いまや定年間近の感もありますが??、Gomafuにも期待の新人、新規ノンコーディングRNAと呼ばれていた時期もありまして、そのGomafuの相棒、アシベ探しは僕のラボでは優先順位第一のテーマでした。2007年ぐらいの頃でしょうか。いろいろ関連文献をサーチして、その時は、Xistを始めとした長鎖ノンコーディングRNAの複合体精製になんでみんなそんなに手間取っているんだろう?と、素人目にはとても不思議に思っていました。タグ付き分子免疫沈降一発&マス解析で転写因子複合体を始めとした各種複合体が次々と同定されていた時代でしたから、RNAにも「タグ」がつけられるMS2やらPP7やら最新のツールを使えばすぐ出来るだろう、と軽く考えていたのですが、RNA業界に出入りするようになって、色々な方々の話を聞くにつれ、その事情がだんだん飲み込めてきました。つまり、
長鎖ノンコーディングRNAの複合体は溶けん!!
そのころ、I君がラボにjoinしてくれて、アシベの生化学的な同定というチャレンジングな課題に取り組んでくれる事になりました。で、いきなり、実験始めて2週間。
「Gomafu、溶けました。」
ん???あれだけ溶けない溶けないと言っていたGomafuが可溶化出来た、、、だと。
にわかには信じがたかったのですが、たしかに、奇麗に溶けています。
Isizuka et al., Gene Cells (2014) 19, 704- より
どうやらトリックはPBSで、細胞質と核の分画等にはHEPESやPIPESでバッファをとるものが多いのですが(上図のCSKはCytoskelton BufferでPIPESベースの緩衝液です)、リン酸バッファーを使うと、つまり高濃度のリン酸が入っていると、RNAータンパク質複合体は可溶化しやすい、かもしれない、、という狐につままれたようなデータが出てきました(PBS-TXとは単にTritonX100を入れたPBSです)。信じられない事に、Neat1やらXistやらも可溶化されています。これって凄い事なのではなかろうか!しかも、可溶化分画をショ糖密度勾配遠心にかけると、それらのRNA-タンパク質複合体がなんとなくそう思っていた重さのところに分画されてきます。Gomafu複合体とMalat1複合体が同じぐらいの大きさ。Xistがそれより重くて、Neat1が含まれているパラスペックルの複合体が最長不倒距離の重さ。
Isizuka et al., Gene Cells (2014) 19, 704- より
なんだ、この問題、解けたようなものだと軽率に思ってしまった事が、アシベ探しという意味ではドツボの始まりになってしまいました。
中川
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