August 5, 2010

Journal Club

RNA 2010 May 28;16:893–903

Dicer’s helicase domain is required for accumulation of some, but not all, C. elegans endogenous siRNAs
NOAH C. WELKER, DEREK M. PAVELEC, DAVID A. NIX, THOMAS F. DUCHAINE, SCOTT KENNEDY, and BRENDA L. BASS

RNase III型酵素Dicerは長い二本鎖RNAやstem-loop型RNAから短い二本鎖RNAを切り出す酵素であり、endogenous-siRNA、exogenous-siRNA、miRNAの生合成に重要な役割を果たすが、piRNAの生合成経路には関わらないことが知られている。複数のドメインを持つタンパク質であるが、特にhelicaseドメインの機能は不明なままである。本論文では、線虫C.elegansにおける唯一のDicerであるDicer-1(DCR-1)のhelicaseドメインについて機能解析を行い、一部のendo-siRNAの生合成に重要な役割を果たすことを報告した。

筆者らは DCR-1のhelicase ドメイン変異体3種 (K39A, D145N, G492R)を作製した。これら及び野生型のDCR-1をそれぞれdcr-1(-/-)C.elegans に導入し、そのフェノタイプを比較することでhelicaseドメインの機能を調べている。

1. dcr-1(-/-) C.elegansを微分干渉顕微鏡により観察すると、生殖細胞の異常が認められる。この異常は野生型、helicaseドメイン変異型DCR-1どちらの導入によっても回復した。但し変異型DCR-1を導入した場合、通常(16℃-20℃)よりも高温(25℃)での培養により生殖能が失われた。
2. ノーザンブロットによる解析では、helicaseドメイン変異型DCR-1の導入により、miRNA, enxo-siRNA, piRNAの発現に差は見られなかったが、endo-siRNAの発現量は劇的に減少した。これらのendo-siRNAがターゲットとする遺伝子のmRNAレベルは上昇していた。
3. 線虫や植物におけるendo-siRNA生合成では、primary siRNAの産生に続き、RdRPによるsecondary siRNAの増幅が行われる。Illumina sequencingによる解析により、endo-siRNAの中でも特に26G RNAと呼ばれるクラスのprimary siRNAの減少が顕著に認められた。

以上により、筆者らはDCR-1のhelicaseドメインは26G siRNAの生合成に重要であることを見いだした。しかしながらhelicaseドメインの具体的な働きについては依然として謎のままであり、今後の解析が待たれる。

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