April 20, 2012

Post-Keystone Symposia (3)

年末年始の書類の山が片付きだんだんエンジンがかかって参りました。連日投稿です。班員の皆さん、こんな僕を、どうか自己紹介なり、他己紹介なり、仕事の紹介なり、愛犬と私とハンカチとかで中断してください。。。ここはなんていったって新学術領域公式ブログですから。寡占は許さじ!!そのうち領域代表から当新学術協賛のCDBミーティングのアナウンス、および効能書きがあるはずです。
さて、今回のKeystone meetingですが、本邦、いや、全銀河初の、長鎖ncRNAを主体とした国際ミーティングだった(主催者談)だったわけですが、全体的なコンセプトもしくはホットトピックを一言で表すとすれば、

Pervasive transcription

と、

Chromatin associated RNAs

でしょうか。

Pervasive transcriptionはまだ適切な邦語訳は無いと思うのですが、「ゲノムのあちこちからRNAが転写されている、それってもうダダ漏れ」、という状態を表す言葉です。「ダダ漏れ」というところがミソで、漏れているのは漏れているのですが、「噴射」している訳ではなく、あくまでも「漏れ」です。つまり、大まかなところでいえば、ごく一部の例外を除き、タンパク質をコードする遺伝子しかゲノムから転写(噴射)されていない。でも、あちこちから、いや、ほとんど全ての領域から液漏れ程度の転写は起きている、プロモーターやら機能的に重要なゲノムの領域の転写はもうダダ漏れ、という概念です。

これに関しては肉眼で星を見るのとハッブル望遠鏡で星を見るのとえらく夜空の風景が違うのと同様、新しい技術を使えばそれだけ細部まで細かく見えるようになる、というのとだいぶん事情は似ています。ハイビジョンになって細部が繊細に表現されるようになって、テレビ局のメイクの人の苦労がどれだけ増した事か。眼鏡の度を直して世の中がどれだけ変わった事か。左様。同窓会では眼鏡を外すべし。などと馬鹿なことを言っている場合ではないですが、一昔前までは細部はゲノムのコンタミかもしれないからパス、という考え方もあったと思うのですが、今回のミーティングではその考え方を口にする人はほとんどおらず、たとえ居たとしてもほとんど議論の対象とならず(本当は多いに議論すべきところだとは思いますが)、むしろ、この細部からの転写をとことん観察して何が分かるのか、というところを出発点にしようというのが共通認識だったと思います。もうそこは議論するのはやめようよ、と。

次のコンセプトはクロマチンと相互作用するncRNA。これはXistが嚆矢となって業界に普く広がった概念だと思うのですが、いわゆるアンチセンスの転写産物を中心として、様々なトピックが紹介されていました。右にならえでなんでもかんでも転写制御、エピジェネティックな発現制御に結びつけば大満足、そこで万事終了、なんて思考を停止してはいかんだろう、と思いつつも、これだけいろいろ証拠が揃ってくると、やはりこれは長鎖ncRNAのメジャーな機能の一つなのだろう、という思いを一層強く持ちました。特に、ちょっと昔に一悶着あった高等真核生物の核内でのsmall RNAの機能に関しては、核内Agoを筆頭に、しばしばいろいろなトークで耳にしました。
ゲノムからたくさんRNAが読まれているっていうのはもういいよね、それで多くのものがクロマチンの制御を介して遺伝子発現制御に関わっているみたいだね、というだけでしたら、何を今更、という感じですが、なぜ僕は「取り残される」という感覚を味わってしまったのでしょう?続きは有料サイトで。ではなくて、明日以降。

中川

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