September 10, 2011

RNAフロンティアミーティング2011(若手の会)と“脱皮”

初めてこのブログに登場させていただきます。京大ウイルス研・大野研究室・博士課程学生の宮田淳美と申します。

私は、8/30から9/1まで、愛知で行われた「RNAフロンティアミーティング2011(若手の会)」に参加させていただきました。特別講演も入れて63個のトークがあり、うち39個は学生によるものでした。学生の皆さんの発表は、みな完成度が高く、同じ学生として大変刺激を受けました。また先生方のハイクオリティな質問が飛び交うなか、学生の皆さんも果敢に良い質問をしていて、すごいと思うと同時に、自分も頑張ろうという気持ちが生まれました。

私はM1で初めて若手の会に参加したときから思っていますが、学生の皆さんは、是非とも若手の会に参加すべきです。特に“質問する姿勢を身につける”という点において、非常に良いトレーニングになります。若手の会には学生の質問をencourageする雰囲気があり、周りが「我も、我も!」と質問しているのを見ていると、自然と「自分も質問したい(できる)」という気持ちになってきます。私は今回、M1で出席して以来、7年ぶりの参加でしたが、7年前と比べて、学生の皆さんが自ら質問する姿が自然になっていました。これはきっと、企画者の先生方が長い年月かけて、学生の皆さんをencourageしてこられた結果だろうと思います(質問することの大切さについては、November 4, 2010, 影山先生の「学会での質問」をご参照ください)。

さて、今回私は、中川先生からブログへの投稿を依頼していただき、「私だからこそ書けることは何だろうか」と考えました。“M1で初めて若手の会に参加してから7年ぶり”。先でこう書いたので、もうおわかりだと思いますが、私はD6です。そして実は、今回が初めての学会口頭発表でした。今回のブログでは、こんな出来の悪い、そして諦めの悪い私が、人生初の学会口頭発表を終えたいま考えていることを、中川先生が前回のブログ「夏休み」で書かれた“脱皮”という言葉をキーワードにお話ししてみることにします。

私は今回、「マウス細胞内における28S rRNA上に生じた紫外線損傷の修復」という演題で発表させていただきました。RNAには変異原によってDNAと同様の損傷が生じます。また変異が入ったDNAを元に異常なmRNAが合成されたりもします。これらの異常なRNAに対処する機構として、細胞はNMD, NSD, NGD, RTD, NRD etc…といった多様な分解機構を備えています。しかし修復機構については、まだ数例しか報告されておらず、Mammalにおけるin vivoでの報告例は見当たりません(もしご存じでしたら、教えていただければありがたいです。よろしくお願い致します)。私は今回、「マウス線維芽細胞(NIH3T3)に紫外線を照射したとき、28S rRNA上に紫外線損傷が生じ、その一部が修復されている可能性がある」という新しいRNA修復の現象を見つけたので、その解析結果をご報告させていただきました。そして皆様に興味を持っていただくことができ、光栄にも、ベストプレゼンテーション賞をいただくことができました。

しかし今回の報告に至るまでの日々は、本当に大変なものでした(私が「新しいRNA修復機構を見つけたい」と考えるに至った経緯や、今回の発表までに経験した苦労などは、いつか書かせていただく機会があるかもしれないので、今回は省かせていただきます)。

今回の特別講演でお話しくださった、渡邉嘉典先生と塩見美喜子先生のお話も、たくさんの素晴らしい研究成果の裏に多くの困難があったことがうかがわれるお話でした。また、美喜子先生がお話しされた、「Joan SteitzがFrancis Crickのラボに居たとき、Crickから『ベンチは男のものだ』と言われて、ベンチを与えてもらえなかった」というエピソードも、非常にショッキングなものでした。

しかし、先生方は、どんな困難に遭っても、研究することを諦めませんでした。
『知りたいことがあるから、とにかく諦めない。』

渡邉先生は、とにかく興味を持った“減数分裂”という現象を、どんな困難に遭っても諦めずに追い続けてこられたのだとわかりました。美喜子先生は、数年間のテクニシャン時代や、“結婚・出産・子育てと研究の両立”という難しい問題を経験されても、柔軟に対応し、かつ、ひたすら真摯に研究に打ち込んでこられたのだと感じました。Joan Steitzも、ベンチを与えられないという、あまりに酷い目に遭いながらも、研究をやめず、素晴らしい研究成果を発表し続けています。皆さん、なんとすごいのだろうかと感動します。

私自身も、自分のこれまでを振り返ってみて、「これまでよく研究テーマ・研究自体を諦めなかった」と思うほど辛かったですが、それでもなお今、「やっぱり、私はこの研究に出会えて幸せだ」と思っています。私に関していえば、もちろん自分に至らないところがあるから苦労してきました。でも、「やはり苦しい経験から何かを学んで、“脱皮”をして大きくなることこそに意味がある」、「またそういう姿勢を保たなければならない」というのが、私の得た結論です。「自分には能力が無いかもしれないけれど、それでも、この現象について知りたい」、「この現象を追究していくだけの研究能力を身につけたい」、今はそう思います。“脱皮”を繰り返しながら、少しずつでも大きくなっていけば、一生を終える瞬間までに、何かを成し遂げられているかもしれません。またこの世界について、自分なりの理解が深まっているかもしれません。研究することは、哲学を構築していくことに通じますから。

最後に素敵な話を一つ。
京大名誉教授の由良隆先生(1992年退官)、伊藤維昭先生(2007年退官)は、今も場所を探して、自ら実験されています。由良先生は、「老眼でよく見えないんだよ~」とおっしゃりながら、大腸菌プレートをつつかれていました。伊藤先生は、ウイルス研のRI室で毎日のように実験されていました。先生がRI室を使う頻度が高かったため、掃除当番が当たってしまうほどでした。さらに由良先生は、2007年にFirst AuthorでPNASに論文を発表されました。私が由良先生に「この前First AuthorでPNASに論文出されていましたね!すごいですね。」と言うと、「そうなんだよ~、これから面白くなりそうで。」とニコニコしていらっしゃいました。いつまでも研究に夢中な先生方の姿は、とても素敵でした。

私以外の学生の皆さんも、きっとそれぞれ、大変な辛さ、挫折感を味わってこられたことと思います。でも、私たちから見て完璧に見える先生方でも、中川先生のブログ「夏休み」からうかがわれるように、今なお一生懸命、成長しようと頑張っていらっしゃいます。由良先生も、伊藤先生も、今なお研究に情熱的に取り組んでおられます。私たち学生も、そんな先生方の背中から色々なことを学ばせていただきながら、どんな困難があっても諦めずに、頑張っていこうではありませんか!そして、まだまだわからないことだらけで、面白い発見がたくさん隠されているRNAの世界を、共に開拓していこうではありませんか!開拓には、困難に負けない強い情熱が必要です。

2 comments:

  1. 後から考えてみればあの日がきっかけで今日のこの日がある、というような出来事が、若いうちは、特に学生時代はしばしば訪れるものだと思います。ベストプレゼンテーション賞受賞が何かのきっかけになりますよう!

    中川

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  2. ありがとうございます。
    この受賞を励みに、今後とも頑張りたいと思います。
    また、先生方のブログ&コメント、大変勉強になると思いながら拝見しています。これからも、楽しみにしています!

    宮田

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