May 18, 2013

英語のレビュー(1)

確率変動的な連投が続いていましたが、やはりそれは確率変動であったようで、元の穏やかな日常の日々が戻ってきたようです。当ブログは新学術の広報媒体であることを考えるとサイレントであることはかならずしも、いや全然良い事ではないのですが、、、新学術の班員の皆様、仕事が世に出た時は表も裏も真ん中も、ゆるめにこちらでぶちまけてしまってください!

気を取り直して。以前、日本語のレビューというのは、英語至上的な考えをしていると書く方も読む方もちょっぴり後ろめたい(?)ような気持ちがつきまといがちだということを当ブログに書きましたが、英語のレビューはどうなのでしょう。僕が学生の頃に印象に残ったレビューといえばScience誌に掲載されたTessier-lavigne & GoodmanのMolecular Biology of Axon Guidanceで、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった彼らが自分自身の仕事を含め軸索ガイダンスの研究分野の来し方行く道を見事にまとめた伝説的な論文があります。ふとGoogle先生に聞いてみたら2485回も引用されていました。そのレビューを読んだ時の率直な感想は、その生き生きとした、また自身に満ちあふれた文章にうっとりさせられたと同時に、内容としては自分も多少は関わっている分野だったので、自分の考えている事はもうとっくに常識になってしまっているのかということを思い知らされるかもしれないと、次の行を読むのが怖くてたまらなかったのを良く覚えています。とかく、「英語のレビュー」には、憧れの気持ちがものすごく強かったように思います。

時は移ってWikipediaさんが学生さんのレポートのコピペ元になる時代。英語のレビューの価値は昔と比べてどうなったのでしょう。古今東西を問わず万人受けする文言は、「昔は良かった、今は問題がいっぱいだ」、ですが、まがりなりにもサイエンスに関わる身。とりあえず生データを見なくては。数字だけ見てみますと、1996年にPubmedにインデックスされた論文は453,457報。うちレビューは59,337報、ということで約13%がレビュー論文、ということになります。これって多い、というのが第一感でしょうか。それとも少ない、でしょうか。

時代は移って2012年で見てみますと、総論文数が1,052,493報。うちレビューが123,074報。約12%ということで、割合から見るとほとんど変わっていないのですね。実はこれは結構僕にとっては驚きでした。正直、昨今はクソみたいな奴が(本人は一生懸命でも)クソみたいなレビューを書いてばっかり、というような印象が多いにありました(自分の事です。。)。怪しげな健康食品販売会社よろしく詐欺みたいに投稿料だけかっぱらって夜逃げするような学術雑誌がでるご時世でもあります。クソみたいな論文が増えたからクソみたいなレビューも増えた、なんて自虐的になるとどこぞやの新聞社になってしまいますので、ここは一つ、その割合は実は昔も今もそれほど変わらず、昔のレビューが心に残っているのは、学生の時に何処で専門基礎知識を得るかと言えば教科書を卒業したら次はレビューだった、という事実が重かった、というふうに解釈しましょう。最近ではこの役割はWikipediaに取って代わられているかもしれませんが。

ともあれ、今も昔も、10本ぐらい論文が出たら、1本ぐらい、そのまとめが欲しい、という需要があるようです。これですと、精神的なハードルも少し低くなる、ということで、去年の分生に日本に来られたElissa LeiさんがBBA Gene Regulatory Mechanismsという雑誌のエピジェネティックス特集号を組むから長鎖ノンコーディングRNAに関して何か書いてね、というお誘いが来た時も、ものすごく気軽に引き受けてしまいました。これがまた、苦悩の始まりとなるとは、、、

(現在進行形なので不定期に更新します)

中川