泊研究室の吉川です。いよいよ博士課程三年生になりました。少し時間が経ちましたが、3月19日から25日にかけて開催されたKeystone
Symposiumのレポートを書かせて頂きます。
自分の研究分野とも重なり、特にポスター発表でのpiRNAに験する研究報告に刺激を受け、非常に意義深い学会となりました。piRNAは2006年に登場して以来、急速に注目を浴びている研究分野です。現在までキイロショウジョウバエ、マウス、カイコを中心に研究が進められ、数々の関連因子の存在が示唆されてきました。今回のポスター発表ではゼブラフィッシュ、C.
エレガンスなど系も加わり、新たな報告がありました。簡単にですが以下に紹介させて頂きます。
・ ゼブラフィッシュのTUDORタンパク質の一つであるTdrd6がpiRNA経路や生殖細胞の維持に関わり、さらには生殖細胞の分化に関連する因子のmRNAと相互作用があるという新たな報告(Rene
F. Ketting et al.)
・ C.エレガンスを用いたmutagenesis screeningによる関連因子の解析(de Albuquerque,B.F.M., et al.)
・ DNA結合ドメインとエキソヌクレアーゼドメインを持つMaelstormが、piRNAのprecursorと相互作用があり(RNAシークエンスに依る解析)、精子形成に関連している事を示唆するノックアウトマウスを用いた研究(Alex Bortvin et al.)
・ 初期のpiRNA成合成に関与すると言われている、putative ATPaseであるArmitageの活性部位をつぶした変異体を用いたキイロショウジョウバエによる解析(Daniel
Tianfang Ge et al.)
・ KrimperがAGO3と相互作用し、その修飾や局在を調節しているというTokyo RNA Club等での報告に加え、キイロショウジョウバエの濾胞細胞に由来するOSC培養細胞に、本来発現しないAGO3タンパク質を発現させる事によるKrimperの機能の更なる解析(Yuka W. Iwasaki et al.)
・ キイロショウジョウバエにおける新たなpiRNA関連因子、DmGTSF1の報告 (Kuniaki Saito et al.)
・ BmPAPIと呼ばれるカイコのTUDORタンパク質がpiRNAのプロセシング経路(主にpiRNAの長さ調節)に関係しているという新たな報告(Shozo Honda et al.)
・ piRNA増幅経路の定量的解析方法の改善(Zhao Zhang et al.)
・・・など関連因子も機能もまだまだ混沌とした分野ですが、立ちこめていた霧の奥に何かが見えてきそうになる予感を胸に、自分もその一連の大きなうねりに加わりたいと思う次第です。
さて、最後に余談ですが、私は海外での学会に参加するのは始めてで、Keystone
SymposiumがカナダのWhistlerで行われると聞いた時は、「どうしてわざわざ、あんな雪山のリゾート地で行うんだろう」という解せない想いでした。けれどいざ行ってみてその良さが分かりました。セッションは8時-12時、17時-22時の二回に分けて行われ、それ以外はお昼寝なり観光なりして良いので、十分な気分転換が出来ます。さらに、ホテルと会場、レストランや観光名所が隣接していて非常に便利です。そして何より、雄大な自然に囲まれた雪山のリゾートで敢えてサイエンスをするというギャップには、何とも言えないオシャレな魅力があります。
慌ただしい東京の日常に引き戻された今日この頃、早くあの雪山の頂きにのぼった時のような開放感を研究でも味わいたいと願うばかりです。。。
吉川真由
非日常空間でサイエンスを考える時間を取れるかどうかというのが研究者としての幅を決めているような気もします。班会議も上高地とかでやれば良いのかも??
ReplyDelete中川