April 6, 2010

Journal Club

これから随時、泊研で行っているJournal Club(雑誌会)で取り上げられた論文の要点を簡単にまとめたものを、紹介していきたいと思います。まずは今年度第一弾です。

Noto T, Kurth HM, Kataoka K, Aronica L, DeSouza LV, Siu KW, Pearlman RE, Gorovsky MA, Mochizuki K. The Tetrahymena argonaute-binding protein Giw1p directs a mature argonaute-siRNA complex to the nucleus. Cell. 2010 Mar 5;140(5):692-703.

背景:

単細胞生物であるテトラヒメナには小核(生殖核)と大核があり、小核は普段は転写が行われていないが、大核は、生育に必須なすべての遺伝子発現を担っている。大核は小核に由来するものの、大核は小核の一部のIEM配列(internal eliminated sequence)を欠失している。IEM配列には、リピート配列やトランスポゾンなどの(生存に必須でない)配列が含まれている。大核からIEMの除去にはscan RNAとよばれるちいさなRNAが関与している。

大核のIEM配列の除去機構については、これまでに以下のようなことが明らかにされている。

栄養条件下では、小核での転写はほとんど観察されないが、飢餓状態になりテトラヒメナが接合する状態になると、小核でbidirectional(双方向の)転写が起きる。それを基質として、Dcl1が約28ntのscan RNAを生成する。細胞質に移動したScan RNAはTwi1(PIW cladeのArgonaute)に取り込まれ、Twi1-scan RNA複合体は古い(接合前から存在していた)大核に移動する。その際、自身と相補的な配列からなる転写産物(ncRNA)があるかどうかのスキャンが行われると考えられている。古い大核においては、IEMが欠損していて転写産物(ncRNA)も存在しないため、IEM配列由来のscan RNAは相補的なペアを形成することが出来ない。そのため、IEM配列と相補的な配列をもつTwi1-scanRNA複合体は、古い大核を飛び出し、次にzygoteから作られた出来たばかりの新しい大核へ移動し、IEM由来の配列からなる転写産物(ncRNA)と結合する。その結果、ヒストン修飾酵素群など(H3K9酵素等)がリクルートされることにより、その領域がヘテロクロマチン化され、最終的にはそれを目印としてIEM部分のDNA配列が切断される(おそらくトランスポザーゼによって(最近同定されています))。古い大核は、そのまま壊され(アポトーシス的に?)、接合した小核由来のあたらしい大核に置き換わる。

Dcl1は小核に、Twi1は細胞質と大核に存在に存在することが知られていたが、Twi1の核局在のメカニズムは不明であった。

結果:

Noto et al., らは、Twi1はスライサー活性をもち、その活性が核への局在に必須であることを示した。また、Twi1と相互作用する因子として、Giw1を同定した。Giw1とTwi1の結合は直接的であり(RNAが媒介していない)、二本鎖scan RNAではなく、一本鎖scanRNAを保持した状態のTwi1とより強く結合する。Giw1の変異体ではTwi1は核に局在することが出来ない。よって、Giw1は、二本鎖scanRNAがunwindして一本鎖scanRNAを保持した状態のTwi1を特異的に認識して、大核へと輸送していることが明らかとなった。

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