October 26, 2009

打倒ノンコーディングRNA

 最近常々思うのは、ビールの缶一つにしても、見慣れたエッペンドルフチューブ一つにしても、何一つ自分一人で作ろうと思っても作れない、という当たり前といえば当たり前のことです。「君たちはどう生きるか」のコペル君に言わせれば粉ミルクの法則と言うことになるのかもしれませんが、自衛隊の一小隊がタイムスリップしたぐらいで石油精製施設が出来るのは映画の中だけの話だというのは断言できます。カエサルやアリストテレスがタイムスリップしたって、その時代をもう一度繰り返すだけでしょう。一人では何も出来ないことを可能にする社会というのはかくも複雑なものです。

 とはいえ地球の歴史をひもとけば、社会の発展など、コンタミレベルの些細な出来事です。誰が見てきたのか、もしかしたら見てきたような嘘のような話なのかもしれませんが、数十億年の時間が生物の進化に与えられていて、そこで作り上げてきたシステムは、マイクロソフトとアップルの死闘をはるかに超えたドラマを通じて練り上げられたものに違いないでしょう。一体何のためにこれがここに???。ここ数年で事務方がひねり出した複雑怪奇な納品確認システムを理解するだけで一苦労です。ましてや生物が作り出した作用マシナリーを、理解するには当分かかるような気がします。我が愛すべき永遠の恋人、ノンコーディングRNAを納品確認システムと同列にはしたくはないのですが、無くても良い(?)し、誰が何のために作ったのか後世の人から見たら良く分からない(?)点では、一緒でしょう。これもついでですから断言しておきます。

とりあえず個人的には核内に存在している高分子ノンコーディングRNAの機能ぐらいは、いや、そこまでいかなくてもその友達(結合分子)ぐらいは、明らかにしたいものです。ついでに言うと、「ノンコーディングRNA」というネガティブな名前から早く脱却したいです。名は体を現す。「こうではない」ではなくて、「こうである」という、名前を、早く、見つけたいものです。

中川

October 22, 2009

non-coding とは?

non-coding RNA とは non-protein-coding RNA をはしょったもので、文字通りタンパク質の鋳型としての情報を持たない RNA のことを指しています。概念としての non-coding RNA は比較的簡単に受け入れられやすいようで、少なくとも研究者の間では広く浸透しているようですが、実験生物学的に何が non-coding RNA かを見極めるのは実はあまり簡単ではありません。

以前にも同様の趣旨の文章を書いたことがあるのですが、ある RNA 分子がいかなる状況においてもタンパク質に翻訳されないことを示せというのは「悪魔の証明」に近いものがあります。siRNA のように数十塩基対程度の非常に短いものであれば、まず間違いなく翻訳されないだろうと皆さん簡単に認めてくださるようです。ところが、ある程度の長さ以上の、いわゆる高分子 non-coding RNA については、ことはさほど簡単ではなくて、例えば、大腸菌の 23S rRNA は 5 アミノ酸からなるペプチドをコードするんじゃないかという報告があったりします(PNAS 1996, 11, 5641-5646)。ついでいうと、真核生物で一番短い ORF は、私達を含めた3つのグループが見つけた polished rice/mille-pattes 遺伝子ファミリーのもので、ショウジョウバエでは11アミノ酸のペプチドをコードしています。単に長い ORF が見あたらないから non-coding RNA というわけにはいかないんですね。

このような事情が、当領域でも使われている「小分子 RNA」「高分子非コード RNA」という言葉にも表れているように思います。高分子の方だけ非コードがついているのは、「短いものはまぁ non-coding RNA でいいけど、長いのは研究を始める前に non-coding かどうか確かめてね」と言われているようでもあります。高分子 non-coding RNA の方は小分子 RNA に比べて extra に苦労しないといけないわけで、このハードルの高さが高分子 non-coding RNA の研究の進展を妨げているというのは、ちょっと穿った見方でしょうか。

ともあれ、本領域の発展に伴い、高分子のものを含めてnon-coding RNA 研究の裾野が広がることを期待しています。

影山

October 21, 2009

「非コードRNA」

私たちの領域名に使われている「非コードRNA」。"non-coding RNA"の訳語として、それなりに使われている言葉ではありますが、むしろ「ノンコーディングRNA」の方がよく耳にしますし、そもそも日本語として少し変な気もします。なぜ違和感を感じるのか考えてみると、反対語に対応するはずの「コードRNA」という言葉が、日本語として存在しない(全く使われていない)からだと思います。

では、なぜ私たちの領域名は「ノンコーディングRNA」ではなく「非コードRNA」なのか? 実は、新学術領域研究(研究領域提案型)では、申請時に領域名の略称を付けなければいけない決まりになっているのですが、その字数制限が8文字以内なので、「ノンコーディングRNA」では字数をオーバーしてしまうから、という(割と後ろ向きな)理由です。

そもそも、"code"という言葉の日本語訳は、個人的にいつも悩みどころなのですが、皆さんどうしているのでしょう? 「タンパク質をコードする」「タンパク質をコーディングする」「タンパク質をコード化する」「タンパク質を暗号化する」??

October 16, 2009

ncRNA+Blogについて

とある経緯から始まった、あるいはこのまま始まるかもわからないncRNA+Blogです。
テスト段階ではありますが、せっかくであれば継続的な投稿が続くよう、内容を限定しない気軽な投稿をお願いします。

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非コードRNA領域ホームページは こちら から