December 27, 2010

非コードRNA屋?

神戸大学理学研究科の三嶋雄一郎と申します。中川さんからお誘いいただいたので、神武さんに続いてちょっと書き込ませていただこうと思います。大掃除の気分転換にでも読んでいただければ幸いです。

ここ最近、某歌舞伎役者がワイドショーを賑わしています。彼の名跡は「市川」ですが「成田屋」という表現もよく耳にします。「ん?市川家と成田屋ってどう違うの?」と思って調べてみますと、歌舞伎の世界では名跡を直接呼ぶのが失礼に当たるので、屋号で「よっ成田屋!」などと呼ぶのが作法とのこと。屋号と名跡がほぼ一体化している噺家とはちょっと違うわけですね(ウィキペディア情報なので間違ってたらご容赦を)。

さて、研究者の世界にも屋号は存在します。
例1:「私は根っからの生化学屋でして…」
例2:「あのAさんってなにやってる人?」「ああ、あの人は発生屋さんだよ」
という感じで、その人のバックグラウンドを(何となく)掴むにはとても便利な表現です。これを使って自己紹介をさせていただきますと、私はゼブラフィッシュ使ってmicroRNAの生理機能と作用機序に興味を持って研究を行っていますので「microRNA屋」ということになるでしょうか。もう少し細かく分類すると「翻訳制御屋」、あとは使ってるモデル生物から取って「ゼブラ屋」なんかも当てはまりそうです。

では周りの皆さんは。。。と領域内を見回しますと、「RNA屋」もちろんのこと「発生屋」、「エピジェネティクス屋」、「構造屋」、などなど非常に多彩な屋号が見受けられます。これはまさに非コードRNAという研究領域の重要性、新鮮さ、アクティブさを表していると思います。一方で、それぞれの確固たるバックグラウンドがあるせいか「非コードRNA屋」というイメージがパッ出てくる方が少ないのもまた事実。特にmicroRNAをやっていますと、一流の研究者ほど軽々と屋号の壁を超えてmicroRNAを取り入れ、そして去って行く傾向にあるように感じます。屋号で研究者を分けるのはもう古いのかも知れません。

伝統を重んじる歌舞伎の世界では一度名乗った屋号を変えるのは非常に稀なようですが、研究の世界では時に屋号の壁を打ち破らねばインパクトのある仕事ができません。「非コードRNA屋」が世間に定着するのかどうか、また自分が「非コードRNA屋」に留まるのかどうか。日本の非コードRNA研究の最先端を走る皆様との交流を通じて、その答えが見出せればいいなと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

それでは皆様、よいお年を!

1 comment:

  1. 非コード屋とかいうと非行少年(死語)みたいでイヤですね。僕自身は「染め物屋」、というのがいちばんしっくり来ます。三つ子の魂百までとは良く言ったもので、なかなか自分の殻から抜け出るのは難しいものです。ベンザーは50を過ぎて分子生物学から神経生物学の世界に入っていったわけですが、いつまでもそういう気概を持ち続けていたいものです。

    中川

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