April 30, 2013

実験医学増刊号

実験医学増刊号で、RNAの特集号が出ました。


生命分子を統合するRNAーその秘められた役割と制御機構

分子進化・サイレンシング・non-coding RNA からRNA 修飾・編集・RNA―タンパク質間相互作用まで

  • 塩見春彦,稲田利文,泊 幸秀,廣瀬哲郎/編





またかよ、とかいう感想を持たれた方も多かったりするかもしれません。何を隠そう、、つい先日、2010年にもRNA特集号が出ているではありませんか。



拡大・進展を続けるRNA研究の最先端

長鎖noncoding RNA・small RNAからRNA修飾・編集・品質管理まで

  • 塩見春彦,塩見美喜子,稲田利文,廣瀬哲郎/編

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うーん。ベネトンばりに原色バリバリ、フォントは迷わずゴシック、色使いからレイアウトまで常に全力投球のタイトルや表題を見ると、善悪はともかくとして目をつぶっていても実験医学さんの目次だな、とすぐに分かる訳ですが、良くこんな立て続けに増刊が出せるものだと、思ったりはしないでしょうか。まるでOSのアップデート。中身は対して変わらないのに変えずに購買意欲を刺激するあたり商売上手だなあ、なんて思っていましたが、実はこれが、なかなかの変身を遂げているようです。

iPhone登場以前より、アップルファンは、初期不良にブーブーいいながらも、新しいコンセプトの商品が出るたびに大枚はたいてきたと思うのですが、やはり、挑戦的な商品というのは、出来の悪い息子を応援するではないですが、損得抜きにして応援したくなるような気になるものです。フロッピーを捨て、シリアルポートを捨て、CD-ROMやEtherコネクタはおろかキーボードまで捨てるに至ったアップルの「パソコン」進化。伝統を守る事は大事な事ですが、新しい事に挑戦するワクワク感の価値というのは、リスクを勘定に入れてもいくらでもお釣りが来るぐらい高いものではないか、と思います。

研究とはそもそもが新しいものを見つけるための活動であるわけですが、保守に走ることは必ずしも悪い事ではありません。あれやこれや浮気心を出さずにきちんと一つのテーマを完結させる事は、とても大切な事です。その一方、リスクを覚悟で新しい種をまいていかなければ、あっという間に豊饒の海も枯れてしまいます。研究者としてその辺りのバランスをどう取っていくのかというのは非常に難しいところだと思うのですが、じゃあ、いつするの、ということで。はい、今です。たぶん。

今回の増刊号。え、これって、、、という意外な内容の話が結構あります。発生屋はEvo-devoという言葉があるくらい進化を語りたがる、語りたがる、いやもういい、と言われても夜がふけるまで、というか夜が明けても語り続ける傾向がありますが、RNA研究者はどちらかというと堅実なin vitroの結果をもとに理知的に冷静に物事を押し進めるという印象がありました。ところがところが、いろいろな人が、語り始めているではありませんか。そもそものっけから塩見の春さんが、リボザイムを語る、語る。えっ?春さんって、リボザイムの研究されてましたっけ?僕も勢いにつられて、論文という形で表に出てきているわけではありませんが、ここ10年弱ずっと気になっている、レトロトランスポゾンについて語ってしまいました。。。やっつけ仕事で書いた訳ではありません(断言)。寝ても覚めても考えている、というのは大げさですが、心を鷲掴みにされているテーマなのです。この増刊号、今までのしっかりとした仕事をふまえた上で、これから何を見据えていくのか、というコンセプト、が詰まっています。これはステマではありません。僕も著者に入っていますから、歴然とした宣伝ですね。はい。ぜひ、立ち読みしてください(こんな事書くと全力投球の実験医学には怒られそう。。。)

最後に、無断ですが、編集者のとある人から頂いたアピールポイントを以下に勝手に転載(一部改変)させていただきます。どうせこのブログ読んでいる人は少ないですから、問題は無いでしょう???

中川

ーー

本書のアピーリングポイントですが、これまでの小誌の多くの特集が
病気との繋がりを重視したものでしたが、本書では機能分子としての
多種多様な蛋白質が存在するなかで、なぜ今もなお、RNAはその機能を
蛋白質に譲渡することなく存在し続けているか、 という点からRNAの
バイオロジーを追究した点だと考えています。“実験医学”で植物の
話題が含まれているのも異例かもしれませんが、サイレンシングやRNA
修飾の理解にも重要ということで。

ややもすれば想像に終始しがちかな進化のトピックですが、RNA進化に
実験生物学で切り込んだ邦文総説集としてはこれまでにない特集号に
なっていると思います。
「進化を語り出したら研究者の人生の終わり」という時代の終焉を読者
には感じ取っていただればと思います。」


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