April 8, 2013

細菌感染はじめました

こんにちは。鈴木研究室の木村と申します。
先日Tokyo RNA Clubで発表させていただきました。いろんな方とディスカッションができ、とても楽しかったです。ありがとうございました。

このブログの読者の方々には少ないかと思いますが、僕は主にバクテリアを用いて研究を行っています。もっぱら大腸菌を扱っていたのですが、研究の流れから感染性バクテリアであるサルモネラ菌を扱うようになりました。今回は感染性バクテリアについて書こうかと思います。興味を持っていただければ幸いです。

感染性バクテリアの中には宿主細胞の内部で生存、増殖するものがいくつも知られています。通常、バクテリアは真核生物に入り込んでも免疫系によって駆逐されます。しかし、感染性バクテリアは巧妙な機構を用いて宿主の免疫系から逃れ感染を成立させます。そのような仕組みのひとつに、宿主細胞にエフェクターと呼ばれる一連のタンパク質群を打ち込んで宿主の細胞活動をハイジャックする仕組みがあります。

Salmonella secretion switch

この動画はサルモネラ研究の大家であるProf. Holdenのラボが公開しているものです。(最後は少し気持ち悪いので注意してください。)
III型分泌装置と呼ばれる大砲のようなタンパク質複合体を形成し、エフェクターを真核生物の細胞質に打ち込んでいる様子がわかります。まるでスターウォーズの世界ですが、実際にこのようなことが感染の時には起こっているそうです。すごいですね。
エフェクターは細胞の様々な経路をターゲットとします。動画の最初に打ち込むエフェクターは細胞骨格に作用し、バクテリアの取り込みを促進させるものです。(ラッフリングと呼ばれています。)さらにエフェクターの中にはユビキチンリガーゼや脱ユビキチン化酵素も存在していて、宿主内のユビキチンプロテアソーム系を用いてエフェクターの時期特異的発現を制御するようなシステムもあるそうです。すごいですね。

こういうのを見るとバクテリアと動物も一緒に進化してきたものなのだなというのを感じます。感染生物というのは医学的な見地からよく研究されてきていますが、ゲノムが読まれてからのバクテリア、真核生物における急速に進んだ研究結果をあわせていくと、これらの関わりのなかにまだまだ新しい現象を見出すことができるのではないかと個人的に期待しています。


少し文章が固くなってしまったので最後に謎かけを一つ。

感染実験とかけまして、
プロ野球とときます。

その心は


細菌(最近、)感染(観戦)しました。


それでは失礼いたします。

木村 聡

2 comments:

  1. 機会があったら金属がらみの話にいきついた裏話でもして下さい。
    個人的には、serendipityというか、なんというか、思いもかけない発見にビックリしてとても面白かったです。

    中川

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  2. とても魅力的な記事でした。
    また遊びに来ます!!

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