とある縁からこんな本を読む機会がありました。
「女性科学者に一筋の光を - 猿橋賞30年の軌跡」
猿橋賞はすぐれた研究を(現在形で)行っている女性研究者に贈られる賞です。私達の世代(40代半ば)のほんの少し前までの女性研究者は本当に大変だったようで、綺羅星のごとき猿橋賞受賞者でさえ、当時の偏見による苦労をしのばせる言葉を多々書かれてます。ただし、この点に関していえば、今は随分と変わったのではないかと思います。優秀な女性研究者が多数活躍されており(この領域にも昨年の猿橋賞受賞者である塩見さんをはじめ、何人も参加されています)、個人的には「女性研究者」という言葉そのものに多少の抵抗さえ感じます。年配の女性研究者が少ないこともあって、偏って男性研究者が多いことも事実ですが、差は減少する方向にあると思いますし、誤解を恐れずに言えば、将来的にはおそらく解消されると思います。
さりとて、社会は変わったか。どうでしょうね。少なくとも男性側がまだまだ甘えている部分はあると思います。わたし自身、色々と言い訳をしながら専業主婦である妻に頼りっきりで、彼女の全面的なヘルプがなければ研究を続けることはおろか、三人の子供を育てることも適わない(ただいま奮闘中です)というていたらくです。ただし、今はそういう甘っちょろい考えの男性は少なくなりつつあるような気がします。共働きという言葉が死語になるくらいに女性の就業率が高くなれば、そして十分な数の保育園があれば(子供手当よりも大事だと思うんだけど)、もっとはっきりと変わってくるでしょう。社会がもっとまともになるまで男女共同参画という言葉にはまだまだ意味があるし、そういう意識を持っていることは大事ではないかと思います。猿橋賞は、女性研究者という枠が取り払われ、取り立てて顕彰する必要がなくなれば終了するという趣旨だそうですが、少なくとも社会的にはもう少しの間必要なのかもしれません。
影山裕二
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