いつの間にか年が明けて時代は2012年に入っていました。
昨年はどんな年だったのか、おそらく全ての方にとって色々な意味で生涯忘れ得ぬ一年であったとは思いますが、非コードRNA業界、特に長鎖関連の非コードRNAに関して言えば、予想に違わず、次世代シークエンサーによる解析が当たり前のように使われるという傾向にますます拍車がかかってきた年、だったような気がしています。一昔前の論文とデーターの並べ方や作法を明らかに異にした論文が、2010年はぽつり、ぽつりと見かける、といった感じだったのが、昨年はまたきたまたきた、という感じで、ぱっと見には生物関連の論文かどうかも分からないような論文すらしばしば目にしたような気がします。ゲノムにリードを貼付けた図はもはや業界標準。なにやらいろいろな線やベクトルが飛び交っている図を見ると、もう隔世の感があるというかなんというか、、、次世代シークエンサーを使ったからといって全ての疑問に答えが出るわけではないのでしょうが、そもそも配列データーをなんぼ眺めていてもタンパク質の性質が分からないように、それは生命現象のごく一部を示すにすぎないのはそうなのですが、データーの解析も含め、今日び行われている遺伝子発現・配列解析にある程度の素養を身につけなければ話にならない、という時代にさしかかりつつあるのかもしれません。ただ、どの程度身につけることが出来るかというと、ネイティブかどうか、というところがかなり分水嶺になるところで、ウエスタンブロットやらノザンブロットやらで青春時代を過ごしてしまった世代にとっては、なかなか使いこなすのが難しい技術、でも、大学院に入った時からプログレスレポートでガンガン統計処理のデーターを見慣れている世代にとっては、まな板に水を流すようにすんなりと入ってくる技術なのではないでしょうか。このような状況はもしかすると組換えDNA技術が出てきたときに似ているのではないか、と、ふと思ったりもします。僕自身が大学院に在籍していた時の研究室のボスは、いわゆる組換えDNAの実験を全くされたことのない方で、内容は当然理解されていたでしょうけれども、セミナーで技術的なdetailのディスカッションになった時などは、第二外国語を聞いているぐらいの感覚だったのではないかと、今にしてみれば思います。ちなみに、もうすこし現場のことを分かってくれーと思う一方、ちょっと距離を置いたコメントが妙に身にしみたりするのですよね。ネイティブになるのも良し、ネイティブになりきらないのもまた良し、なのかもしれません。
それにしても時代の進歩というのは大したものだとつくづく思います。いつかここでも懲りずに披露してしまった下ネタの繰り返しになりますが、ちょっと前まで駅のトイレなんてよっぽどのことが無ければ入る気がしなかったのが、今では下宿でするぐらいなら駅で、、、なんて人も居るのではないかと思うぐらいきれいに整えられています。いろいろ厳しいご時世で、というのは新聞を読んでいなくても巷の誰もかもが口にすることですが、果たしてそうなのかと疑問に思うこともしばしばあり、少なくともサイエンスの質だけ考えれば、ハード面もソフト面も昔に比べれば20年前の状況よりも遥かに恵まれているような気がします。一週間寝食を忘れて実験にいそしんで、出てきた結果がたった3kbのcDNAの塩基配列を決定しただけ、なんてことが日常茶飯事だった訳ですから。あの頃は、大きいことは良いことだ、みたいな雰囲気もあったような気がします。たくさん働いて、たくさんお金をつぎ込んで、ガンガン進んでいけば何かが見える。体育会系のクラブの悪い風習の一つにとことん飲めるやつがエラい、みたいな変な風習がありましたが、またそういった風習は一回生の頃は大嫌いでも四回生になると大好きになっていて極めて厄介なのですが、本来の目的〜体を鍛えるなり試合で勝つなり〜といったところから外れて祭りの狂乱よろしく内輪の共同幻想だけが一人歩きしてしまうと、なんだか悲しい気分になってきますよね。あの頃は良かった、とか言ってる大人を信用してはいけないというのはマルクスも言っておられますが(言っていないっっ!!)、バブルの頃は良かったとかいう人を見るたびに、50を超えて下ネタ芸をやって喜んでいる性悪おっさんのように見えてきてしまうのですよね。
だいぶ話がそれてきてしまいましたが、ちょっと前までは、たとえば理研が研究所をあげて進めていたプロジェクトが、共同研究ベースであれば手のひらサイズでそんなビッグラボでなくても手の届くところにあるというこの現実は、種子島に鉄砲が伝えられたとき以来の衝撃であるような気がしています。さてそれをどう使うか。馬鹿と鋏は使いようですから、若い世代の人たちはがんがん火縄銃を使いこなして騎馬隊をやっつけたら良いのだと思います。若くもなく大御所でもない僕らの世代がやることは、、、的になることだったりして。まあ、時代の最先端を行く武器の的になるのであれば、よろこんで撃沈されたいところです。
今年はどんな年になるのでしょう。個人的な予言でいいますと、「長鎖非コードRNAのパラドックス」が解決される手がかりが得られる年になるのではないかと。「長鎖非コードRNAのパラドックス」とはなんぞや。学会もなく班会議も無い冬の時期にこのブログへの投稿数が減ることを考慮して(そうでなくても閑古鳥が鳴いているという突っ込みはさておき)、これはもったいぶって次回に詳しく書きこみたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。新年の挨拶まだですかー(>領域代表&つわものたち)
中川
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