July 8, 2012

Malat1のパラドックス(4)ーデザイン違えば結果も違う?

ようやく重い腰を上げてMalat1のノックアウトマウスの表現型=無い、という論文をまとめることにしたのは良いのですが、やはりなにか自分でこれを伝えたい!という強い気持ちが無いと、筆の方も、実験の方も、なかなか進みません。全く表現型がありませんよー、というだけではおそらく全くやる気が起きなかったとは思うのですが、実は、以前、ノックアウトマウスが出来る前に産総研の廣瀬さんから秘密のデーターーMalat1をノックダウンするとNeat1の発現量がなぜか下がるーという話を伺っていました。その当時はそういえばマウスの組織でMalat1とNeat1の発現パターンが結構似ているなあ(Neat1_2に関してはごく一部の細胞でしか発現していないけれども、たいがい、そういう細胞ではMalat1の発現も高い)、ぐらいであまり気にも留めていたかったのですが、実際MEFを作ってみても明らかにNeat1の発現が低い。マウスの組織でin situしてみてもシグナルが薄い気がする。いろいろ調べていくと、すべての組織でそうという訳ではなくて、特に小腸でその傾向が強いということが分かってきました。

メカニズムはよくわかりませんが、これは一応意味のあることかな、ということで俄然やる気が出てきて、一通りのデーターを取り直して論文用の図を作ったり、qPCRやらpolIIのCHIPやらの実験をちょうどその頃研究室に加わってくれたJoさんに手伝ってもらったりしながら、どうやら夏頃には論文の形が見えてきました。

結晶構造の分野では全く独立の研究室で進められていた解析がなぜか同時期に論文になる、ということをよく耳にしますが、それは研究のトレンドであったり、新しい技術の開発であったり、いろんな要素が研究を同調させる方向に向かうからなのでしょう。Malat1に関してもそれは例外ではなく、Malat1をクローニングしたSvenさん、核スペックルといえばのDavidさん、Davidさんのところから独立したPrasanthと僕ら、この3つのグループが本気でノックアウトマウスを作って解析をしようと考えたのは、培養細胞を用いたMalat1のノックダウンの表現型に触発されたのは間違いありません。ちょうどそのころPrasanthがSvenさんにミーティングで会って、むこうのノックアウトマウスも表現型が出ないみたい。どうだろう。Davidのラボのマウスも表現型が無いって言っていたから、3グループで一緒に出そうか。という話になってきました。僕としても全く異論はありませんでしたし、彼らのデーターが出そろうのを待って、まあ遅くとも年内には投稿しようかねえ、ということになり、投稿先やら何やら話し合っていたのですが、一応お互いの手の内をある程度は見せなければ、ということでMalat1のKOでNeat1が減るみたいなんだけど、どうですか、と聞いたところが、、、

「Neat1はうちのマウスでは下がらないよ。David」

彼のメールはいつも極端に短くて行間がないので行後を読まなければならないのですが、明らかに不信感、いっぱい、って言う感じです。しかもSvenさんからも、うちでも変わらんけれどもねえ、と追撃です。MEFにおけるNeat1の発現はバッチによってかなり変動するのでそういうこともあるかなと思ったのですが、あれだけ安定した結果が出てくる小腸におけるNeat1の発現低下とパラスペックルの減少も再現できないとは、、、、

いつの間にか暑い節電の夏はとっくに過ぎて、季節は冬になっていました。

(ふう、次回でやっと終わりそうです、、、)

中川

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