September 2, 2010

Malat1 (2)

まずはMalat1の局在についての解説です。主にプラシャンのMolCellの論文の内容です。


これは核内でのMalat1の局在で、ホルスタインのぶちみたいに見えるのがSRタンパク質などのスプライシングの貯蔵庫と言われている「核スペックル」と呼ばれる構造体です。綺麗だなあ、というのが僕自信初めてMalat1の局在を見たときの最初の印象で、綺麗なものに心惹かれるのは、男の、もとい、人の常でしょう。マウスでは約7 kbの大きさのこのノンコーディングRNA。核内に数千分子はあるといいますから、核酸の量としてはかなりのものになります。


1. 切っても切ってもMalat1
では、Malat1のどの部分がこの核スペックルへの局在に必要なのでしょうか。とりあえず4分割したフラグメントを放り込むと、2番目と4番目のフラグメントは核スペックルに行きます。1番目と3番目は核内にあるものの、別のドメイン。従って、2番目と4番目のフラグメントはMalat1を核スペックルにつなぎ止めるのに必要で、1番目と3番目はそれ以外の機能を持っていると考えられます。興味深いのはこの1番目と3番目のフラグメントは、内在のSRタンパク質の一つ、SRSF1の局在を変化させる(つまりドミネガみたいに効いている)ということです。イメージとしてはこんな感じ。

          SRSF1                  SRSF1
Malat1: 111111111--222222222--333333333--44444444
                   (speckle)            (speckle)


それにしても、ちぎってもちぎっても核に局在するところは、Gomafuそっくりです。一般的に核内の長鎖ノンコーディングRNAは体全体に核内繋留シグナルを持っているんでしょうか。

2.Malat1を寄せるタンパク質
もう少し詳しくMalat1の核スペックルへの繋留をみてみましょう。彼らは決め打ちでPrp6とSONというタンパク質に注目しています。このあたりは研究者としての感とセンスの良さが問われるところですが、プラシャンはセンス抜群ですから、すぐ正解にたどり着くわけですね。実際はセンスというのは失敗にめげない不屈の意志だと思いますが。Prp6をsiRNAでたたいてやると、Malat1は不安定化して核全体に散らばります。SONをたたいた場合はちょっと様子が違って、安定性は変わりませんが、核スペックルから外れて核全体に散らばります。ですので、核スペックルにつなぎ止めているのはおそらくSON、Prp6も何らかの形で関わっている、ということになります。イメージとしてはこんな感じ。

          SRSF1                  SRSF1
Malat1: 111111111--222222222--333333333--44444444
                      SON                  SON
                   (speckle)            (speckle)


3.Malat1に寄せられるタンパク質
では、Malat1は、スペックルにいて何をしているんでしょうか。ここで核内ノンコーディングRNAのノックダウンの登場です。通常核内にはRNAiを司るAgoの複合体は存在しないとされているので、世間一般でよく使われるsiRNAは切れ味が悪い。ところがDNAオリゴを入れてやると、核内に豊富に存在しているRNAseHの活性で、ターゲットのRNAを分解することが出来ます。これは産総研の廣瀬さんのこの論文に詳しいです。この手法でMalat1をたたいてやると、綺麗にSRP1の局在が変わります。のみならず、SF1やらU2AF65やらSF3a60やらといったスプライシング反応に関わるSRタンパク質以外の局在もめちゃめちゃに変化します。凄いぞMalat1。

表現型や、分子メカニズムに関しては、また次回。

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