September 14, 2010

Journal Club

Mammalian microRNAs predominantly act to decrease target mRNA levels.
Guo H, Ingolia NT, Weissman JS, Bartel DP.
Nature. 2010 Aug 12;466(7308):835-40.

miRNAは自身と相補的な配列をもつ標的遺伝子の発現を負に制御することが知られている。miRNAによる標的遺伝子の抑制は、翻訳効率の低下またはmRNAの不安定化のどちらか、または両方によって起こるが、この二つの現象の相対的寄与度はほとんどわかっていない。そこでこの論文では、外来のmiRNAを細胞に導入した場合と内在のmiRNAをノックダウンした場合に応答しておこるタンパク質量の変化を、『リボソームプロファイリング』という手法を用いて網羅的に解析した。リボソームプロファイリングでは、翻訳中のリボソームに保護されたフラグメントと、total RNAからpolyA(+)のmRNAをとってきてランダムに断片化したmRNAのプロファイリングを比較することで、mRNA量の変化と翻訳効率を直接比較することができる。
その結果、HeLa細胞にmiR-155またはmiR-1を導入した場合(二つとも内在には発現していないmiRNA)、3’UTRにmiRNAのターゲットサイトを1つ以上もつ遺伝子では、mRNA量の減少が見られた。またマウスの好中球中に発現している内在のmiR-223をノックダウンした場合は、そのターゲットサイトを3’UTRに1つ以上もつ遺伝子においてmRNA量の増加が見られた。それに対し、各々の翻訳効率をリボソームプロファイリングにより調べると、若干の減少または増加はあるもののmRNA量の変化ほどではなかった。このことから、この論文では『翻訳抑制は起きていない訳ではないが、miRNAによるタンパク質減少のほとんどはmRNAの不安定化で説明ができる』という結論を出している。
ここで注意しなければならない点は、この実験ではある時点でのスナップショットを見ており、そこに至る過程については観察できないということである。最終的にはmRNAの分解に行き着く運命であっても、その過程でmRNA本体の分解を伴わない翻訳抑制が起きている可能性は大きい。また、通常脱アデニル化が起きたmRNAは翻訳されず分解へと進むが、ある状況においてはそのようなmRNAも再度ポリアデニル化され翻訳されるようになる、という報告もある。さらに、観察した時点でmRNAの分解を伴わない翻訳抑制が起きていたとしても、それが少数だった場合、この解析法ではノイズなどに埋もれてしまいそれが見えてこないことも考慮しなければならない。
議論の絶えないmiRNAによる翻訳抑制であるが、今後の進展を期待する。

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