September 30, 2011

公募の季節

せっかく再会したカイコの連ドラの直後の投稿すいません。旬のある話なので、、、ぜひページの下の方のエントリーの方から先にお読みください。

さて。

世の中の至る所に壁はあります。我々の業界ならば、まずは自分の心の壁、研究室の壁、研究領域の壁、分野の壁、などなど。かつては助手、助教授、教授、と同じ箱の中でキャリアを重ねながら研究を進めてゆく文化もあったようですが、このごろではそのような道筋を辿る人はかなりレアで、いろいろな研究室で経験を積んでゆくことが、己の視野を広げるためにも、また自分の関わる分野を発展させるためにも必要である、ということが広く受け入れられつつあるような気がします。そもそも研究室を変わらなかったにせよ、次々と開発される新しい技術なり解析手法なりを積極的に導入してゆかなければ、なかなか新しいことが分からないというのが現実です。また、いろいろな研究室を渡り歩いて多様な文化を吸収したとしても、いざラボを持ってから自分の研究室の中に閉じこもってしまったら何の意味もありません。

 いろいろある壁のなかでも、研究室の壁というのは意外と大きいような気がします。特に学生さんが10人も20人もいる大きな研究室の場合、その研究室の中だけでそれなりに多様な社会が出来てますから、あえて外に空気を吸いに出かけなくても息苦さを感じることは少ないかもしれません。メンバーが二人でお互い仲悪かったらいやでも外に友達を作るでしょうが。そういう剣呑な雰囲気でなければ、他の研究室の人と交流するとしても、せいぜいソフトボール大会や駅伝大会ぐらい、という人は珍しくはないのではないでしょうか。同じ学部であったり教室であったりすればその手の交流会で顔をあわす機会がなんとかあるにせよ、学部を超えて、さらには大学を超えて交流、ということになると、かなりこれは難しいことになってきます。

 交流というのは社交的な人の場合自然に生まれるものですが、人見知りが激しかったり、孤独僻があったりすると、そうそう生まれるものではありません。また困ったことに研究者には、自分がそうだから良くわかるのですが、そういう傾向を持った人が、またそういう傾向を持っていることをむしろ誇りに思っている厄介な輩が、特にオス個体で実に多い。交流の場というものを無理矢理にセッティングしないと、きっかけすら生まれないことが多いのが現実です。

 そういう意味では、新学術であったり、ちょっと前でしたら特定領域であったりといったグループグラントは、この上ない交流の環境を提供してくれているような気がします。お金に群がるだけなら樹液に群がるカナブンと変わりませんが、こちとら人間様。同じサイエンスを志すものが集まれば、やはりそこには様々な交流が生まれるはずです。かつて、RNAのアの字も知らなかった頃に特定領域のRNA情報網に参加させてもらって、どれだけ色々なことを教えてもらったか。大きなカテゴリーでは同じ分子生物学に属していても、それぞれの研究分野ではデーターの並べ方や実験の進め方に特定の作法があります。裏千家と表千家みたいなものですね。思いもしなかったテクを持っている人がいたり。自分の中ではほとんど役立たずと思っていた知識や手技が他のラボではどうやら役に立つこともあるらしいことが分かったり。当新学術でも、着実に共同研究の芽は生まれ始めているような気がします。

 秋、公募の季節です。どのような新しいメンバーが参加してくださるのか、今からとても楽しみです。僕自身も壁を越えて、色々なことに挑戦してゆきたいと思っています。

中川

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