December 6, 2013

分生で来日するRNA研究者たち(最終回)&Tokyo RNA Clubのお知らせ


明日、いよいよ理研シンポジウムRNA Sciences in Cell and Developmental Biology IIIです。ゲスト紹介の最後は、西倉和子さんです。現在米国Wistar Instituteの方でラボをお持ちですが、今回は分子生物学会に合わせて日本に一時帰国、ということで、泊さん経由でこのミーティングにも参加していただける事になりました。

西倉さんと言えばRNAのイノシン化修飾。RNAのイノシン化修飾と言えば西倉さん。
イノシン化修飾酵素のクローニングからその生理的な機能の解明まで、そのエレガントで美しいお仕事は脚本があらかじめ用意されていた訳ではありません。ヘモグロビンの研究に始まり、tRNAのスプライシング研究や修飾の研究。それから始めたガン研究がひょんなきっかけからイノシン化修飾の研究へと変転してゆくストーリーは、まさにブタノール酸の呪縛なのですが、その辺りの経緯はかつてのRNAの特定領域の伝説のNewsletterの素敵なエッセー(47ページから)に詳しいです。ちなみに、イギリスのMRCでのポスドク時代はJohn Gurdon研究室。山中さんとノーベル賞を共同受賞されたのでご存知の方も多いと思いますが、発生生物学者にとっては聖地ですね。そこのご出身だとは、全くもって知りませんでした。うーむ。勉強不足は恐ろしいですね。そろそろ無知なのは若いからという言い訳が聞かなくなってくる世代になってしまったので、もうちょい精進しなければ。。

ちなみに明日の理研シンポジウムに参加できないという関東圏の方。ご安心ください。鈴木勉さんがTokyo RNA Clubを企画しておられます。以下、勉さんからのメールを転載しておきます。

ーー
西倉和子先生が来日されることにあわせまして12月17日(火)に
Tokyo RNA Club -the 13th meeting- を開催いたします。
関連の研究をなさっている先生方にぜひご参加いただきたく、
ご案内申し上げる次第です。研究室のスタッフや学生さんにも
広く周知をしていただけますと助かります。

ポスターを添付いたしますので、掲示周知していただければ幸いです。
皆様のご参加をお待ち申し上げております。

日時:2013年12月17日(火)16:00~18:00

場所:東京大学工学部11号館講堂(本郷キャンパス内)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_12_j.html
(※スタバの横の入口を入ってすぐ左に講堂があります。)

※参加自由、事前申込み不要です。

世話人 鈴木 勉

December 4, 2013

分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介(4)

おっとっと。とんでもない見落としが、、、今日、12月4日の午前中のワークショップで、埼玉医大の井上さん、東京医科歯科の浅原さんのワークショップがありました。浅原さん、公募班員です。紹介してくださいーい。

といって、ほとんどもう手遅れの時間になってしまっていますが、

2AW9 RNAの包括的解析による細胞制御機構と疾患病態の解明
第9会場 神戸国際会議場5階
塩見研でのマーモセット(?)の生殖組織のsmall RNAの解析や、先日のRNA学会で高次生命機能のセッションの座長をつとめられていた北大の飯笹さんのRNA編集の話、公募班員の秋光さんによるBRIC-Seqの話(この仕事は大変素晴らしいです)。うーん。当新学術のメンバーの皆さん、大活躍ですね。トークがある時は、リアルタイムで活動を紹介するためにもこちらのブログで宣伝を御願いしますっう!!
おっと飛行機が、、、

、、、行ってしまった…

一番楽しみにしていたセッションを逃してしまった…

つくづく人生というのは反省の連続ということを痛感させられる乗り遅れでありますが、泣きたいのを我慢して、残りのRNA関連のセッションの紹介を粛々と続けます。3日目の午後のセッションから。(ううう、それでも泣きたい)。

3PS7 大規模生物学のインパクト:FANTOMとENCODE
第7会場  神戸国際会議場 3階
こちらは理研の鈴木さんとピエロさんの冠シンポジウム。日本人より日本人らしいシニョーレ、ピエロさん。林崎さんのもとでFANTOMプロジェクトに関わり、トレハロースを入れると高温でも逆転写酵素が失活せず、常識を遥かに超えた高温条件の反応でcDNAクローン合成の最長不倒距離を次々と更新したのはまさに彼です。なんでトレハロースを入れようと思ったのか昔聞いてみた事があるのですが、当時、プローブをランダムラベルする際に使うキットでReady to Goだかなんだったか、そういうのがあって、絶対実験をしてそうにないイケメンがニヤリとしながら白衣のポケットからキットを出しているあまりにも怪しげな広告に僕はドン引きして到底使う気にならなかったのを良く覚えているのですが、通常−20度保存する酵素を室温で安定化させるために入っていたのがトレハロース。その事実を彼は知っていて、じゃあトレハロースを逆転写反応に入れてやろうか?という単純な発想だったそうです。少しでもラベルの効率を上げたい時に室温保存が利く酵素なんて使いたくない!とそのキットに見向きもしなかった僕とは大違いですね。ともあれ、このピエロさんのちょっとしたアイデアで、FANTOMプロジェクトはその他のESTプロジェクトとは大きく異なり、そのまま完全長としても使えるようなESTクローンががんがん取れた訳です。それから10年以上たち、大規模なトランスクリプトーム解析は次世代シークエンサーの急速な進歩もあり、配列情報だけでなく、ヒストン修飾や各種転写因子の結合等、様々な情報をゲノム上で統合して解析する時代となりました。ピエロさんからは、これまた彼の元で開発された転写開始点解析手法CAGEを駆使した、現在進行中のFANTOM5の紹介。引き続き、2002年にタイリングアレイでヒト染色体21番と22番染色体からの転写のアウトプットを解析し、FANTOMと並んでPervasive Transcriptionの概念作りに大いに貢献された元AffimetrixのThomas Gingerasさん。ご尊顔はこちらです。
現在はコールドスプリングハーバー研究所でENCODEプロジェクトを牽引されており、今回のトークはそのご紹介。このかたの話は一度だけしか聞いた事が無いのですが、理路整然としたプレゼンはもちろんのこと、質疑応答で、ノンコーディングRNAはいくつぐらいあるのか、転写レベルはどれぐらいなのか、ゲノムのどれぐらいが転写されているのか、というような質問に、まるでクイズ面白ゼミナールの鈴木健二アナウンサーのように(若い人は知らない?)、有効数字2桁か3桁の正確な値をばしばし出しながら淡々と答えていたのがとても印象的でした。ゲノムワイドな解析(死語?)を、本当に愛しておられるのでしょう。ちなみに、12月6日に横浜理研で彼の講演があります。関東地区の方で分生に行けなかった方はぜひ。案内はこちらです。


3PW11 クロマチンと核構造のインタープレーが織りなす生命現象
第11会場 神戸国際展示場2階
こちらはRNA関連、とはちょっと毛色が違いますが、核内のRNAと密接な関連を持つ核内構造とクロマチンに関するセッションで、九州大学の藤田雅俊さん、大阪大学の平岡泰さんのオーガナイズです。注目はかつて京大にいた頃にヘテロクロマチン形成にはRNA pol IIによる転写が必要=RNAが必要という驚きの発見をされた、現在北大の村上洋太さんのところの梶谷さんの発表。このヘテロクロマチン形成を制御するsiRNAは核内で漫然と合成されている訳ではなくて、なんと核膜近傍で転写と共役して合成されているそうです。むむむ。奥深い。ちなみに、かつてRNA network newsletterに掲載された村上さんのヘテロクロマチン関連RNA発見の面白エピソードはこちらからご覧になれます(16ページ)。その他、農資研の菅野達夫さんが、植物におけるRNAサイレンシング、siRNAとtasRNAの話をされるようです。

そしてついに4日目にたどり着きました!
4日目はRNAど真ん中のセッションというのはありませんが、面白そうなのがこちら。

4AW2 データベースを使い倒した新しい研究スタイルによる分子生物学
第2会場 ポートピアホテル地下1階
ワークショップのタイトルからして、一昔前だったら(今でも?)御偉い先生が顔をしかめて即企画却下!!とか怒られそうな先進的なタイトルですが、データーベス使い倒し。これは、あきらかにこれからの主流な流れになるのは間違いありません。僕らが学生の頃は実験生物学者にとってはNCBIのPubmedとBlastとGenbankがデータベースの全てと言ってしまっても過言でなかったと思いますが、今後、共有財産としてのデータベースの有効利用は、研究を効率よく進める上で、間違いなく重要なパートを占めてゆくに違いありません。
このワークショップではライフサイエンス統合データベースセンターの坊農さんのところの内藤さんから、統合遺伝子検索GGRNAの紹介があります。コンセプトは、データベースをGoogle化してしまえ!ということらしいです。以前、Gomafuの中にあるリピート配列UACUAACをググったらいきなりこれでもかというほどスプライシング関連のページが出てきてたまげた事がありましたが、とりあえずググってみてら、もとい、とりあえずググアールエヌエーってみたら何か分かった、ということが今後出てくるかもしれません。
それにしても、昨今はインフォ屋さんが引く手数多で、実験屋が過剰供給状態。時代の大きな流れというのを感じます。10年後には実験屋は絶滅危惧種になっていたりして。。。しかしそれは実験屋にとっての大きなチャンス到来!と言えるかもしれません。いつの時代になっても、生き物に直接触れるステップが、生物学の一番の基本であるのは間違いない事なので。サイエンスはやはり、座学だけではなりたちませんから。

このシリーズ、最後に、土曜日のRNA Sciences in Cell and Developmental Biology IIIで講演される、海外からの素敵なゲストの紹介でしめようと思います。いつのまにか分生で来日するRNA研究者たちと分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介が統合されてしまいましたが、、、



中川

December 3, 2013

分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介(3)

1歩引き離したと思ったら又追いつかれ。ゴール間際の大接戦はマラソンなら興奮冷めやらずですが、泥縄式のワークショップ紹介はしんどいです。2日目午前まで紹介しましたが、もうそのセッション開始まで12時間を切っているというこの事実。。。

無駄口はたたかず、2日目午後以降のRNA関連セッションの紹介です。

2PW10
染色体不活性化のエピジェネティックス
第10会場 神戸国際会議場5階
 計画班員の佐渡さん、それから遺伝研の平谷さんオーガナイズのワークショップです。X染色体不活性化の人ばかり、、、と思いきや、前回のエントリーで少し紹介した東京医科歯科の石野さんがおおトリです。インプリンティングを受けている遺伝子ハントの研究が、転移因子由来の胎盤形成に関わる遺伝子の発見につながったという石野さんの研究展開の面白さを見ていると、研究というのは本当にどこに向かっていくのか分からないということをつくづく感じさせられます。いつかは我がGomafuも、、、その他、バー小体の正体を解明した小布施さんの話もありますね。H3K9me3とH3K29me3は染色体上で相補的に分布していて、それをHBix1というクロマチン関連タンパク質がまとめ上げることで染色体の凝集が起こるという最近の論文は、大変記憶に新しいところです。で、その論文のセカンドオーサーの長尾さん、どこかで聞いたような見たような名前だと思っていたら、先日、神戸大の農学部で行われた特別講義でご一緒しまして、この素晴らしい仕事をした彼が、僕の結婚式の前日、深夜12時に下宿を襲撃しにきて朝の3時までどんちゃん騒ぎをしていた一味のうちの一人だということが判明&懐かしく思い出しました。そっかー、あのときの長尾君かあーと。当時の柳田研の院生達のパワーは凄かった…。ちなみにバー小体の正体というのは彼の講義のタイトルです。はい。いかん、又話がそれてしまった。。

2PW9
Ccr4-Not複合体の果たす多様な生体機能とその分子基盤
第10会場 神戸国際会議場5階
 こちらは稲田さんとOISTの山本雅さんのワークショップで、ノンコーディングRNAとは直接の関連はありませんが、当新学術関連ですと公募班の三嶋さんが話をされます。miRNAによる発現抑制にCAF1というdeanylaseが効いているという話ですね。miRNAの抑制機構は実験系によって翻訳抑制がドミナントだったりmRNAの分解がドミナントだったり、なかなかフォローするのが大変ではありますが、系によって全く違った結果が出てくるというのは大変興味深いところでもあります。一般的と思われている細胞の基本プロセスも、そのコンポーネントの発現量が細胞や組織ごとに違えば異なった作動様式を示すというのは考えてみれば当たり前の事実で、ゼブラフィッシュのような生体内のシステムでそれを解析していくとまた違った側面が見えてくるというのが面白いところかなあと思っています。このワークショップには海外からのゲストがおられまして、その名はMarc Fabianさん。
翻訳研究の大御所中の大御所、カナダはトロント、マギル大学のSonenberg研究室のスタッフ、assistant professorで、土曜日の理研シンポジウムでも話をされます。今回の話は炎症性サイトカイン関連遺伝子の発現を抑制するRNA結合タンパク質Tristetaprolin(TTP)の作用機序を調べたら、CCR4-NOTが関わっていた、という話のようです。それにしても、このCCR4-NOT、最近色々なところで良く耳にします。ただ、なんか名前が恐いんです。発生生物学の分野だと遺伝子の名前には機能を想像しやすい親しみやすい造語があてられることが多いですが、転写や翻訳の分野だと、頭文字を取った略語が多くてなんだか取っつきにくいのですよね。CCR4-NOTをpoly-Aを食べちゃうから、食いしんぼちゃんAなんて名付けたら、、、うん。なんだか凄く怒られそう。ふざけんなー、田舎にけえれ!とか言われそう。。。

この勢いで3日目の午前もいってしまいましょう!

3AW3 non-coding RNAの分子機能と動作原理
第3会場 ポートピアホテル本館地下1階
 こちらは当新学術の領域代表泊さんと計画班の影山さんのオーガナイズで、ストレートど真ん中のノンコーディングRNAのセッションです。海外ゲストは前のエントリーで紹介しましたIan MacRaeさん、Thomas Preissさん、そしてMatt Simonさんです。これらのかたがたのお仕事などは以前のエントリーを参照して下さい。ちなみに、関係ありませんが、Mattew Simonさん。なぜか僕はSimonというのがファーストネームだと勘違いしてしまっていて、メールのやり取りでいつも、ねーサイモン、ねーサイモン、と書いていたのですが、ふと気がつくと彼のメールの最後にはいつもMatt、Mattと書いてあるのに気づいて、顔から火が噴きました。うーん。明日、ワークショップのスピーカー達とB級グルメ、ポーアイの住人しか行かない島内の居酒屋で交流会を開くので、謝っておこう。
 このワークショップではそのほか、北大に移られた廣瀬さんがパラスペックルの話を、東大の鈴木勉さんの所からはmiR-122が末端のアデニル化によって安定化される話などをされる予定です。廣瀬さんのパラスペックルの話はいつも聞くたびに圧倒されるのですが、今回も、これまで全く分かっていなかったパラスペックルの生理機能、ならびに動作原理について、いつもながらのクリアーな実験で示して下さることでしょう。キーワードはソーセージとスポンジです!(違う話だったりして、、、)

分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介(2)

引き続き2日目以降のRNA関連注目セッションの紹介です。まずは午前中のセッションから。うー、何で直前にこんな事をやっているのだろう。一週間前にやっとこうと思っていたのに、、、



2AW1 セントラルドグマの基盤をなす古典的non-coding RNAの新展開
第一会場:ポートピアホテル本館 地下一階
慶応の金井さんと宮崎大学の剣持さんがオーガナイズされているワークショップです。当新学術で主として対象としているノンコーディングRNAは基本的にRNA polymerase IIによって転写されるようなものばかりですが(小さなRNAの前駆体も元はといえばpolII転写産物なので)、このワークショップでは、ノンコーディングRNAという名前が頻繁に使われるようになるずっと以前からRNA研究業界に君臨してきたtRNAやrRNAに関する最新研究が集められています。計画班員の鈴木健夫さんも登場予定。RNA修飾、というのは、RNA業界では常識なのでしょうが、ちょっと異分野の人間にするとなじみは薄く、これらの研究の話というのは、こんなこともあるのか!、そうきたか!、と、RNA学会に出入りし始めたばかりの僕は目から鱗が落ちることの連続でした。また、1本のmRNAから異なる2つのタンパク質を作るような系を作っちゃいました、という東大の管さんの所の加藤さんの仕事の話もあるようです。このお仕事は、こういったら怒られるかもしれませんが、痛快な遊びごころが素晴らしい、と言いますか、奇想天外な発想、まさにこういうところは管さんの独壇場、という気がします。特にすぐに何かの役に立つわけではないし、成体内で起きている現象の分子メカニズムを明らかにした、という訳ではありませんが、極端なことを言えば生命誕生のころの地球に思いを馳せることの出来る研究ーコドンは何故できたのだろうという答えのない答えに関する好奇心が刺激される研究であると思います。

2AS7 転位因子:ゲノム進化の推進者
第7会場:神戸国際会議場3階
こちらは塩見の春さんの冠シンポジウムで、当新学術関連ですと計画班の塩見の美喜子さんが、おなじみ、piRNAによるレトロトランスポゾンのサイレンシングの最新のお仕事をお話しされます。その他、最近方々で強烈デビューされている公募班の本田さんのボス、朝長さんのボルナウイルス由来の遺伝子、エブリンの話もありますね。進化というのはゲテものと言いますか、とてもまともな実験生物学の対象となり得ないというのが一昔前の状況だったと思いますが、エボデボの概念がすっかり浸透し、分子生物学でも、レトロトランスポゾン由来のゲノムの進化や新規遺伝子の獲得、といった研究がどんどん出てきて、今や確固たる研究領域、という気がします。国内のもうひとかたのスピーカーは、京大農学部の奥本さん。イネのトランスポゾンmPingを用いて、このトランスポゾンを飛ばしてやったとき、イネゲノムからの遺伝子発現プロファイルがどう変化するかという、まさに進化を目で見てやろうというワクワク研究です。このシンポジウムでは海外からのゲストスピーカーもおられます。そのうちの一人は、ユタ大学のCedric Feschotteさん。
パリ大学ご出身の方ですね。この方のお名前は最近Plos Geneticsに発表された論文でちらと知っていたのですが、ずっと転位因子の研究をされている方のようです。僕と同じ世代なのに発表している論文がはんぱない。。。と、そういうところを見ていても落ち込むだけなので見ないことにして、そのPlos Geneticsの論文で印象に残っているのは、長鎖ノンコーディングRNAのエクソン、すなわちncRNAの本体に挿入されている転位因子の配列は、タンパク質をコードするRNAやイントロン、遺伝子間領域に挿入された配列よりも進化的に保存されている傾向にある、という彼らの発見です。ということは、長鎖ノンコーディングRNAの一つの作動エレメントとして、転位因子の配列が働いている???これは、なかなか興味深い事実で、これまで挿入によって特定のゲノム要素を壊すとか、LTRを持つ転位因子なら新たなプロモータを付け加えるとか、そういう観点での話は良く聞いたことがあるのですが、転位因子の配列そのものがRNAとして機能しているとなると、これはまた別の話かと。トランスポゾンがコードしているタンパク質が進化して内在性のタンパク質遺伝子として機能しているというような話は東京医科歯科の石野さんのお仕事が有名ですが、このRNA版、ということでしょうか。ともあれ、今回の分子生物学会では、主として内在性のレトロウイルスERVと新規プロモーターまわりの話のようです。
もうひとかたの海外ゲストは、じゃーん、Arian Smitさん。
この方のお名前を知らなくても、Repeat Maskerを作った人と言えば、おおっ−!!!!とビックリマークが100個ぐらい付くのではないでしょうか(実際僕がそうでした)。Repeat Maskerはプローブやプライマーをデザインする人にとっては必須のツールですし、こんな便利なものがあるのかと、初めてそれを使ったときには無料でそれを公開している懐の深さに涙したものです。話はそれますが、こういうツールは、使われてなんぼのところがあって、自己満足でなく、世界中の人に使われるようを無料で公開するという文化は、本当に素晴らしいと思います。今回のお話は、転位因子と進化系統学的な、東工大の岡田典弘さんのお仕事に近いような内容のようです。

December 2, 2013

分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介(1)

40を越えると物覚えが悪くなると言うのは良く聞く話ですが、どうも最近は困ったことに日付を勘違いするようになってしまい、明日が分子生物学会の初日だということをすっかり忘れておりました(明後日だと思っていた…)。本当はもっとじっくりとRNA関連のセッションの紹介をしようと思っていたのですが、とりあえず、明日、初日のRNA関連のワークショップ、シンポジウムのまとめの覚え書きです。

12月4日

1AW1 長鎖非コードRNAの分子機能の探索ー構造と機能からのアプローチ
第1会場 ポートピアホテル本館 地下一階
こちらはおなじみ埼玉医大の黒川さんと静岡大の大吉さんがオーガナイズされているワークショップです。大吉さんといえば、昨年の分子生物学会で同じく黒川さんがオーガナイズされていたワークショップでRGGドメインを持つEWSとG-カルテッド構造認識機構についてのトークが印象的でしたが、今回もその話しの続きがあるのでしょうか。その他、Jeannie Leeのところのポスドクの時にXistによるサイレンシングにはsmall RNAが関与しているのではないかという論文を出され、今はシンシナティで独立されてXistの仕事を継続して行われている小川さん、昨年度まで当新学術の公募班におられた神武さん、数年前に横市大から京大のエネルギー研に移られた片山さん。そういえば片山さんの所の学生さんとフロンティアミーティングでは同室だったことを思い出しました。山置くんだったか。彼の話はGカルテッドをモジュールに持つリボザイムの話しでしたが、今回の片平さんの話はTLSとRNAの複合体構造解析のようです。これまで、長鎖ノンコーディングRNAの研究というと、とりあえずノックダウンしたり過剰発現したときの生理機能の確認、という研究がメインでしたが、今後、個別の長鎖ノンコーディングRNAの機能エレメントを構造基盤を含めしっかりと解析するようなアプローチがますます重要になってくるものと思われます。埼玉医大からは黒川さんと井上聡さんの所の高山さんが話をされるようです。構造基盤から生命現象まで、幅広いテーマを対象にした注目ワークショップです。

1PW2 タンパク質とRNAがカラム転写とクロマチン制御の動的クロストーク
第2会場 ポートピアホテル本館 地下一階
こちらはクロマチン制御関連とRNA。うーむ。明日のワークショップの紹介をしようというのに時間が無い〜。とりあえず駆け足で紹介しますと、廣瀬さんの所のパラスペックル関連のトークが一つ。川口君ですね。パラスペックルに、Swi/Snfといったクロマチンリモデリングに関わる因子が入っていて、しかもそれがこの核内構造体の形成に関わっているという意外な話。Swi/Snfの研究をしている人は山ほどいると思いますが、パラスペックル様の局在を示すことに注目している人はあまりいません。そもそも、細胞によっては、パラスペックルには局在しないのかも?まだまだ僕らが知らない謎がパラスペックルには秘められているのかもしれません。海外からもいろいろなゲストがこのワークショップに来られているようです。オーガナイザーは富山大学の大熊さんと長崎大学の伊藤さん。

1PW5 遺伝子発現の転写後制御ーその分子機構と生物学的意義
第5会場 神戸国際会議場4階
オーガナイザーは横市大の山下さん、、、って、公募班の山下さんじゃないですか。ちゃんとこのブログで宣伝して下さいっ!!トップバッターは最近さきがけRNAと生体機能の同窓会という名の勉強会(勉強会という名の同窓会ではない)に毎回顔を出されている京大ウイルス研の竹内さん。免疫応答に関わるmRNAを切断するRegnase-1のお話しです。いつも凄いなあと感心させられる話です。続いて、さすらいのタンパク研究者、超超高感度Massの生みの親、夏目さんのところの足達さん。I-SRIMってなんだ???とりあえず特定のRNAに結合するタンパク質を全部とってしまえ、しかも意味のあるものを取って、機能まで解析してしまえ、ということのようです。す、、、凄い。それから、CLIP解析をガシガシ進められている名古屋大学の大野鉄司さん、当新学術の秋光さんのところの谷さんからはBRIC-seq。RNAの半減期をゲノムワイドに解析しましたというGenome Researchの論文はとても素晴らしい仕事でしたが、その一歩先のお仕事のようです。ん、谷さんはもう秋光研を卒業していましたね。今は産総研のようです。その他、翻訳関係の話もちらほら、、、

1PS7 脊椎動物のからだをつくるメカニズム:クロマチンレベルの制御から器官形成まで
第7会場 神戸国際会議場3階
先日紹介しましたAntonio Giraldezさんが話をされますが、土曜日のRNA Sciences in Cell and Developmental Biology IIIでも話は聞けますから、、、(とかいっているとオーガナイザーの武田さんにどつかれそう)。

2日目以降は明日。どろなわとはこれなり。。。

中川

December 1, 2013

分生で来日するRNA研究者たち(2)

引き続き理研シンポジウムの海外ゲストの紹介です。今回は、RNA関連のワークショップに呼ばれた、という訳ではないけれども、理研シンポジウムで話をされるスピーカーの方々の紹介です。

まずは、これまたYale大学のAntonio Giraldezさん。このかたも見た目すごく若そうですね。ラボホームページも現代的と言いますかなんといいますか、IT化(死語?)を前面に打ち出した昨年の分子生物学会のポスターを彷彿するデザインです。
2007年に徳島で開催された分子生物学会の春期シンポジウムでも来日されているようですが、今回の分子生物学会は、東大の武田さん主催の発生生物学関連のシンポジウムの招待講演者という事で来日されます。じゃあなぜRNA関連のミーティングに?ということになるわけですが、泊さんが海外のsmall RNA関連のシンポジウムで彼と会い、「ユキ、今度分生に行くんだよ。」「おーそうかいアントニオ。分生のあとにRNA関連ミーティングをするんだけど来る?」「それは楽しみだね。もちろん行くとも。」ということで参加決定!という運びになったそうです(注:会話の内容は勝手に作りました)。来日された研究者に対する最高のおもてなしは知的な刺激をどれだけ提供できるかにかかっていると思いますし、こういう形で何かのついでで来られた方を集め、よりコミュニケーションが密な小規模なミーティングを開催するというのは、素晴らしい試みなのではないかと思います。より少ない経費で国際会議が開催できる訳ですし。Antonioさん、いろいろな仕事をなされていますが、今回は、いわゆるmaternal-zygotic transitionー発生初期に母性由来のmRNAによる遺伝子発現からゲノム由来の遺伝子発現へと移行する現象ーにおけるNanogやらSoxB1やらOct4やらの転写因子の役割について話をされるようです。ん、この人、miRNAの人じゃなかったっけ、、、そうですよね。当新学術のメンバー三嶋さんの留学先ではないですか。2005年に、ゼブラフィッシュの初期発生で、Dicerの機能阻害による神経発生の異常がmiR-430というたった一つのmiRNAでレスキューされるという驚きの論文を筆頭著者で(しかもcorresponding authorで)書いた人じゃないですか。その後もmiRNAの中にはDicer非依存的にAgo2のスライサー活性でプロセシングされるものがあるということを発見したり、ribosome profilingの技術を駆使して、miRNAによる翻訳抑制はmRNAの分解よりも先に起きている事を示したり、良い仕事連発ですね。実はあまりこれまで仕事をフォローしていなかったのですが、Dicerの変異体でも発現量が変化しないmiRNAがある、という結果を得た後に、そのmiRNA(miR-451)の配列の特徴に注目し、これはAgo2のスライサー活性を使って作られているに違いないと思いつくその発想は、脱帽です。生化学のデータだけでなく、次世代シークエンサーの技術をうまい事組み合わせているところが最近のパワーの秘訣、という感じもします。その彼がどんな話をされるのか、、、楽しみであります。

次は、Ramesh Pillaiさん。うーむ、どこかで見た名前だなあ、誰だったけなあ、、、と幾ら思い出そうとしても思い出せない。と、こういう時に一番役に立つのはSpotlightですね。Macの検索機能はすごいです。はい。一瞬で、あ、そうだ、先日のRiboclubに来ていた人だ!という情報が引っかかってきました。しかし悲しいかな、顔を思い出せない。。。ネットの情報によれば、御写真はこちらです。
今回は、熊本大学の谷さんのところに長期滞在していて、これも泊さんの声がけでjoinしてくださる事になりました。ホームページの論文リストによれば、日本発生生物学会が刊行している国際学術雑誌DGD(Development Growth & Differentiation)のRNA特集号で、iCeMSの中馬さんと総説を書かれているではありませんか。そうか、そういうつながりでも、記憶に妙に引っかかっていた訳です。Riboclubの時は全然気付きませんでした。。。お仕事はpiRNA生成におけるTudor domainを持つタンパク質の役割、ということで、当新学術で言うと宮川さんのお仕事にだいぶ近いところですね。僕自身の仕事とは直接関連が深い訳ではありませんが、ゆるいつながりをたどるといろいろなところで知り合いにたどり着いたり、接点があったりするというのは面白いところです。まさに、It's a small world!です。

中川

November 30, 2013

分生で来日するRNA研究者たち(1)

まずは泊さんと影山さんのワークショップに参加してくれることになったThomas Preissさん、Mattew Simonさん、Ian MacRaeさんから。この3方は、12月5日の泊さんと影山さんがオーガナイズしているワークショップの海外ゲストスピーカーです。

ThomasさんはかつてEMBLのMatias Hentzeさんと長年mRNAの翻訳関連の研究をされていた方で、現在はAustralian National Universityでラボを構えています。
うーん。渋いですね。笑顔がニヒルでちょい悪ですね。ちょっと痩せたロバート・デ・ニーロ、という感じでしょうか。
出身大学はドイツ、ポスドクでイギリス、研究キャリアをEMBLで積み、さらにオーストラリアに移籍。うーむ。すごい国際派ですね。これまでのメインの研究はmRNAと翻訳ですからncRNAとあまり接点がないようにも見えるのですが、彼のところから2年前に出たRNAのメチル化をゲノムワイドに見たというこちらの論文、これは仲間内ではいろいろと話題になっておりまして、なぜかというに、Supplemental Dataを見ると、僕らも解析を進めているMalat1やNeat1などの長鎖ノンコーディングRNAもシトシンのメチル化を受けている!のです。実はそれまでにNeat1の機能とRNAメチル化に何かしらの関連があるかもしれないというヒミツの予備的な結果が出ていて、これは面白い、ぜひ直接会ってディスカッションしてみたいと思っていたところ、ちょうどパラスペックルの発見者、Archa FoxさんがオーストラリアでLorne Genome Conferenceというミーティングの世話人をしている事が分かり、問い合わせるとThomasさんも来ることを教えてくれました。というわけで、思い立ったら吉日、今年の2月、早速行って参りました。この学会の報告は産総研(現北大)の廣瀬さんがRNA学会会報に書かれていますが、廣瀬さんの名文をママ引用しますと「アメリカの一部の先鋭的な研究者ほどの迫力はないにしても、私たち日本人がミーティングを通して仲良くなり、心を開いて付き合っていけそうな良識ある研究者が多い印象を受けました。現地の学生さんとのランチテーブルでは、比較的大人しく真面目な学生さん達に会いました。私の知っているどこか抜け目ないアメリカの学生さんとは大分異なる印象を持ちました。」というのはまさに僕もそう思ったところで、今後、同じ環太平洋、時差もない国、オーストラリアともっと交流を深めていく事は、国際化という事を考えた上でとても有益な事だと思います。と、Thomasさんも日豪間の交流には非常に乗り気で、分生に来てくれるかどうか打診したら即オッケー、しかも、もっと突っ込んで、来年の11月、かの地はシドニーで合同ミーティングを開催する話も持ち上がっています。領域代表の泊さんが開催実現に向けて現在尽力されているところですが、そのうち、詳細が発表される事でしょう。ともあれ、今回は、RNAの修飾、RNAに結合するタンパク質のダイナミックな振る舞いについて、お話ししてくれると思います。

Simonさんですが、元Harvard Medial SchoolのBob Kingstonラボのポスドクで、これもncRNAの仲間内では非常に話題になったCHART (capture hybridization analysis of RNA targets) 論文の筆頭著者、特定のRNAを含む複合体精製ではUCSFのChangラボと共に世界のトップを走っており、現在はYaleで研究室を構えておられます。
つい先日発表された、Xistの染色体上への結合領域の細かいマップと各種クロマチン修飾情報や3Cの情報を比較した論文を目に留めた方も多いのではないでしょうか。CHARTのテクノロジーは一昨年のKeystoneのミーティングでSimonさんの出身ラボ、KingstonラボのポスドクJason君の発表を聞いて以来僕も非常に注目していて、ちょっと話がそれますが、このJason君、とても人がいいのですね。その場で初めて会ったのに、詳しくCHARTの事を教えてくれ、おそるおそる一緒に仕事をしない?って聞いてみたら、二つ返事でオーケー。その後の打ち合わせのメールも詳細にディスカッションにつきあってくれ、しかも、ものすごく手を動かしてくれる。なんといいますか、ものすごく楽しいおもちゃに出会った子供のように、わくわくしながら一つ一つ生命の神秘を明らかにしたい、このテクノロジーで何処までわかるかやってみたい、とう気持ちがひしひし伝わってくるのです。この話を、廣瀬さんにしたところ、そうそう、そうそう、Kingstonラボのポスドク、すごくいい人ですよねえ、と盛り上がっていたのですが、実は廣瀬さんはSimonさんの事を頭に思い描いて話をしていたらしく、そうなると二人の全く異なるポスドクが二人ともとてもいい人、ということで、Kingstonラボというのはとても良いラボに違いないという、という結論になりました。親を見れば子が分かる。子を見れば、親が分かる。ともあれ、この、もうひとりのすごくいい人、Simonさん、ぜひ分子生物学会に呼びたいという事でコンタクトしたところこれも快諾してくれました。今回は先日のNature論文の話題が中心となると思いますが、特定のRNAを引っ掛けて精製してきて、それと相互作用するものを解析するといった仕事に興味のある方にとっては垂涎ものの話になる事間違いなし、です。

Ian MacRaeさんはスクリプス研究所。Simonさん同様、独立してまだそれほど時間が経っているわけではないのでしょうか、見るからに若い!
寡聞にして彼の仕事は良く知らなかったのですが、泊さんの仕事に近いお仕事、即ちRISC複合体の形成メカニズムを生化学的に解析されてこられた方のようです。最近のお仕事はなかなか興味深いですね。Ago2に入ったsiRNAは半減期数日ととても安定だけれども、パーフェクトマッチのターゲットのmRNAと結合するとアンロードされる。ところがミスマッチがある程度あると、このアンロードは抑えられる。特に3'のミスマッチがあるとアンロードされにくくなるので、ノックダウン効率がかえって上がる、ということらしいです。哺乳類ではmiRNAの3'末端はほとんどターゲットとミスマッチの配列らしいのですが、その理由がうまく説明できると。うーむ。なるほど。理由は分からないけれどもそうなっている、それをまあ既知の事実として受け入れてしまう、というのが凡人ですが、そういう疑問にきっちり答えを出せる人というのはすごいですね。最初から狙ってたんでしょうか。だとしたらすごすぎます。

それ以外の海外ゲストは次回に。まだまだすごい人がたくさん来ることになってます!

中川

November 18, 2013

分生のワークショップとCDBでのミーティング

もうすぐ12月、12月と言えば分子生物学会です。当新学術領域の班員では、泊さんと影山さんがワークショップを企画しています。その名も、「non-coding RNAの分子機能と動作原理」です。

分子生物学会はマンモス学会で、ちなみに何故大きい事の例えがマンモスなのかは良くわかりませんが(クジラの方が大きいだろうに、、、)、こじんまりとしたRNA学会や海外のKeystone meetingやGordon conferenceで見られるような濃密な相互作用を期待しても、それはなかなか難しいところがあります。なにせ参加者が5000人以上ですから。ほとんどが知らない人。会が終わる頃にはほとんどが顔見知りの小さいミーティングのようなことは期待できません。それでもスケールメリットというのはたしかにあって、今回の泊さんたちのワークショップでは、海外からなんと3人もゲストスピーカーが来てくれます。大きい学会だと、やはり海外のゲストに声をかけた時に、喜んできてくれることが多いようなきがします。国内に居ながらにして国際会議の雰囲気を味わえるというのは、大きな利点ですね。しかも今回は、参加者同士のディスカッションが希薄になりがちなクジラ学会(うーん、やはり迫力が出ない)の欠点を補うべく、分子生物学会が終わった翌日の土曜日に、RNA関連のワークショップで来日されたゲストを一堂に集めた1 day meetingも一緒に開催します。いわばコバンザメみたいなミーティングですが、実はこちらの方が、面白いかもしれません。

このミーティング、海外から来たゲストとの交流の場として定着してきたTokyo RNA Clubの一環として、当初は企画する予定だったのですが、だって神戸でしょ、Tokyoじゃないでしょ、ということで、別の枠組みで開催する事になりました。雰囲気としては、過去二回、当新学術領域と、新学術RNA制御学との共催でCDB meetingが行われてきましたが、そのシリーズの第三弾、というわけです。ただ、CDBにおられた中村(輝)さんも中山さんも移籍されてしまったので、CDB meetingの冠が外れて、かわりにRIKEN symposiumという冠がついています。となると理研に所属している僕が世話人みたいな感じですが、実質的にほとんど働いていません。。。稲田さん、泊さん、そして秘書さんの方々にお任せっきりで、申し訳ありません。

というわけで、罪滅ぼし?に、今回のゲストの紹介を次回以降、していきたいとおもいます。

中川

October 22, 2013

英語のレビュー(4)

すっかりこのブログの更新が滞っていました。これはなにも領域の研究者の方々が全く研究をしていないわけではなくて、研究に没頭しているからブログに近況をあげる暇がない!ということを背中で語っているに違いありません。ブログに書き込む暇があったら実験しろ!ブログ読む暇があったら皿洗え!てなもんです。そういう雰囲気が、実験系の研究室だと根強くありますね。僕も実際そう思います。はい。またこの時期は、科研費申請の〆切で全くもって首が回らない研究者の方々が多いのではないでしょうか。かくいう私めもこの2,3週間は実験停止状態でした。最近は少なくなりましたが、渾身の申請書を書き上げたと思ったら突然MacがフリーズしてOh my God!!>強制終了>再スタート>こまめにセーブしていなかったことが判明>荷物をまとめて旅に出たくなったことが何回あったことか。気分は、そう、電子レンジで加熱した突沸前の蒸留水です。ややこしい相談を10月にボスにもちかけるのはやめましょう。とんだとばっちりを食う可能性がありますから。

冗談はさておき、えらく時間が経ってしまいましたが、全回6月に投稿まで行った「英語のレビュー」の続き、です。どんだけ時間経ってるんだ、、、
ともあれ、当新学術影山班からのメッセージ「長鎖ノンコーディングRNAの研究にはもっと生化学的アプローチや遺伝学的アプローチを取り入れよう」を宣伝すべく、ノックダウンの際のoff-targetの問題やら、そもそもsiRNAを核内の長鎖ノンコーディングRNAに使って良いのかということやら、ノックダウンで見られたことはノックアウトマウスの表現型で見られませんよだとか、セレンディピティだけに頼っていてはダメでしょうとか、あれやこれや、泊さんや泊研のJuan君の助けを借りながら日頃もやもや思っていたころを書き連ねたレビューをBBA Gene Regulatory mechanismsに送って最初のレビューが帰ってきたところ、

「ちょっとネガティブすぎるんじゃない?」

というわけで、major revision。このあたりのバランスは難しいところで、実際投稿する前に共著者の影山さんからもさんざ指摘された点ではあるのですが、学術的な大論争を展開するのならともかく、テクニカルな細かい問題点に関して列記するのはレビュー論文にはそぐわない、と考えるレフリーも多いのかもしれません。じゃあどこでそういう情報を仕入れるのだ?ということになりますが、それは積極的にコミュニティの中で情報交換する、というのがやはり王道なのでしょう。というわけで、大幅に改訂して、再投稿中(今ココ)、です。

日本語のレビューですと、査読はあることはありますが(このへんちょっと書き直して下さいとか)、査読の結果落とされたという話は聞いたことがありませんし、そもそも内容に関して大幅な書き直しを迫られるということも少ないような気がします。英語のレビューの場合、このあたりの状況はだいぶ変わっていて、それほどレビューを書いた経験があるわけではないのですが、これはXXXのqualityに達していないのでリジェクト!!!というお厳しいコメントを食らったこともありました。さすがに招待レビューで本当にリジェクトをくらったことはありませんが、いずれもレフリーの方達がかなりきめ細やかなコメントをくれたのに感謝しています。レフリーに感謝します、なんて、普段のオリジナル論文ではなかなか抱いたことのない感情なんですが、、、いずれにせよ、同業者の意見を取り入れながら直すべき所は直してゆく、そいういう態度はサイエンスを進めていく上でとても大切ですし、自分が逆の立場になったら2,3日かけてじっくりコメントを返したいな(時間があれば)、と、思います。

ところで話は変わりますが、どの雑誌にもインパクトファクターというのがありまして、レビュー特集を組むとこれが魔法のように上がるのですね。たとえば、20本のレビュー論文が載った雑誌の特集があったとして、これこれに関してはこのissueのXXの総説を参照、と総ての論文を一回づつ相互引用すれば、ありゃ不思議、インパクトファクター20の雑誌が出来上がってしまいます。鼻くそみないなインパクトファクターですが、鼻くそなりに使い道はあるとは思うのですが、そういうことをみんながやり出すと、本当の鼻くそになってしまいます。インパクトファクター制度崩壊を目指すのならばそのほうが近道なのかもしれませんが、あまりセコいことを露骨にすると、それこそ信用の失墜につながりますね。かつて僕の師匠は「信用は得るのは時間がかかるけれども失うのは一瞬ですよ。」とおっしゃられました。こわっ。それを肝に銘じているつもりなのですが、なかなかこれが、、、

中川

September 28, 2013

若骨にむち打ち(6)マッピングとまとめー雑談抜きの最終回

遠藤さん、前エントリーへのコメントありがとうございました。やはり餅は餅屋。痒い所に手が届くアドバイスとても有り難いです。これからもよろしくお願いします。

さてさて、一応これで準備が全てできたことになったので、いよいよbismarkを走らせます。
$cd /usr/local/bismark_v0.9.0
$./bismark /usr/local/ref/Bisulfite_Genome /usr/local/fastq/CAGATC.fastq
Wikiマニュアルだといろいろパラメータを指定しているみたいですが、とりあえずC>T, A>G変換されたゲノムのファイルが入ったフォルダ(前回のコマンドを走らせるとゲノムが入っていたディレクトリの下位にBisulfite_Genomeというディレクトリが自動生成されるのでそれを指定)を前に、後ろに次世代シークエンスの生データのファイルを直接指定すれば、とりあえず走ってくれるみたいです。パスを指定するのはなにかと面倒くさいので、
$./bismark
だけ打ち込んで、MacOSのファインダーで/usr以下のファイルを表示させておき、あとは該当ディレクトリとfastqファイルをターミナルのウインドウにドラッグアンドドロップすれば完了。

おおっ!待つ事2−3時間で、待望のマップファイル、XXXX.samが生成されているではないか!

あとはこれをビューアで見るのみ。IGVというのが便利らしい。事前にメールアドレスを登録するとダウンロードページから最新版を手に入れる事が出来ます。Launchボタンを押しても良いのでしょうが、せっかくなので本体をダウンロード。Downloadとある欄のzipファイルを普通にダウンロードして、普通に解凍。IGVぐらいになると、だいぶユーザーフレンドリーというか、普段使っているMacのソフトウェアと同じような感覚で使えます。最終的にIGVのブラウザ上で見るためには、まずスペースの節約をするためにsamファイルをbamファイルに変換
$samtools view -bS XXX.sam > XXX.bam
このままではIGVで見る事が出来ないので、bamのインデックスファイルを作成
$samtools index XXX.bam
あとは、IGVのメニューバーのFileからLoad from file...を選んで、XXX.bamを選べば、晴れてマッピングデータをブラウザ上で見る事が出来ます。あ、その前にゲノムを読み込んでおく必要があります。IGVはこのあたりもだいぶMac風なので、適当にメニューバーを見まくっていけば何とかなるのですが、ツールバーのGenomesからLoad Genome from Server...から選べばオーケー。かくして、当面の目的であったbisulfite処理したサンプルの次世代シークエンサーのリードをゲノムにマップしてそれを見る、とういところまで、なんとか、たどり着く事が出来ました。証拠は(2)を参照!

当面は、IGV上で自分の見たいところを見ていけばある程度の情報が得られますし、ゲノムワイドで何らかの解析をしたい!という時でも、まずはIGV上でひたすら眺めながら、なんとなくの傾向をつかんで、それから改めて統計的な解析に進むという事になるのだと思います。統計的な解析を行うためには今度はまた別の壁がある訳ですが、ここまでたどり着いてからバイオインフォマティックスが得意な人に相談すれば、だいぶ会話が通じるのではないか、と思った次第です。

で、今回の教訓ですが、

1)実験屋がつまづいているのは次世代シークエンサーの解析ではなくてUnix/Linuxの使い方。
2)とりあえずググらずに使えるようにならなければいけないUnixコマンドはcdとls。
3)MacのファインダーとUnix/Linuxを動かすターミナルとの相性は抜群。
4)困ったらググる。ネットの向こうの誰かが手を差し伸べてくれている。
5)練習ではモティベーションは高まらない。とりあえずデータを出してもらえばムクムクやる気がわいてくる。
6)本当に難しいところはやはり難しい。ある程度までたどり着いたところで専門家に相談すれば話が通じやすい(はず)。

といったところでしょうか。

次世代シークエンサーの解析は一部のマニアがすることだったのが、今や普通の実験屋が使う技術になりつつあるのだと思います。それだけに、だんだん道のりが整備されてきていてちょっとググればかなり親切なマニュアルが転がっていますし、そのうちボタンを一つ押せば望む解析が出来る、という時代が来るかもしれません。今でもGalaxyなるウェブサーバにfastqファイルを投げれば、適当にいろいろなプログラムにデータを食わせて望みの形のファイルをはきださせる事も出来るみたいです。そういえば、かつてはmultiple alignmentももうすこし面倒くさかったし、プログラムをダウンロードしてきて、自分で作ったfastaファイルを解析し、出てきたファイルを手作業で系統樹に書き直していたような時代もありました。定跡が整備されれば、ある程度の局面まではだれでもたどり着く事が出来るようになります。本当にバイオインフォマティックスで勝負しようと思えば自分でプログラムを書いたり、独自の解析法をうみだしたりしなければいけないのは当然でしょうが、道具として使いこなすという事で割り切ってしまえば、定跡をなぞって問題の局面までたどり着けばそれでよし。

近年は専門分野の細分化が進んできて、どれもこれも自分のところで処理するというわけにはいかなくなってきました。そういう時代だからこそ大事なのは、全てを丸投げするのではなく、幅広い専門分野の基礎の基礎のところについてはきちんと理解する、あるいは理解しようとする姿勢を見せる事なのかもしれません。

よし。今回は雑談なしで終わりました。Riboclub帰りの時差ぼけのおかげでしょうか。うーむ。ちょっと物足りない、、、

RIboclubの感想等は、またおいおい、泊研、影山研、鈴木研、などから出てくる、かな?乞うご期待。酒井さんが「出張ダイエット失敗リターンズ」を執筆してくれる事を期待して、このシリーズ、終了させていただきます。

中川

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追記
次世代シークエンサー解析を手元のMacでちょっとやってみようという方に、とても良いサイトがあります。最近NGS現場の会のメーリングリストに流れていましたが、大変親切で、しかもすぐに役に立つ情報満載です。
日本バイオデータの緒方法親さんが作られたすぐれもの電子書籍のサイトはこちら
http://www.ipad-zine.com/b/1520/

また、同メーリングリストに慶応の荒川さんからバイオインフォ解析セットの情報も寄せられていました。その名もBioLinux
http://nebc.nerc.ac.uk/nebc/tools/bio-linux
イメージファイルをダウンロードしてMacに放り込めばオーケーということらしいです。こちらのブログ記事が参考になります。

最近ではCLCやAvadisなど、特にUnixの知識が無くても使えるソフトもあるようですので、ますます自分で悩む必要は無くなってきているような気もします。自分のコンピュータで次世代の解析環境を作る、という作業は、まさに分子生物学でいえばミニプレップ、もしくはセシウムを使ったDNA精製だと思います。キットに頼ったり外部委託する前に、最初は自分でやってみないと足腰が鍛えられない。基礎体力がついたら、あとはどんどん便利なツールを使えば良い、ということかなと。

September 21, 2013

若骨にむち打ち(5)ゲノムを入れてBismark始動!

中村さん。レポートありがとうございました。皆様もどんどん、今日のカレーは辛かったでも良いので、エッペン10個だそうと思って袋をふって出したらちょうど10個出てうれしかったでもよいので、情報発信よろしくお願いします!!

さてさて。これで一応、マイマック、次世代シークエンサー、もとい、今世代ジークエンサーの「なんちゃって解析」をする環境が整いました。本当に整っているのかどうか分かりませんが、いけいけGo!Go!です。実験屋をナメではいけません。見通しがつかなくてもとりあえず走り出すことにかけては誰にも負けないっっ!うまく行くかは神のみぞ知るべし。突撃ー!!

とりあえずはbisulfite sequenceのリードをマップするにあたり、0.31秒の検索結果でGoogle先生が指示した次のアクションは、「ゲノムをダウンロードせよ」でした。マウスゲノムは何処にあるのだろう。mouse genome downloadでググれば、どうやらUCSCのサイトから取ってくるらしい。ゲノムの情報以外にも、ESTの情報、遺伝子の上流2kの情報、、、いろいろあります。たとえば既知の転写産物だけにマッピングするのであれば、ESTを使えば良いですし、遺伝子の上流の情報だけ解析したければ、適当なファイルをダウンロードする、ということなんでしょう。便利だ。最新版はmm10のようですが、ちょっといちびって、やっぱりビールはラガーだよと、mm9をダウンロードしてみました。そう。注文はいつでもsecond cheapest。贅沢する時もsecond expensive。とりあえず入れたばかりのwgetで取ってくる事にします。まずは/usr/localの下にrefというディレクトリを作って(当然ここはMacOSのファインダーが便利!)、ターミナルからそこに移動します。$cd /usr/loca/refでいい訳ですが、実は$cd とうったところでファインダーからrefのフォルダーをターミナルの画面にドラッグ&ドロップすると、なんと自動的にそのフォルダへのパスがペーストされるではありませんか!この裏技。すごい。逆転写からPCRまで一本のチューブで出来るぐらいすごい。これもY本師匠がパソコンをいじっているところを眺めながら知ったのですが、そう。技は盗め。先輩の華麗な手つきを背中越しにみながら実験の腕を磨いていった学部生の頃が思い出されます。ともあれゲノムを

$wget http://hgdownload.cse.ucsc.edu/goldenPath/mm9/bigZips/chromFa.tar.gz
で取得して、
$tar xvzf chromFa.tar.gz.1
で展開。なんかいろいろファイルが生成されています。いちいち分割したものにリードを貼付けても面倒なので一つのファイルに統一する、というコマンドをマニュアル通り打ち込みます。果てしなくー♪コマンド、コマンド。

$for i in `seq 1 22` X Y;
$do cat chr$i.fa >> hg19.fa
$done

かつて一世風靡したBasicやFortranだったらFor i=1 to X…nextの構文ですね。はい。なんとなく分かります。分からなくても、分かった事にして、多分これは、いろいろファイルを一つにまとめるという事なんでしょう。実際、このコマンドを入力していくと、mm9.faという、Fastaフォームのファイルが生成されました。ディスクのスペースがもったいないので、元の分割ファイルは全削除!

次はいよいよBismarkの実行です。

まずやらなければならないのは、bisulfuteシークエンスの場合、全てのCがTに変換された(メチル化されていないCは全てTに変換される)ゲノムを別途、用意する事のようです。Wikiに従って、コマンドを入力します。
$ ./bismark_v0.5.4/bismark_genome_preparation ./ref/
うんうん愛しのMacbookair(OS10.7.5, 1.8GHz core i7, memory 4GB)がうなっているので、なんかすごそうな事をしているんだろうと。Wikiに記事を書いておられる方のハイスペックなマシンでも3時間ぐらいかかったと書いてあるので、僕のMBAではもっとかかるんだろうと。もう寝よっと、おやすみ、、、、と、ここまでが9月6日の時点でした。

ところが、週末のあいだずっとんうんいっているのです。これが。さすがにこれはおかしい。

うーん。僕のMacbookairではちょっと能力不足なのかな?ということで、月曜日になって、ラボの共通機器のiMacで同じ事をやらせてみたら、一次抗体をかけている間にあっさり終了していました。うーむ。メモリはやはり16GBぐらい必要なんでしょうか。たぶん4GBだとだめなんでしょう。ああ、苦労していろいろ入れた&入れてもらった僕のMac Book Airは何だったのだろう、、、

とりあえず、これで、bisulfite sequenceのマップをする準備が、本格的に、整いました(なかなか終わりません、、、Riboblubに行ってくるのでしばらくおやすみ、するか、時差ぼけで寝られなくて連投するかは分かりませんが、ひとまず休憩です)。

中川

September 19, 2013

RNAフロンティアミーティング2013 参加レポート

はじめまして。神戸大 影山研 M1の中村と申します。
先日、静岡にて開催されたRNAフロンティアミーティング2013に参加してきました。
参加しての感想を、ミーティングレポートとして報告させて頂きます。

今回のミーティングでの発表が、私にとって初めての学会口頭発表だったこともあり、参加を決めた時から発表直前まで不安感と緊張感で一杯でした...英語発表も初めてだったので、直前まで原稿やスライドの準備に苦戦し、かなり切羽詰まった状態で発表当日を迎える事となりました(;_;)

発表中は、慣れない雰囲気に圧倒され、緊張して突っ走ってしまったり、質疑応答で満足に返答できなかったりと、悔いの残る点も多々ありましたが、それも含め私にとって、非常に意義深い経験になったと思っています。

発表をきっかけに、他大学の先生方や学生さんなど多くの方に話しかけて貰え、質問や貴重なアドバイスを頂けたおかげで、普段とはまた違った視点が得られ、視野も少し広がったように感じています。また最終日には、光栄なことにベストプレゼンテーション賞を頂くことができ、嬉しさと同時に、非常に恐縮な気持ちで一杯です... まだまだ未熟ですが、今回の経験を糧に少しずつでも成長していけたらと思います。

私自身の発表は、ミーティング初日の第一セッションで終わったため、残りのセッションは、緊張感から解放され、落ち着いた気持ちで臨む事が出来ました。
どのセッションも、興味深い発表ばかりで、連日本当に多くの刺激を受けました。発表テーマも多岐に渡っていて、普段なかなか聞く事の無い分野の発表も数多くあり、日々新鮮な学びの連続でした。

また、発表のみならず、温泉や自由時間の観光、飲み会、BBQ、花火etc...と、レクリエーションも盛りだくさんで、大満足の3日間でした(^^)

同じRNAを対象にしているとはいえ、研究内容もバックグラウンドも多種多様な皆さんと、3日間共に過ごし、ざっくばらんに色々な話をすることができ、本当に良かったと思っています。

楽しかったのはもちろんのこと、目指している方向も、考えていることも、様々な皆さんとの出会いを通じて、日々の研究室生活ではなかなか得られない多くの刺激を受けることができました。
環境は違えど、自分の芯をしっかりと持ちつつ、様々な物事に積極的に挑戦する、同世代の大学院生や学部生の姿を目にして、自分もまだまだ頑張らなければと、気持ちを鼓舞されました。

最後になりましたが、今回のミーティングを企画・運営、そして支援してくださった方々、また期間中お世話になった全ての皆さまに心よりお礼を申し上げます。
3日間を通じて得られた気付きや学びをしっかりと心に留め、今後に活かしていきたいと思います。
本当にありがとうございました。

中村


September 16, 2013

若骨にむち打ち(4)環境をととのえる

いちおうUnix風のコマンドをターミナルで打つことができるようになり、といってもこれは要はアイコンをクリックしてファイルを開いたり、webページのリンク先をクリックしてダウンロードフォルダにファイルを入れたり、というだけの作業ですが、これまでものすごくハードルが高かった作業が、ユーザーフレンドリーなインターフェースではないというだけで全然複雑な事ではないという事が良くわかってきました(すくなくとも僕がやろうとしていること(メチル化リードのマッピング)のレベルにおいては)。これはインフォ音痴のベンチ屋おじさんにとっては大きな進歩。

さて、次は解析に必要なツール、アプリケーション、パッケージ、言い方はいろいろありますが要はプログラムをインストールしてゆく段です。このあたりは師匠のY本君に実は半年ぐらい前にやってもらっていたのですが、やはり解析するべきデータがないとなかなか自分でテストデータを使って練習、、、というモティベーションが湧きませんね。練習でもいいから実験して見たら?と学生さんやポスドクに言ってもなかなか腰を上げないという気持ちが良くわかりましたです。はい。

パッケージのインストールにはHomebrewというツールが便利との事。バイオ解析系に限りませんが世に出ているプログラムというのは単体で機能する訳ではなく、いくつかのプログラムを呼び出しながら解析がすすむらしいです。ですので、何かプログラムを実行したい時は、そのプログラムが必要としている別のプログラムもあらかじめインストールしておかなければいけない。Safari上で動画を見るためにはFlashのプラグインをあらかじめインストールしておかなければいけない、というような感じでしょうか。

そこで、マニュアルをきちんと読んで必要なパッケージを入れていけば良いのでしょうが、それがなかなか面倒くさい。冗談抜きにおじさんレベルではとてもムリ、ムリ。こういう品の悪い若者言葉を使うと奥さんは目くじらを立てて怒るのですが、平安時代の人から見たら昭和のNHKアナウンサーの言葉だってとんだヤンキー兄ちゃん姉ちゃんが使っていた言葉のようなものでしょうが、とかボソっと返せば倍返しで返し文句が、、、たいがい口ゲンカというのはこういうくだらない事から始まる訳ですが、おっと寄り道はしない約束です。必要なパッケージを探してきてきちんとインストールしてくれるとても便利なツールがHomebrew、ということらしいです。

そこでまずHomebrewのインストールですが、こいつをインストールする前にまたまたやる事があります。この準備期間の長さが、実験屋に取っては万里の長城のように横たわる壁ですね。App Storeに行って、Xcodeというアプリケーション(無料)をインストールします。開発環境を入れる訳です。なんか格好いい。これは普通のMacのOfficeなどのアプリケーションのインストールと感覚的には変わりません。ただ、インストールするだけではダメで、Preference>Downloads>Componentsの設定画面に移動して、Command Line Toolsをインストールします。これもただボタンをクリックするだけ。うーむ。やはりユーザーフレンドリーなインターフェースは偉大です。キット様々。やっぱりセシウムはやめてキアゲンにしようというのが良くわかります。

これで、いよいよHomebrewをインストールする準備ができました。すっかりおなじみになったターミナルのコマンドラインで、
$ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.github.com/mxcl/homebrew/go)"
をコピペして打ち込みます。意味は、、、わかりません。まあ、このあたりは赤子が言葉を覚えるように、ただただまねして、ひたすら打っていけば、いつかは分かるに違いない。Homebrew install Macぐらいでググれば最新情報に行き着くので、うまく行かない時はきっとそこに素晴らしい解決策が書いてあります。そう、Googleは既に分かっている事に関しては何でも教えてくれる心強い味方です。Googleさえそばにあれば最強。Ponanzaを手にしたサトシンのようなものです。おっとまた横道に、、、

これでいつのまにかHomebrewがインストールされましたので、正常にインストールされたかの確認も込めて以下のコマンドを入れます。
$brew doctor(コンピュータの診断)
$brew update(アップデートがあれば勝手にインストールしてくれる)
$brew -v(これでバージョンが確認できる)
次々と流れるコマンドラインの画面。気分はすっかりベンチ屋からバイオインフォ屋です。なんか格好いい!

あとはツールをどんどん入れていくと。Y本師匠に入れるように推奨されたのはとりあえず以下の5つでした。
$brew install samtools
$brew install bedtools
$brew install bowtie
$brew install tophat
$brew install cufflinks

これで一通りの解析ができますよ、と。ただ、こちらにはメチル化リードのマッピングのプログラムが入っていません。困った時はググれカスということでGoogle先生に聞くと、どうやらBismarkというのが良いらしい。そこでBismarkでググっていろいろ調べると、当然宰相ビスマルクのwikiページも出てくる訳で、、、えっとビスマルクって誰だっけ、とか見始めるとこれがなかな面白い。ついつい脇道にそれていつの間にかYoutubeを見ている、、、いかんいかん。これだからコンピュータは魔性なのです。コンピュータに向かってる暇あったら実験せい!!!と怒鳴っていた方々の気持ち、いたいほど分かります。ちょっとは後ろ暗い事があるからですよね??僕はもう、後ろ暗い思いでいっぱいです。あー、なんでこうすぐ横道にそれてしまうのだろう。ただ、自宅でこういった作業が出来るというのは一つの救いではあります。インターネット偉大なり。

ともあれ、Bismarkのインストール。
本家ホームページがこちら
http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/bismark/
実際のインストールの手順は次世代シークエンスデータ解析情報共有フォーラムのWikiが便利でした。
http://cell-innovation.nig.ac.jp/wiki/tiki-index.php?page=Bismark
ターミナルのコマンドラインに打ち込んでいきます。
$wget http://www.bioinformatics.bbsrc.ac.uk/projects/bismark/bismark_v0.5.4.tar.gz
$tar xvzf bismark_v0.5.4.tar.gz
これでBismarkのインストール完了。さて、次回はいよいよシーケンスデータのマッピングです。

中川

September 15, 2013

若骨にむちうち(3)コマンドラインの恐怖

それではここから、おじさんでも出来るMacを使った次世代シークエンサー解析の初歩の初歩のメモです。Molecular Cloningで言えばミニプレップ。次世代の本格的なデータ解析に達するにはまだまだ道のり長しですが、千里の道も一歩から。

次世代シークエンサーを解析するためには、まずリードをゲノムにマップし、そのあと例えばクロマチン免疫沈降であればピークを探して統計的に解析したり、RNAseqであれば遺伝子ごとに(あるいはエクソンやイントロンごとに)リードの数を解析したりするわけですが、こういった一連の作業をするためのプログラムはフリーで配布されています。ですので、原理的には、それぞれのプログラムをダウンロードしてきて、自分のコンピュータにインストールして、データをプログラムに「食わせ」れば、少なくともプログムラムが存在するものに関して言えば、ありとあらゆる解析は自前でできる、という事になります。ところが、おじさんにはまず最初の大きな壁があります。それが、

コマンドライン と Unix (Linux)

です。MacやウインドウズのOSの登場は体感的なユーザーインターフェースでコンピュータを圧倒的に身近にしてくれましたが、次世代シークエンサー解析ツールの多くは、まだまだ普段使っているようなアプリケーションのように、適当にプルダウンメニューを表示させたりアイコンをクリックしていれば何となく使える、というようには出来ていません。そもそもアルゴリズムなどのプログラム本体自体日々改良されているので、そんなところまで構っていられませんよ、ということなのでしょう。となると、命令は全て、コマンドラインで入れる事になります。Macならばターミナルのアプリケーションを立ち上げて、そこからいろいろ命令文を入れていく訳ですが、、、

学生時代、情報科学実習というのがあったのですが、うちの奥さんなどは、そもそもコンピュータの起動の仕方が分からなくて(起動ボタンを押すという事も知らなければボタンが何処にあるかも知らない)、いきなり泣きそうになって、早々に挫折してしまったようです。文系人間恐るべし。いや、文系理系等という画一的な区分を持ち出すまでもなく、誰だって知らなければ、分からないのは当然です。多くの実験屋は、バイオインフォの解析は難しいですよねー、とか口にしていますが、解析が難しいとかいう以前の、スイッチを押すところで躓いている。僕自身、そこで躓いている事をいうのはあまりにも恥ずかしいので、うちにはバイオインフォが出来る人がいないから、、、とか、データはとれても解析できる人がいないから、、、と、お茶を濁していたのが、本当のところです。

まずは目的地のフォルダ(ディレクトリ)を開くところから。ここからして大変です。とりあえず、
$ls
$cd
という二つのコマンドを使って、普段フォルダをクリックして中身を表示させているのと同じ事が出来る、ということを理解するのに一苦労。でも、ターミナルを立ち上げて、コマンドラインで、適当にコンピュータに入っているファイルのリストを表示しているだけで、なんか仕事をしている気分になってきます。少なくとも、うちの奥さんなどには効果覿面です。見た事もない文字だらけの画面が出ているというだけで、このごろはなかなか見せてくれない尊敬のまなざしを向けてくれます。コマンドライン、偉大なり。明日の夕飯のおかずは一品増える事でしょう。

あと、いちいちファイルの名前やディレクトリを入力するのが面倒くさいなあと思っていたのですが、cdの後で何文字か入力してTabキーを押すと、おおっ!!!自動入力される!!うん。この機能を始めて使った時の感動は、そうですね、solution IIIを入れるとネバネバだった液がさらさらになってタンパク質やらSDSの沈殿が出てくるのを見た時の感動に近いものがあります。

一つ上の階層のフォルダに移るのも結構難儀していて、最初はホームディレクトリまで戻って、そこからcd+一文字押してはタブ、cd+一文字押してはタブで、戻っていたのですが、なんとこれがcd ..で戻れるではないか!これもGoogleでその記事を見つけた時の喜びは、そう、100本ミニプレップを手でやっていたのが、この世の中にはミニプレップマシーンというものが存在する事を知った時の喜びに、まさに近いものがあります。

ともあれ、必要なツールであるとかプログラムは、とりあえず cd usr/localのディレクトリに入れていくということらしい。ファイルのダウンロードに関しては、wgetというコマンドが便利、ということらしく、wgetのあとにダウンロードしたいファイルのURLを入れれば良い、って書いてあるからそうすると、以前書きました通り、
-bash: wget: command not found
という非常なエラーメッセージが帰ってきます。どうやら、Macにはこのコマンドは入っていないという事みたいです(僕がいつのまにか消した?)。とまれ、気を取り直して、まずはファイルをダウンロードするためのwgetツールのインストールです。ググるといろいろな情報が出てきますが、とりあえずSafariのURLに
ftp://ftp.gnu.org/pub/gnu/wget/
と入力するとwgetのいろいろなバージョンの圧縮ファイルが入ったフォルダが出てくるので、最新バージョンをデスクトップにコピー。それをコマンドラインでusr/localまで移す、、、のは面倒くさそうなので、Macのファインダーの移動メニューから「フォルダーに移動」を選び(もしくはshift+command+G)、/usrと入力すると、隠しフォルダの/usr/以下のファイルを見る事が出来るので、localフォルダ(ディレクトリ)にドラッグアンドドロップ。こういうやり方は邪道だと師匠のY本君は言いますが、、、いいんです。おじさんだから。ファイルの移動とか複製、削除などは、やはりMac OSのファインダー上でやるのが便利ですね。

全部Max OSからやれば良いのかもしれませんが、明日のおかずを一品増やすためにまたターミナルに戻って、コマンドラインを入力していきます。

$cd /usr/local(圧縮ファイルを入れたディレクトリに移動)
$tar zxvf wget-X.X.X.tar.gz(こうすると圧縮ファイルが解凍されるらしい。xzvfって何?ま、知らなくてもいいか。)
$cd wget wget-X.X.X
$./configure
$make
$make install

これでwgetが使えるようになりました。いつまでたっても次世代シークエンサーの解析にたどり着きそうにもありませんが、寄り道をし過ぎなのですね。はい。次回からは雑談をもう少し減らしていきます。。。

中川

September 13, 2013

若骨にむち打ち(2)実験屋も最低限の事はしないと、、、

やるやる詐欺を自らカミングアウトして、とっくの昔に帰ってきていた次世代シークエンサーのデータをなんとかする宣言をしてみたのは良いのですが、なかなかこれが手強い。学生さんやポスドクに、あの実験どうなった?これやった?それ試してみないといかんのじゃないの?などとプレッシャー(?)をかけていたのがそのままそっくりブーメランで自分に帰ってきた気分です。よっしゃ今週中にはなんとかするぞと気合いを入れまくったのは良いものの、水曜日の晩になってまだ何も出来ていないという現実を目の前に、じっとりと額に脂汗。ああ、ひんやりとする夜風に吹かれて秋の虫の声が聞こえてくるこんなすずやかな晩に、秋の夜長の新潮文庫が似合いそうなこの晩に、なぜ-bash: XXXX: command not foundとかいう、おそらくものすごく基本的なミスと、格闘せねばならんのだ!おそらく、若い世代の方がちょっと上の世代の方にぎゃふんと言わせてやろうと思ったら、まずは新しい技術を若い力を持って吸収してしまうのが手っ取り早い。なんせ上の世代は老骨、せいぜいが若骨ですから。

このような状況は、かつてもあったのではないかと。僕自身は経験していませんが、分子生物学が世に出てきた時は、おそらく似たような雰囲気であったのではないかと、想像します。発生生物学を研究しているラボでなんで大腸菌を飼っているの?というのは、いまはハァ?というような問いですが、かつてはそれが実際に不思議な問いで、岡田節人先生の普及の名著「細胞の社会」でも、そのへんが触れられていたと思います。分子生物学という「ツール」の出現の前後を例え、僕の指導教官であったT市先生(まったく伏せ字にする意味なし)は、クローニング以前の時代をBCと読んでおられましたが(Before Cloning)、仕事セミナーでも、ADの時代の技術的な細かい事に関しては「僕、良くわからないから、、、」と、基本、別のスタッフの方々や先輩の院生任せ。細胞の顔を見た時や、ウエスタンのフィルムを見た時の斬鉄剣!は、分子生物学的技術のディスカッションでは、ついぞお目にかからずじまいでした。

ある意味、それが新しいテクノロジーとの正しいつきあい方なのかなという気もします。若い世代の方が適応力は遥かに高いですし、新しいものに対する吸収力も大きい。今更自分がしゃしゃり出てあれこれかき回すよりは、若い世代に全面的に任せる事で、学生を「育て」る事が出来る、という側面もあったのかもしれません。ただ、細かい技術的なところはともかく、分子生物学のツールの使い方、可能性、限界、に関しては、T先生は驚くほど鋭い直感で捉えられていたような気がします。うーむ。なんでだろう。

他人の才能をうらやんでも仕方がないので、僕自身が思うのは、これから間違いなく次世代シークセンサー、K岡君の言葉を借りれば今世代シークエンサーのデータを使う局面は増えてくるでしょうし、どんどんテクノロジー的には「キット化」されて行くようになると思います。つまり、ワンクリックで、自分の欲しいデータが出てくるようなプラットフォームが作られると。そのようなプラットフォームの可能性や限界を理解するというのはまず一義的に大事なのですが、そもそもそれ以前に、僕ら口癖のように言っていたではないですか。「キットに頼るな!!」「ミニプレップぐらい自分でしろ!!」「キアゲン使うな!セシウムだろセシウム!!」

というわけで、胸に手を当てて考えて、ものすごく手の込んだquantitative PCRとsubtraction PCRを組み合わせたsingle cell PCRやdifferential display、、、まではできなくても、ミニプレップぐらいは、やはりしてみようと。才能に恵まれた人はその手の事をやらなくても技術の限界や可能性は理解できるのかもしれないけれども、凡人が出来る事は、とにかくひたすらミニプレップ。そこから学ぶ事も大きいにちがいない。solution I, II, IIIぐらいは自分で作ってみようよと。

なんだか時間稼ぎみたいな文章になってしまいましたが、一応、bisulfite RNAseqのリードがマップできましたよ、という、報告です。エヘン。初歩の初歩ですが、こういう場でプレッシャーをかけなければ、一生何もせずに終わったに違いない。ポスドクや共同研究者任せで。別に自分でプログラムを作った訳でもないですし、ちょっとググれば誰でも出来る事だと思うのですが、というか、多分若い人に聞いたらググレカス!!とかいわれそうなことを聞きまくってなんとかここまでたどり着いたのですが、このようなミニプレップは、やはり現場にいる人間は一度は「実習」でやってみるべきなのかな、と思っています。若い人がどれだけ苦労しているのかというのもちょっぴり分かりますし、それは基本の基本でしょう、というところも分かるはずですし。


で、若骨がどういう下らんところではまっていたか。次回はその恥さらしを。
打倒K岡君!!(果てしなくー♪、冗談、冗談)。

September 6, 2013

若骨にむち打ち(1)次世代シークエンサ解析の初歩の初歩

夏の終わりのフロンティアミーティングから、心地よい疲れと共に帰ってきました。三島さん、長尾さん、鈴木研、泊研のスタッフの皆様、素晴らしいミーティングをありがとうございました!

いろいろ楽しいエピソードはあったのですが、これはあまりにもいろいろ面白いので、せっかくですからRNA学会の会報の方にいろいろ書いていただこうかなと思っています。編集幹事の特権。エヘン。

というわけでとっておきの原稿はもうしばらくということで、僕の方から一言二言。

かつて僕も世話人の方をさせていただいた事もあるのですが、その時に強く思ったのは、ミーティングというのは参加者が全てだなという事です。良い話をする人が集まれば、それは必然的に良いミーティングになります。今回は、個人的には、文字化けさんの別名を持つ(??)アステカさんのツテもあるのでしょうか、synthetic biology系、修飾系の話がいつになく多かったのですが、それがとても新鮮でした。個々のトークのクオリティーはもちろんのこと、多様性という点でもなかなか見るべきものが多かったような気がします。

もう一つ思ったのは、やはりこの歳になっても学ぶ事が多いという事です。40代半ばというのは下手をすると若手と呼ばれる事もありますから(実際和光理研の旧基幹研の生物系PIでは僕が一番若かった、、、)、教えてもらうのは当たり前ではあるのですが、特別講演の輝さん、最年長の影山さんから学ぶのはともかくとして、とにかく貪欲に吸収しよう。何か教えてもらおう。そういう目をしている学生さん達を何人も目にして(そうでない人もいましたが!?)、これはやはり人間向上心をなくしたら終わりだな、とつくづく思った次第です。

というわけで、老骨ならぬ若骨(?)にむち打ち、新しい事に挑戦しようと。いうことで、重い腰を上げて、頑張ってRNAseqを使ったメチル化解析に取り組む事にしました。詳細はおいおい書いていきますが、要は今、fastqのファイルをもらって、途方に暮れている状態です。ちょっとずついろいろ解析しようとしているのですが、なかなか口ばっかりで具体的にすすまない。ここで公開してしまえば、どれだけさぼっているかも良くわかるので、いっその事リアルタイムで何をやっているか書いてしまえば、すこしは尻に火がついて真面目にやりはじめるかな、と思った次第です。学生やポスドクの頃はボスがやんわりとプレッシャーをかけてくれましたが、最近はそういうプレッシャをかけられる事はない、、、ん、いや、実験以外の無言のプレッシャーだとそれはいっぱいあるような気も(キミソレデハタライテルキニナッテルノ)、、、それはともかく、

ミッション「bisulfite RNAseqのデータを解析せよ」

です。
とりあえず、何でも知ってるはずのGoogle先生に尋ねると、Bismarkというものを使えば良いらしいです。しかしー、一番親切そうなこのページ
http://cell-innovation.nig.ac.jp/wiki/tiki-index.php?page=Bismark
を見ても、良くわからん。そもそも、テストデータを解析するためのヒトゲノムすら入っていない。というわけで、まずはそこから。

えっとターミナルを立ち上げて、たしかMac OSはUnixコマンドがそのまま使えるはずだからっ、と。Google先生曰く、
「外部接続可能なLinuxなどがある方は、直接wget等を実行しても良いと思います。」
ということで、そこにあった、
$wget http://hgdownload.cse.ucsc.edu/goldenPath/hg19/bigZips/chromFa.tar.gz
とターミナルに打ち込んでみたのですが、非常にも、

-bash: wget: command not found

なんだそれ、、、

というわけで、かなり道のりは長そうです(分かる人には分かる。僕がどれだけくだらんところで詰まっているかを、、、)。というのが、9月2日。現在では、一応それから少しすすんで、CをTに変換したゲノムを作らせてるところです。エヘン(分かる人には分かる。僕がどれだけ詰まらん事を自慢しているかを、、、)。先ほど走らせて、いま、うんうん僕の小さなMacbookairがファンの音を鳴らしながら頑張ってくれています。

ともあれ、これから恥さらしの解析の四苦八苦、随時アップしていきます。何も書かなかったら、仕事していないという事です。ハイ。もしくは、他の仕事しているか。現実逃避でネズミをさばいたり切片を切ったりしているか。これはものすごいプレッシャーなので、すこしは仕事が進む、かな?

中川

August 30, 2013

夏の終わりにフロンティアミーティング

暑い暑いと言う元気もないぐらい汗だらだら、油断しているとすぐに首筋からぷーんと異臭が漂う寝間着の処置に困っていたのが懐かしいぐらい、ここ埼玉ではひんやりとした朝の空気の中出勤するような季節になってしまいました。と思いきや、また盛夏さながらの熱帯夜もどきがきたり。日本の夏、なめるべからず。でも、一晩過ごすたびに、少しずつ秋の訪れを実感するこの季節がやってきました。

RNA学会が夏の季語なら、RNAフロンティアミーティングは秋の季語です。以前こちらでも紹介したかもしれませんが、フロンティアミーティングという名称は、何を隠そう、何も隠さず、それまでは「若手の会」という名前だったのです。ところが、諸事情で科研費からのサポートが全く頂けない事態に陥り、その時に企業の方からよりご賛助を頂きやすい名称にしなければという思惑もあり、また、「若手の会」だと、ただ単に酒飲みにいっているという印象を持たれがちで事務から旅費の許可が下りにくいという苦情もあり(それはあなた事務のおねーちゃん。やましい心があるから、かつての所行を反省するからそう思うのでしょうと突っ込みたくなりますが)、実態に一番近い名称を、ということで神戸大のI上さん(伏せ字にする意味ほとんどなし)がゴットファーザーとなって承った名称、それがフロンティアミーティングなのであります。ちなみに「フロンティアミーティング」と、どうでも良い事は何でも知っているGoogle先生にお訪ねすると、なんとこれが来週、伊豆は修善寺で行われるフロンティアミーティング2013がトップヒットします。うむ。これはどうでも良い事だけを知っているというレッテルは剥がさなくてはなるまい。

冗談はともかく、フロンティアミーティングは今でもフロンティアなのでしょうか。そもそも始まった時からフロンティアだったのでしょうか。現時点では判断のしようはありませんが、いつぞやの若手の会の懇親会で現京大のA形さん(ほとんど伏せ字にする意味なし)が、「RNA学会をぶっ飛ばせ、ぐらいの気持ちでやってくれ」とかのたまわれていたのは結構印象に残っています。世界のトップを走る人が集まってその分野の最新の話をぶつけ合うミーティングではないかもしれません。そもそも基本国内の集まりですから。でも、この人すごい!!という学生さんやポスドクの方々たちに必ず会う事が出来るというのがこのミーティングの素晴らしいところかなという気がしています。

僕自身がこの業界に足を踏み入れた時にフロンティアミーティングには必ず顔を出されていたシニアな方々の顔をこの会で見かける機会は、最近、とんと減りました。もしかすると、僕自身ばりばりの若手のはずなのに、今度の会に出席したら、特別講演の輝さんの次の、次の、その次ぐらいに年寄りになっているかもしれません。いい加減「卒業」したら、とかいう話もありますが、卒業も何も、こちらが学んでいることが多いのだから、今年も、やはり参加したいなあ、むしろ「入学」したいなあとそう思う訳です。今年はどんな怪物が現れるのか。とても楽しみです。

ん、そんな面白そうなミーティングがあるのか。どれどれ、参加してみようか、と思われている方がおられましたら、締め切りはとっくに過ぎていますが、たぶん、押し掛けて見に来る、というのは全然ありなのではないかと思います。遺伝研におられる方々とか近いですからぜひ、とか主催者でもないのにいい加減なことを言っていると怒られそうなのでこの辺で失礼いたします。。。

中川

August 23, 2013

学会なんていらない???

学会なんていらない??
などという、これっていわゆるひとつのステマ?とも取られかねない刺激的な言葉を発しているのは今度の分子生物学会年会の会長ですが、それはそれで置いておいて、当新学術のメンバーの半分以上の人が出ている学会と言えばー?ずんだずんだー!などとあまちゃんネタを発している場合ではありません。はい。先日、RNA学会が坊ちゃん松山で開催されました。詳しくはさきの千木君のエントリーをお願いします。では、、、

もっとちゃんと長々と書いてくれー!!

ーー
初めて参加したRNA学会は、汗だらだらの淡路島、夢舞台だったでしょうか。塩見研の皆さんがTシャツでスタッフ。全く違和感は無かったのですが、後からよくよく考えてみると、それなりに型破りだったような。その型破り感を型破りでないと思ってしまうところがこの学会の魅力なのかなと思います。そういえばその時にラボ外参加でスタッフのTシャツを着て、懇親会でちょっと長かった路上パフォーマンスを披露してくれたS君。時間通りにプレゼンが出来るようになりましたか?

内輪ネタはいい加減にして、学会の存在意義というのは、意外と難しいところがあるような気がします。小さな学会、大きな学会。赤色巨星が膨張を重ねた上に最後は自らの重力に耐えかねて超新星爆発を起こすように、巨大化した学会の最後は、、、といって、膨張を重ねて爆発して木っ端みじんになった学会など高々百年程度のサイエンスの世界においてはまだ無いとは思いますが、学会の数って多すぎない?という声は良く聞きます。

そのあたりは個人差があるので良く分かりませんが、僕自身のフィールドで言いますと、学生の時の学会と言えば、専門分野で発生生物学会。ちょっと専門外の話も聞ける学会が分子生物学会。もしくは神経のことをやっている人なら発生学会の代わりに神経科学学会、というような雰囲気だったような気がします。良くしたもので、ちょうど夏(初夏を含む)と冬に一つずつ。ラボのボスは半年に一回学会で留守にする、学生は2,3年に一度どちらかの学会に出る、という感じだったでしょうか。そしてRNA学会は、個人的には、すっかり夏の季語として定着した感があります。

健全な学会というのはGive and Take半々の場であるはずです。最初に参加したときは、教わる一方、もしくは若気の至りで自分の発表だけ終わったらとっととズラかる、みたいなところがあるにせよ、参加回数を重ねるにつれ、少しはその業界に貢献出来できるようにならなければいけないはずです。RNA学会に参加した初めのころは、NMDって何?面白い!wobble塩基って何?面白い!んなどと、子供みたいにはしゃいでいましたが(不勉強の馬脚ここにあらわる)、そろそろそれは卒業しないと、思っていたのですが、今回もGiveが由比ヶ浜でTakeが富士山のような学会になってしまったような気がします。特に面白かったのが、RNA学会は初めてなのですけれども、、、という前置きで始まったいくつかのトーク。それに関しては、年末のRNA学会の会報で詳しくお聞きできれば、と思い、現在鋭意交渉中、いや、交渉予定です。いつか僕もGiveがTakeを超えられますように、、、

学会ってなんなのでしょう。お久しぶりですねーと挨拶したら先月顔合わせたばっかやろヴォケー!!とどつかれたりといった子犬のじゃれ合いみたいなものも、求めれば、あるのかもしれませんし、ごくごく題目通りに勉強の場、自己研鑽の場、というのももちろんあるのだと思います。心の底から、また来たい!!、という人が一人でもいればその会は成功、というのは良くお世辞で言われることですが、心の底から集まりたいな、という人が半分以下になってしまうような会であれば、さっさと解散してしまった方が良いような気もします。

松山では、色々な趣向が盛りだくさんでした。会場も最高。特に演者の方々との距離がものすごく近かったのが印象的でした。会場はY軸が短いに限ります。一発目のセッションでのコンピュータトラブル、これは良くあることだとおもうのですが、時間がすごくおしている中で、大会長堀さん自ら質問に立たれて、とことん聞く。とにかく聞く。語る語る。時間厳守という観点からは賛否両論あるのかもしれませんが、個人的には、みなさん、とにかくサイエンスを、ディスカッションを楽しんで下さい、少々時間がおしても、そんなことは気にしないで下さい、という堀さんの強い意志を感じました。幸いなことに(不幸なことに?)終電ないのだし。。。ちなみに、この終電問題と学問については語りたいことが山ほどありまして、またついでに実は松山というのはとても思い出深い土地で、思い起こせば20年前。あのときにあの人に電話した時からXX(強制終了します)。。

ともあれ、今回の学会は、いや、今回の学会も、一次会(学会)、二次会(休憩時間)、三次会(飲み会)、四次会(飲み会)、五次会(朝ご飯)、、、総てにおいて、やはり学会というのはよいものだなあ、と思った次第です。当日参加、しかも学会と全く関係のない方々の当日参加が多かったと聞き及んでいますが、その辺はやはり大会長のお人がらだと思います。堀さん、そして堀研、その関係者の方々、本当にお疲れさまでした!!

中川


July 29, 2013

第15回RNA学会年会

こんにちは。飲み代としてブログの執筆を仰せつかりました、九大・生医研・M1の千木です。今回は「とさか」ではなく「ヒゲ」でした。

このブログを書くのは去年の班会議以来1年ぶりです。修士課程に入りましたので少しでも進歩してればと思います。
今回第15回RNA学会にて初めてポスター発表をさせて頂きました。他の人から見れば小さなことかもしれませんが、自分にとっては大きな一歩を踏み出すことができました。
学会に参加して他の方々に自分の研究を見てもらえる経験ができたことはとても良かったと思います。普段思いつかないようなコメントをいただけるのは仕事を進める上でとても助けになると実感しました(と同時に勉強不足を痛感したのでもっと精進したいです。)
また、様々な発表を聞いてまたひとつ自分の中に知識が増えたことと、面白い現象に触れられたことは貴重な経験になりました。海外で研究をされている方の話などを聞く機会なども非常に良かったと思います。
青葉賞の講演も刺激になりました。これからもっともっと実験をして、いつかああいったカッコイイ舞台に立てたらいいなという憧れを抱きました。
RNA学会では化学系のお話をされている方もいて、全然わからないことが多かったですが、ここで触れたことが何か少しでも将来役に立ったらと思います。

懇親会では様々な先生方とお酒を交えつつ美味しい料理を食べながらという、ポスター発表での話とは違って時間もあってリラックスした状態で話ができてよかったです。こういった所でした話が自分の研究を進捗させてくれるのだと思います。
あまり他の研究室の学生さんと話せる機会がなかったので、次回以降ぜひこういう場で仲良くなることができればと。

さらには夜にも先生方に飲み会に連れて行ってもらいました。夜の飲み会は学会ならではの楽しみだと個人的に思っています。
いつでもどこでも何時まででもついて行きますし、ブログもいくらでも書くので、これからもぜひ飲み会に連れて行って下さい!!!!(奨学金という名の借金をしつつ、バイトでもらうなけなしの金で生きてる学生としてはすごく助かります。もちろん実験はバリバリやって学会発表に行けるデータは揃えます。)

千木

July 18, 2013

RNAフロンティアミーティング2013のお誘い

非コードRNA領域のみなさま
および当ブログをご覧のRNA研究者のみなさま

東大 分生研の三嶋です。
以前にこのブログでちらっと宣伝させていただきましたが、RNA業界で例年行われているRNAフロンティアミーティング(通称:若手の会)というものがあります。
RNA関係の研究をしている学生さんやポスドクを中心に据えた、若くてイキのいい研究集会です。
今年は僕と東大工学研究科の長尾さんが世話人となり、9月3日~5日まで静岡県・ラフォーレ修善寺で開催いたします。

- 口頭発表で自分の研究を宣伝したい!
- 学会発表にはまだ早いけど面白い結果が出始めている!
- 同じ分野の同年代の人と熱く語り合いたい!

というような若い力の参加を歓迎いたします。
学生の参加者には非コードRNA領域の後援のもと、旅費サポート枠もございます。

詳細は以下のHPをご参照ください。
http://plaza.umin.ac.jp/~RNAf2013/

締め切りが「7月31日」と迫っておりますので、参加をご検討の方はぜひお早めにご応募ください。

これから暑い日が続きますが、夏に負けない熱い会となることを期待しております。

三嶋

July 9, 2013

松山坊ちゃん男女共同参画

 梅雨も明けて本格的な夏がやってきました。夏と言えば、そう、RNA学会です。分子生物学会や生化学会と比べると小さな小さなRNA学会ですが、何せ若い若い学会だけあって、立ち上げメンバーがまだまだ現役ばりばり番付上位を占めておられるだけあって、参加するたびに熱気ムンムン、それは夏の暑さのせいだけではないムンムンを、毎回感じます。今年はどんなビックラ仰天があるでしょうか。

当新学術のメンバーの方々もいろいろ発表されるようです。かくいう私のラボも。ここ数年、産総研の廣瀬さんとノンコーディングRNAが作る核内構造体パラスペックルの解析を進めていますが、その構成成分、特にRNA成分を調べてみたらなぜかイントロンがとれた、という話をします。論文になってもいないのにこんなところでネタバレしてよいのかどうか分かりませんが、大丈夫大丈夫。どうせ日本語ですし、ごく限られた人以外誰も見ていませんし、、、と自虐ネタはともかくとして、自分の頭で考えてもさっぱり分からないから、箱入り娘でガードしておくよりは、いろいろな方からコメントがいただければと思っています。山中さんがiPSを作った時は、そのあまりに衝撃的な結果に、ラボの中でも情報統制をひいたとかいう話がありますが、VIPにSPが数人つくのは当然のこと。同様に小市民にはそんなのちゃんちゃらおかしいのも当然の事、です。良いアイデアを思いつくことが出来る人とそうでない人がいると思うのですが、後者の人間に出来る事は、ただひたすら教えを請う事かな、、、と。どなたか、特定の配列(GAリピート)を持つイントロンが核内の特定の構造体にたまる生理的意義についてなにかご存知の方、ぜひぜひ会場でコメントお願いします。"intron & paraspeckles"でGoogle先生に聞いても「"intron & paraspeckles"との一致はありません」とおとといきやがれみたいな応対です。ああ、Googleよ。なぜあなたは知りたくもない「鼻毛の白髪」については0.22秒で 194,000 件ものどうでも良い、でも腹を抱えて笑ってしまう情報をくれるのに、私の本当に知りたい事については何も答えてくれないのか、、、

と、話がすごくそれてしまいましたが、今回は学会のランチョンセミナーの男女共同参画企画の宣伝です。内容についてはRNA学会会報で宮川さんのほうから紹介記事(36ページから)があります。

演者の方は、東大の大杉美穂さんです。大杉さんは個人的にはものすごくニアミスな存在で、学部時代、東京の友人宅に押し掛け宴会をしたついでに酒臭い息を隠し隠し、東大の生化の授業にモグリで出た事があるのですが、教室の片隅で弥勒菩薩のような(微妙に失礼?)微笑みを浮かべている大杉さんに思わずドキッとしてしまったことを良く覚えています。いえ、はい。独身時代ですから。特に会話をするはずもなく時はすぎて昨年の発生・細胞生物学会合同大会。若手セッションの座長をさせていただくことになり、えーと、もう一人の座長は誰かいな、と目を走らせてみると、なんとそこには大杉さんの名前。いえ、はい。もう所帯持ちですから。特に心躍らせる事もなく(微妙に失礼?)、しかしながら、同期の人間が同業者にいるというのを知るのは理由もなく嬉しくなってしまうものです。今どんな仕事をされているのだろうとそれなりに再会というか初対面を楽しみにしていた学会直前の週末。長男がマイコプラズマ肺炎で入院、その兄弟姉妹も発熱で撃沈、とパンデミックに直撃された中世ヨーロッパみたいな状況になってしまいまして、あえなく座長キャンセル。大学院時代の頼もしい後輩Uにピンチヒッターをお願いし、結局大杉さんとお話をする機会はまたこんど、になってしまいました(昨年末の分子生物学会でようやくあの時は申し訳ありませんでしたと会場前で会話する事が出来ましたが。。。)。

下らんエピソードをついつい書いてしまいましたが、今回の男女共同参画は当新学術の班員でもある宮川さんがオーガナイザー。宮川さんと言えば「さきがけ」の面接で、、、と下らんエピソードをぐっとこらえて本題です。今回の男女共同参画は、宮川さんと大杉さんの、震災後のちょっとしたやり取りがきっかけとなって、こういう話をしてみよう、ということになったそうです。詳細は当日のお楽しみ、もしくはRNA学会会報をご覧頂くとして、現状は良くも悪くも、というか悪いことに「男社会」。そこに「女性」を「共同参画」させる際に、さんざ聞かされているのは、分け隔てなく。同じように。という発想です。しかしながら、男と女が肉体的に違うのは当たり前ですし、考え方だって異なっていても不思議ではない。震災後に、宮川さんと大杉さんは自分の研究費が少々削られても良いからなんとかしたい、という話をしている時に、周りのオトコドモはもらえるものはもらっとけ、という発想がドミナント、というのは、さもありなんという話です。僕自身、オトコドモの発想をしてしまうかもしれない。。。自分と違う発想をする人がいるからこそ、新しい事へのとっかかりが出来る。だからこそいろいろな人の話を聞くのが、大切。サイエンスの世界では当たり前のことですが、男女共同参画も、全く同じ事かもしれません。同じだからではなく、違うから尊い、という観点で、男女共同参画を捉えるのは、とても大切な事だと思います。

松山の学会ではほかにもいろいろな企画が盛りだくさん。松山と言えば、、、

(よけいなエピソードがだらだら続いてしまったので、select&deleteで今回はこの辺で強制終了します…)

中川

June 25, 2013

英語のレビュー(3)

というわけでなかなかモティベーションが上がらなかったエピジェネと核内ncRNAに関するレビュー。ますますモティベーションが下がる出来事、というほど大げさなものではありませんが、この分野、それなりに最近注目を浴びているのは間違いなく、いわゆる名の売れた方のレビューが、いわゆる名の売れた雑誌に、毎月のように掲載されています。年末、、、まだ締め切りまで半年ぐらいあるや、と思っていた頃に出てきた、なにかと話題に上る頭の回転は光速流のLeeさんのレビューは結構こたえました。もう書く事無いじゃん、みたいな感じでしょうか。他にも、この分野の若き双璧Rinn&Changさん、レビューばっかり書いているんじゃなくて立派にオリジナルの仕事もしています!!のMattickさん、エンターテイメントならお任せのMorrisさん、なんだか微妙に失言ばかり重ねているようですが、皆さん強烈な個性で実に勢いのあるレビューを次々と書かれています。まさに楽しくてしょうがない毎日を歌い上げたドリカム調のレビュー。うれしいたのしい大好き!!!ここまで幸せそうに歌い上げられたら、なにもすることありませんがな、と、逆に意気消沈してしまいます。

とはいえ、ボーっとしていれば締め切りは残酷にも一日過ぎれば一日だけ確実に迫ってきます。ごめんなさい、ドタキャン許してね、と、メールを送ろうかとも思ったのですが、このあたり、依頼元であるElissaさんのファンとしては、冷たい笑顔で仕方ないわね、あっそ、とか言われるのがいやで、というかそんなことは恥ずかしくてとても出来ないので、とりあえず山のように積み上げた初期のトランスクリプトーム関連の論文をえっちらここっちらこと読む日々が続いていたのですが、

あ、そうか、このブログで話題になっていた事を書いたら良いのか!

と思ったら俄然やる気が出てきました。転んでもただでは起きない、いや、転んでいません。この新学術の公式ホームページncRNA+Blogは班員の皆様の活動と社会との貴重な接点となっているはずです!!(むなしくなってきましたが)。

ともあれ、ここで貴重な議論がいくつかありました。泊さんが書かれたこれとかそのあとのこれとか。生化学的なアッセイが長鎖ncRNAの研究に欠けていますね、という話です。また、遺伝学的なエビデンスと培養細胞から得られた結果の差についても、Malat1がらみの話でいくつか紹介してきました。このネタなら、ncRNAの業界を引っ張っている連中、おっと言葉がわるい、業界のパイオニア達が書いているレビューにも載っていないし、Neilさんがたしかに一寸書いていたけれども、ncRNA一般であればもうすこし自分らしい色も出せるかな、と。

人によっていろいろだとは思うのですが、僕は非常にslow writerで、一つの論文のゲラを仕上げるのに数ヶ月かかってしまう事がざらなのですが、正直なところ、そのほとんどの時間、何も書いていない日々を過ごしていることが多いです。ちょっとした調べ物をしようとSafariを立ち上げたつもりが、なぜかいつのまにか名人戦棋譜速報や虚構新聞に現実逃避していたり、、、けしからん。実にけしからん。ただ、今回の件に関して言えば、ncRNA+Blog路線で行こう!と決めてからは、まあこの怠け者がここまで集中するかいなと自分でもあきれるぐらい、学部2回生の時に始めてMolecular Biology of the Cellの第2版に出会って世の中にこんな面白い世界があるのかと夢中になってページを繰っていた時に戻ったぐらい、サルのように文献を読みあさってしまいました。ただ、こうやってハイになって論文を読むと、おうおうにして深夜に読む事になるので、次の日になると、なんであんなに夢中になっていたのだろうと凄まじいドップラー効果の揺り戻しがきて、あれ、これってこんなに面白かったっけ?なんて事にもなりがちです。

いずれにせよ、核内ノンコーディングRNAとエピジェネティックスのレビューは、いつの間にか長鎖ncRNA研究の苦悩みたいな話になってしまいましたが、一緒にこのブログで議論して下さった影山さん、泊さん、泊さんのところのJ君の力を借りながら、なんとか投稿までこぎ着けることができました(←今ここ)。

中川

June 17, 2013

英語のレビュー(2)

「レビュー」という言葉は多分それほど人口に膾炙した言葉ではないと思います。実際、始めてレビューという英単語を知ったのは「宝塚のレビュー」のほうが先だったかもしれません。ものの見事に格差社会を体現した大きな羽のお姉さんと小さな羽のお姉さん、羽すら無いないお姉さんがあり得ない笑顔で写真に納まっている阪急電車の吊り広告、、、レビューとはパレードみたいなものかと勘違いしていた人も多いのではないでしょうか(いないか)。

さて、サイエンスの世界のレビュー。これはいうまでもなく総説・批評なわけですが、誰がそれを書くべきなのか、良くわからなくなる事があります。かつて、僕がポスドクだった頃、自分の仕事について総説を書いてくれという依頼がボス経由できた時は、「自分の仕事を宣伝するなんて厚かましい事は誇り高き日本人として、私のメンタリティーに合いません」とかなんとか、訳の分からない言い訳をして断った事がありましたが、若かったですね。ボスは出来た方でしたから、特に咎めることもなく小首をかしげ、あらそうかしら、でもあなたがそういうなら仕方ないわね、とモナリザの微笑を返してくださりましたが、今から考えるとなんと生意気なことを言ったのかと、思い出すに忸怩たるものがあります。日本語のレビューでもちょっと触れましたが、当時はレビューを書いているひまがあったら実験せいっつ!!というかなり先鋭化したソルジャーだったもので、ちょっと歩みを止めてじっくり考えるという事自体、自分がやるべき仕事だと考えた事もありませんでした。そもそも、レビューというのはなんかこう、殿上人が書くものであって、ポスドクレベルの人間が書くものではない、とカチカチに考えていたようなきがします。

しかしながら、ポスドクはいずれ若手PIになり、中堅どころになってやがて老いていくのは当然の摂理で、じゃあいつになったらレビューを書くのか、という話になってきます。今でしょ!とかいう人もいれば、決してレビューを書かない、という方もおられると思います。時間を取られるのは間違いのないところですし。そもそも、レビューという一種の論文の存在価値が、ここ数年でがらりと変わってきつつあるような気がします。生命科学の分野が急速に拡大しているのは間違いないと思いますが、それにも増して論文の数は増加し、雑誌の数も増加し、それに比例してレビュー論文の数も増してきました。一昔前ならかなり名の知れた人にしか声がかからなかったレビューの依頼も、最近では(雑誌にもよりますが)インフレがだいぶ進んできて、いわゆる鼻毛ファクターの低い雑誌であれば、それほど高いハードルなくデビュー可能です。その格の違いたるや、ちょうど松田聖子とAKB48の研究生ぐらいの差ぐらいでしょうか。下手をすると誰も読んでくれないかもしれない。売れないアイドルでも友達と親戚ぐらいはレコードを買ってくれるかもしれませんが、英語のレビュー…これは読者層として家族も親戚も期待できません。下手をすると日本語のレビューよりも読まれず、一回もダウンロードもされないかもしれないレビューを、はたして書くだけの気力が湧くのだろうか、、、

今回のレビューの一件は、前回もすこし触れましたが、おととしの分子生物学会で来日されていたElissa LeiさんがBBA Gene Regulatory Mechanismという雑誌でエピジェネティックスの特集号の編集をしているからみで舞い込んできました。彼女の仕事の大ファンの僕は、締め切りまで一年近くあったこともあり、声をかけてもらった時はそれだけで嬉しくて一も二もなく引き受けてしまったのですが、よくよく考えてみると(というか考えるまでもなく)僕自身エピジェネティックの専門家ではありませんし、締め切りまで3ヶ月を切ってきてもなかなかモティベーションが上がらず、一体何を書けば良いのだろうと、"epigenetics and nuclear long noncoding RNA"という彼女から与えられたお題を前に、ただただぼーっとしながら、欄を埋めれば一応仕事になる年度末の書類書きとベンチでの実験に現実逃避する日々が続いていました。(続く)

中川

June 5, 2013

一手ばったり僕らの仕事

 名人戦が羽生さん相手に無類の強さを発揮する森内名人のタイトル防衛で終了した事を記念して、棋聖戦が始まった事も記念して、だいぶマニアックな出だしになってしまいましたが、将棋の指し手と僕らのncRNA研究の仕事の進展の類似性について、つねづね思っていた事をリアルタイムで報告していきたいと思います。

リアルタイム??それはさすがに企業秘密もあるので無理として、、、

とかく将棋の指し手の選択と研究プロジェクトの方向性を決める決断は似ています。というか、将棋用語を使うと何かと便利です。もうこれ詰んでいるとか。必死がかかったとか。局面が広いなあとか。わが愛しのGomafuは詰んでいます。なんていってしまうと世の中終わってしまいますから(おわらないおわらない)、詰めろぐらいにしておきましょうか。まだ詰めろ逃れの詰めろはかけられるかな、とか。鬼手を放てばなんとかなるかな、とか。

もう少し具体的に話をしてみますと、プロジェクトを始めるとき。これは、今日はこの戦型で行ってみようかな、とプロ棋士が考えるようなものかもしれません。定跡をなぞるか、いきなり力戦型で行くか。定跡をなぞるということは、はやりの分野の分子メカニズムでまだ課題となっている局面、おっと、サイエンスの言葉でいわなければいけませんね、つまり超有名分子のターゲット遺伝子や相互作用分子の同定、ということになるでしょうか。力戦系というのは、全くゼロから始めるということですから、十年前でしたらPiwiファミリーの解析をはじめようかとか、RISCの生化学をやってみようかとか、長鎖ノンコーディングRNAを調べてみようか、とかいう感じになるでしょうか。定跡の研究はものすごいスピードで進んで一昔前の力戦系はいまや定跡になりつつあるのかもしれませんが。。。

プロジェクトの大枠を決めて次に来るのは中盤の難所です。ある程度やる事をやって戦(プロジェクト)の準備が整って、いざ合戦開始。これはちょうど科研費に応募するぐらいまで局面が進んだ、おっと、サイエンスの言葉でいえば実験系のproof of principleが出来たぐらいでしょうか。ここは大事なところで、たぶん「上手に」仕事が進む人は、正しい実験系を選んでいるのだと思います。もしくは、正しい「答える事が可能な」問いを立てているといいますか。例えば、遺伝学的なアプローチをしてもらちがあかないけれども生化学的なアプローチをしたらとたんに道が開けた。こういうことはあると思います。ショウジョウバエのAgo2の解析はまさにそうだったのではないでしょうか。何を隠そう、僕自身、大学院生の博士課程の頃、Ago2の変異体の解析をいちはやく始めたUグループと同じラボで一緒にプログレレスセミナーなどさせてもらっていたのですが、Wntシグナル関連のサプレッサーとして取れてきたAgo2の変異体とRNAi(これも当時は見つかっていなかったのですが)を絡めて考える想像力は、これっぽっちもありませんでした。当時、エラそうな顔をして(院生頭だったもので、、、)恥ずかしげもなく的外れなコメントをして、そのくせ良いコメントをだなあと自画自賛して(アホ丸出し)、おりゃ飲み会にいくぞうとかけ声だけは勇ましく、二日酔いの朝にありがちなすごく良いディスカッションをしたなあという空虚な勘違いとしゃべりすぎたなあという現実的な反省をちょっぴりだけして万事終了と来る、そういう態度では、中盤の難所というのは決して乗り切れない。それだけは最近良くわかってきました。正しいアプローチをすれば次々と結果が出て、その次の実験計画も立てられる。そうでない時は、じっくりと考えて、別の手を探す。つまり別のアプローチを考える。この辺りが実験生物学としては一番面白いところなのかもしれません。

さて、最後にくるのが終盤です。ストーリを組み立てて突き進んでみたらこれが以外とうまく行く。作業仮説を確かめるための実験も次々と思いついて、実際これが予想通り。最後は決め手の実験を、、、

終盤というのは論文投稿と受理までということを考えると非常に長いのですが、意外とあっさり詰んで研究が終わってしまう事も良くあります。ストーリーを組み立ててきて自分でも怖いぐらいに思い通りのデータが次々と出てきて、最後の決めの実験をやってみたらアウト、みたいな。これは結構こたえますね。だいたいの感触ですが、実際に実験を進めてみて、終盤で一手ばったり、はい終了、というのが7割から8割ぐらい、のような気がします。抗体の交差反応でストーリーを組み立てていたなんていうのは論外として、サンプルを取り違えていたとかいうのは愛嬌として、よくよくキチンとコントロールをとっていれば防げたはずのミスでイタい目に合った事は数知れません。直近(といってもだいぶ前ですが)の例でいいますと、Gomafuノックアウトマウスで活動量が若干増加するけれどもそのメカニズムがなかなか分からなかったころ、誘導型プロモーターのTet-OnシステムでGomafuを発現する細胞を作って、誘導剤DOXのありなしの条件でとったRNAを使ってマイクロアレイ解析をして、Erg1という「超有名な」初期応答遺伝子が顕著に上がってきたことがありました(つまり、Gomafuがあると、特定の初期応答遺伝子の発現が上がってくるという結果)。in situでもノザンでもその細胞を使う限り同じ結果がでることが確かめられた時には、ネガティブデータばかりで頭を抱え込んで机に突っ伏しているのが似合い始めていた学生さんと手に手を取って(ちょっと大げさ)喜び合い、飲みに繰り出し自宅に帰り、それでも興奮覚めやらず三日酔になるぐらいに飲み上げたのを良く覚えています。しかるに。この夢は、その働き者の学生さんがTet-ON発現ベクターを導入していないいわゆる親株の細胞でも同じ効果が出るというのを次の週には見つけてしまったので(DOXを入れただけで結構遺伝子発現は変化する)、ああ無情。あっという間に一攫千金の夢は霧散してしまいました。他にも書き出したらきりがないのですが、僕の妄想をあざ笑うかのように次々と冷徹な結果を突きつけてくる「生命体」。Gomafuの機能解析に関してはありとあらゆる手を繰り出してきましたが、良いところまでは来るのですが、最後まで辿り着けていません。

ともあれ、終盤は、この一手ばったりが多いので、ある意味中盤よりも魔物です。この表現型さえ消えなければ、ここでこのin situのシグナルさえ消えてくれれば、このバンドさえ出てくれれば、、、いっそのことバンドサインペンで書いちゃえ、なんて悪魔の声が聞こえてきても学生さん達は決して耳を貸さないように!!!一手ばったり、はい終了、あなた詰んでいます、というのは結局は序盤中盤で選んでいる手が悪いのです。

どんどんまとまりが無くなってきてしまいましたが、人類の至宝、羽生さんがいろいろなところで書かれている「なるべく激しい切り合いは避ける、手の広い局面に誘導する」というのは研究にもすごくつながるような気がします。一直線にストーリーありきで仕事を進めて、あとこのデータさえ出れば、このバンドさえ出れば、と思っていると、偉大なる自然はまだまだおまえも未熟よのおと軽くネガティブなデーターで返事してくる事が多いので、というかほとんどそれなので、何があっても驚かない、ありとあらゆる可能性を残してただただ無心に実験をする、というのが正しい態度なのでしょう。司馬遼太郎さんでしたらこのあたりで「キコリ」と「サトリ」の逸話が2ページぐらい出てくるところです。はい。実験屋としては、ああありたいところです。

さて、この新学術も残り半年あまりとなってしまいました。Gomafuは詰んだのか、詰んでいないのか。リアルタイムで中継できないのが残念ですが、きっとこの研究班の皆さんも、必死の思いで相手の(研究対象の)最後の詰めを探しておられるところだと思います。読み筋通りにうまく行くにせよ、うまく行かないにせよ、良い棋譜を残したいものだと思います。研究の世界では詰まされた(お箱入りになったプロジェクトの)棋譜が(苦労話が)残らないのがちょっと残念、ですね。

中川

May 18, 2013

英語のレビュー(1)

確率変動的な連投が続いていましたが、やはりそれは確率変動であったようで、元の穏やかな日常の日々が戻ってきたようです。当ブログは新学術の広報媒体であることを考えるとサイレントであることはかならずしも、いや全然良い事ではないのですが、、、新学術の班員の皆様、仕事が世に出た時は表も裏も真ん中も、ゆるめにこちらでぶちまけてしまってください!

気を取り直して。以前、日本語のレビューというのは、英語至上的な考えをしていると書く方も読む方もちょっぴり後ろめたい(?)ような気持ちがつきまといがちだということを当ブログに書きましたが、英語のレビューはどうなのでしょう。僕が学生の頃に印象に残ったレビューといえばScience誌に掲載されたTessier-lavigne & GoodmanのMolecular Biology of Axon Guidanceで、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであった彼らが自分自身の仕事を含め軸索ガイダンスの研究分野の来し方行く道を見事にまとめた伝説的な論文があります。ふとGoogle先生に聞いてみたら2485回も引用されていました。そのレビューを読んだ時の率直な感想は、その生き生きとした、また自身に満ちあふれた文章にうっとりさせられたと同時に、内容としては自分も多少は関わっている分野だったので、自分の考えている事はもうとっくに常識になってしまっているのかということを思い知らされるかもしれないと、次の行を読むのが怖くてたまらなかったのを良く覚えています。とかく、「英語のレビュー」には、憧れの気持ちがものすごく強かったように思います。

時は移ってWikipediaさんが学生さんのレポートのコピペ元になる時代。英語のレビューの価値は昔と比べてどうなったのでしょう。古今東西を問わず万人受けする文言は、「昔は良かった、今は問題がいっぱいだ」、ですが、まがりなりにもサイエンスに関わる身。とりあえず生データを見なくては。数字だけ見てみますと、1996年にPubmedにインデックスされた論文は453,457報。うちレビューは59,337報、ということで約13%がレビュー論文、ということになります。これって多い、というのが第一感でしょうか。それとも少ない、でしょうか。

時代は移って2012年で見てみますと、総論文数が1,052,493報。うちレビューが123,074報。約12%ということで、割合から見るとほとんど変わっていないのですね。実はこれは結構僕にとっては驚きでした。正直、昨今はクソみたいな奴が(本人は一生懸命でも)クソみたいなレビューを書いてばっかり、というような印象が多いにありました(自分の事です。。)。怪しげな健康食品販売会社よろしく詐欺みたいに投稿料だけかっぱらって夜逃げするような学術雑誌がでるご時世でもあります。クソみたいな論文が増えたからクソみたいなレビューも増えた、なんて自虐的になるとどこぞやの新聞社になってしまいますので、ここは一つ、その割合は実は昔も今もそれほど変わらず、昔のレビューが心に残っているのは、学生の時に何処で専門基礎知識を得るかと言えば教科書を卒業したら次はレビューだった、という事実が重かった、というふうに解釈しましょう。最近ではこの役割はWikipediaに取って代わられているかもしれませんが。

ともあれ、今も昔も、10本ぐらい論文が出たら、1本ぐらい、そのまとめが欲しい、という需要があるようです。これですと、精神的なハードルも少し低くなる、ということで、去年の分生に日本に来られたElissa LeiさんがBBA Gene Regulatory Mechanismsという雑誌のエピジェネティックス特集号を組むから長鎖ノンコーディングRNAに関して何か書いてね、というお誘いが来た時も、ものすごく気軽に引き受けてしまいました。これがまた、苦悩の始まりとなるとは、、、

(現在進行形なので不定期に更新します)

中川


April 30, 2013

実験医学増刊号

実験医学増刊号で、RNAの特集号が出ました。


生命分子を統合するRNAーその秘められた役割と制御機構

分子進化・サイレンシング・non-coding RNA からRNA 修飾・編集・RNA―タンパク質間相互作用まで

  • 塩見春彦,稲田利文,泊 幸秀,廣瀬哲郎/編





またかよ、とかいう感想を持たれた方も多かったりするかもしれません。何を隠そう、、つい先日、2010年にもRNA特集号が出ているではありませんか。



拡大・進展を続けるRNA研究の最先端

長鎖noncoding RNA・small RNAからRNA修飾・編集・品質管理まで

  • 塩見春彦,塩見美喜子,稲田利文,廣瀬哲郎/編

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うーん。ベネトンばりに原色バリバリ、フォントは迷わずゴシック、色使いからレイアウトまで常に全力投球のタイトルや表題を見ると、善悪はともかくとして目をつぶっていても実験医学さんの目次だな、とすぐに分かる訳ですが、良くこんな立て続けに増刊が出せるものだと、思ったりはしないでしょうか。まるでOSのアップデート。中身は対して変わらないのに変えずに購買意欲を刺激するあたり商売上手だなあ、なんて思っていましたが、実はこれが、なかなかの変身を遂げているようです。

iPhone登場以前より、アップルファンは、初期不良にブーブーいいながらも、新しいコンセプトの商品が出るたびに大枚はたいてきたと思うのですが、やはり、挑戦的な商品というのは、出来の悪い息子を応援するではないですが、損得抜きにして応援したくなるような気になるものです。フロッピーを捨て、シリアルポートを捨て、CD-ROMやEtherコネクタはおろかキーボードまで捨てるに至ったアップルの「パソコン」進化。伝統を守る事は大事な事ですが、新しい事に挑戦するワクワク感の価値というのは、リスクを勘定に入れてもいくらでもお釣りが来るぐらい高いものではないか、と思います。

研究とはそもそもが新しいものを見つけるための活動であるわけですが、保守に走ることは必ずしも悪い事ではありません。あれやこれや浮気心を出さずにきちんと一つのテーマを完結させる事は、とても大切な事です。その一方、リスクを覚悟で新しい種をまいていかなければ、あっという間に豊饒の海も枯れてしまいます。研究者としてその辺りのバランスをどう取っていくのかというのは非常に難しいところだと思うのですが、じゃあ、いつするの、ということで。はい、今です。たぶん。

今回の増刊号。え、これって、、、という意外な内容の話が結構あります。発生屋はEvo-devoという言葉があるくらい進化を語りたがる、語りたがる、いやもういい、と言われても夜がふけるまで、というか夜が明けても語り続ける傾向がありますが、RNA研究者はどちらかというと堅実なin vitroの結果をもとに理知的に冷静に物事を押し進めるという印象がありました。ところがところが、いろいろな人が、語り始めているではありませんか。そもそものっけから塩見の春さんが、リボザイムを語る、語る。えっ?春さんって、リボザイムの研究されてましたっけ?僕も勢いにつられて、論文という形で表に出てきているわけではありませんが、ここ10年弱ずっと気になっている、レトロトランスポゾンについて語ってしまいました。。。やっつけ仕事で書いた訳ではありません(断言)。寝ても覚めても考えている、というのは大げさですが、心を鷲掴みにされているテーマなのです。この増刊号、今までのしっかりとした仕事をふまえた上で、これから何を見据えていくのか、というコンセプト、が詰まっています。これはステマではありません。僕も著者に入っていますから、歴然とした宣伝ですね。はい。ぜひ、立ち読みしてください(こんな事書くと全力投球の実験医学には怒られそう。。。)

最後に、無断ですが、編集者のとある人から頂いたアピールポイントを以下に勝手に転載(一部改変)させていただきます。どうせこのブログ読んでいる人は少ないですから、問題は無いでしょう???

中川

ーー

本書のアピーリングポイントですが、これまでの小誌の多くの特集が
病気との繋がりを重視したものでしたが、本書では機能分子としての
多種多様な蛋白質が存在するなかで、なぜ今もなお、RNAはその機能を
蛋白質に譲渡することなく存在し続けているか、 という点からRNAの
バイオロジーを追究した点だと考えています。“実験医学”で植物の
話題が含まれているのも異例かもしれませんが、サイレンシングやRNA
修飾の理解にも重要ということで。

ややもすれば想像に終始しがちかな進化のトピックですが、RNA進化に
実験生物学で切り込んだ邦文総説集としてはこれまでにない特集号に
なっていると思います。
「進化を語り出したら研究者の人生の終わり」という時代の終焉を読者
には感じ取っていただればと思います。」


April 18, 2013

コンピューター将棋と新人類

若い方々の投稿が増えて何よりです。当新学術の生の姿がちょっと透けて見えるのではないでしょうか。

かつて、僕が高校生の頃、「新人類」という言葉が一世を風靡しました。今では死語となってしまいましたが、当時の世相からみた若者基質を切り取ったときにそういうふうに括ると上の世代から見たときに何となく理解できる、そういう言葉だったのでしょう。なんて失礼な、と、当時新人類だと思っていた僕は(実際はちょっと年齢が足らなかったでしょうが)大いに憤慨したものですが、揶揄されていることは分かっている一方、ちょっと違う新感覚をもっていると認めてもらっているようで、ちょっぴり嬉しかったりして、などと思ったものです。

実際のところは、「新人類」が新人類らしからぬ保守ぶりを発揮したのかどうなのかわかりませんが、80年代から90年代、また、ミレニアムが明けて2、3年は、身の回りの生活において革命的な変化は無かったような気がしています。それが、ここ10年は、薩摩と長州がドンパチしていた元治年間なみに日常生活ががらりと変わったのではないでしょうか。なんと言っても大きいのはコンピューターの急速な浸透で、「コンピューター通信」はオタクの領域から解放され、高校生、いや下手をすると小学生までもが普通に使うツールとなりました。論文にしても、いまやオンラインで見るのが普通。冊子体を購読している人なんて、ほとんどいないのではないでしょうか。ポスドクになったときに研究者になった矜持というわけではないですがDevelopmentの冊子体を定期購読し(たしか年間1、2万円で安かった)、郵便受けに入らなくて雨の日は結構悲惨な形状になっていたのが遠い昔の思い出になってしまいました。

オンライン全盛の今でも、新人類旧人類としては、コンピューターの画面で見るのはなかなか違和感があって、ついつい印刷してしまいます。iPadが出たときはこれだ!!と思い、論文のPDFを知る人ぞ知るアプリケーションPapersで管理してエコエコとか喜んでいたのですが、最初の一週間ぐらいは珍しさも手伝って布団にくるまってiPadで論文を寝る前に読むなんていうちょっと格好いい(行儀悪い)生活をしてみたりもしたのですが、すぐに飽きてしまいました。というかなかなか頭に入らない。ページを繰るとか、アンダーラインを引くとか、そういう作業をしながら物事を理解していくというスタイルが染み付いている「新人類」にはiPadはちょっと高度すぎるおもちゃでした。人類の至宝、羽生三冠も、棋譜を管理するのはコンピューターが便利だけれども、手の意味を深く理解するときは、実際の駒を使いながら駒を並べていったほうがすんなり頭に入るとかいうようなことをどこかで書かれていました。そう。僕らの世代のヒーローの羽生さんがそういうのだから、やっぱり紙でなきゃ、と、「新人類」は思う訳です。

ところがところが、そうでない人も、きっとたくさんいるのだと思います。今の学生さんあたりですとそれこそiPad、iPhoneあたりで情報収集している人も多いのでは。無敵の羽生さんも一つ下の世代の渡辺竜王には苦戦しています。渡辺竜王はコンピューターを使って研究する事になんら違和感を感じていないようですし、囲碁の若きヒーロ井山六冠も、師匠とはネットを通じて対局していたとかいう話です。

いわゆる新人類は「新感覚」をそれほど持っていなかったと思うのですが、今は、本当の意味での「新感覚」が世にあふれているような気がします。次世代シークエンサーはその象徴ですが、こういうサイヤ人並みの超絶技術が出てくると、いやいや生物学の本質というのはやはり感覚的なところで理解するものなのだよ、右脳で理解しようよ、やっぱりアナログが一番、関節痛にはグルコサミン、などとおよそ科学者とは思えない言葉を連発してお茶を濁してしたくなってしまいます。でも、実際のところ、認めなくはないけれども認めなくてはいけないところまで世の中は動いているという側面もあるのかもしれません。

ちょっと以前に取り上げた将棋の電王戦。ここ一ヶ月、土曜日は仕事も家族サービスも全く手がつかないのですが、最初に夢のような圧勝の一局があった後は、いまのところ人類がコンピューターにやりたいようにやられているという状況です。プロ棋士ならばなんとかしてくれる、と思っていましたが、コンピューターの思考は、かなりのレベルにまで達しているのは間違いないようです。一将棋ファンとしてはなんか寂しい気分になってしまうのですが、これはこれで現実として受け止めなくてはいけないのかなあ、と思い始めています。

これまで、計算はともかく、複雑な問題に対しては人間の判断の方がコンピューターの判断よりも優れている、というのが常識だったような気がします。しかしながら、コンピューターの方が正しい判断をしてくれる状況というのも、間違いなく存在するのだと思います。天気予報などは、往年の熟練の天気予報士よりは、スーパーコンピューターを使った雨雲の動きの予測の方が、より正確な判断をしているのかもしれません。なんだかこういう書きかたをするとやけのやんぱちになっているように思われるかもしれませんが、個人的には、新しい技術があれば新しい側面が見えてくるのは間違いないので、むしろこれからどんな世界が開けてくるか、ワクワクしているところもあります。自分で使いこなす事が出来るかどうかは未知数、というか、多分ムリですが、論文の内容をどれだけ理解しているかとか、実験のデータの意味をどれだけ正確に理解しているかとか、そういう事に関してはかかってこいコンピューター、みたいに思っているのですね。なにせ「新人類」ですから。

中川

April 9, 2013

Keystone Symposiumのレポート


泊研究室の吉川です。いよいよ博士課程三年生になりました。少し時間が経ちましたが、319日から25日にかけて開催されたKeystone Symposiumのレポートを書かせて頂きます。

自分の研究分野とも重なり、特にポスター発表でのpiRNAに験する研究報告に刺激を受け、非常に意義深い学会となりました。piRNA2006年に登場して以来、急速に注目を浴びている研究分野です。現在までキイロショウジョウバエ、マウス、カイコを中心に研究が進められ、数々の関連因子の存在が示唆されてきました。今回のポスター発表ではゼブラフィッシュ、C. エレガンスなど系も加わり、新たな報告がありました。簡単にですが以下に紹介させて頂きます。

  ゼブラフィッシュのTUDORタンパク質の一つであるTdrd6piRNA経路や生殖細胞の維持に関わり、さらには生殖細胞の分化に関連する因子のmRNAと相互作用があるという新たな報告(Rene F. Ketting et al.
  C.エレガンスを用いたmutagenesis screeningによる関連因子の解析(de Albuquerque,B.F.M., et al.
  DNA結合ドメインとエキソヌクレアーゼドメインを持つMaelstormが、piRNAprecursorと相互作用があり(RNAシークエンスに依る解析)、精子形成に関連している事を示唆するノックアウトマウスを用いた研究(Alex Bortvin et al.
  初期のpiRNA成合成に関与すると言われている、putative ATPaseであるArmitageの活性部位をつぶした変異体を用いたキイロショウジョウバエによる解析(Daniel Tianfang Ge et al.
  KrimperAGO3と相互作用し、その修飾や局在を調節しているというTokyo RNA Club等での報告に加え、キイロショウジョウバエの濾胞細胞に由来するOSC培養細胞に、本来発現しないAGO3タンパク質を発現させる事によるKrimperの機能の更なる解析(Yuka W. Iwasaki et al.
  キイロショウジョウバエにおける新たなpiRNA関連因子、DmGTSF1の報告 (Kuniaki Saito et al.)
  BmPAPIと呼ばれるカイコのTUDORタンパク質がpiRNAのプロセシング経路(主にpiRNAの長さ調節)に関係しているという新たな報告(Shozo Honda et al.
  piRNA増幅経路の定量的解析方法の改善(Zhao Zhang et al.

・・・など関連因子も機能もまだまだ混沌とした分野ですが、立ちこめていた霧の奥に何かが見えてきそうになる予感を胸に、自分もその一連の大きなうねりに加わりたいと思う次第です。

さて、最後に余談ですが、私は海外での学会に参加するのは始めてで、Keystone SymposiumがカナダのWhistlerで行われると聞いた時は、「どうしてわざわざ、あんな雪山のリゾート地で行うんだろう」という解せない想いでした。けれどいざ行ってみてその良さが分かりました。セッションは8時-12時、17時-22時の二回に分けて行われ、それ以外はお昼寝なり観光なりして良いので、十分な気分転換が出来ます。さらに、ホテルと会場、レストランや観光名所が隣接していて非常に便利です。そして何より、雄大な自然に囲まれた雪山のリゾートで敢えてサイエンスをするというギャップには、何とも言えないオシャレな魅力があります。

慌ただしい東京の日常に引き戻された今日この頃、早くあの雪山の頂きにのぼった時のような開放感を研究でも味わいたいと願うばかりです。。。

吉川真由