December 13, 2011

班会議

九州大学の佐渡さんのところで仕事をしております坂口と申します。X染色体不活性化の分子機構を解明することを目標に仕事をしております。このブログに文章を投稿することになりまして,今度とも宜しくお願いします。
平成23年11月25日―26日に東京大学で班会議があり,昨年(2010)に引き続き出席させていただきました。偉い先生方がお越しになられていましたが,とてもフランクな雰囲気の中で執り行なわれて,大きな学会には無いものでした。
一日目;武田先端知ビルというところが会場でした。発表が始まると,なぜか同じスライドが左右2つ並んで投影してあり,右のスクリーンを見ながら説明を聞いていても,レーザーポインターで示してくれない。で,ふと左のスクリーンに目をやると,ポインターがせわしなく動いていてそれに気づくまで数分間。当然発表者はどちらかにだけしかレーザーポインターをあてられないですが,発表者によって左か右かが変わるので,どっちを見なくてはならないのか,始めの一歩が肝心でした。そして,座長が佐渡さんに代わり,ある発表が終わったあと,数秒間の沈黙。あれ?座長は?と思った瞬間,佐渡さんが慌てて壇上へ。久しぶりに慌てる姿を見ました。続いてポスター発表。non coding RNAのテーマとはちょっとずれた研究内容について発表させていただきました。興味を示してくれた人に感謝です。一日目の終わりの懇親会。お酒が入りながらのポスターの説明は,シラフの時でさえまともな日本語をしゃべれないので更に拍車がかかり,何を言っているのか自分でもよくわからなくなり,今後の課題としようと思いました。懇親会後は,東大の中の洒落たBARと学外の居酒屋に行きまして,普段なら朝4-5時までのところ,佐渡さん,N山さん,Deレックさん,ジンムさんが次の日に発表ということで,おとなしく12時にお開きとしました。
二日目;きれいな銀杏並木を見ながら会場である工学部の講堂へ向かいます。講堂へ入ってスクリーンを見ると今日は1つ。これなら惑わされなくて済みます。発表は滞りなく進行し,時間はプログラムどおり,ほぼ定刻。会議終了後は,飲み会に誘っていただき,これからという時に,飛行機の時間の関係で18時半においとましました。
今回が2回目の班会議出席ですが,昨年同様non coding RNAの分野は現在とても熱く,そしてこれからもっと熱くなるのは間違いなく,時代の流れに乗り遅れないようにしなくては,と思いました。
来年は佐渡さんが世話役とのこと,サポートがんばります。

December 9, 2011

9th Tokyo RNA club

第8回 Tokyo RNA Clubの熱気もさめやらぬまま、来週月曜日(12月12日)は第9回 Tokyo RNA Clubが開催されます。第8回のレポートは近日中にアップされるはずです。というかI君、S君、早くアップしなさい。早くしないと領域代表に言いつけるぞお、と小学生みたいな脅しをかけときます。

今回はChandra Kanduriさんの紹介です。

長鎖ノンコーディングRNAの生理機能として最も良く調べられているのは、エピジェネティックな発現制御に関わる一群の遺伝子でしょう。この研究分野のさきがけとなったのはX染色体の不活性化を制御するXistで、これはもう超有名なスーパースター、印籠を見せるだけで人々がひれ伏す水戸のご老公なのですが、助さん格さんなみに有名なのが、インプリンティング領域から転写されている長鎖ノンコーディングRNA、AirnとKncq1ot1です。
母方のゲノムと父方のゲノムで遺伝子の発現が違う、いわゆるインプリンティングを受ける遺伝子座は現在マウスで100ぐらいが知られていますが、興味深い事に、そのような領域ではしばしば長鎖ノンコーディングRNAが転写されています。AirnはII型のIGF受容体のアンチセンスRNAとして、Kcnq1ot1は電位依存性KチャネルのアンチセンスRNAとして、それぞれ同定されていますが、どちらもその領域の母方、もしくは父方ゲノム特異的な遺伝子発現を制御しています。KanduriさんはKncq1ot1遺伝子についてこれまで詳細な解析をしてきており、レポーターのベクターを用いてインプリンティングに必要なドメインを同定してきたり、そのノックアウトマウスを使った解析をしてきたり、最近ではKncq1ot1がクロマチン制御因子であるG9aやPRC2と相互作用していることを示したり、と、まさにKncq1ot1とともに歩んできた、方であります。長鎖ノンコーディングRNAはクロマチン制御因子をゲノムに呼び込むことで遺伝子発現制御をしているーこの考え方は最近広く受け入れられつつあると思うのですが、そのアイデアの確立に、間違いなく大きな貢献をされたのが、Kanduriさんであるといって良いかと思います。

ちなみにKncq1ot1って、どう読むのでしょう。僕自身は「けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん」と言っていますが、見るからに舌をかみそうな名前ですよね。ところが不思議なもので、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、けーしーえぬきゅーわんおーてぃーわん、と念仏を唱えるように繰り返していると、いつの間にかこの名前がしっくりと来るようになるのです。九九を覚えるようなものですね。で、やっと覚えたこの名前、Kanduriさんが全然違う呼び方をしていたら、、、ちょっとショックです。

ちなみに、Kncq1ot1は転写産物が大事なのではなくて、その領域をRNA polymerase IIが走ることが大事だ、と言っている論文もあります。Kanduriさんらのノックアウトマウスを使った論文やクロマチン制御因子との相互作用を示した論文を真っ向から否定しているような論文ではありますが、実際のところ、転写産物そのものが大事なのか、転写されること自体が大切なのか、を見分けるのは非常に難しいことではあります。この論文では例のごとくRNA干渉を使ってKncq1ot1(ほら、すらっと言えたでしょう?)をノックダウンしているのですが、一体真実はどうなんでしょうか。Xistについても、これだけ論文が色々発表されているのに、まだ統一見解が出ていないところも色々とあるようです。学問とはかく奥深し、といったところでしょうか。

その他にも、第9回Tokyo RNA Clubには様々なゲストが来られます。小さなncRNA関係では、Elissa Leiさん、Isidore Rigoutsosさん、Markus Hafnerさん、と、あれっ?どこかで聞いたことのある名前だな、という方々がわんさかわんさか。国内からは東工大の相澤康則さんが来られます。懇親会もありますし、皆さんぜひお越し下さい。

中川

December 3, 2011

出張ダイエット失敗。

 先週、領域会議がありました。九州から久々に東京(地元)へ。そして約1 kg太りました。20代前半とは一線を画す基礎代謝の低下を感じる今日この頃、微々たる変化とはいえ侮ることはできません。そもそも出張すると普段とは寝食のリズムが多少変わるので、体重の増減(しかも1kg)など所詮誤差なのかもしれません。が、実験室を往復するのと出張、どちらの方が運動量が多いのか、に加え、ちょっとした心掛け次第で出張ってむしろ痩せられるんじゃないか、と気になってきたので、ゆるく振り返って考えてみます。
 一日目
 海外Q州から東京は遠く、飛行機での移動。フライトは8:00。福岡空港は市街地に本当に近いのでチャリで行く事が出来ます。(約25分の運動。)何だかんだで出発ギリギリの時間に保安検査所に行くと、そこは朝ラッシュによる長蛇の列。うっかり受付時間を過ぎたにもかかわらず運悪くCAさんに絶妙な放置プレイをかまされた結果、
「お客さまこちらです」という名目の300 mダッシュを要求される。ダッシュはラボではそうそうできる事ではないので、大変良い運動でした。
 当然朝ごはんなど食べてないわけですが、極度の飛行機恐怖症である私は登場と同時にすかさず発作発動。それにより食欲はほぼ0、空港で買ったスタバのラテしか飲めない。大変良い食事制限でした。
 無事東京につき、気付けば昼ということで、東大近辺のパスタ屋へ。ランチセットにはサラダが付いてきました。空腹時に糖度の高いものを食べると一気に血糖値が上がって何か良くないらしい、しかし、花田勝がちょっと前にテレビで言っていた「サラダとか野菜の後にメインディッシュを食べる、これで自分は痩せた」という言葉を頑なに信じる私はサラダを食べきった上でパスタへ。ここで食べ過ぎは禁物(というか発作の影響が残りまだ微妙に食欲なし)なのでお残しする(パスタさんごめんなさい)。というかそもそも一人前って普通の女子には量多いと思います。何はともあれgood jobな判断。
 その後会場に着くも、ミーティング開始まで約1時間の空きがあり、すかさず、東大内をうろうろする。約40分の散歩。
 そして、いよいよ班会議が始まり、色々なアツいお話が始まる。どんなに喋り手がうまくても発生させてしまうふとした聞き逃し、聞き間違いはするまいと、緊張感を持って集中。糖分消費@脳。
 また、ポスター発表をきっかけに、brainstormingしていただいたり、motivateされたり、自分の説明下手さと圧倒的な勉強不足に凹んだり、他の人のポスターを見て励まされたり、わくわくしたりしました。糖分消費@脳。
 ここまでとってみれば、体の運動量、メンタルおよび頭の運動量、摂取量ともに、ダイエッターの私には非常に素晴らしい内容が続いていました。
 明確な異変に気付いたのは、佐渡さんが座長をし始めた頃ぐらいのことでした。
 くしゃみが止まらない。
 最初は、普段とはちがうホコリの存在するであろう環境に対して、軽いアレルギー性鼻炎反応が起こったものと思っていました(ネコ、ホコリに抗体有)。が、コレはちょっといつもとは違った頻度のくしゃみ。くしゃみってこんなに出るものなのか?そう言えばのども…痛いっていうんじゃないかコレは…、アレ、そう言えばなんかダるい気が…。
 というわけで風邪でした。
 もう体重どころじゃない。病弱な私にとって、風邪等の体調不良が起こった場合の対処は、すみやかに完治させるために寝食リズムを万全に整える方向にpriority siftすること。
 即ち、風邪からくる食欲不振への対抗策として、ごはんをしっかり食べる、が含まれるという悪夢のシチュエーション。
 絶望一直線と思いきや、しかし、素晴らしい事に、くしゃみは意外とカロリーを消費するのです(ってテレビで言っていた気がする)。google先生に聞くと、2~4 kcal/回はあるんじゃない?的な(不確かではある)検索結果が。と言う事で安く見積もってもかなりの運動をしたはず。牛乳が嫌いな私はもうくしゃみで肋骨折れるんじゃないか、と心配しましたが杞憂でなによりでした。(500 kcalの消費)
 さりとて、せっかくの会を風邪にかまけてぼんやり過ごしてはもったいない、と、ときどきこっそりホールで一人鼻をかみまくって休んだりしながら、楽しい懇親会をとても楽しく過ごし、二次会へ。東大のオシャレ・barは大変オシャレで、こんなん学内にあるなんて、やっぱ東大はすごいんだな…、と思いながら、N先生の絶妙な話さばき、つっこみを拝見したり、天皇陛下の先祖に近しいと思しき方に謁見したり、プラナリアは水が汚いと溶ける、というすばらしい情報を手に入れたり、大変楽しく(メンタルは)元気になれるような時間を過ごしました。しかし、風邪は一向に良くなるはずもなく、あえなく3次会は辞退。無念。
 さて、夕食のカロリーは、懇親会は揚げ物をやや控えたのでまぁまぁ抑えめな感じに。しかし、二次会で脂質分の高い豆類を食べ過ぎた気が。いやしかし酒にはつまみがどうしても欲しくなると思います。ビールとフレンチフライを過剰摂取してもまったく太る気配のない佐渡さんが激しくうらやましいです。
 
二日目
 風邪をひきずりつつ、引き続きアツいお話を聞く。糖分消費@脳。
 昼食はあきらかに東大生以外の人だらけの食堂で赤門なるものを食す。風邪で味が分からない。しかし、トウガラシ的なものを感じたので、とりあえずカプサイシン的効果はあったものと信じる。
 のどがアカン感じになっていたので、常時のど飴を投入し続けた結果、200円くらいで袋いっぱい入っているのど飴を一日で完食。意外とすさまじいカロリー。コレはいけなかった。
 無事会は終わり、帰る前に飲み屋に誘っていただき、そこはかとなくカロリーは低いが栄養のありそうなものを食べつつ、田畑の手入れは重労働という話や、キャッチなタイトルで人を引き付ける事は生き抜く上でとても大切だと言う貴重なお話を聞く。
 そして、飛行機へ。
 いそいそとチャリをこいで帰宅(約30分の運動)。大変良い夜運動でした。
 反省すべきは、家に付いた後に食べた、持って行ったにも関わらず食べなかったおやつたちでしょうか。まぁでも風邪なので仕方ない。
 雑感を混ぜつつまとめてみると、
・出張すればそれなりにいつもより運動量が上がる気はする。
・しかし夜は飲むので、普段は気をつけている深夜の摂食行動に繋がり危険。
・原因は特定できないがとりあえず今回の出張では太った。
・ダイエット中に風邪をひいてはいけない。
・そもそも、普段ラボに居る時も、実験量ややり方次第で運動量は変わる。ベンチは座ってる事も多いが激しく動きまわる事も意外とある一方、出張先では移動の労力を除くと、目的地到着後は座って話を聞いている時間が割と長い。
 ということで、本題であっただろう、ラボに居るのと出張するのとどっちが痩せる要因が多いのかについては良くわかりませんでした。
 ちなみに、鼻水と帰ってきてから現れた咳の症状は若干長引き、居室の隣の人、向かい側の人、斜め前向かい側の人、二つ後ろの人が、のどの痛みを訴えたり、妙に咳込んだりしている気がするのですが、自意識過剰や被害妄想等は体に良くないし、一応謝罪もしたので、あまり気にしない事にします。私は元気です。
 なにはともあれ、班会議はinspireされる事が本当に多く、とても充実し、楽しい時を過ごす事が出来ました。こんな中学生みたいな感想書いていいのかと思いつつ、来年の会議もスムーズに運営されるよう、必要な場面でしっかり働こうと思います。
九大・生医研 D1 SKT

November 30, 2011

Tokyo RNA clubまつり

師も走る12月になりました。12月と言えば分子生物学会、分子生物学会と言えばTokyo RNA Club。今年も豪華ゲストを招いて信濃町は慶応大学でTokyo RNA Clubが豪華に、しかも2週連続で開催されます。第一弾は12月8日。メインゲストはDavid BartelさんとValerio Orlandoさん。第二弾は分子生物学会前日の12月12日で、メインゲストはMarcel Dingerさん、Chandra Kanduriさん、Elissa Leiさん、Isidore Rigoutsosさん、Markus Hafnerさんです。第一弾の方は分子生物学会とは直接関係ありませんが、第二弾のゲストは学会のシンポジウムの招待講演者でもあります。

さて、このうち、MarcelさんとKanduriさんは学会最終日の午後という、おそらくものすごく集まりが悪くなるであろうシンポジウムで話をされるので、ちょっとここで宣伝を、、、

まずは今回はMarcelさんから。実は今回のシンポジウムでは、Marcelさんの元ボスであるJohn Mattickさんが来られることが決まっていたのですが、年明けにシドニーにある研究所のヘッドになる話が急に決まったとかで、ブリスベンからの引っ越しやらなんやらで、てんやわんや、すまん、本当に行きたかったのに、と、いわゆるひとつのドタキャンをされてしまいました。まあ大御所には良くある話だよねー、というのは、そういう面もほんのちょっとはあるのかもしれませんが、こればっかりは仕方がありません。それよりも、エコノミーでスイマセンというお願いにも関わらず、行く!行く!!絶対行く!!!サンキューベイビーと、最初は言ってくれていたJohnさんに、僕自身は深く感謝しています。

Johnさんがキャンセルされたということで、他に誰か良い人はおられますか?と聞いて、間を入れず推薦されたのがMarcel Dingerさんです。John Mattickさんという方は、長鎖のncRNAの研究の業界ではちょっとしたlegendになっているにちがいないと思うのですが(僕自身は業界歴が短いので定かではありませんが)、それほど長鎖ncRNAが人口に膾炙していなかった頃から盛んにその重要性についてちょっぴりprovocativeな主張をしておられていて、ようやく最近になってその予言が多くの研究者の結果、特に大規模ゲノムワイドな解析のちょっぴりprovovativeな結果によってサポートされるようになってきていて、そういう意味では、間違いなく僕の中ではscientific heroです。ただ、実際にあったことも無いし、論文しか読んでないし、というか総説しか読んでいないし、でも一目会いたい、会って話をしたい、その夢がもう少し叶うというところで、、、お楽しみはまたこの次です。

とはいえ、このMarcelさん、これがまた論文でしか名前を知らなかったのですが、Johnさんのところから出てくる論文には必ず名前が二番目か三番目に入っている、ということで、ずっと脳内旧知の仲の人でした。これまでにも何か機会があれば日本に来てもらいたいなあと思っていたいたので、ひょうたんから駒、ではないですが、Johnさんの代役なんていったら役不足!かもしれません。Johnラボのバイオインフォマティクス解析を一手に引き受けていたのがMarcelさんで、今の時代、そういう人がどれだけ貴重な存在になりつつあるのかは、自分でプログラミングをして挫折した人ならとても良くわかると思います。100行のスクリプトを書くのはngオーダーのエタ沈より百倍難しいです。石器人にとっては。

このMarcelさん。実はホームページもFacebookのページもこっそり公に持っておられます。WikipediaなんかもncRNA関連の管理人になっているみたいですね。今風に言えばクラウドnativeとでもいうのでしょうか。ラボに居たらピペットマンとピンセットしか握らない僕からすると、完全に新感覚の人です。ですので、とっても楽しみ。世代的にも極めて若いし、ぜひぜひ、若い人も、そうでない人も、Tokyo RNA Clubに、また、分子生物学会の最終日のシンポジウムの方に足を運んでいただければ、と思います。

次回は、もう一人のシンポジウムの海外招聘講演者、Chandraさんのお話です。

ちょっとその前に、つい先日行われた領域会議の感想戦が、学生さんとか、ポスドクさんとか、あたりから、ある、はずです。

中川

November 17, 2011

ポスドク募集!!!!!!!!って

海外ポスドクの話題が出ていましたが、海外から日本へ、熱い視線のポスドク募集がちらほら来ています。
このあたりとか、このあたりとか。前者は僕の知り合い、後者はムッキーこと筋肉ムキムキN山さん(伏せ字の意味なし)の知り合いです。ですので一応公式(?)ブログのここに貼付けても良いかな、と。

 海外に限らず、ポスドク先を探す場合、大きく分けて自分で何らかの奨学金に応募して行く場合と、先方の研究室の人件費(ポスドク用経費)を当てにしてゆく場合の二つがあります。僕の知り合いはほとんど前者ですし、僕自身も実際そうでした。別にこれは奨学金とれたぜベイビーなどと中学生でもしないであろう自慢をしたい訳では全然なく、むしろ僕自身のことを振り返ってみれば、「ポスドク募集!!」という広告を出している研究室に飛び込むだけの勇気がなかった、ただそれだけのことのような気がします。往々にして、ポスドク募集をしているラボというのは、ポスドク候補の学生さんが見向きもしないラボなんですよね。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、一厘の真理ぐらいはあるでしょう。飛ぶ鳥を落とす勢いの研究室には、次々とポスドクに行きたいーっつ!!というラブレターが殺到し、山積みにされ、2、3週間興味を持たれずに放置されれば地層的にはオルドビス紀ぐらいまでいってしまうと聞き及んでいます。そういったラボには勿論ポスドクを雇用するに十分な予算がある訳ですが、その多くは、得体の知れぬ新人ではなく、奨学金を持ってきて研究していたけれどもその期限が切れてしまった、でもぜひうちで継続して研究してもらいたい、という人を雇用するために使われている、従ってポスドク募集のような広告をわざわざ出さない、というようなイメージがあります(まちがっていたらごめんなさい、というか例外多数あると思いますが)。ポスドク募集!!!のびっくりマークの数に応じてブラック度が増すと言いますか、ちょっとヤバそうな雰囲気を勝手に想像し、知らず知らずのうちに避けてしまうという心理効果が働くが故に、ポスドク募集!!!!!!という広告の出ている研究室にポスドクで行った知り合いがほとんど居ない、ということになっているのでしょう。


 ポスドク募集!(n)の広告を出すラボというのは、然り而して、立ち上げてほやほやのラボが実に多い気がします。そこに行くというのは、ベンチャー企業に就職するのと似たところがあるのかもしれません。ハイリスク・ハイリターン。といけば良いのですが、ハイリスク・ノーリターンだったりして。っと、大失言かもしれませんが、数年前大々的にポスドク募集をしていた僕自身が言うのですから、二、三厘の真理ぐらいはあるでしょう(しつこい)。

 誤解されないように最後に補足しますが、ポスドク募集!(n2)の広告を出しているラボは、切実に一緒に仕事をしてくれるメンバーを渇望しているのは事実だと思います。お金は寂しがりやだから金持ちは益々富むわけですし、ポスドクも寂しがりやだから大きなラボはますます膨張するのかもしれません。だからといって、小さなラボが面白くない訳では決して無い。とうちのラボの披露目をしている場合ではありませんが、興味がピタリと合うようならば、どんどんそういうところに飛び込んでいっても良いと思います。お金を自分で持っていこうが、先方のお金で雇用されることになろうが、ポスドク先で微分不可能な成長を遂げて脱皮しなければいけないのは変わらない訳ですから。

中川

November 13, 2011

うらやましい論文

ついに、というか、満を持して、というか、噂の論文が世に公開されました。
転写因子の分野の大御所、Rosenfeld研からの仕事です。
普通にウェブで公開されているのでその図を貼付けても良いのでしょうが、いちおう書き直したまとめがこちら。もっとまともな図はリンク先をご覧ください
ポイントは、血清刺激によって発現がオン、オフされる一群の遺伝子がある訳ですが、それらの遺伝子座がポリコーム体と核スペックルという核内構造体を往復することによって発現制御がなされている、というところです。しかも、その際にPC2と言うタンパク質のメチル化のオンオフが伴っており、それぞれの核内構造体に存在するノンコーディングRNA、TUG1とMALAT1が遺伝子発現制御に必須の役割を果たしていることを示しています。遺伝子座そのものを核内で移動させることによる転写制御があり、そこにノンコーディングRNAが関わっているという、非常に興味深い報告です。


 正直言って、こういう仕事を出したいなあ、とおもっている論文を他のラボから出されてしまうと、とても悔しいですね。遺伝子の機能と、分子レベルのメカニズムと、そして細胞生物学レベルでの知見がぴたりと合うような仕事というのは滅多にお目にかかれるものではありません。Gomafuもこういう形でまとめられれば良いのですが、、、

 ただ一点、どうしても引っかかるのは未発表のMalat1のノックアウトマウスの表現型で、これがいまのところ何一つ見えていないのですね。僕の所を含めて世界で3ラインほど作られているようですが、どこも同じような状況のようです。これをどう考えるのか。Malat1の劇的な機能を示した論文は以前ここでも紹介したPrasanthらによるものなどありますが、いずれも培養細胞株を使ったものです。培養細胞、特にガン由来のものではMalat1は過剰発現している傾向にありますから、細胞株になるときにMalat1の機能が必要だった、だから細胞株でMalat1をたたくといろいろな表現型が出てくる、という解釈をすることも出来るかもしれません。

 もう一つの可能性は、これはつまらん方の可能性ですが、核内にAgo-siRNAの複合体を「異所的に」持ち込んでしまうことによる二次的な影響です。siRNAは高等真核生物においてはヒストンのメチル化等は引き起こさない、というのがコンセンサスになっていると思うのですが、特に核内に大量に存在するMalat1ようなノンコーディングRNAに対してsiRNAを使った場合、本来核内には「無い」はずのAgo-siRNAの複合体が、核スペックルなり、なんなりに異所的にたまってくることが予想されます。そうするとなにか別のことが起きないのかな?という気もしてくるのですが。高等真核生物においても「siRNA (miRNA)ーエピジェネティック制御」があるのではないか、という可能性は、有名雑誌に掲載された論文がリトラクションされたこともあり、完全に無視されている状況ですが、あの話にも一分の真実は含まれていたのかもしれないと、思うこともあります。

 核内のノンコーディングRNAに対してsiRNAを使うのが本当に正しいアプローチなのかについては、いちど、きちんと検証してみなくてはいけないと思っているのですが、なかなか手が回らないのが現状。。。です。

中川

November 1, 2011

行くゼ海外

こんにちは、河岡です。中川さん、泊さん、三嶋さんがそれぞれ海外留学について書かれた、
「ああ海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post.html)」
「されど海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_15.html)」
「やはり海外 (http://ncrnablog.blogspot.com/2011/01/blog-post_19.html)」。
実際に海外留学をされた先達からのメッセージに引き続くかたちで、海外留学を決めたいち学生の目線で「行くゼ海外」を書いてみようと思います。数年経てば状況がまったく変わってしまう昨今、リアルタイムの情報が役に立つことがあれば幸いです。

僕は、来年3月に卒業してすぐの4月から、アメリカはニューヨーク州ロングアイランドにある某非営利研究所の研究員として、がんを研究することを決めました。海外留学について具体的に考えはじめたのは博士課程に入ったときです。僕は5-30年くらい先までものごとを妄想する性質があるので、海外留学をするかどうか、というよりは、博士号を取得したあとにどうしよう、ということを考えたときの選択肢のひとつとして、という感じでした。最初のころの悩み方は、ざっくり述べると以下のような感じです。

(1) 国内か国外か
(2) 分野を変えるか変えないか
(3) ビックラボかスモールラボか
(4) ポスドクか、(あれば)よりパーマネントっぽい職か
(e.g. 国内で分野を変えずにビッグラボでポスドクをする)

まあ、僕のぐだぐだした思考回路をたどってもしかたがありません。しばらくして、悩み方がおかしいことに気がついて、最終的には、以下のような結論にたどり着きました。

「エキサイティングでさえあれば」
(1') 場所はどこでも良い (どの場所でもできる!!)
(2') 分野は何でも良い (どの分野でもできる!!)
(3') ラボの規模もどうでも良い (アクティビティはラボの規模に左右されない!!)
(4') いまは定着する時期ではなく、来るべきときに向けて地力をつける時期 (少なくとも現状維持を優先するときではない!!)

エキサイティング、というのはあらゆる意味においてです。僕は単純なので、海外留学に単に憧れていました(海外生活かっこいいじゃん、くらいの)。なので、単純にそういうレベルのエキサイティングさだけを求めれば、海外に行こうぜ、となるわけです(実際はそうは単純にはいかないですけれど)。分野は、経験値なんて考慮しないで考えれば良いし、規模なんてどうでもいいです。4)はちょっと性質が違いますが、今回は置いておきます。定着=守り、ということではまったくないです。

結果的には、留学先はほんとうにゼロベースで探した、と言って良いと思います。フェローシップをもって、ということを決めていたわけでもないので、いわゆるひとつの「ポスドクハント」をしたと思います。

(a) 興味のある大学や研究所をリストアップ
(b) 生物系のファカルティのページは「全部」みる
(c) ファカルティページに少しでも興味をもったら論文を最低1報読む
(d) イイ、と思ったら、「本気でラボに参加する気になって」、その町をgoogle mapでみて、不動産情報や物価なんかを調べて、生活を想像してみる (これは僕にとってはかなり重要なプロセスです)
(e) 時によって気分が変わるので、同じプロセスを最低3回は繰り返す
(ファカルティ単位でいったら100以上はチェックしたと思います)

ちなみに、より深くチェックした「分野」は以下です。
相互排他的ではありませんが(実際、僕のやりたいサイエンスはある一群に集約されています)、ざっくりとしたイメージで分けました。しつこいですが、ここでも、各分野を本気でやるつもりで結構勉強しました。具体的には、レビューを読んだり、和書を購入したり、その分野のひとの話を聞いたり、です。要するに自分がどんな問題にアプローチしたいか、ということを考えたわけで、このプロセスでだいぶ自分の興味の指向性を知ることができました。

(い) 非コードRNA (small RNA)
(ろ) がん
(は) システムバイオロジー
(に) 生殖細胞/幹細胞
(ほ) 神経科学
(へ) 発生

加えて、用いる生物も熟慮しました。これも、決断前にじかに見ていない生物はいません。やっぱり好きな生物でないと、と思っていたわけです(最初はいちばん嫌だった(iv)をやるという奇妙)。実際に見学をさせてくださった国内のラボがいくつかあります(本気で国内、と思って見学を積極的にしていた時期もあります)。ありがたいことです。

(i) ゼブラフィッシュ
(ii) 線虫
(iii) キイロショウジョウバエ
(iv) マウス

最終的にアプリケーションを送ったファカルティは6つ((ほ)と(へ)、そして(i)以外)。ひとつはまったく返事が来ず、ふたつは少しのメールのやりとりでダメ、ひとつは結構長い間メールしていたけどダメ、ふたつは面接に呼んでくれて、また、オファーをくれました。面接に至るプロセスも二者二様。かなり性質の異なるふたつのラボでかなり悩みましたが、これまで自分が考えてきたプロセスをきちんと見直して、決断をしました。国外で分野を変えてスモールめのラボでポスドクをする、マウスでがんをやる、と、こういうわけです。

思い返してみれば、自分はこのプロセス自体を楽しんでいたように思います。また、このプロセスそのものによって自分が成長したと感じました。かなりいろんな分野の知識が入りましたし。結果論から言えば、自分のビジョン/ポリシーに照らして自ら自分の人生の舵をとる限りにおいては、悩み(1)-(4)なんてどうでもいいのだと心から思いました (誤解を恐れず言えば、この時代、海外留学自体はすごくもえらくもなんともないと思います)。情報と選択肢が溢れ返っているからこそ、ビジョン/ポリシーを持つことが最も重要だと再認識しました。

大事なこと。自分ひとりで考えたみたいに書いていますが、いろいろな方々のサポート/後押しがあっての決断でした。また、こういう方向に思考したのも、当然環境依存的であったと思います。感謝してもしきれません。

各種情報が欲しい、もっと詳しい話がききたい (エキサイティング、の他にも、向こう15年を考えたときに、といういわゆる戦略的((4)に関連)な理由も結構ありました)、という方がいましたら、遠慮なくご連絡ください。来年度以降、この領域で培った経験を活かし、活躍の報を届けられるように頑張ります。

河岡