September 27, 2012

「RNAフロンティアミーティング」に参加して 2年たに組 くろぎ ゆうたろう


タイトルで怒られる前に謹んで自己紹介致します。
今回のフロンティアミーティングでは、ホームページ制作やPC担当、
飲み会の部屋提供担当(?)だった、

熊本大学 自然科学研究科
博士後期2年 谷研究室 の
黒木 優太郎と申します。


ミーティングレポートという事で、先日の会を思い出しながら書いていたのですが、
あまりにも拙い内容しか思い浮かばず、いっそ夏休みの宿題的な感じで押し切ってしまおうと思い、こんなタイトルになりました。
皆様、どうか「閉じる」を押す前に、赤ペン先生になったつもりで温かくご覧下さい。
会の概要や雰囲気については、これまでの皆様のレポートでたくさん紹介されていますので、開催前からの裏話を少しだけ。


今回、私らは会のお世話させて頂く側でした。
井手上先生が会場の手配等でお忙しく働かれている中、私ら学生は丸投げでお任せしていたのですが…。ある日、先生から「黒木君、HPの作成をお願いできますか?」との御依頼。
 という事で、私に関して言えば、このあたりからお世話開始でした。

さて、紆余曲折を経て今のHPを作成し終わりました。その後安心しきっている所へ、谷先生から「明日締切なんですが、参加しますか?」とのご提案。裏方から、舞台に立つ側に回った瞬間でした。

話は飛んで会当日。後輩達のテキパキとした仕事ぶりに圧倒されつつ、私は前の方でPC係としてふんぞり返っていたのですが、日頃の行いの成果がその日の夕方に現れます。
セッションが終了し、井手上先生による部屋割発表。谷研OBの方とご一緒でき、嬉しく思っていると、先生がやって来て…


「あ、君たちの部屋、飲み会会場なんだ。」と、井手上先生。
「ですよね。」と、私。

睡眠は諦めました。


いえ、いいんです。これこそがフロンティアミーティングの醍醐味。肝臓を半分くらい生贄にささげる気で来ましたとも。
そして夜。皆さんと楽しく飲んで、楽しく研究相談などをしている内に、だんだん記憶が怪しくなってきて、私の発表の出来も怪しくなってきました。

次の日の朝、絶対私らより飲んでいるはずの先生方が颯爽と朝食をとっている中、半分死にながら朝食を流しこみ、またPC係として踏ん反りかえります。すばらしい発表が続く中、私は翌日の自分の発表の怪しさに焦りを覚えていました。
そして夜。皆さんと楽しく飲んで、前のレポートを作成している越智さんと、「越智さん、片眉をそり落としたほうがいいよね。」というような感じで、会話の内容が昨日よりさらに怪しくなり、私の発表もさらに怪しくなっていました。

そしていざ発表。何度発表しても緊張はするものだと感じました。心臓バクバクで今でも何を話したかを覚えていない始末。しかし質問だけは忘れてはならぬと、メモをその場でとりつつ質疑応答。この瞬間だけは、二日酔いだろうが三日酔いだろうが頭を冴えさせなければ。…と言いつつも、反省点の残る返答。未熟さを噛みしめる結果となりました。
とはいえ無事にセッションが全て終了。準備期間を含めれば非常に長く関わってきた会だけに、今までのどの会よりも感慨に浸っていました。


最後にベストプレゼンテーション賞の発表。思えば2年前、まだ博士に進むか悩んでいる時、この賞と、そこで出会った友人に勇気づけられたのを今でも鮮明に覚えています。

そして今回の会でも、また勇気づけられる結果となりました。そうです、博士2年でもまた授賞させて頂きました。嬉しい事に、片眉をそり落とすかどうか話した越智さんも一緒です。そして何よりうれしいのが、4年生の後輩の西村さんが受賞した事。頑張りを見ているだけに、こっそり感動。
(ちなみに、西村さんの発表中にギュッとくまモンタオルをにぎりしめる井手上先生は、なんだかお父さんみたいでした。そちらにもひっそり感動。)

という事で、全員一丸となってお世話したミーティング。途中で怪しくなりながら、私もなんとかやり遂げる事ができました。
今回の会で得たものは、知識だけではありません。人との繋がりという素晴らしいものをまた得ることができました。これが、今の私の土俵際の綱の厚みとなり、最後の最後で踏ん張れています。こんな茶髪ロンゲの馬の骨にお付き合いいただき、ありがとうございました。
(ちなみに、これを書いている現在は黒髪短髪ですよ)


最後まで読んでくださってありがとうございます。
そして、会に参加された皆様方。本当にありがとうございました。
また、次の学会で是非、一緒に朝まで話させて下さい。


黒木 優太郎

ミーティングレポート ~秋光研M1越智晴香の旅~


1日目
初めての学会、初めてのソラシドエアー!期待と不安で胸がいっぱい!大雨の中いざ出発!そして到着!
うーん熊本は思っていた以上に栄えている。東京とあまりかわらない
熊本らしさ、九州らしさはどこに?そうだ!ラーメンを食べよう\(^o^)

これが熊本ラーメンなのか博多ラーメンなのかはわかりませんでしたが、とりあえず麺が細い!東京で太麺ばかり食べていた私にとって、新感覚ではありましたがうーん美味(*^_^*)おなかいっぱい夢いっぱいで、

いざフロンティアミーティングへ!!
まず圧倒されたのがRNAシャツ!てっきり受付でRNAシャツを貰えると思っていたら、熊大のスタッフの方々が着ているものと判明!残念…((+_+))これに関しては後にうれしいことがおこるのですが

同世代の方々の発表と、中川先生、谷先生の特別講演を聞き、モチベーションは最高潮に!!!
いざ明日の自分の発表へ!!!!
と、ちょっとその前に、、、(^^
自由交流会Ⅰ。明日があるので控え目に参加させていただきました。酒飲んでいる場合ではありませんよ!練習練習!

2日目
緊張しましたぁ((+_+))私の発表は無事終わったのでしょうか?というのが本音です。つたない発表にも関わらず、沢山のご質問、アドバイスありがとうございました。また、コーヒーブレイクや交流会でも、貴重なご意見をいただくことができ、今後の実験が今から楽しみで仕方ありません!!ピペットマンピペットマン!

午後は待ちに待った熊本観光(@^^)/~~~
熊本城、そして水前寺公園。熊本を満喫してまいりました!
熊本の殿と姫は大変面白い方でした!ははぁ<(_ _)>




そして、自由交流会Ⅱ。いやー楽しかった!沢山の方々とお話することができ、また先生方とも研究のお話だけではなく、私生活に関する本当に本当に本当に貴重なアドバイス(_;)、ご意見を承ることができ、今後の人生に活かしていけたらと思います。
楽しんでいたランキングをつけるとすれば、優勝は秋光先生に譲るとして(-)
3位入賞は果たせたのではないかなと!
井出上先生、3時まで飲み会の場を提供していただき、本当にありがとうございました!!

3日目
眠い目をこすりながら、最後の力を振り絞ります。
そして、表彰式。私は寝ぼけているのか(?_?)耳を疑うとはまさにこのことでしょうか。
未だに、でてくる言葉といえば「えっと驚いています!」これに尽きます(>_<)
さらに、他の2名の受賞者の方が、熊大生ということで、3人分の副賞を全ていただくことに!くまもんグッズに、RNAシャツ!これは嬉しい(;_;)ラボ旅行に持っていかなければ♡
今年の運を全て使いきってしまったのではないかと、不安になりそうです
ベストプレゼンテーション賞。この賞に恥じないよう、これからも日々精進してまいりたいと思います!!

このような素晴らしい機会を作ってくださった熊大の皆さま、貴重なご意見を下さった先生方、そして声をかけて下さった他大学の学生の皆さま、ありがとうございました。
この充実したフロンティアミーティング3日間で得た貴重な体験を、今後の研究生活に活かしていきたいと思います。
最後に、素晴らしい環境、素晴らしい先生と先輩方そして、同期、後輩に恵まれたことに感謝致します。ありがとうございました。

東京大学秋光研究室修士1年
越智晴香

September 26, 2012

ミーティングレポート


はじめまして、東京大学アイソトープ総合センター秋光研究室のM1今町です。
ベストプレゼン賞を取ったわけではありませんが、皆さんに便乗して私もミーティングレポートを書いてみました。

今年は熊本でRNAフロンティアミーティングが行われると聞いたときは、「さぞかし暑いのだろうなぁ」と想像していましたが、予想と反して当日の熊本は快適な気候でした。(むしろ東京のほうが暑いぐらいだったと思います…。)

口頭発表は他の多くのM1の大学院生の方と同様に、私もRNAフロンティアミーティングでの発表が初めてで、2日目が発表日だった私は、緊張のあまり前日から気が気ではありませんでした。

また、ベストプレゼン賞を取った方を始め、堂々とした大学院生の発表が初日から相次ぎ、それを半分プレッシャーに感じながらも、私も同学年の学生に負けられないという思いで発表には望みました。

ラボ内での発表とは異なり、当日、多くの研究者・大学院生の前での発表はとても緊張しましたが、様々な方から意見を聞くことができ、とても有意義でした。

その一方で、周りが優秀な研究者・大学院生と感じてしまうと萎縮してしまい、うまく質問の受け答えができなかったことや、今回ミーティングの最中に1度も質問ができなかったことが心残りでもありました。


3日間、同学年の大学院生との交流を通してお互いの研究内容について話すことで、お互い良い刺激を受けたことも収穫だったと思います。

次回このような発表の機会がある折にもっと良い発表ができるように、研究を頑張りたいと思います。

最後に、このような発表の機会を与えて下さった秋光先生と、今回RNAフロンティアミーティングの開催に携わったすべての方々に感謝したいと思います。ありがとうございました。

東京大学アイソトープ総合センター秋光研究室
M1 今町直登

ミーティングレポート


初めまして、東京大学秋光研究室所属修士1年の切替と申します。
自分はベストプレゼンテーション賞をとってはいないのですが、秋光先生の強いススメにより
僭越ながらミーティングレポートを書かせていただきたいと思います。

自分は今まで口頭での学会発表は経験がなく、今回が人生初の口頭発表の現場となりました。
自分の発表は3日目だったので、それまでは他の人の発表の技術や知識を少しでも吸収しよう
という姿勢で臨んでいました。ところが、想像をはるかに超えた素晴らしいプレゼンテーションを
目の前で行われ、自分がここにいていいのかという緊張に苦しみました。緊張のしすぎで、ホテ
ルで給仕していただいた豪華な食事の味がほとんどわからなかったほどです。

そんな精神状態の最中、迫り来る某准教授の周囲への過剰広告によるプレッシャー。
鼓舞するつもりなのか和ませるつもりなのか、はたまた本当に自信があったのかは定かではない
ですが、そのときの自分には毒物以外の何物でもなかったのを鮮明に覚えております。

しかし、実際に発表を終わらせてみると勉強になるご意見やご質問を頂けて、凝り固まった思考が
解されたのを感じました。同時に、これやあれをやってみたいという気持ちにもなり、精神面で得た
ものも非常に大きいものでした。

このような素晴らしいミーティングに参加し、様々な人と出会え、たくさんの勉強をさせていただけ
て本当に嬉しく思います。

最後になりますが、この場を借りて今回フロンティアミーティングで関わっていただいた全ての方
にお礼と、準備や案内をしていただいた方々に更なる感謝を表したいと思います。
本当にありがとうございました。ぜひ、これからもよろしくお願い致します。

東京大学秋光研究室修士1年
切替 祥鷹

ミーティングレポート


初めまして、熊本大学谷研究室所属の4年の西村と申します。
先日、熊本にて開催されましたRNAフロンティアミーティングにてベストプレゼン賞を頂いたので、つたない文章ですが、会の感想をミーティングレポートとしてご報告したいと思います。

個人的には、今回のフロンティアミーティングが初の学会参加で、もちろん発表も初めてと初めてづくしでした。発表すると決まったのはフロンティアミーティングのちょうど一か月前。院試が終わった直後の私に「発表してみない?」と先生。正直、研究を始めて半年程度のまだまだ未熟過ぎる私が、RNA関連の研究をされている方々ばかりが参加される学会で発表なんかしようものなら…、さらに口頭発表(!?)…と発表直前まで不安しかありませんでした。

しかし、終わった今となっては、発表することができ、本当によかったと思っています。
自分の研究について、先生方から貴重な意見・アドバイスを頂くことができましたし、他大学の方々にも懇親会などで声をかけて頂き、人見知り(見えないと言われますが)の私としては、発表したことが、相手に最初のドアを叩いてもらうきっかけになったのでありがたい限りでした。さらには、4年だからと先生方が優しく寛容に見てくださった上でのことと思いますが、賞まで頂き、私にとって非常に実りの多い会となりました。

発表できたことだけでなく、様々な研究についてお話を聞けたことでRNAの世界の広さを改めて知り、面白い研究に良い刺激を受けました。また、そのような面白い研究をされている方々と研究についてはもちろん様々な話をし、一緒に3日間を過ごすことができ、この会に参加してよかったと心から思います。

一番印象に残っているのは、やはり中川先生と谷先生の講演。 
敷居を低くして話をしてくださった中川先生の人との関わりの中での研究のお話、普段の研究室ではなかなか聞くことのない谷先生の昔の研究のお話。どちらのお話も先生方の好奇心に感動するとともに、今の自分、これからの自分について改めて考えるきっかけとなりました。

感じたことをうまく文章で表せないのが悔しいのですが、今まで知らなかったことを新しく知ることができ、自分自身の研究に対する姿勢に疑問を投げかけ、さらに研究を頑張って行こうと思えた非常に濃い3日間でした。

最後に、フロンティアミーティングでお話しをしてくださった先生方、一緒に熊本観光や雑談をしてくださった他大学の皆さん、大変充実した3日間をありがとうございました。また、どこかでお会いした時には、ぜひ声をかけてください。

中川先生のように素敵な文章が書ければよかったのですが、どうもうまくいかないので、下っ端の私はこの程度で、あとはベストプレゼンを受賞した先輩方2名にお任せしたいと思います。

写真は1日目のセッション終了後の集合写真。会の雰囲気が少しでも伝わるかと…

熊大谷研4年 西村佳菜子


September 21, 2012

RNAフロンティアミーティング2012


RNA若手の会(RNAフロンティアミーティング)が開催されました。今回の世話人は熊本大学の谷研の井出上さん。会場は、今夏、大雨で堤防が決壊寸前まで行って自衛隊まで出動した熊本市内は白川のほとりのホテル、レオパレスメルパルク熊本。井出上さんの指揮の下一糸乱れぬ統率のとれた谷研のスタッフの学生さんによる見事な運営。いつもながらに繰り広げられる活発なディスカッションとコミュニケーション。徹夜をものともせぬ若い人々(とnearlyおっさんの人々)のパワーに改めて感心させられるとともに、核内構造研究の大先輩、谷さんの研究ヒストリーの格調高い話もじっくりと伺う事が出来て、個人的には大変有意義な3日間を過ごす事が出来ました。この会は本新学術領域も共催だったことですし、最優秀プレゼンテーション賞を取った3人の学生さんに、改めて詳しくミーティングレポートをこのブログにアップロードしていただく予定です。

この若手の会、「フロンティアミーティング」のGod Fatherは神戸大学の井上さんです。「『若手の会』だと参加費を申請しても事務の人がお金を出してくれないんですよー。」とかいう、全くもって不条理なbureaucraticな対応に悩んでいる、という声がチラホラ聞かれ、それはいかん、実態を反映したネーミングはないものかと、若手の会の創始者井上さんがつけてくださったのがこの名称。5年目を経て、だいぶん定着してきたような気がします。

この会に参加していつも思うのは、そこんじょこらの下手な学会よりはレベルも高く内容も面白い、ということです。発表者の多くはM1とかM2とかなので一歩間違えば、ぼくたちわたしたち、発表してみましたー、のような学芸会になってしまう危うさもなきにしもあらずだと思うのですが、少なくともこれまでそのようなナメた発表に出会った事はありません。むしろ、え?このひと4回生???とか、この堂々たる不遜な態度はポスドクかと思ったらまだ修士の学生さん???という驚きの方が多い。昔、清原と桑田を擁していたPL学園と(当時はダメダメだった)阪神が戦ったらプロが負けるんちゃうか、なんていう話がありましたが、分子生物学会のヘタクソな(準備不足な)PIの発表よりもよっぽど面白いトークがずらり、というのはすごい事だと思います。たまに落球やトンネルなどのエラーもありますが、それは愛嬌。

研究は、多くの場合、はじめのところが一番ワクワクしますし、ちょっと謎が残っているぐらいのほうが想像力が掻き立てられて気分的には高揚するものです。論文にしても、投稿当初、第一稿が一番ピカピカしているのに、レビューアの要求する追加実験を繰り返していくうちにだらだら冗長になっていき、最後はeditorialな字数制限でごそっと、削らされてボロボロになる、という、サルになってしまったキリストのフレスコ画のような変遷をたどる事も少なくありません。ただ、その一方で、きちんと仕事を完成させるためには膨大な努力を必要とする地道な検証を粘り強く積み重ねてゆく事が必要であるというのもまた事実で、最初の興奮をまとめる事にばかり目がいって一見するとアホらしい検証を怠ってしまうと、思わぬところで足下をすくわれてしまうものです。

ともあれ、研究の面白さというのは出会って最初の頃のときめき、そこにあるのは間違いありません。キラキラと目を輝かせている若い人に負けないようにプロの意地を見せなければ。

中川

September 9, 2012

これじゃいかんでしょうーlncRNAの苦悩ー

領域代表のコメント、まさに正鵠をえた言でありまして、長鎖ノンコーディングRNA研究の現状と問題点はまさにそこにあると思います。すなわち、

1)既に発表されている様々な生化学的なアッセイはstoichiometryの観点から見て正しい条件でなされているのか。
2)そもそも長鎖ノンコーディングRNAの機能を見るための生化学的なアッセイというものが存在するのか。


1)に関してはオープンな議論がいつしか必要になると思います。昔から免疫沈降は念力沈降とも呼ばれておりまして、どんなタンパク質でも条件さえそろえば結合するわけです。ですから、たとえば酵母のtwo-hybridで網羅的に拾われてくる結合因子が本当に生理的に意味のあるものであるのかどうか、とう点については、様々な角度からの検証がなされてはじめて受け入れられるというのが常識だと思います。矢継ぎ早に追加実験を要求してくるレビューアーも、意地悪が楽しくてやっている訳では、いや、ちょっぴりそういう邪悪な気持ちもあるのかもしれませんが、やはり学問を守りたくてそういうコメントを要求してくるのでしょう。現在、長鎖ノンコーディングRNAに「結合している」と言われている多くのクロマチン修飾因子。これ、ほとんど、既に有名な因子ばっかりです。野球選手で言えばFA選手。既に十分に名が売れた、ストーリとしてありそうな因子をつれてきて、はい、くっつきましたと。逆に、新規の因子がとれてきて、その機能をよくよく調べてみたらクロマチン修飾活性があった、などという話は今までにいちども聞いた事ありません。敢えて例を挙げるとするのならばSmchd1とXistの関係でしょうか。これも、生化学的にとれてきた、というよりは遺伝学的にとれてきた因子です。抗体染色にせよ、DNAをちぎったりはったりのコンストラクト作りにせよ、免疫沈降の実験にしても、多くの反応は「4℃オーバーナイト」で作業を止めておく事が出来ます。つまり、各ステップはとことんまで反応を進めたところで次ぎに行くと。これを僕は「saturation反応」の実験と言っているのですが、分子生物学的なデータのほとんどが、その作業の積み重ねで出てくる。そこにはstoichiometryの観点はちっともない。少々突っ込んだ言い方をすれば、「saturation反応」の実験に骨までどっぷりと浸かった発生屋や遺伝屋やスーパードライな人々が、反応速度なり濃度なりが重要な因子となる生化学的なデータを出してくる場合、専門家による慎重な検証がいるのではないかと。あ、ちなみにこういう事をかいている僕自身は、濃縮還元100%「saturation反応」型の実験屋です。


2)に関してですが、長鎖のノンコーディングRNAの多くはco-transcriptionalに働くという印象があります。核内ボディを形成するNeat1についても、自己組織的に構造体が出来るのか、それとも転写とともに構成因子が組み立てられて段階的に作られるのか、ということであれば、後者である、というコンセンサスが業界では出来上がっています。そうなると、いわゆる、基質を用意して、ライセートと混ぜて、、、という古典的な「生化学」の実験とは本質的になじまない、という可能性はあると思います。しかしながら、「なじまないからやらない」、なんて泣き言ばかり言っていては学問は止まってしまいますから、多分我々がやらなければいけない事は、きちんと新しいアッセイ系を組み立てる事なのだと思います。そもそも、どんな「古典的な」生化学にしても、いろいろなレべルで地道に新しいアッセイ系が組み立てられてきたからこそ、発展を遂げてきたのだと思います。長鎖ノンコーディングRNAの機能をきちんと試験管の中で見える形にする。ちょっと本気で取り組みましょう。というか、本気で取り組みます。はい。長鎖ノンコーディングRNAの機能解析には遺伝学的アプローチが最強であるという常識を変える事が出来れば、世の中がほんの少し変わるかもしれません(それはないか)。いずれにせよ、小分子RNAでうまくいったやり方を長鎖ノンコーディングRNAに適用するだけでは、いつまでたってもそこを越えられません。常識を疑う事で可能性は大きく広がるはずですので、ちょっと非常識な実験を組んでみましょうか。


中川

September 5, 2012

これで良いのだ?

皆さま、領域会議お疲れ様でした。世話役を務めて下さった佐渡さん、そして佐渡研の方々、本当にどうもありがとうございました。

今回の領域会議は、公募研究がずいぶんと入れ替わったこともあり、新鮮で興味深い研究発表が多く、個人的にも大変楽ませて頂きました。芳本さんも書いてくれているとおり、研究内容が多岐にわたり、領域としての幅がぐんと広がったように思います。一方で、それらの研究を「新学術領域」という枠組みで行う意義、つまり、それぞれの研究者の強みを、どうやって領域全体で共有し、活用していくか、ということについてはさらに模索する余地がある様に思いました。例えば、中川さんが(芳本さんの書き込みのコメントの中で)書いてくれているとおり、高分子非コードRNAの研究を、生理機能の解明を行う段階から、作用マシナリーの解析を行える段階にもっていくためには、どうすれば良いのかという点が挙げられると思います。これは、今回の総括班会議の時も話題になりました。

当領域発足時の資料を引っ張り出して見てみると、【真核生物には、数千から数万の莫大な数の高分子非コードRNAが存在し、その多くはこのように組織あるいは発生段階特異的に発現しています。しかし、そのサイズや塩基配列には共通の特徴が見られず、個々の作用マシナリーも多様であると考えられます。これは、共通のエフェクター複合体を持つ小分子RNAとは大きく異なる点です。よって、多様な高分子非コードRNA作用マシナリーの理解を進めるためには、遺伝学的なアプローチを用いて個々の高分子非コードRNAの生理機能を詳細に解析し、その分子機能を予測することが不可欠です。】とあります。今読んでもとても良く書かれた(笑)文章で、「共通のマシナリーが存在しないので、個々の生理機能の解析をしっかりやらないことには、先に進めないのだ」つまり「今はこれで良いのだ」ということですね。まさにそれはその通りで、今は幅広い生理機能に関わる高分子非コードRNAの遺伝学的な解析をしっかりと行う時なのだと思います。一方で、それらが進んだ時にマシナリー解析にすぐ取りかかれるような準備を、すでに生理機能解析がある程度進んだものをモデルとして、(理想的には小分子RNA研究で培われた知見や技術を活用して)進めておくと言うことが非常に重要なのも確かです。

しかし言うは易しで、実際に例えば、XistとPRC2(の各因子)の結合を見る、というようなシンプルなことでさえ、過去に発表されている論文では、定量的に無茶苦茶な条件でやっていたり、論文によってRNAに結合すると結論づけられている因子が違っていたり、なかなか難しいものらしいという印象を受けています。小分子RNAの研究が、粗抽出液を使ったin vitro系の開発によって急速に進んできたように、高分子非コードRNAについても、何かほんの一部でも良いので、生体内で起こっていることをin vitroで再現できるような系ができれば、それがブレークスルーになるのは多分間違いないと思うのですが、

1. そもそも何の反応を見れば良いのか?

2. そもそも粗抽出液で進む反応なのか? (クロマチンという特殊な足場となる環境が無いと進まないような反応なのではないか? もしそうだとすると、その様な環境をどうやって作ってやればよいのか?)

という2つの「そもそも問題」が、小分子RNAの場合と比べてはるかに敷居を高くしている原因なのでは無いかと思います。僕は専門家では無いのですが、このあたり、実際にやっている方々の感覚はどうなのでしょう? (と、ひとしきり書いて、まとめきれずに誰か[たぶん中川さん]にふってみます)

東大・分生研 泊

September 2, 2012

報告記-領域会議に参加しました!


はじめまして、理研吉田研でポスドクをやっております芳本と申します。8月におこなわれた領域会議に中川先生の好意で参加させていただきました。7月のRNA学会から一転、涼しい東北の次は暑い九州へと、日本も広いなと実感します。

2日間に渡る領域会議にフルに参加した感想は「非コードRNAの研究広いぞ!」。試験管内の系を用いた(美しい)生化学的な解析をはじめとして、ノックアウト生物を用いた遺伝学、イメージング、そして化学的なアプローチを積極的に取り入たものと、RNA研究の一分野としては現在最も多様性に富んでいるのではないでしょうか。もはや領域という言葉で括っていいのかよくわからないくらいですがとにかく僕にはいい刺激になりました。
また学会と違い、完成された話だけではなく、これからすごいことが起きますよ~とか、こうこうしたら実験がうまくいきました!とかそういった生々しい話を聞けたことも、今後僕の血となり肉となるという意味で美味しかったです。今は只々、ありがとうございましたとお礼を言うばかりです。
最後に、今回の班会議の運営に携わった佐渡先生、および学生の方々本当にお疲れ様でした。また機会があったら是非参加させてください!