January 19, 2011

やはり海外

中川さん、泊さんから海外留学についてのお話がありましたので、もう一つ下の世代の意見として僕も一筆書かせていただこうと思います。

私は現在32歳で、おそらく海外留学人口の減少まっただ中の世代に当たります。減少傾向の理由については既にいろんな理由が挙げられていますが、そんな中で私は海外のラボで(半ば強迫観念にかられて)ポスドクをするという選択をしました。理由は二つあります。まず、私の身近な先輩方が学位取得後はみんな海外へ渡られていたということ。研究者を続けるなら当然海外経験は必須だと刷り込まれましたし、国内でのポスドクを選ぼうものなら裏切り者・臆病者のそしりを受けかねない雰囲気がありました。もう一つは、RNA学会等を通じて学生の間に帰国組の方々の圧倒的とも言うべきクオリティーを肌で感じることが出来たからです。中川さんが「格好いい先輩方」と表現をされていますが、僕にとっては「恐るべき先輩方」でした。
自分よりセンスも才能もある方々が海外で経験を積んでいるのに、ここで自分が海外に行かなければますます差が広がる一方じゃないか。動機としては消去法的で良くないのかもしれませんが、留学を終えた今、あながち間違ってはいなかったと感じています。

泊さん、中川さんの投稿で「留学せずとも国内で良い研究が出来る研究者が増えている」とありました。留学しないという選択の根拠として真っ先に挙げられるものの一つだと思いますが、これは正確ではありません。正しくは「留学せずとも国内で良い研究が出来る研究者が増えているが、そのような研究者は今なおほんの一握りに過ぎない」と言うべきでしょう。研究は世界中で日々進展しているわけで、日本で日常的に触れられるのはやはり世界の一部に過ぎません。国内での研究=世界での研究となるような独創的な研究が行える人は希有な存在で、大多数の人にとっては留学して価値観も背景も違う環境で苦しみながら自分のサイエンスを切り開く経験が大きな糧になります。またそうして初めて日本のサイエンスの現状を正確に捉え、お酒を飲みながら「これだから日本のサイエンスは」などと語る言葉にも説得力が出ると言うものです。「国内一本でも素晴らしい成果を挙げている人がいるんだから、自分も留学しなくても大丈夫」というのは、僕にしてみればよほど腕に自信がある人か、そうでなければ現実から目を背けた逃げ口上にさえ思えます。

もちろん海外留学のデメリットや個々人の事情もあるとは思いますが、研究者としての道を歩もうと決意した若い人たちには、期間の長短に関わらず一度は海外へ出ることを強くお勧めいたします。

神戸大学・三嶋

1 comment:

  1. 「留学しなくても大丈夫」というのは、よほど腕に自信がある人、
    というのは全くその通りだと思います。学位を取った時の実力を1とすると、独立した研究を自分で遂行するのに必要とされる実力は100ぐらいだとおもうのですが、それだけの成長を国内だけで達成しようとするとよっぽど禁欲的な生活か恵まれた環境が必要でしょう。もし研究者としてメシを食っていこうと思ったら、遠回りに見えて意外と近道だったりするのが「留学」、なのだと思います。

    中川

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