December 3, 2013

分生のRNA関連セッションのどろなわ紹介(2)

引き続き2日目以降のRNA関連注目セッションの紹介です。まずは午前中のセッションから。うー、何で直前にこんな事をやっているのだろう。一週間前にやっとこうと思っていたのに、、、



2AW1 セントラルドグマの基盤をなす古典的non-coding RNAの新展開
第一会場:ポートピアホテル本館 地下一階
慶応の金井さんと宮崎大学の剣持さんがオーガナイズされているワークショップです。当新学術で主として対象としているノンコーディングRNAは基本的にRNA polymerase IIによって転写されるようなものばかりですが(小さなRNAの前駆体も元はといえばpolII転写産物なので)、このワークショップでは、ノンコーディングRNAという名前が頻繁に使われるようになるずっと以前からRNA研究業界に君臨してきたtRNAやrRNAに関する最新研究が集められています。計画班員の鈴木健夫さんも登場予定。RNA修飾、というのは、RNA業界では常識なのでしょうが、ちょっと異分野の人間にするとなじみは薄く、これらの研究の話というのは、こんなこともあるのか!、そうきたか!、と、RNA学会に出入りし始めたばかりの僕は目から鱗が落ちることの連続でした。また、1本のmRNAから異なる2つのタンパク質を作るような系を作っちゃいました、という東大の管さんの所の加藤さんの仕事の話もあるようです。このお仕事は、こういったら怒られるかもしれませんが、痛快な遊びごころが素晴らしい、と言いますか、奇想天外な発想、まさにこういうところは管さんの独壇場、という気がします。特にすぐに何かの役に立つわけではないし、成体内で起きている現象の分子メカニズムを明らかにした、という訳ではありませんが、極端なことを言えば生命誕生のころの地球に思いを馳せることの出来る研究ーコドンは何故できたのだろうという答えのない答えに関する好奇心が刺激される研究であると思います。

2AS7 転位因子:ゲノム進化の推進者
第7会場:神戸国際会議場3階
こちらは塩見の春さんの冠シンポジウムで、当新学術関連ですと計画班の塩見の美喜子さんが、おなじみ、piRNAによるレトロトランスポゾンのサイレンシングの最新のお仕事をお話しされます。その他、最近方々で強烈デビューされている公募班の本田さんのボス、朝長さんのボルナウイルス由来の遺伝子、エブリンの話もありますね。進化というのはゲテものと言いますか、とてもまともな実験生物学の対象となり得ないというのが一昔前の状況だったと思いますが、エボデボの概念がすっかり浸透し、分子生物学でも、レトロトランスポゾン由来のゲノムの進化や新規遺伝子の獲得、といった研究がどんどん出てきて、今や確固たる研究領域、という気がします。国内のもうひとかたのスピーカーは、京大農学部の奥本さん。イネのトランスポゾンmPingを用いて、このトランスポゾンを飛ばしてやったとき、イネゲノムからの遺伝子発現プロファイルがどう変化するかという、まさに進化を目で見てやろうというワクワク研究です。このシンポジウムでは海外からのゲストスピーカーもおられます。そのうちの一人は、ユタ大学のCedric Feschotteさん。
パリ大学ご出身の方ですね。この方のお名前は最近Plos Geneticsに発表された論文でちらと知っていたのですが、ずっと転位因子の研究をされている方のようです。僕と同じ世代なのに発表している論文がはんぱない。。。と、そういうところを見ていても落ち込むだけなので見ないことにして、そのPlos Geneticsの論文で印象に残っているのは、長鎖ノンコーディングRNAのエクソン、すなわちncRNAの本体に挿入されている転位因子の配列は、タンパク質をコードするRNAやイントロン、遺伝子間領域に挿入された配列よりも進化的に保存されている傾向にある、という彼らの発見です。ということは、長鎖ノンコーディングRNAの一つの作動エレメントとして、転位因子の配列が働いている???これは、なかなか興味深い事実で、これまで挿入によって特定のゲノム要素を壊すとか、LTRを持つ転位因子なら新たなプロモータを付け加えるとか、そういう観点での話は良く聞いたことがあるのですが、転位因子の配列そのものがRNAとして機能しているとなると、これはまた別の話かと。トランスポゾンがコードしているタンパク質が進化して内在性のタンパク質遺伝子として機能しているというような話は東京医科歯科の石野さんのお仕事が有名ですが、このRNA版、ということでしょうか。ともあれ、今回の分子生物学会では、主として内在性のレトロウイルスERVと新規プロモーターまわりの話のようです。
もうひとかたの海外ゲストは、じゃーん、Arian Smitさん。
この方のお名前を知らなくても、Repeat Maskerを作った人と言えば、おおっ−!!!!とビックリマークが100個ぐらい付くのではないでしょうか(実際僕がそうでした)。Repeat Maskerはプローブやプライマーをデザインする人にとっては必須のツールですし、こんな便利なものがあるのかと、初めてそれを使ったときには無料でそれを公開している懐の深さに涙したものです。話はそれますが、こういうツールは、使われてなんぼのところがあって、自己満足でなく、世界中の人に使われるようを無料で公開するという文化は、本当に素晴らしいと思います。今回のお話は、転位因子と進化系統学的な、東工大の岡田典弘さんのお仕事に近いような内容のようです。

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