The 5'-7-methylguanosine cap on eukaryotic mRNAs serves both to stimulate canonical translation initiation and to block an alternative pathway.
Mitchell SF, Walker SE, Algire MA, Park EH, Hinnebusch AG, Lorsch JR.
Mol Cell. 2010 Sep 24;39(6):950-62.
5’-7-Methylguanosine Cap構造は正規な翻訳開始を促進するとともに非正規な翻訳開始を阻害する
翻訳開始は 大きく分けて1) リボソームサブユニットとmRNAの結合、2)スキャニング、3)開始コドンの認識 、4)60Sサブユニットの参加という4つの段階があると考えられています。
リボソームがmRNAに結合するためには先ずmRNAの5’ UTRの二次構造をほどく必要があります。この過程はeIF4Fに含まれるRNAヘリケースであるeIF4AがeIF4Bの助けを借りて行うと考えられています。続いてeIF4FのサブユニットeIF4Gがほどかれた5’ UTRの末端に結合し、最後に43S PIC (40Sリボソームサブユニット+eIF1+eIF1A+Ternaly complex (TC, eIF2-GTP-tRNAi(Met))+eIF3) がeIF3とeIF4Gとの相互作用を介してmRNAに結合します。その後43S PICはeIF1, eIF4F, eIF4Bらの働きによってmRNAを5’-3’方向にスキャニングにすることによって tRNAi(Met)のアンチコドンと相補的な開始コドン(AUG)を見つけ出し48Sリボソームを形成し、60Sリボソームサブユニットの参加により成熟した80Sリボソームが完成します。
真核mRNAの特徴といえば5’末端のCap構造と3’末端のPoly(A)配列です。5’Capは翻訳開始の促進、mRNAの安定化という役割が有名です。なぜ5’ Capが翻訳開始を促すかといえば「 eIF4F (eIF4E+4G+4A) がmRNAに結合するときに5’Cap構造はeIF4Fを構成するタンパク質の一つeIF4Eと結合することによってeIF4FのmRNAへの結合を促進し、eIF3を介した40Sリボソームのリクルートを促進するため」というのが教科書的な回答であると思います。細胞内、または、有核細胞由来のライセート内では確かにCap構造やPoly(A)配列が翻訳に必須ですが、ウサギ網状赤血球由来のライセート内ではCap構造及びPoly(A)配列は翻訳に必要ではありません。5’ Cap及び3’ Poly(A)配列は、非特異的なRNA結合タンパク質(例えばYB-1等)の量が多く、eIF4Fの量が限られた環境、つまりeIF4Fと 非特異的なRNA結合タンパク質 がmRNA結合において競合している環境において、eIF4F (eIF4G)のmRNAへのアフィニティーを高めることによって翻訳開始に貢献すると示唆されています。一方、 Cap構造はeIF4FのmRNAへの結合には全く影響を与えず、スキャニング段階に寄与しているのではないかと示唆する報告もあります。
翻訳開始機構は詳細な解析が進められ有力なモデルがたてられていますが、多段階のプロセスから成り、多数の因子が関わっていることから、それぞれの翻訳開始因子やCap構造が翻訳開始機構においてどのような役割を果たしているかは未だに完全には明らかになっていません。
著者らは2002年に最もシンプルな翻訳開始の再構成系を酵母の因子を用いて立ち上げました、その時用いたmRNAは構造のないRNAでmRNAリクルートメント因子が必要なかったのですが、今回著者らは自然のmRNAの43S PICへのリクルートメントを再現する系を完成させました。彼らはこの系を使って翻訳開始因子のmRNAの43S PICへのリクルートメントに与える影響、また5’ Capの機能について調べました。なお脊椎動物の系では1990年代後半にPestovaらが翻訳開始の再構成を行っています。今回の論文とPestovaらの論文の異なる点は、Pestovaらがtoeprintで翻訳開始を研究したのに対し本論文では43 PICとmRNAの結合をネイティブゲルを用いたゲルシフトアッセイを用いて実験した点、 二つ目は用いた生物種が異なる点です。著者らは酵母を用いることで脊椎動物を用いた系では解析できなかったeIF3の43S PIC形成以降の翻訳開始における機能を明らかにしました(脊椎動物ではeIF3は40SリボソームとTCとの結合に必須ですが酵母では必須でないためeIF3の43S PIC形成以降の機能を直接調べることができます)。
主な結果を以下に記します。
1.eIF4 (4E, 4G, 4A, 4B)とeIF3は43S PIC (この論文の43S PIC = 40Sリボソーム小サブユニット+eIF1+eIF1A+TC)とmRNAの結合を促進する。
2. eIF3 のみが存在すれば43S PICと Uncapped mRNA (5’ monophosphate)は結合する(toeprintでは適切な位置にシグナルが入らないため異常な結合と言える)。
3.5’ Capが存在するとeIF3に加えてeIF4 (4E, 4G, 4A, 4B)も43S PICとmRNAの結合に必要になる。
4.5’ Capのtriphosphate部分はeIF4因子非依存的な43S PIC-mRNA結合を阻害する。
つまり uncapped RNAは eIF3のみ存在すれば43S PICと結合できる一方、Capped mRNAは eIF3に加えて eIF4 (4E, 4G, 4A, 4B)が43S PICとの結合するために必要となることが明らかとされました。eIF3のみによるuncapped RNAと43S PICの結合は、開始コドン上で形成される正規な43S PICとmRNAの結合とは異なり、toeprintで適切な位置にシグナルが入らない異常な結合です。Cap構造はそのような異常なmRNA-43S PIC結合を阻害し、スキャニングや開始コドン認識に必要なすべての開始因子から作られる適切な翻訳開始複合体のみをmRNAにリクルートする、いわば翻訳開始の「門番」としての役割を果たすことが分かりました。
No comments:
Post a Comment