December 16, 2011

第8回 Tokyo RNA Clubのレポートその2

「『I君、S君、早くアップしなさい。早くしないと領域代表に言いつけるぞお』って中川さんが書いてるよ」と領域代表のTさん(注1)に言われ,小学生のような心を持つ僕(注2)は,脅しに震えて第8回Tokyo RNA Clubレポートを書くことにしました.

12月8日(木)に開催された第8回Tokyo RNA Clubは大盛況でした."Tokyo" RNA Clubであるにもかかわらず,わざわざ京都からトークを聞きに来られた方もいると聞いてびっくりです.そろそろ,Japan RNA Clubと呼び名を格上げしてみてはどうでしょうか? 会場には熱気があふれ,人があふれ,コーヒーブレイクのコーヒーがあっという間になくなって,僕は飲みそびれました.無念です(注3).

さてさて,脅されたもう一人=岩崎君が各トークの内容をしっかりまとめてくれたので,僕はちょっと違う視点から今回のTRCをレビューしたいと思います.

今回のTRCはメインゲストの一人,David Bartelさんの講演で始まりました.実はトークの前に,僕と岩崎くん,中川さんは,BartelさんとガールフレンドのSabbyさんを交えて,5人でランチを食べに行ってきました.中川さんとBartelさんのlincRNA話に,論文誌のエディターをつとめるSabbyさんもいくつも質問を飛ばし,非常に盛り上がった結果,気づけば「トークの開始時刻に間に合わないんじゃ……?」という時間に.みんな小走りで会場に戻り,そのまますぐにBartelさんはトークを始めることになったのですが,そこはさすがのBartelさん.慌てて帰ってきたばかりなどとは微塵も感じさない発表なのでした(注4).

学会で,セミナーで,あるいは授業で誰かの話を聞く時に,皆さんはどんなことを楽しみにしていますか? こんなことを聞くと「トークの内容に決まってんだろ!」と怒られてしまいそうなのですが,僕はひそかに「どんなスライドなのか?」ということを楽しみにしています.スライドのデザインや構成には,発表者のパーソナリティがはっきりと浮かび上がると思っているからです.Bartelさんのスライドは,白背景に黒のゴシック体フォント(注5)という,パワーポイントのデフォルト設定でした.背景に写真や色をつけることもなく,タイトルもスライド上部に最大2行で書いているのみ.シンプルで奇をてらわないオーソドックスなデザインは,しかし,Bartelさんの研ぎ澄まされたロジックに呼応するものだったと思います.

そういえば,懇親会の場で学生に囲まれて質問攻めにあっていたBartelさんは,意外にも質問に流暢に答えていたわけではありませんでした.むしろ,自分の話を何度も途中で止め,考え込み,少しの沈黙の後に言い直す,という姿が印象的でした.1つ1つの論理的なつながりを考えながら,ゆっくりと言葉を紡ぐBartelさんの姿から,常にシンプルな答えを導こうとする強い意志を感じた第8回Tokyo RNA Clubなのでした.


佐々木

注1:ボス.無類の辛い物好き.
注2:東大・分生研の泊研究室で日夜,生体高分子とにらめっこしています.
注3:でも懇親会の料理は非常に豪華でした.満足です.
注4:しかも,始まるまでのわずかな時間にスライドを差し替えていました.
注5:たぶんHelveticaだったと思うのですが,自信はありません.

1 comment:

  1. Bartelさんは、世の中にはかくも賢い人も居るのかと、ため息が出るような人でしたね。本物のサイエンティストに触れるというのは、特に若いうちに触れるというのは、とても大切なことだと思います。目指せBartel!
    中川

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