July 27, 2011

カイコドラマチック(7)

こんばんは、河岡です。
あと2,3回で打ち止めでしょうか。

**************************************

ブレイクスルーはひょんなところから。
細胞を壊した液をきれいにしないで実験に使う、というのがキモでした。
その後、この活性は、1,000gの遠心でも溶けない画分にしずむこと、そして、可溶化するのがものすごく難しいことが分かったわけです。

さて、問題は、

この反応によってうまれた27塩基のRNAが、ほんとうに成熟型piRNAにあたるものなのか?

ということです。

生体に存在するpiRNAは、3'末端にメチル化修飾が入る、ということが知られています。
in vitroでつくったpiRNA'らしきもの'の3'末端を調べてみると、メチル化修飾が確かに入っている、ということが分かりました。

この実験の結果、当時泊研にいたかわまたさんと一緒に結果をみたのをよく覚えています。
結構夜遅かったのですが、携帯で写真を撮って、速攻で泊さんにメールをしたのが懐かしいです。
このときのゲルは割れませんでした。

と、いうわけで、この時点で、in vitroでpiRNAをつくることができた、ということを確信しました。

こうなるとやること、やれることはたくさん出てくるわけで、いろいろなことが比較的つぎつぎと明らかになっていきました。

要約すると、以下のようになります。

• おしりをかじる反応は、3'から5'方向へのエキソヌクレアーゼ反応である
• おしりをかじる反応にはマグネシウムが必要である
• おしりをかじる反応が起こらないと、3'末端の修飾がはいらない
• 3'末端の修飾がなくてもpiRNAの長さは勝手に決まる

こう、さくっと書いてしまうと若干あじけないかも分かりません。
しかし、自分で言うのも何ですが、大事なことほど、ひとたび分かってしまえばすとんと、自明なことであるかのように思えてしまうものではないでしょうか。

さて、ここではじめて明らかになったpiRNAがつくられるしくみ。
(5-7)で記したことを、いまいちど最初から述べてみます。

1番目の塩基がUであるRNAがカイコのPIWIであるSiwiに取り込まれます。
しかるのちに、はみ出たRNAの3'側が、エキソヌクレアーゼ反応によって'トリミング'されます。
トリミングが完了すると、それと連動するかたちで3'末端にメチル化が入ります。
これで、PIWIとpiRNAの複合体の完成です。

言い換えれば、1番目がUのRNAはだれだってpiRNAになれる、ということです。
これは、現在までに知られている二本鎖型中間体を経てつくられる低分子RNAとはまったく異なる、まったくもって無骨なものでした。

2009年、昆虫遺伝研究室で行った研究によって、カイコという非モデル生物の培養細胞が、piRNAという新しいRNAの研究に有用であることが分かりました。
その後、さまざまな縁、幸運に恵まれて、泊さんの指導のもとにこの手でBmN4細胞を調理し、piRNAという低分子RNAがどうやってできるのか、ということを明確に明らかにすることができました。
まだ研究をはじめてそんなに時間は経っていませんが、なんとまあ良い体験をしたな、と思うばかりです。
BmN4は本当に有用なヤツで、もしかしたら、piRNA研究のために生まれてきたのかもしれません(ウイルスの宿主として使っている勝間ボスに怒られそうですが(笑))。
BmN4細胞を使ったその他種々のお話については、またいずれ。

さてさて、もういいよ、という声もあるかもしれませんが、いけているのはBmN4細胞だけではありません。
そう、カイコ生体だって、使いようによっては面白い知見を与えてくれるのです。

次回は、カイコ生体を材料として展開した研究について、またまたいろいろな縁に関することを交えながら、簡単にお話しようと思います。

(つづく)

2 comments:

  1. in vitro編、完結ですね。ご苦労様です。

    1000gで沈むとなれば核なみの大きさ??生化学というよりは細胞生物学のスケールで起きている反応のような気がします。個人的には反応が進んでいるところを顕微鏡で覗いてみたいものです。

    中川

    ReplyDelete
  2. これが序章となるように頑張ります!

    そうですね、メソドロジー的には、核はつぶれていないはずなので、そんなイメージです。
    しかも、そういう条件でないと反応がいかない、というところがとても不思議です。

    河岡

    ReplyDelete