October 22, 2009

non-coding とは?

non-coding RNA とは non-protein-coding RNA をはしょったもので、文字通りタンパク質の鋳型としての情報を持たない RNA のことを指しています。概念としての non-coding RNA は比較的簡単に受け入れられやすいようで、少なくとも研究者の間では広く浸透しているようですが、実験生物学的に何が non-coding RNA かを見極めるのは実はあまり簡単ではありません。

以前にも同様の趣旨の文章を書いたことがあるのですが、ある RNA 分子がいかなる状況においてもタンパク質に翻訳されないことを示せというのは「悪魔の証明」に近いものがあります。siRNA のように数十塩基対程度の非常に短いものであれば、まず間違いなく翻訳されないだろうと皆さん簡単に認めてくださるようです。ところが、ある程度の長さ以上の、いわゆる高分子 non-coding RNA については、ことはさほど簡単ではなくて、例えば、大腸菌の 23S rRNA は 5 アミノ酸からなるペプチドをコードするんじゃないかという報告があったりします(PNAS 1996, 11, 5641-5646)。ついでいうと、真核生物で一番短い ORF は、私達を含めた3つのグループが見つけた polished rice/mille-pattes 遺伝子ファミリーのもので、ショウジョウバエでは11アミノ酸のペプチドをコードしています。単に長い ORF が見あたらないから non-coding RNA というわけにはいかないんですね。

このような事情が、当領域でも使われている「小分子 RNA」「高分子非コード RNA」という言葉にも表れているように思います。高分子の方だけ非コードがついているのは、「短いものはまぁ non-coding RNA でいいけど、長いのは研究を始める前に non-coding かどうか確かめてね」と言われているようでもあります。高分子 non-coding RNA の方は小分子 RNA に比べて extra に苦労しないといけないわけで、このハードルの高さが高分子 non-coding RNA の研究の進展を妨げているというのは、ちょっと穿った見方でしょうか。

ともあれ、本領域の発展に伴い、高分子のものを含めてnon-coding RNA 研究の裾野が広がることを期待しています。

影山

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