科研費の申請でブログのチェックを怠っていたら、いつの間にかエントリーがいっぱい増えてました。楽しみが増えてちょっとうれしいかも。
各種研究集会の感想でよく話題になる「質問」ですが、少し気になったので思うことを書いておこうかと思います。
研究者を目指す学生あるいはポスドクの皆さんには、ほかの人の発表を聞くときは、「どんな質問ができるか」を常に意識することをお勧めします。短時間で全てのデータを総合して的確な質問を組み立てるのは思ったより難しいことなのですが、一つ一つの発表について、常に質問することを意識していればそのうちできるようになるはずです。実際に質問をするかどうかはその場の雰囲気で決めてもよいのですが、それでもいつでも質問に立てるように心がけておく必要はあります。特に自分の研究に直接関係のない発表のときはなおさらです。
たかが質問ですが、きちんと「よい質問」ができるようになると、大きなメリットが二つあります。
一つ目は、自分の研究が岐路に立ったときに、するべきことが見えてくるようになることです。客観的事項が本人にだけ見えていない、なんてことは自分を振り返っても案外あるもんですが、そういう事態を防ぐことができるはずです。他人を建設的に批判できない人が自分の研究を検証できるはずがありません。なにしろ人間というのは自分には甘いようにできてますから。学会というのは他人を批判する絶好の機会です。ぜひ活用したいものです。
もう一つは、学会は自分のプレゼンスを示す場所でもあるので、そのためのスキルが身につきます。これはサイエンスには直接関係のないことなので、自分の研究ができるようになってからでよいのですが、実際に学会での質問で他人の能力を測ることがあるのは事実ですし(そう感じるから物怖じしてしまうのかもしれませんが、学生の間は顔を覚えてもらえることの方が少ないので気にしなくても大丈夫です)、よい質問ができるよう心がけるのは大事なことだと思います。ただし、質問したことがない人がいきなりよい質問ができるようには「絶対に」なりませんので、学会や各種セミナー等で学生のうちに研鑽を積むことが必要だと思います。ラボのセミナーでほとんど質問をしない人は、それだけで自分の可能性を縮めていることを知った方がよいと思います。
以下は蛇足かもしれません。
上記に加え、(こちらはちょっと確信が持てませんが)「ひらめき」を鍛えるという点も大きいかもしれません。ブラックボックスを多く抱えている生き物を相手にしている以上、研究の先を見通すことなど不可能に近いので、生物学の研究というのは、数多の可能性を一つ一つ検証していく地味な作業の積み重ねです。しかしながら、その場で思いついたアイデアがその後の研究を左右することがあります。そういうのは理屈の通用しない、多くの経験と知識からくるひらめきとしかいいようのないものですが、そういったものは、あるいは他人の研究をなぞることによって練習が可能かもしれません。また、他人の研究を突き詰めて考えることで、自分の研究の問題点(あるいは新たな可能性)に思い当たることも実際にあります。論文を読むことによってもこういったことは可能でしょうが、研究発表で研究者の生の声を聞きながら考えることからも、やはり多くのことが得られるような気がします。
いずれにせよ、「的確な質問」(もちろん質問なら何でもいいわけではありません)ができるようになることは、メリットの大きいスキルであると言えるので、若手の研究者の方にはぜひとも頑張っていただきたいと思います。
影山裕二
自然科学研究機構
岡崎統合バイオサイエンスセンター
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