September 26, 2010

Torontoの人々(2)

 Blencoweさんの論文を見ていると、トロント大学の他のメンバーの多くが共著者に入っていますし、彼自身も他の人の論文によく名前が入っています。Timothy Hughesさん、Quaid Morrisさん、Brendan Freyさんなどが代表例ですが、泊さんがこのブログでちょっと前に触れていた、遺伝子間領域から読まれているノンコーディングRNAって思ったほど多くないんじゃない?という論文も、このグループからの報告ですね。あっはっは、あれか。あの論文は出すのにクソ苦労したんだぜ、まったく!とかMorrisさんが言っていましたが、今の時流に真っ向からケンカを売るような論文でしたから、それはそうだったと思います。また、同じビルにはショウジョウバエの全遺伝子!について転写産物の局在を調べた圧巻の論文を出したHenry Krauseさんもいます。

 これだけいろんな人がRNAがらみの論文を出しているのだからトロント大学ではさぞかしRNA研究が盛んなような気がしていたのですが、Blencoweさんによれば、いやそれほどでもないよ、アメリカの大学にくらべればずっと数は少ないし、例えばスプライシングの研究をしているのはカナダでは僕の所とSherbrook大学のChabot Benoitの所ぐらい。トロント大学で最初っからRNAを中心に置いた研究をしているのは僕のとこぐらいだよ。だそうです。Timothyさんは2001年のアジレント社のNature Biotechnology論文の1st author、Morrisさんはもともと転写因子の結合サイト予測の人、Freyさんのバックグラウンドに至っては機械学習!だそうです。こういったコンピューターを多く使う人との共同研究が今の彼の仕事の成功の大きな要因になっている気がするのですが、やはり分野が大きく違うだけに、なかなか一筋縄ではいかなかったようです。最近Natureの表紙を飾ったスプライシングコードの論文など圧巻なのですが、実験とコンピューターの両方の分野をつなぐポスドクを探すのに2年、アレイデーターを集めるための条件を最適化するのに2年、さらに解析にも相当の時間がかかったとか。いずれにせよ、Donnelly Centerでは最高のバイオインフォマティシャンをヘッドハンティングし、ベンチで実験をするチームと強力なタッグを組みながら、いわゆる大規模シークエンサーのデーターを次々と解析できるパイプラインを作り上げていっています。

 Interdisciplinaryな連携というのは口で言うは易し、行うは難し、です。結局の所、だれかハブ空港になれる人がいないと、本当の意味での連携など有り得ないのでしょう。

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