June 19, 2011

浦島太郎、および、実験医学と細胞工学

Tokyo RNA Club、国際RNA学会と盆と正月が一緒に来たような慌ただしい一週間が過ぎ、ようやく日常に戻るというRNA関連の研究者も多いことと思います。きっとこのブログにもレポートが次々とアップされていくことでしょう。

一般に、学会に参加していると逆浦島太郎効果、といいますか、密度の濃い時間を過ごす分、一週間ラボを離れただけでまるで一年ぐらい留守にしたような気分になるものですが、今回は諸般の事情でラボを離れられず逆の立場に身を置き、一週間程度ではなにも仕事が進まないということが良くわかりました。学会の長期出張から帰ってきたPIは異常に活性化されていることが多く、しかも逆浦島太郎効果のせいで、これだけ長いことラボを留守にしているのだからよっぽど仕事は進んでいるだろう。あの実験はどうなった。この実験はどうした。なにー、まだやっとらんだとー、、、気合いが足らんのじゃ気合いが!!、と、そっと「取り扱い注意」と背中にはってあげたくなるような人もしばしば見かけるのですが、いや自分自身その典型なのですが、逆の立場の人間はたまったものではありません。しかし多くの場合、人間というのは弱いものでともすれば楽な方に楽な方に流れてしまいますから、こういう機会ごとに緩んでいたタガを閉め直すのは大切なことのような気もします。また明日から心を入れ替えて仕事をしようと。浦島太郎にならないように。

さて、それはともかくとして今月、実験医学と細胞工学の特集は、どういう偶然かどちらもノンコーディングRNAです。本領域に参加している研究者も顔を出しております。手前味噌ですが、僕自身もかなり気合いを入れて書いたので、もうこれで思い残すことは無い、、、いや、全く逆で、これだけ謎だらけの状況で仕事が中断したら死んでも死にきれない、ヒトダマになってコールドルームに毎晩出てやるうー、ぐらいに感じています。熱い、暑くるしい研究者たちの雄叫びがみっちりとつまった両特集。ぜひ読み比べてください。少なくとも長鎖ncRNA研究の現況については、両者でほぼひととおりカバーできているのではないかと思います。細胞工学の監修をされた佐渡さん。おつかれさまでした。

そういえば、昔はこれに加えて蛋白質核酸酵素という日本語の総説の雑誌もありました。ともすると日本語の総説は英文の雑誌に比べると一ランク下に見られがちで、Nature reviewsから総説の執筆依頼がきたらそれは名誉なことです、と、二つ返事で引き受ける大教授も、日本語の総説となると、ん、うちの学生のなになに君あたりに書かせようかー、ぐらいになっているのが実情なのではないでしょうか。実際問題、日本語の総説は日本語を解する人しか読めないので、世界の研究者の数パーセントかそれ以下の人しか情報にアクセスできません。また、多くの場合、ピアレビューも無い。その一方で、これら日本語の総説誌を出している出版社の日本語のプロトコール本は非常に良く出回っているような気がします。一昔前、「まいどー。本屋ですー。」と、怪しげなオヤジが売り回っていた海賊版のMolecular Cloning やCurrent Protocolはすっかり見かけなくなりました。日本語プロコール本が広まって自然淘汰されたのか、とうとうあのオヤジがお縄になったのか知る由もありませんが。ともあれ、母国語で専門知識が手に入るというのは、ある意味奇跡的です。英語というのがサイエンスへの壁を高くしているのは間違いありません。夕刊フジや日刊ゲンダイを読む感覚でNatureやScienceを読むことが出来たら、、、というか、そういう感覚で彼らは読んでいる訳ですが、もっと気軽にサイエンスを、というのは、なんとなく、常々思うところではあります。

1 comment:

  1. あの本屋さんは今どこにいったんでしょうか。いまなら著作権の侵害で、出入りを許している大学や研究所の責任が問われそうな気がしますが、実はわたしも学生時代にお世話になりました。

    影山

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