いつの間にかガソリンスタンドに並ぶ車列は消え、コンビニの棚にも弁当が戻ってきました。4月だというのに冷え込みは相変わらず厳しいですが、何事もなかったかのように桜の花も咲き始めています。胸中いろいろ複雑なものがあり、気持ちの整理がつかないところもありますが、今それをあえて整理する必要もないと思いますし、年度変わりを一つの契機に、新しい一歩を踏み出していきたいと思います。
さて、領域代表の方からアナウンスがありましたが、国際RNA学会にあわせて第五回Tokyo RNA Clubが開かれます。若い人はTRCなどと略したりしているようですが、現RNA学会会長の塩見さんの声かけで始まったこの会、特に普段日常的に触れることのない海外の研究者との、とても良い個人的な交流の場となっている気がします。これまでは分子生物学会などのイベントにあわせて来日したゲストを中心に4、5人のトーク、という感じでしたが、今回は国際RNA学会に多くのゲストが来日していることもあり、まるまる一日の大イベント、ちょっとした国際会議の趣です。
具体的なプログラムはそのうちまたアナウンスがあると思いますが、非コードRNAの話が中心になりまして、7割は小さいRNA、3割は長鎖のRNA、に関わる話になりそうです。その長鎖のRNAのスピーカーの一人が、Archa Foxさん。現在西オーストラリア大学でご夫婦でそれぞれラボを持っておられて(こういう例は海外に多いですよね。日本でももっと増えれば良いのにと思います)、旦那さんはBondさんという結晶学者です。そう、Foxさんは女性なのですね。某A光さんは身長180センチぐらいの筋骨たくましいひげモジャラのおじさんを想像していたらしいですが、そんなことはありません。まだまだ若い気さくなおねえちゃんであります。
Foxさんの名前は核内構造体の業界の人なら知る人ぞ知る、パラスペックルの発見者です(仕事ぶりから筋骨たくましい姿を想像されていたのでしょうか、、、)。彼女がイギリスはダンディー大学のAngus Lamondさんのラボでポスドクをしていた時、プロテオミクスで見つけてきたタンパク質のいくつかが核内で特徴的なFociを作ることを見いだし、それらがスプライシング因子が集積する核スペックルの近傍にあることから、「パラスペックル」という名前を付けました。
その後、このパラスペックルに高度にイノシン化されたRNAが係留されていること、MENε/βもしくはNEAT1と名付けられた長鎖ノンコーディングRNAがパラスペックルに局在することなどが次々と明らかとなって、この構造体が「何かしているのではないか」という雰囲気が高まってきました。さらには産総研の廣瀬さんらの研究を皮切りにMENε/βがパラスペックルの構造体を作るために必須であるという論文が4連発で発表されるに至り、
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Feb 24;106(8):2525-30.
Genome Res. 2009 Mar;19(3):347-59.
Mol Cell. 2009 Mar 27;33(6):717-26.
Mol Cell. 2009 Aug 28;35(4):467-78.
今ではすっかり核内構造体の主要メンバーの一つである感があります。
しかしこのパラスペックル、いったい何をしているのでしょう?(つづく)
中川
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