A Pumilio-induced RNA structure switch in p27-3' UTR controls miR-221 and miR-222 accessibility.
Kedde M, van Kouwenhove M, Zwart W, Oude Vrielink JA, Elkon R, Agami R.
Nat Cell Biol. 2010 Oct;12(10):1014-20. Epub 2010 Sep 5
【論文内容のまとめ】
p27はcyclin-dependent kinase (CDK) inhibitorのひとつで、CDK2/cyclin E複合体の活性を阻害することで細胞周期の進行を抑制する。p27の発現は細胞周期休止期において高く、細胞周期進行期では低いことが知られている。先行研究よりp27はmiR-221/222 による発現制御を受けることが明らかになっていたが、著者らはmiR-221/222の発現量、p27 mRNA量がともに細胞周期の状態により変動しないことを見出し、細胞周期休止期ではp27 mRNAがmiR-221/222の抑制制御から逃れる仕組みが存在するのではないかと考えた。そしてp27 mRNAの3’UTRに結合するRNA結合タンパク質Pumilio (PUM) の解析から、PUM結合による局所的なp27 mRNAの2次構造変化により、細胞周期に依存したmiR-221/222によるp27の発現制御の切り替えがおきていることを明らかにした。
Pumilio (PUM) は進化的に保存されたRNA結合タンパク質で、標的mRNAの3’UTRにあるPumilio Recognition Element (PRE) に結合し、そのmRNAの翻訳活性や安定性を制御する。先行研究よりp27 mRNAはPUMが結合するmRNAのひとつとして同定されていたが、実際PUMをノックダウンするとp27の発現が上昇し、p27の機能 (S期移行阻害) が亢進したことから、PUMはp27の抑制因子であることが明らかとなった。またPUMをノックダウンするとmiR221/222によるp27の発現抑制効果が損なわれることから、miR221/222によるp27の発現抑制にPUMが必要であることがわかった。p27 mRNAの3’UTRには2つのPREが存在し、そのひとつはmiR221/222標的サイトの近傍に位置する。p27 3’UTRの2次構造予測から、miR221/222標的部位とPUM結合サイトはステムループ構造を形成しうることが示唆された。さらにこの構造が細胞周期休止期にはclosedフォームを、進行期にはopenフォームをとること、openフォームになるにはp27 mRNAのPREへのPUMの結合が必要であることを見出した。またPUMのp27 mRNAのPREへの結合活性が、細胞周期休止期では低く進行期では高いというように細胞周期依存性を示すこと、進行期でのPREへの結合活性の上昇が、PUM1のSer714のリン酸化 (PUM1のS714はEGF刺激により急速にリン酸化されることが報告されている) と PUMタンパク質量の増加に依存していることを明らかにした。
上記の結果から、細胞周期休止期ではp27 mRNAのmiR221/222標的サイトがPREと2次構造を形成しているためmiR221/222がアクセスできず、miR221/222によるp27の発現抑制がオフになっているが、細胞周期再開のシグナルを受けると、PUMのリン酸化およびタンパク質量の増加によりp27 mRNAのPREへの結合活性が増強することにより、miR221/222標的サイトの2次構造がopenになりmiR221/222によるp27の発現抑制がオンになることが示された。
【コメント、議論となった点等】
ReplyDelete・(Fig. 1d, 4b) MG132処理でみられるp27タンパク質の蓄積から翻訳が抑制されていないという結論は出せないのではないか。(このデータから翻訳抑制されていないという結論は出せない。)
・(Fig. 1e) 内在Ago2-IPで標的mRNAの結合を検出するのはかなり難しい。エラーバーが大きく本当に信頼できるデータなのか疑わしい。
・(Fig. 3a) Cy3ラベルしたRNA オリゴが核に局在しているようにみえるが、なぜか。RNA オリゴはcap付加等の修飾をしているのか。
(Cy3ラベルしたRNAオリゴが非特異的にクロマチンに結合するため、核局在しているようにみえるという記載がある。RNA オリゴの修飾について特に記載はない。)
・(Fig 3a) Cycling cellでのPUM1タンパク量の増加を示しているが、GFP-PUM1発現ベクターをマイクロインジェクションした細胞での蛍光レベルをみるとむしろ減少しているようにみえるのはなぜか。(理由は不明。マイクロインジェクション後、オーバーナイトで蛍光観察をしていることから、発現時間が短いことが原因のひとつなのかもしれない。)
・発現させたPUM1-WT, S714A, S714Eの発現量に差はないのか、Ser714のリン酸化がCyclingでのPUM1の発現量の増加の原因なのか。
(PUM1-WT, S714A, S714Eの発現量に大きな差はないことがFig.S4に示されている。このことからCyclingでのPUM1のタンパク質量の増加はSer714のリン酸化に起因するものではなさそうである。)
・(Fig. 5b,c) FLIMでのRNA オリゴの蛍光寿命は数nsと非常に短く、CyclingとQuiescentでの差も0.3~0.4nsとごくわずかである。これらは測定時のわずかな温度変化によっても影響をうけることが予想されるが、本当にこの差が信頼性のあるものなのか。
・p27のmRNAの量が減少しないのは、PUMが結合していて分解が阻害されることが理由なのか。(理由はよくわかっていないと思う。)
・(Fig. 5b) strong, weak mutantのRNA オリゴはmiRNA結合サイトとPREのいずれに変異が入っているのか。
(strong mutantはPREに変異が入っており, weak mutantはmiR221 target siteに変異が入っている。)
・p27 mRNA 3’UTRに存在するもうひとつのPREは関与しないのか。
(Fig. S8に2つめのPREの変異でもmiR221/222によるp27発現抑制が損なわれることを示唆するデータがあるが、2つめのPREがどのように機能しているのかは不明であり今後の課題といえる。)