎えに行く」という貴重な機会に恵まれ、ロビーでのPhillip Zamore氏と泊さんは本当の親子のようで、素敵なツーショットを見ることができました。Zamore氏に ”Do you often argue with Yuki?” と聞かれ、もっとdiscussionしに行かねばなぁ、と反省した次第です。その後のnon coding RNA関連の講演、特にsmall RNA関係の発表については、発表も非常にクリアで興味深いものでした。Non coding RNAというテーマでこのような大規模な会が開かれることから、あらためてnon coding RNA研究の注目の高さを実感しました。

 引き続いて行われた国際RNA学会は、2年前から楽しみにしていたものでした。私自身は、口頭発表はもちろん、ポスター発表も無かったのですが、このような大きな学会に参加させていただくことは初めてでしたし、少しでも目標とする方々のいらっしゃる環境に身を置くことで、自分を鼓舞しようと考えて参加しました。ひょんなエピソードとしては、Welcome dinner開始の15分後に到着したのに、すでにdinnerがほぼなくなっていて、学会のfood distributionを心配しましたが、3日目以降からは改善されたので安心しました。といっても、振り返ってみれば、もともと私は学会中に食事が提供されることを把握していなかったので、食事があっただけで満足しなければと、自分自身を無理矢理納得させましたが。

 MentorMenteeランチでは私たちのテーブルにRoy Parker(RNA翻訳研究の大家)が来てくださり、非常に考え深いメッセージを残してくださいました。ポスドクでアプライする際には、実績は勿論だが、Letterや面接を重視するとの事。数あるアプライのほとんどの書類は読んでもらえない可能性があるので、10分程度の自分のプレゼンをビデオに録画し、添付してメールすると良いと。さらにはしばしば陥る命題にもアドバイスを下さいました。「自分は科学者に向いているのか」「向いていないと思う」「なぜ?」「ん・・・頭が悪いし、不器用だし不注意だしetc…

“Let me ask one thing, do you have strong curiosity?”

なるほど!出来ない理由を挙げるより、自分の好奇心を信じるべきなのですね。

 発表については、特にポスター発表が刺激的でした。一枚のポスターに何人も殺到し、順番も気にせず投げかけられる質問の嵐は、発表者泣かせではなかったでしょうか。私自身も、自分の分野に関係のあるポスターに張り付いて質問をしていました。印象的だったのは、一般的に “competitor” とされる研究室の方々も、情報を提供してくださり、私の研究に対しても丁寧にアドバイスしてくださったことです。ポスター発表での質問の時間は、非常に有意義でした。

 最終日のBanquetは一力茶屋の芸妓さん、舞妓さんの舞に始まり、樽開きの後は「RNA 2011」と入った升酒が振る舞われました。食事後の交流会では、今まで自分が読んできた論文の著者の方々とお話しする事ができました。あらためて、 “Science is so social”RNA研究の門戸を叩いたに過ぎない一大学院生とお話ししてくださった先生方、先輩方に心から感謝いたします。今回の学会のような交流の中で新しいアイディアが生まれ、また研究に勤しむ原動力が沸いてくるのではないでしょうか。そして牽制し合うのではなく、切磋琢磨することで、RNA研究分野全体として人類の生命科学研究を一歩前に進められれば素晴らしいことだと思います。

 次回投稿する際にはRNA meetingの内容に関してレポートできるよう、日々精進していきたいと思います。最後に、今回の学会である方が紹介して下さったSydney Brenner氏の言葉を紹介して、この文章を終えようと思います。

“The whole idea that science is conducted by people working alone in rooms and struggling with forces of nature is absolutely ridiculous. It is a social activity of the highest order.”

東京大学 大学院新領域創生科学研究科メディカルゲノム専攻 RNA機能研究分野

博士課程1 吉川 真由