MENε/βのノックアウトマウス作製はかくしてスタートしたのですが、そのころ気になっていたのが廣瀬研から投稿されたパラスペックル論文の行方でした。なんでこんなにシンプルで分かりやすいメッセージなのに、とうぜん落ち着くべきところに落ち着かないのだろう、、、と、端から見ていても歯がゆいぐらいでした。確かに、とかく論文を出すというのは時間のかかるもので、これはパラスペックルとは全く別の話ですが、僕自身が遭遇してきた典型的な例で言えば、、、
2007/12/下旬 quick 5 hours rejection by Neuron&Nature neuroscience
(3ネンカケタ力作ガ、タッタノ5時間デ、リジェクトカイナ、、、)
2008/1/8 Dev Cell Submission
ありがと。目を通してみるわね。
2008/1/8 Editorial Decision
んー、おもしろいかもしれないけど、ちょっと実験たらないんじゃない。これを足したら考えてあげないわけじゃないけど、いまのままじゃ、だめね。じゃね。
2008/6/24 DevCell Pre-submission inquiry/submission
ふーん、実験追加したんだー(やんわりと断っていたのに、分かってないわねこの人たち)。ま、レビューには回してあげるわ。
2008/8/13 DevCell Decision
がんばったみたいだけど、やっぱり、あなたは私にふさわしくないって。この人が言ってるの。ごめんね。じゃ、またね。
(最初カラソノキハナカッタナ、、、)
2008/8/26 Development submission
確かに受領しました。
2008/10/29 Development interim decision
レビュー完了です。一人が猛烈に反対しています。彼を納得させてください。
2008/1/20 Development revision submission
確かに受領しました。
2009/2/18 Development interim decision
レビュー完了です。一人がまだ猛烈に反対しています。彼を納得させてください。
2009/2/23 Development re-revision submission
確かに受領しました。
2009/3/24 Development Decision
良い知らせです。おめでとうございます。
一人はまだ何か言っていますが。。。
これぐらいでうまく行けば良いのですが、ものによっては3、4年漂流して、とっくに適齢期を過ぎてしまうものもあります。ただし、なんやかんや言って、こうやってレフリーの意見を取り入れてゆくうちに、論文の完成度自体はどんどん上がってゆくという実感はあります。学位取得を目指す学生さんや、留学前に仕事を完成させたいポスドクの方からすれば気が気で無いところはあるでしょうが、いわゆるピア・レビューはさすがに同業者だけあって、怠けたところには突っ込みが入りますし、このまま出したらヤバそうなところには、そういう警鐘をきちんとならしてくれます。ですので、個人的には投稿後2、3ヶ月待たされたり、実験を追加しているうちに下の子が生まれたり、そのうちもう一人下の子が生まれたり、しているわけですが、どんなに時間がかかっても形にさえなれば別に良いかな、と思っていました。しかるに、2009年のパラスペックル論文。廣瀬研の論文が、一年ぐらいいろいろ回って、追加実験ばんばん要求されて、それでやっとこさ受理された瞬間、なんでひと月も開けずにぼこぼこ他のラボから論文が出てくるのかな、と、かなり釈然としない思いをしたのを良く覚えています。世の中にはインパクトファクターとかいう鼻クソみたいなものがありますが、後から出てきた論文ほどこの鼻クソファクターが高い雑誌に掲載されるのも不思議なことです。とはいえ、あくまでも時代の中で我々は生きている訳ですから、その時代が生み出そうとしている発見というものがあるとするならば、そういうものに複数の人間が同時に関わることになるというのは、別段不思議なことではないのかもしれません。
ともあれ、こういうことがあると、気分が引き締まります。仮想敵国ができると人々は燃えて団結して盛り上がって幸せになる、というのは、冷静時代のアメリカ映画を見ていても明らかです。居もしないライバルを頭に描いて猛然とピペットマンを手に96 plateに立ち向かう。頭の中で流れているBGMはインディ・ジョーンズ。2008年の3月にベクター作りを開始して約半年。神戸のCDBの超速!ノックアウトマウスシステムに乗っかって、2008年8月、待望のキメラマウスが和光の理研にやってきました。
(いつ終わるか分からなくなってきてしまいましたが、もう開き直って、あと2、3回投稿します。が、割り込み歓迎ですので。。。だれか止めてー!という状態とはこのようなことを言うのでしょうか)
いつも,とっても楽しく読ませてもらってます。是非,続報をお願いします!!なんか,パラスペックルというより中川さんの生活環みたいですが・・・。我々研究者の生活環がにじみ出ていてとってもおもしろいです。次の投稿,楽しみにしてます!!
ReplyDelete堀家@金沢大
いよいよ佳境に入ってきましたね。続きが読みたいです。
ReplyDelete影山裕二