November 14, 2012

知ってるつもり? のエピジェネティックス

吐く息も白くなり、明日あたりはいっそう冷え込みそうです。一人暮らしの学部の学生さんですとこの時期はこたつを引っ張りだして冬ごもりの準備。夏休みに買い込んで読み損ねた文庫本を抱えて孤愁の季節、なんて趣かもしれませんが、ピペット片手に日々奮闘している実験生物学のフィールドの人は、来るべき分子生物学会に向けて、最後の追い込みに慣れない、もしくは慣れきった夜更かしを重ねている季節なのでしょうか。

学会、といえば一昔は一つで十分、ちょっと同窓会もかねて二つ、ぐらいだったのが、研究会も含めれば年に数回(多い人は十数回??)、というのも珍しくなくなって来たような気がします。楽しいけれどもそれはそれで忙しいなあ、と常々思っていたら、正面からそれを取り上げたブログもあるようで、でも当の本人が来年大会長をされるようですので、どうなることやら楽しみです。

なにはともあれ、分子生物学会。当新学術とは直接関係はありませんが、塩見の春さんが(本所の鐵とか、野槌の弥平とか、みたいで鬼平チックな言い方ですね)エピジェネティックスのシンポジウムを企画されています。そもそも、エピジェネティックスって何なんだろう?という趣旨の企画ですね。

エピジェネティックか、エピジェネティクスか、エピジェネティックッスとつまるのか、はたまたエピジェネか。申請書を書くときはちょっと迷ってつい最近もGoogle先生にお訪ねしていたりしたものですが、この言葉、ここ数年、実に良く耳にします。数年前、徳島で発生生物学会があったときに当時遺伝研におられた佐々木さんがエピジェネの企画をオーガナイズされていたときの最初のスライドは、

「萌っ!!』

と微笑んでいる短いスカートの美少女の萌キャラでひっくり返ってしまったのですが、つまりそれは佐々木さんが萌キャラが好きという訳ではなくて、エピジェネティックスの研究業界はそれほどメジャーではない。少なくとも発生生物学会ではメジャーではない。一部の人が熱狂的に研究している分野として紹介されていたのですが、当時でも十分メジャーだったような気はします。Shhの3文字には反応するけれどもNMDの3文字はスルーしていた当時の僕からすると、目から鱗の、大変面白い話でした。

話の中心は、ヒストンの修飾と、DNAの修飾。ChipやらChip on Chipやら、およそ縁遠いものと思っていた言葉が最近ではかなり見近に感じられるようになってきたのですが、そのときの話が強烈に面白くて、あれ以来、クロマチンの修飾なり、DNAの修飾なり、Waddingtonのあまりにも有名な(でもその意味は良く分かっていない)山脈にボールが転がっている地図なりに敏感に反応する体質になってしまったような気がします。

ところが、です。知っているつもりのエピジェネティックスはそうではない、と、血頭の丹兵衛どんが、いや、塩見の春さんがおっしゃるのです。ヒストン修飾が出てこないエピジェネティクスのセッションなんて前代未聞です。さてその真意は??

中川

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