埼玉大学の村上です。
簡単に自己紹介させていただきます。私は、細胞周期制御に興味を持ち、分裂酵母を使って、どのように細胞周期が制御されているかについて、体細胞分裂と減数分裂の両方について研究しています。なので、非コードRNAとの出会いは偶然によるものでした。
最近では、減数分裂の細胞周期で、分裂酵母で古くからその存在が知られていたMei4というフォークヘッド型転写因子の変異株に興味を持ち研究をしていました。この変異株はかなり古くから知られているだけあって、非常に「きれいな」表現型を示します。「きれいな」というのは、たとえば「この因子は第一減数分裂に必要です」と言っても、実際はただ第一減数分裂が遅れたりするだけだったり、一部のみだったりするのですが、このMei4の破壊株は100%第一減数分裂に進行しません。では、何で止まってしまってるのだろうと思って調べてみると、細胞周期の進行に必須のcdc25+という遺伝子の転写に必要であることがわかりました(2007年に発表)。その後、Mei4がどのような遺伝子の転写制御をしているかというのを、東大の白髭さんにお願いしてDNA鎖をセンス鎖とアンチセンス鎖を区別できる方法でタイリングアレイをやってもらいました。解析すると、‘Mei4で制御され、減数分裂に特異的にスプライシングされる遺伝子’のほとんどすべてにアンチセンス鎖が発現していることを見つけました。しかも、ほぼ100%で一致していたので、アンチセンス鎖が減数分裂特異的スプライシングに何か重要な役割を果たしているのではないかと思い、興奮気味に研究計画を書きました。そして、非コードRNA分野での実績はありませんが、公募で採択されたので非常にラッキーだと思っています。また、研究計画には書いていませんが、自分が研究している遺伝子の近傍に非コードRNAが発現していることがわかったので、その研究も同時に進めて行き、皆様にアドバイスをしていただけたらありがたいと思います。
余談ですが、1年前に名古屋市立大学から埼玉大学に移動しました。関東には14年ぶりですが、埼玉にはほとんど来たことがなかったので、未だに不慣れです。これからよろしくお願いします。
lncRNA関連で酵母の仕事といいますと分子遺伝学を駆使したSRGの話や東大の太田さんの話をまず思い出すのですが、「アンチセンス」とは意外かつ大変興味深いです。アンチセンスRNAは脊椎動物の専売特許だと思っていたのですが、そんなことはないのですね。
ReplyDelete中川