発生生物学会の学会誌であるDevelopment Growth and Differentiationの、RNAの特集号が出ました。
発生生物学とRNA研究は相性が良いと個人的には思っているのですが、世間的にはそれは中田ヒデと原辰徳の組み合わせぐらい「はぁ?」という組み合わせのようで、別に仲は良くも悪くもないだろうけれどもあえて並べる必要性がサッパリ分からない、というように捉えられることが多いようです。実際のところ、発生生物学会とRNA学会の両方に属している人は少ない。実に少ない。五本の指で数えられる、などということは無いでしょうが、京大のA形さん、神大のI上さん、CDBのN村さん、発生学会ではないけれどもCDBに居るN山さん、、、あれっ、結構居るか。というか、キャラ立ちするひとばかりなのでたくさん居るように見えるだけなので、実際は少ない。せいぜい2、3%といったところではないでしょうか。生物学の研究には、ナノメートルスケールの結晶構造の解析からメートルスケールの比較解剖学まで、色々な階層があります。それぞれの階層の間にはそれなりに大きなギャップがあって、それをあえて埋めようとしなくても良いとも思うのですが、橋をかけてみたらなんだ意外と近いではないかと。そういう分野もあるような気がします。RNA研究と細胞生物学、RNA研究と発生生物学、あたりは、まさにそのような組み合わせではないでしょうか。
そしてこの特集号。DGD編集長の東北大の仲村春和さんとRNA学会長の塩見(春)さんの肝いりで実現した華麗なるコラボレーション、とまではいかないかもしれませんが、粒ぞろいのレビューが満載です。母性因子やpiRNAがらみで比較的RNA研究者にもなじみのある生殖細胞がらみの話や、だれもがあっとその美しさに声を上げあげたであろうテトラヒメナの大核小核の話、植物のサイレンシングの話にエピジェネティックスの話、当新学術のメンバーのムッキー中山さんとデレック後藤さんのレビューはfree articleで読めます。発生生物学会の学会員はタダで読めるので、図書館に無いときにはその辺に居る発生生物学会員にお声かけください。
このDGDなる雑誌。日本の発生生物学会が発行していた雑誌で、現在はBlackwellの方に組み込まれていますが、歴史的な経緯もあり投稿者のほとんどが日本人です。発生学会の人間にとって、でぃーじーでぃー、という言葉はなんとも微妙な、心のどこかがくすぐられる響きをもつ言葉であって、例えていうならば、片田舎の芋くさいねーちゃんが都会に出てビックリするほどきれいになって芸能界にスカウトされてとある映画の端役をきっかけに大きな注目を集めスターへの階段を上っていって今は押しも押されもされぬ大女優、その彼女が小学生だったときの初恋の相手、みたいな感じでしょうか。僕が大学院に入りたての時は季刊誌だったのが投稿数の増大に従い月刊誌になったは良いけれどもだんだん投稿数が先細りになって、なんだこれどこの業者のパンフレット?ぐらいに薄くなっていた頃、「DGDは生かすか殺すかせなあかん!」なんて過激なことをおっしゃる先輩方も居ましたが、現編集長の仲村さんのご尽力で、一時はインパクトファクターが1ぐらいまで落ち込んでいたのが、最近はようやっと2を超えてきたようです。と、こういう話を本当はあまりしたくないのですが、DGDのような国内の学会誌はインパクトファクターという物差しではかるのが一番ふさわしくないとは思うのですが、これだけ世の中がグローバル化されてくると、そういう基準が入ってくるのはある程度致し方ないことなのかもしれません。この辺りはまた何かの機会に考えてみたいと思っています。
ともあれ、このレビュー集。お時間のあるときにアブストラクトだけでもざっと目を通していただければ幸いです。
中川
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