November 1, 2011

行くゼ海外

こんにちは、河岡です。中川さん、泊さん、三嶋さんがそれぞれ海外留学について書かれた、
「ああ海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post.html)」
「されど海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_15.html)」
「やはり海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_19.html)」。
実際に海外留学をされた先達からのメッセージに引き続くかたちで、海外留学を決めたいち学生の目線で「行くゼ海外」を書いてみようと思います。数年経てば状況がまったく変わってしまう昨今、リアルタイムの情報が役に立つことがあれば幸いです。

僕は、来年3月に卒業してすぐの4月から、アメリカはニューヨーク州ロングアイランドにある某非営利研究所の研究員として、がんを研究することを決めました。海外留学について具体的に考えはじめたのは博士課程に入ったときです。僕は5-30年くらい先までものごとを妄想する性質があるので、海外留学をするかどうか、というよりは、博士号を取得したあとにどうしよう、ということを考えたときの選択肢のひとつとして、という感じでした。最初のころの悩み方は、ざっくり述べると以下のような感じです。

(1) 国内か国外か
(2) 分野を変えるか変えないか
(3) ビックラボかスモールラボか
(4) ポスドクか、(あれば)よりパーマネントっぽい職か
(e.g. 国内で分野を変えずにビッグラボでポスドクをする)

まあ、僕のぐだぐだした思考回路をたどってもしかたがありません。しばらくして、悩み方がおかしいことに気がついて、最終的には、以下のような結論にたどり着きました。

「エキサイティングでさえあれば」
(1') 場所はどこでも良い (どの場所でもできる!!)
(2') 分野は何でも良い (どの分野でもできる!!)
(3') ラボの規模もどうでも良い (アクティビティはラボの規模に左右されない!!)
(4') いまは定着する時期ではなく、来るべきときに向けて地力をつける時期 (少なくとも現状維持を優先するときではない!!)

エキサイティング、というのはあらゆる意味においてです。僕は単純なので、海外留学に単に憧れていました(海外生活かっこいいじゃん、くらいの)。なので、単純にそういうレベルのエキサイティングさだけを求めれば、海外に行こうぜ、となるわけです(実際はそうは単純にはいかないですけれど)。分野は、経験値なんて考慮しないで考えれば良いし、規模なんてどうでもいいです。4)はちょっと性質が違いますが、今回は置いておきます。定着=守り、ということではまったくないです。

結果的には、留学先はほんとうにゼロベースで探した、と言って良いと思います。フェローシップをもって、ということを決めていたわけでもないので、いわゆるひとつの「ポスドクハント」をしたと思います。

(a) 興味のある大学や研究所をリストアップ
(b) 生物系のファカルティのページは「全部」みる
(c) ファカルティページに少しでも興味をもったら論文を最低1報読む
(d) イイ、と思ったら、「本気でラボに参加する気になって」、その町をgoogle mapでみて、不動産情報や物価なんかを調べて、生活を想像してみる (これは僕にとってはかなり重要なプロセスです)
(e) 時によって気分が変わるので、同じプロセスを最低3回は繰り返す
(ファカルティ単位でいったら100以上はチェックしたと思います)

ちなみに、より深くチェックした「分野」は以下です。
相互排他的ではありませんが(実際、僕のやりたいサイエンスはある一群に集約されています)、ざっくりとしたイメージで分けました。しつこいですが、ここでも、各分野を本気でやるつもりで結構勉強しました。具体的には、レビューを読んだり、和書を購入したり、その分野のひとの話を聞いたり、です。要するに自分がどんな問題にアプローチしたいか、ということを考えたわけで、このプロセスでだいぶ自分の興味の指向性を知ることができました。

(い) 非コードRNA (small RNA)
(ろ) がん
(は) システムバイオロジー
(に) 生殖細胞/幹細胞
(ほ) 神経科学
(へ) 発生

加えて、用いる生物も熟慮しました。これも、決断前にじかに見ていない生物はいません。やっぱり好きな生物でないと、と思っていたわけです(最初はいちばん嫌だった(iv)をやるという奇妙)。実際に見学をさせてくださった国内のラボがいくつかあります(本気で国内、と思って見学を積極的にしていた時期もあります)。ありがたいことです。

(i) ゼブラフィッシュ
(ii) 線虫
(iii) キイロショウジョウバエ
(iv) マウス

最終的にアプリケーションを送ったファカルティは6つ((ほ)と(へ)、そして(i)以外)。ひとつはまったく返事が来ず、ふたつは少しのメールのやりとりでダメ、ひとつは結構長い間メールしていたけどダメ、ふたつは面接に呼んでくれて、また、オファーをくれました。面接に至るプロセスも二者二様。かなり性質の異なるふたつのラボでかなり悩みましたが、これまで自分が考えてきたプロセスをきちんと見直して、決断をしました。国外で分野を変えてスモールめのラボでポスドクをする、マウスでがんをやる、と、こういうわけです。

思い返してみれば、自分はこのプロセス自体を楽しんでいたように思います。また、このプロセスそのものによって自分が成長したと感じました。かなりいろんな分野の知識が入りましたし。結果論から言えば、自分のビジョン/ポリシーに照らして自ら自分の人生の舵をとる限りにおいては、悩み(1)-(4)なんてどうでもいいのだと心から思いました (誤解を恐れず言えば、この時代、海外留学自体はすごくもえらくもなんともないと思います)。情報と選択肢が溢れ返っているからこそ、ビジョン/ポリシーを持つことが最も重要だと再認識しました。

大事なこと。自分ひとりで考えたみたいに書いていますが、いろいろな方々のサポート/後押しがあっての決断でした。また、こういう方向に思考したのも、当然環境依存的であったと思います。感謝してもしきれません。

各種情報が欲しい、もっと詳しい話がききたい (エキサイティング、の他にも、向こう15年を考えたときに、といういわゆる戦略的((4)に関連)な理由も結構ありました)、という方がいましたら、遠慮なくご連絡ください。来年度以降、この領域で培った経験を活かし、活躍の報を届けられるように頑張ります。

河岡

6 comments:

  1. 河岡くんのこの記事を研究室の後輩に紹介したら、読んで目を丸くしていました。
    とても良い刺激になったようです。

    中條

    ReplyDelete
  2. おなかをまるくしないように、と伝えてください(笑)。

    河岡

    ReplyDelete
  3. はじめまして。京大の宮田です。今年9/10に、初めてこのblogに登場させてもらったものです。

    河岡さんの記事、いつも興味深く拝読しています。
    今回のこの記事も、とても勉強になりました。

    海外の新しいラボで、今後もエネルギッシュにご活躍ください。また河岡さんのご活躍を聞けることを、楽しみにしています。

    宮田

    ReplyDelete
  4. 宮田さん、はじめまして!
    コメント、どうもありがとうございます!
    とにかくしっかり勉強して、地力をつけられるように、頑張ります。

    またちらほら記事を書いていくつもりですので、宜しくお願いします!

    河岡

    ReplyDelete
  5. ここまでしなければ留学できないのかあ、なんて尻込みする人も出てきそうですが。。。

    打倒K君とばかり、何も考えず無鉄砲に留学する強者は出てこないかしらん。

    中川

    ReplyDelete
  6. いや、随所にノリでやったところがありましたよ!あくまで、決まった後に眺めての結果論的に書いたところがある、ということで。。。

    河岡

    ReplyDelete