April 16, 2011

パラスペックルの話(3)

「機能解析」がないからペケ。
ノックアウトマウスでも作ってごらんなさいな、はなしはそれからですな。おとといきやがれ。はっはっ。

僕自身が大学院生の頃は、ショウジョウバエの遺伝学的解析から同定された遺伝子の相同分子を脊椎動物で同定できればとにかく飯が食えていた時代でした。発生生物学の分野では、パターン形成のメカニズムが無脊椎動物と脊椎動物で保存されているという、今となってみれば教養の学生さんでも知っている常識が、とてつもなく刺激的な最先端の知見でした。たとえば、この論文。ともすれば、その遺伝子の発現パターンだけで、ただそれだけで、驚きを持って受け入れられていたものです。僕の初めての論文(といってもアイデアも執筆も指導教官。これをほぼそのまま訳して修士論文にしようとしたら、破門されかけました。)も、相同遺伝子釣りとはちょっと違いますが、「動いている細胞」で「動いていない細胞で発現していると思われている遺伝子」が発現していますよ、という、ただそれだけの報告でした。最終的には論文という形で報告できたものの、最初に投稿した某ジャーナルのレフリーからのコメントが、冒頭の二つでした。レフリーのコメントのファックスを当時の指導教官に見せてもらった瞬間、頭の中では藁人形を持ち出していましたが、冷静に考えてみれば、当然のコメントでした。

機能解析、と簡単に言いますが、それなりに技術的には困難がともなうものです。例えば、僕が大学院生の時に日常的に使っていたニワトリ胚では、いまでこそ現東北大の仲村春和さんが世界に先駆けて開発したin vivoエレクトロポレーション法のおかげでサルでもできるレベルまで簡単になりましたが、当時は遺伝子を導入する方法がほとんど確立されていなかったのが実情です。リポフェクションがリン酸カルシウム法に代わり世間を席巻しようとしていた時代で、これまた現東北大の若松義雄さんが秘密のタンパク質分解酵素を組織にふりかけてからリポフェクションの試薬を使うと魔法のように遺伝子が導入できるという奇跡のプロトコールを開発して一部のマニアからは「神」扱いをされていた頃です。その一方で、アフリカツメカエルを使った実験系では、インジェクションで一過的ながらも遺伝子を個体レベルで発現させるのは常識以上の常識。ちぎったり貼ったりした発現ベクターをぶちゅっ、とカエルの受精卵にぶち込めば、サルでも機能解析、つまりもっとも重要な機能阻害実験を行うことができていました。でも、ニワトリではそう簡単にはいかない。とはいえ、学問的にはそんなことは言い訳にはならない。

時代が進んで今日び、特定の遺伝子の機能を実験的に無くしたときの結果が無ければ、サルにも見てもらえません。サルサルしつこいようですが、サル実験を馬鹿にしてはいけないわけで、時代によって要求される実験の進め方なり、データーの並び方なり、それが無いとサルにもなれない(シツコイ!!)実験的な検証手法は常に存在します。テクノロジーとしてのsiRNAはそういう意味でPCR以上に大学院生の生活をたぶん良い方に変えていて、口先だけで夢だけしか語れなかった時代が、きちんとした実験的な機能解析の証拠を引っさげてなまけものの上司にディスカッションを挑める時代になってきたわけです。

が、ところが、核内に存在するノンコーディングRNAに関しては、siRNAがうまいこと働かないことが多いのです。理由は簡単。いわゆるsiRNAやmiRNA経路に働くAgoファミリーはすべて細胞質に存在しており、核内のRNAを分解することができないわけです。それもあって、核内のノンコーディングRNAの機能解析は、一世代も、二世代も、遅れていた感があります。では、どうするか。廣瀬研では、とっておきのテクノロジーが開発されつつありました。

(つづく)

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