本日は某所で講義だったのですが、トランスクリプトーム解析の結果の基本的なところを知らないことに気づいてだいぶ焦りました。
マウスやヒトではpoly A(+)のmRNA型の転写産物のうち、種類としては半分ぐらいがタンパク質をコードしないRNAである、というのは良く耳にするし、実感も伴っているのですが、はて、ショウジョウバエではどうだったか、ということを考えたら、自信がなくなってきました。数時間後には講義。知らなくても良い知識に関してはバッチリ教えてくれるはずのGoogleを慌てて検索するもヒットせず。こりゃやはり知らなくては困る知識なのだなあと妙なところで関心、、、している場合でなく、すがる思いで影山さんに電話するも非情の留守電。基本に戻ってPubmed検索に戻って事なきを得ました。
要するに、転写産物の半分ぐらいがタンパク質をコードしていないというのは、珍しいのだ、ということが良く分かりました。ショウジョウバエでも、線虫でも、転写産物の9割方はタンパク質をコードしているのですね。
ゲノムのサイズは漠然と生物に対して抱いている複雑さの感覚とマッチしているところがあって、大腸菌、酵母、ショウジョウバエ、マウス、とたどっていくと、おおまかにいうと10の6乗、7乗、8乗、9乗とちょうど一桁づつ大きくなる、というのは、僕が学部生の時から、言われていました。当時はトランスクリプトーム解析など始まる前で、常識として感覚的にすり込まれてはなかったのですが、普段余りにもノンコーディングRNAに身近に接している分、ノンコーディングRNAが他の生物でも当たり前にある物だと、ましてや高度な体制を持つショウジョウバエでもマウスぐらいに普通にある物だと錯覚していました。恥をさらすようですが。
もちろん、不安定な転写産物を入れたり、近年大ブレークしているRNA seqの技術を使って見えてくる転写産物のことを考えれば、ノンコーディングRNAは広く生物界にありきたりの存在なのでしょう。しかしながら、「普通に」長いRNAをとってきて、「普通に」そういうものがある、半分ぐらいある、というのは10の9乗オーダーのゲノムサイズを持つ生き物だけと言ってよいのでしょうか。いい加減なことを言っていたらごめんなさい。
ちなみに、この手のノンコーディングRNAの多くは、エンハンサーがらみの配列から転写されているもの、と、これまた勝手に解釈しています。比較ゲノム解析から特定の遺伝子のエンハンサーをディープに解析しておられる方からの又聞きですが、迷ったときにはESTが貼り付いているエンハンサーを使え、だそうです。転写されているから使われているゲノム領域なのか、使われているから転写されているのか、良く分かりませんが、いずれにせよ、ノンコーディング領域のゲノムをpolIIに解放している生き物は、それなりにゲノムサイズに余裕がある生き物だけ、なのかもしれません。
中川
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