November 30, 2011

Tokyo RNA clubまつり

師も走る12月になりました。12月と言えば分子生物学会、分子生物学会と言えばTokyo RNA Club。今年も豪華ゲストを招いて信濃町は慶応大学でTokyo RNA Clubが豪華に、しかも2週連続で開催されます。第一弾は12月8日。メインゲストはDavid BartelさんとValerio Orlandoさん。第二弾は分子生物学会前日の12月12日で、メインゲストはMarcel Dingerさん、Chandra Kanduriさん、Elissa Leiさん、Isidore Rigoutsosさん、Markus Hafnerさんです。第一弾の方は分子生物学会とは直接関係ありませんが、第二弾のゲストは学会のシンポジウムの招待講演者でもあります。

さて、このうち、MarcelさんとKanduriさんは学会最終日の午後という、おそらくものすごく集まりが悪くなるであろうシンポジウムで話をされるので、ちょっとここで宣伝を、、、

まずは今回はMarcelさんから。実は今回のシンポジウムでは、Marcelさんの元ボスであるJohn Mattickさんが来られることが決まっていたのですが、年明けにシドニーにある研究所のヘッドになる話が急に決まったとかで、ブリスベンからの引っ越しやらなんやらで、てんやわんや、すまん、本当に行きたかったのに、と、いわゆるひとつのドタキャンをされてしまいました。まあ大御所には良くある話だよねー、というのは、そういう面もほんのちょっとはあるのかもしれませんが、こればっかりは仕方がありません。それよりも、エコノミーでスイマセンというお願いにも関わらず、行く!行く!!絶対行く!!!サンキューベイビーと、最初は言ってくれていたJohnさんに、僕自身は深く感謝しています。

Johnさんがキャンセルされたということで、他に誰か良い人はおられますか?と聞いて、間を入れず推薦されたのがMarcel Dingerさんです。John Mattickさんという方は、長鎖のncRNAの研究の業界ではちょっとしたlegendになっているにちがいないと思うのですが(僕自身は業界歴が短いので定かではありませんが)、それほど長鎖ncRNAが人口に膾炙していなかった頃から盛んにその重要性についてちょっぴりprovocativeな主張をしておられていて、ようやく最近になってその予言が多くの研究者の結果、特に大規模ゲノムワイドな解析のちょっぴりprovovativeな結果によってサポートされるようになってきていて、そういう意味では、間違いなく僕の中ではscientific heroです。ただ、実際にあったことも無いし、論文しか読んでないし、というか総説しか読んでいないし、でも一目会いたい、会って話をしたい、その夢がもう少し叶うというところで、、、お楽しみはまたこの次です。

とはいえ、このMarcelさん、これがまた論文でしか名前を知らなかったのですが、Johnさんのところから出てくる論文には必ず名前が二番目か三番目に入っている、ということで、ずっと脳内旧知の仲の人でした。これまでにも何か機会があれば日本に来てもらいたいなあと思っていたいたので、ひょうたんから駒、ではないですが、Johnさんの代役なんていったら役不足!かもしれません。Johnラボのバイオインフォマティクス解析を一手に引き受けていたのがMarcelさんで、今の時代、そういう人がどれだけ貴重な存在になりつつあるのかは、自分でプログラミングをして挫折した人ならとても良くわかると思います。100行のスクリプトを書くのはngオーダーのエタ沈より百倍難しいです。石器人にとっては。

このMarcelさん。実はホームページFacebookのページもこっそり公に持っておられます。WikipediaなんかもncRNA関連の管理人になっているみたいですね。今風に言えばクラウドnativeとでもいうのでしょうか。ラボに居たらピペットマンとピンセットしか握らない僕からすると、完全に新感覚の人です。ですので、とっても楽しみ。世代的にも極めて若いし、ぜひぜひ、若い人も、そうでない人も、Tokyo RNA Clubに、また、分子生物学会の最終日のシンポジウムの方に足を運んでいただければ、と思います。

次回は、もう一人のシンポジウムの海外招聘講演者、Chandraさんのお話です。

ちょっとその前に、つい先日行われた領域会議の感想戦が、学生さんとか、ポスドクさんとか、あたりから、ある、はずです。

中川

November 17, 2011

ポスドク募集!!!!!!!!って

海外ポスドクの話題が出ていましたが、海外から日本へ、熱い視線のポスドク募集がちらほら来ています。
このあたりとか、このあたりとか。前者は僕の知り合い、後者はムッキーこと筋肉ムキムキN山さん(伏せ字の意味なし)の知り合いです。ですので一応公式(?)ブログのここに貼付けても良いかな、と。

 海外に限らず、ポスドク先を探す場合、大きく分けて自分で何らかの奨学金に応募して行く場合と、先方の研究室の人件費(ポスドク用経費)を当てにしてゆく場合の二つがあります。僕の知り合いはほとんど前者ですし、僕自身も実際そうでした。別にこれは奨学金とれたぜベイビーなどと中学生でもしないであろう自慢をしたい訳では全然なく、むしろ僕自身のことを振り返ってみれば、「ポスドク募集!!」という広告を出している研究室に飛び込むだけの勇気がなかった、ただそれだけのことのような気がします。往々にして、ポスドク募集をしているラボというのは、ポスドク候補の学生さんが見向きもしないラボなんですよね。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、一厘の真理ぐらいはあるでしょう。飛ぶ鳥を落とす勢いの研究室には、次々とポスドクに行きたいーっつ!!というラブレターが殺到し、山積みにされ、2、3週間興味を持たれずに放置されれば地層的にはオルドビス紀ぐらいまでいってしまうと聞き及んでいます。そういったラボには勿論ポスドクを雇用するに十分な予算がある訳ですが、その多くは、得体の知れぬ新人ではなく、奨学金を持ってきて研究していたけれどもその期限が切れてしまった、でもぜひうちで継続して研究してもらいたい、という人を雇用するために使われている、従ってポスドク募集のような広告をわざわざ出さない、というようなイメージがあります(まちがっていたらごめんなさい、というか例外多数あると思いますが)。ポスドク募集!!!のびっくりマークの数に応じてブラック度が増すと言いますか、ちょっとヤバそうな雰囲気を勝手に想像し、知らず知らずのうちに避けてしまうという心理効果が働くが故に、ポスドク募集!!!!!!という広告の出ている研究室にポスドクで行った知り合いがほとんど居ない、ということになっているのでしょう。


 ポスドク募集!(n)の広告を出すラボというのは、然り而して、立ち上げてほやほやのラボが実に多い気がします。そこに行くというのは、ベンチャー企業に就職するのと似たところがあるのかもしれません。ハイリスク・ハイリターン。といけば良いのですが、ハイリスク・ノーリターンだったりして。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、二、三厘の真理ぐらいはあるでしょう(しつこい)。

 誤解されないように最後に補足しますが、ポスドク募集!(n2)の広告を出しているラボは、切実に一緒に仕事をしてくれるメンバーを渇望しているのは事実だと思います。お金は寂しがりやだから金持ちは益々富むわけですし、ポスドクも寂しがりやだから大きなラボはますます膨張するのかもしれません。だからといって、小さなラボが面白くない訳では決して無い。とうちのラボの披露目をしている場合ではありませんが、興味がピタリと合うようならば、どんどんそういうところに飛び込んでいっても良いと思います。お金を自分で持っていこうが、先方のお金で雇用されることになろうが、ポスドク先で微分不可能な成長を遂げて脱皮しなければいけないのは変わらない訳ですから。

中川

November 13, 2011

うらやましい論文

ついに、というか、満を持して、というか、噂の論文が世に公開されました。
転写因子の分野の大御所、Rosenfeld研からの仕事です。
普通にウェブで公開されているのでその図を貼付けても良いのでしょうが、いちおう書き直したまとめがこちら。もっとまともな図はリンク先をご覧ください
ポイントは、血清刺激によって発現がオン、オフされる一群の遺伝子がある訳ですが、それらの遺伝子座がポリコーム体と核スペックルという核内構造体を往復することによって発現制御がなされている、というところです。しかも、その際にPC2と言うタンパク質のメチル化のオンオフが伴っており、それぞれの核内構造体に存在するノンコーディングRNA、TUG1とMALAT1が遺伝子発現制御に必須の役割を果たしていることを示しています。遺伝子座そのものを核内で移動させることによる転写制御があり、そこにノンコーディングRNAが関わっているという、非常に興味深い報告です。


 正直言って、こういう仕事を出したいなあ、とおもっている論文を他のラボから出されてしまうと、とても悔しいですね。遺伝子の機能と、分子レベルのメカニズムと、そして細胞生物学レベルでの知見がぴたりと合うような仕事というのは滅多にお目にかかれるものではありません。Gomafuもこういう形でまとめられれば良いのですが、、、

 ただ一点、どうしても引っかかるのは未発表のMalat1のノックアウトマウスの表現型で、これがいまのところ何一つ見えていないのですね。僕の所を含めて世界で3ラインほど作られているようですが、どこも同じような状況のようです。これをどう考えるのか。Malat1の劇的な機能を示した論文は以前ここでも紹介したPrasanthらによるものなどありますが、いずれも培養細胞株を使ったものです。培養細胞、特にガン由来のものではMalat1は過剰発現している傾向にありますから、細胞株になるときにMalat1の機能が必要だった、だから細胞株でMalat1をたたくといろいろな表現型が出てくる、という解釈をすることも出来るかもしれません。

 もう一つの可能性は、これはつまらん方の可能性ですが、核内にAgo-siRNAの複合体を「異所的に」持ち込んでしまうことによる二次的な影響です。siRNAは高等真核生物においてはヒストンのメチル化等は引き起こさない、というのがコンセンサスになっていると思うのですが、特に核内に大量に存在するMalat1ようなノンコーディングRNAに対してsiRNAを使った場合、本来核内には「無い」はずのAgo-siRNAの複合体が、核スペックルなり、なんなりに異所的にたまってくることが予想されます。そうするとなにか別のことが起きないのかな?という気もしてくるのですが。高等真核生物においても「siRNA (miRNA)ーエピジェネティック制御」があるのではないか、という可能性は、有名雑誌に掲載された論文がリトラクションされたこともあり、完全に無視されている状況ですが、あの話にも一分の真実は含まれていたのかもしれないと、思うこともあります。

 核内のノンコーディングRNAに対してsiRNAを使うのが本当に正しいアプローチなのかについては、いちど、きちんと検証してみなくてはいけないと思っているのですが、なかなか手が回らないのが現状。。。です。

中川

November 1, 2011

行くゼ海外

こんにちは、河岡です。中川さん、泊さん、三嶋さんがそれぞれ海外留学について書かれた、
「ああ海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post.html)」
「されど海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_15.html)」
「やはり海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_19.html)」。
実際に海外留学をされた先達からのメッセージに引き続くかたちで、海外留学を決めたいち学生の目線で「行くゼ海外」を書いてみようと思います。数年経てば状況がまったく変わってしまう昨今、リアルタイムの情報が役に立つことがあれば幸いです。

僕は、来年3月に卒業してすぐの4月から、アメリカはニューヨーク州ロングアイランドにある某非営利研究所の研究員として、がんを研究することを決めました。海外留学について具体的に考えはじめたのは博士課程に入ったときです。僕は5-30年くらい先までものごとを妄想する性質があるので、海外留学をするかどうか、というよりは、博士号を取得したあとにどうしよう、ということを考えたときの選択肢のひとつとして、という感じでした。最初のころの悩み方は、ざっくり述べると以下のような感じです。

(1) 国内か国外か
(2) 分野を変えるか変えないか
(3) ビックラボかスモールラボか
(4) ポスドクか、(あれば)よりパーマネントっぽい職か
(e.g. 国内で分野を変えずにビッグラボでポスドクをする)

まあ、僕のぐだぐだした思考回路をたどってもしかたがありません。しばらくして、悩み方がおかしいことに気がついて、最終的には、以下のような結論にたどり着きました。

「エキサイティングでさえあれば」
(1') 場所はどこでも良い (どの場所でもできる!!)
(2') 分野は何でも良い (どの分野でもできる!!)
(3') ラボの規模もどうでも良い (アクティビティはラボの規模に左右されない!!)
(4') いまは定着する時期ではなく、来るべきときに向けて地力をつける時期 (少なくとも現状維持を優先するときではない!!)

エキサイティング、というのはあらゆる意味においてです。僕は単純なので、海外留学に単に憧れていました(海外生活かっこいいじゃん、くらいの)。なので、単純にそういうレベルのエキサイティングさだけを求めれば、海外に行こうぜ、となるわけです(実際はそうは単純にはいかないですけれど)。分野は、経験値なんて考慮しないで考えれば良いし、規模なんてどうでもいいです。4)はちょっと性質が違いますが、今回は置いておきます。定着=守り、ということではまったくないです。

結果的には、留学先はほんとうにゼロベースで探した、と言って良いと思います。フェローシップをもって、ということを決めていたわけでもないので、いわゆるひとつの「ポスドクハント」をしたと思います。

(a) 興味のある大学や研究所をリストアップ
(b) 生物系のファカルティのページは「全部」みる
(c) ファカルティページに少しでも興味をもったら論文を最低1報読む
(d) イイ、と思ったら、「本気でラボに参加する気になって」、その町をgoogle mapでみて、不動産情報や物価なんかを調べて、生活を想像してみる (これは僕にとってはかなり重要なプロセスです)
(e) 時によって気分が変わるので、同じプロセスを最低3回は繰り返す
(ファカルティ単位でいったら100以上はチェックしたと思います)

ちなみに、より深くチェックした「分野」は以下です。
相互排他的ではありませんが(実際、僕のやりたいサイエンスはある一群に集約されています)、ざっくりとしたイメージで分けました。しつこいですが、ここでも、各分野を本気でやるつもりで結構勉強しました。具体的には、レビューを読んだり、和書を購入したり、その分野のひとの話を聞いたり、です。要するに自分がどんな問題にアプローチしたいか、ということを考えたわけで、このプロセスでだいぶ自分の興味の指向性を知ることができました。

(い) 非コードRNA (small RNA)
(ろ) がん
(は) システムバイオロジー
(に) 生殖細胞/幹細胞
(ほ) 神経科学
(へ) 発生

加えて、用いる生物も熟慮しました。これも、決断前にじかに見ていない生物はいません。やっぱり好きな生物でないと、と思っていたわけです(最初はいちばん嫌だった(iv)をやるという奇妙)。実際に見学をさせてくださった国内のラボがいくつかあります(本気で国内、と思って見学を積極的にしていた時期もあります)。ありがたいことです。

(i) ゼブラフィッシュ
(ii) 線虫
(iii) キイロショウジョウバエ
(iv) マウス

最終的にアプリケーションを送ったファカルティは6つ((ほ)と(へ)、そして(i)以外)。ひとつはまったく返事が来ず、ふたつは少しのメールのやりとりでダメ、ひとつは結構長い間メールしていたけどダメ、ふたつは面接に呼んでくれて、また、オファーをくれました。面接に至るプロセスも二者二様。かなり性質の異なるふたつのラボでかなり悩みましたが、これまで自分が考えてきたプロセスをきちんと見直して、決断をしました。国外で分野を変えてスモールめのラボでポスドクをする、マウスでがんをやる、と、こういうわけです。

思い返してみれば、自分はこのプロセス自体を楽しんでいたように思います。また、このプロセスそのものによって自分が成長したと感じました。かなりいろんな分野の知識が入りましたし。結果論から言えば、自分のビジョン/ポリシーに照らして自ら自分の人生の舵をとる限りにおいては、悩み(1)-(4)なんてどうでもいいのだと心から思いました (誤解を恐れず言えば、この時代、海外留学自体はすごくもえらくもなんともないと思います)。情報と選択肢が溢れ返っているからこそ、ビジョン/ポリシーを持つことが最も重要だと再認識しました。

大事なこと。自分ひとりで考えたみたいに書いていますが、いろいろな方々のサポート/後押しがあっての決断でした。また、こういう方向に思考したのも、当然環境依存的であったと思います。感謝してもしきれません。

各種情報が欲しい、もっと詳しい話がききたい (エキサイティング、の他にも、向こう15年を考えたときに、といういわゆる戦略的((4)に関連)な理由も結構ありました)、という方がいましたら、遠慮なくご連絡ください。来年度以降、この領域で培った経験を活かし、活躍の報を届けられるように頑張ります。

河岡