June 26, 2011

Science is so social

 初めまして、東京大学大学院新領域創生科学研究科メディカルゲノム専攻 RNA機能研究分野 博士課程1年の吉川真由と申します。めくるめくRNA week を終えても、いまだ余韻冷めやらぬ状態です。私は、613日に開催されたTokyo RNA Clubおよび614日から18日にかけての国際RNA学会に参加しました。これまでの人生で最も多くのscientistsと交流した一週間であり、”Science is so social” (James Watson)という言葉を、身をもって体験しました。

 Tokyo RNA Clubは当研究室の泊さんが主催者ということもあり、講演者の方々を空港に迎えに行くことから始まりました。私は、Molecular Cellの編集者であるJohn Pham氏をお迎えし、ホテルまでお送りしました。贅沢にも、成田エクスプレスの中でじっくりと、RNA研究やPham氏のキャリアパス、米国での研究生活の話を伺うことができました。翌朝、Tokyo RNA Club当日は、講演者の方々をホテルまでお迎えに上がりました。「ボスのボスを、ボスと迎えに行く」という貴重な機会に恵まれ、ロビーでのPhillip Zamore氏と泊さんは本当の親子のようで、素敵なツーショットを見ることができました。Zamore氏に ”Do you often argue with Yuki?” と聞かれ、もっとdiscussionしに行かねばなぁ、と反省した次第です。その後のnon coding RNA関連の講演、特にsmall RNA関係の発表については、発表も非常にクリアで興味深いものでした。Non coding RNAというテーマでこのような大規模な会が開かれることから、あらためてnon coding RNA研究の注目の高さを実感しました。

 引き続いて行われた国際RNA学会は、2年前から楽しみにしていたものでした。私自身は、口頭発表はもちろん、ポスター発表も無かったのですが、このような大きな学会に参加させていただくことは初めてでしたし、少しでも目標とする方々のいらっしゃる環境に身を置くことで、自分を鼓舞しようと考えて参加しました。ひょんなエピソードとしては、Welcome dinner開始の15分後に到着したのに、すでにdinnerがほぼなくなっていて、学会のfood distributionを心配しましたが、3日目以降からは改善されたので安心しました。といっても、振り返ってみれば、もともと私は学会中に食事が提供されることを把握していなかったので、食事があっただけで満足しなければと、自分自身を無理矢理納得させましたが。

 MentorMenteeランチでは私たちのテーブルにRoy Parker(RNA翻訳研究の大家)が来てくださり、非常に考え深いメッセージを残してくださいました。ポスドクでアプライする際には、実績は勿論だが、Letterや面接を重視するとの事。数あるアプライのほとんどの書類は読んでもらえない可能性があるので、10分程度の自分のプレゼンをビデオに録画し、添付してメールすると良いと。さらにはしばしば陥る命題にもアドバイスを下さいました。「自分は科学者に向いているのか」「向いていないと思う」「なぜ?」「ん・・・頭が悪いし、不器用だし不注意だしetc…

“Let me ask one thing, do you have strong curiosity?”

なるほど!出来ない理由を挙げるより、自分の好奇心を信じるべきなのですね。

 発表については、特にポスター発表が刺激的でした。一枚のポスターに何人も殺到し、順番も気にせず投げかけられる質問の嵐は、発表者泣かせではなかったでしょうか。私自身も、自分の分野に関係のあるポスターに張り付いて質問をしていました。印象的だったのは、一般的に “competitor” とされる研究室の方々も、情報を提供してくださり、私の研究に対しても丁寧にアドバイスしてくださったことです。ポスター発表での質問の時間は、非常に有意義でした。

 最終日のBanquetは一力茶屋の芸妓さん、舞妓さんの舞に始まり、樽開きの後は「RNA 2011」と入った升酒が振る舞われました。食事後の交流会では、今まで自分が読んできた論文の著者の方々とお話しする事ができました。あらためて、 “Science is so social”RNA研究の門戸を叩いたに過ぎない一大学院生とお話ししてくださった先生方、先輩方に心から感謝いたします。今回の学会のような交流の中で新しいアイディアが生まれ、また研究に勤しむ原動力が沸いてくるのではないでしょうか。そして牽制し合うのではなく、切磋琢磨することで、RNA研究分野全体として人類の生命科学研究を一歩前に進められれば素晴らしいことだと思います。

 次回投稿する際にはRNA meetingの内容に関してレポートできるよう、日々精進していきたいと思います。最後に、今回の学会である方が紹介して下さったSydney Brenner氏の言葉を紹介して、この文章を終えようと思います。

“The whole idea that science is conducted by people working alone in rooms and struggling with forces of nature is absolutely ridiculous. It is a social activity of the highest order.”

東京大学 大学院新領域創生科学研究科メディカルゲノム専攻 RNA機能研究分野

博士課程1 吉川 真由

2 comments:

  1. 研究者同士のコミュニケーションが時代をおしすすめるのは間違いありません。分野によっては、他のラボの人間とは話をするなとか、論文に受理される前のデーターは一切話すな、というところもあるでしょう。ただし、それって、結局その分野を最終的には衰退に向かわせる態度のような気がします。個人的には、RNAの研究分野は皆さん非常にinteractiveで、エネルギーが外に向かっているような気がします。元気な学生さんがどんどん出てくるのもそのせいでしょう。今後の活躍、期待しています。

    中川

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  2. わたしの個人的な意見では、研究に向いているかどうかは頭の善し悪しや手先の器用さではなく、研究を好きかどうかだと思います。論文を読んで、実験して、議論して、論文を書くこと。これらが三度の飯よりも好きな人は研究者にとても向いていると思います。好きこそものの上手なれ、とも言えます。また、科学的好奇心がないとやはり研究を好きになるのは難しいでしょうから、そういう意味では Roy Parker の言葉は正しいと思います。

    影山裕二/岡崎統合バイオ

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