June 28, 2010

新潮流

先日、僕自身のホームグラウンド学会である発生生物学会の年会に参加してきました。

ここ数年で発生生物学会は大きく変わりました。一つは、国際化・英語化の促進。セッションは全て英語化され、ディスカッションが盛り上がらなくなった、と嘆く人もいれば、やっと海外にむけて情報を発信できるようになった、と喜んでいる人もいるようです。学生さんにとってはきつい学会になったとか言う声も聞かれますが、言語の習得なぞ若けりゃ若いほど上達は早く、それでもって多くのシニアな世代のPIは英語は苦手ですから、こと学生さんにとっては下克上のチャンス到来!と捉える方が自然でしょう。

もう一つは、ホモログ取り仕事の急速な終焉と数理生物学の台頭。ショウジョウバエで解析が進んだ遺伝子のマウスホモログやトリホモログの機能解析をしているだけで脳内ドーパミン大放出という時代はとっくに終わっていたのですが、ここ数年でそれはさらに拍車がかかり、文明としては滅亡しましたね。それと入れ替わるように勃興してきた数理生物学。猫も杓子も数理生物学。数式が分からなくても数理生物学。そこまで魂を売らなくても、、、という気がしなくもありませんが、既存の枠組みが急速に壊れつつあるのは間違いありません。Belousov-Zhabotinsky反応が発生生物学会のシンポジウムで話題になるなんて、誰が予想したでしょうか。人が「面白い」と思うことはこうも急速に変わってしまうのか。興味の根っこのポイントにしっかり碇を降ろしておかないと、あっという間に潮に流され太平洋のど真ん中、てなことになりそうです。

さて、来月には日本RNA学会があります。RNAをキーワードとする研究領域にも、RNA seqなり、Chip-On-Chipなり、新技術の波は確実に押し寄せてきてはいますが、既存の枠組はどう変わったのでしょうか。僕自身はRNA学会に出入りするようになってまだ数年しか経っていないので良く分からないのですが、設立当初と今年の学会を比べて、セッションの内容も随分変わってきているのではないでしょうか。ヘテロクロマチンなんて昔は誰も見向きもしなかった、とかいう話を聞いたことがありますが、いまやノンコーディングRNAが制御する遺伝子発現制御の一大スターです。10年後のスターとなるような話が今分かれば苦労しないんですが。そういう面白い話に沢山出会えるのが楽しみです。

中川

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