April 14, 2011

パラスペックルの話(2)

パラスペックルは別にいらないよ、というこの論文

Paraspeckles are subpopulation-specific nuclear bodies that are not essential in mice.
J Cell Biol. 2011 Apr 4;193(1):31-9.


お台場は産総研におられる廣瀬さんと理研の僕のラボとの、記念すべき共同研究第一弾なのですが、サイエンティフィックな詳しい内容に入る前に、そもそもこの共同研究の始まったきっかけについて、、、

 今からさかのぼること4年半、2006年9月、富士の山麓の裾野でRNA若手の会なる集まりが開かれました。そもそも今のRNA学会は、当時若手研究者だった(いまでも若い!?)現神戸大の坂本さんや井上さん、熊大の谷さんといった方々が中心となって、分子生物学会で神戸に集まったRNA関連の若手研究者を六甲山上に拉致(?)した研究会がそもそもの始まりだったと聞き及んでいますが、その後その研究会はRNA学会へと発展をつげ、しかしながら元々の母体は「RNA若手の会」として生き残り、脈々とその心意気は受け継がれこの研究分野の活力の素となっているとか、、、
 話を戻して2006年のRNA若手の会。横浜国大の栗原さん、産総研の廣瀬さん、それから北里大学に当時おられた若井さんが世話人をされていたのですが、これがかなり気合いの入った会で、恒例のゲスト講演は筑波大の永田恭介さんと阪大の木村宏さん。まずここからして熱いです。うな重とカツ丼を一緒に食べるようなものです。そして質の高い学生さんやポスドクのトークもさることながら、シニアな方々の突っ込みの厳しいこと熱いこと。火照った頭もそのまま懇親会、場所を変えて継続懇親会、さらに継続継続懇親会、、、当時僕自身はRNAの研究ソサイエティとは縁とおく、知り合いと言えば神戸CDBつながりのN村さんとN山さんぐらいだったのですが、これがRNA学会を生み出した噂の若手の会の熱気かと、かなり気圧された覚えがあります。その何次会だったかは忘れてしまいましたが、廣瀬さんとお話しする機会がありまして、生化学的な分画から新規のノンコーディングRNAを見つけてその機能を調べている、でもin situはやったことが無いのでまた教えてください、はいはいもちろん、サルでもできるプロトコール、略してサルプロがありますから今度お送りしますよ、でも百聞は一見に如かずですから、ぜひ一度遊びにきてください、ではそうしましょうか、というようなことにあいなりました。当時(今でもそうですが)mRNAタイプのノンコーディングRNA研究はマイナーな分野で、一部の熱狂的なマニアの間でのみ絶大な人気を誇るVシネマの傍役みたいなものでしたから、同じ学問上の嗜好を持った人とオタクな話ができるのは大変貴重な機会でありました。そして半年ぐらいしてから、廣瀬さんとなぜか皆から御大と呼ばれるS々木さんが候補遺伝子を持って理研にこられ、一通りディスカッションして、世間話をして、じゃあin situしましょうか、と実験に移ろうとしたその時、ふと候補遺伝子の名前でPubmed検索してみたら、この論文がヒット。

なにこれ。もうin situの結果論文になってる、、、、

廣瀬さんが同定されていた候補遺伝子は実はMalat-1とMENε/βだったのですが、よりによって、まさにこの二つの遺伝子の細胞内局在を調べた論文が出ているではありませんか。しかもすでに格調高い名前がそれぞれの遺伝子につけられているのに、ニート1、ニート2と人を小馬鹿にしたような名前を付けなおして(綴りは例のあれとはちがうということを後から知りましたが)。

しかしここから廣瀬研の逆襲が始まります。

(つづく)

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