August 28, 2014

アシベを求めて(2)

まずはアシベ探しのそもそもから。

いまや定年間近の感もありますが??、Gomafuにも期待の新人、新規ノンコーディングRNAと呼ばれていた時期もありまして、そのGomafuの相棒、アシベ探しは僕のラボでは優先順位第一のテーマでした。2007年ぐらいの頃でしょうか。いろいろ関連文献をサーチして、その時は、Xistを始めとした長鎖ノンコーディングRNAの複合体精製になんでみんなそんなに手間取っているんだろう?と、素人目にはとても不思議に思っていました。タグ付き分子免疫沈降一発&マス解析で転写因子複合体を始めとした各種複合体が次々と同定されていた時代でしたから、RNAにも「タグ」がつけられるMS2やらPP7やら最新のツールを使えばすぐ出来るだろう、と軽く考えていたのですが、RNA業界に出入りするようになって、色々な方々の話を聞くにつれ、その事情がだんだん飲み込めてきました。つまり、

長鎖ノンコーディングRNAの複合体は溶けん!!

と、いう事のようなのです。確かに、全部ペレットに行ってしまったら、アフィニティー精製もヘッタクリもあったものではありません。イオン交換カラムで精製しようとしてカラムを通したらいきなり全部voidに行ってしまったぐらいのショックです。逆転の発想で徹底的に溶けないものを精製してタイトジャンクションの接着分子を突き止めた月田承一郎さんを見習えとばかりに一攫千金を夢見て核分画をひたすらグアニジンとかUreaで洗って残ったのは老舗のhnRNPAやらCとかでしたし、Gomafuのノックアウトマウスは実は結構早い段階で出来ていたので、野生型の脳のlysateをGomafuノックアウトに免疫して複合体に対する抗体が出来ないかなとかいう「あったらいいな」実験をやったりしてみましたが当然何も成果は得られず、やはりここは正攻法で可溶化条件を探すしか無いか、ということでいくつか条件を試したのですが、確かに、確かに、溶けません。いやというほど溶けない。いったんスネだしたら駄々をこねてその場を動かない子供のように、最初の非イオン性界面活性剤のマイルドな処理で不溶性ペレットにいったGomafuは、8M Ureaで懸濁しようが、グアニジンを突っ込もうが、何をしても溶けてきません。ちなみに、奇妙な事に、細胞をいきなりグアニジンに溶かせば、溶けます。ある意味当然ですね。TrizolとかIsogenには溶ける(そもそもtotal RNA回収の時はそうしている)わけですから。このあたり生化学詳しい方がおられたら原理を教えていただければと思いますが、変性条件をだんだん上げていって溶かそうとすると不溶性になってしまうけれども、いきなり超ド級の変性条件に突っ込むと可溶化する(ただし複合体が解離してしまうので使い物にならない)。これは難溶性RNA複合体に共通の性質のような気がします。

 そのころ、I君がラボにjoinしてくれて、アシベの生化学的な同定というチャレンジングな課題に取り組んでくれる事になりました。で、いきなり、実験始めて2週間。

「Gomafu、溶けました。」

ん???あれだけ溶けない溶けないと言っていたGomafuが可溶化出来た、、、だと。
にわかには信じがたかったのですが、たしかに、奇麗に溶けています。

Isizuka et al., Gene Cells (2014) 19, 704- より

どうやらトリックはPBSで、細胞質と核の分画等にはHEPESやPIPESでバッファをとるものが多いのですが(上図のCSKはCytoskelton BufferでPIPESベースの緩衝液です)、リン酸バッファーを使うと、つまり高濃度のリン酸が入っていると、RNAータンパク質複合体は可溶化しやすい、かもしれない、、という狐につままれたようなデータが出てきました(PBS-TXとは単にTritonX100を入れたPBSです)。信じられない事に、Neat1やらXistやらも可溶化されています。これって凄い事なのではなかろうか!しかも、可溶化分画をショ糖密度勾配遠心にかけると、それらのRNA-タンパク質複合体がなんとなくそう思っていた重さのところに分画されてきます。Gomafu複合体とMalat1複合体が同じぐらいの大きさ。Xistがそれより重くて、Neat1が含まれているパラスペックルの複合体が最長不倒距離の重さ。

Isizuka et al., Gene Cells (2014) 19, 704- より

なんだ、この問題、解けたようなものだと軽率に思ってしまった事が、アシベ探しという意味ではドツボの始まりになってしまいました。

中川

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