October 14, 2010

Xist研究の舞台裏(2)

結局の所、プロジェクトというのは手を動かせる人がいなくては成り立たないということを痛感していた頃、筑波大の入江さんのところで修士を取ったYHさん(ほとんど伏せ字にする意味なし)が2008年の4月からうちに来てくれることになりました。そこで、眠っていたsiRNAライブラリーにようやく出番が回ってきたわけです。彼女がラボに合流した瞬間から僕自身さんざ翻弄されたsiRNAのノックダウン実験が何故か突然上手くいくようになり、RNAはついに人を見るにまで進化したか、などと馬鹿なことを考えたりしていたわけですが、ライブラリースクリーニングを開始するにあたって、まずは可能性の高そうな物からやっていこうということになりました。一番明確な候補遺伝子は当時からX染色体に局在する事が示唆されていたhnRNPU、別名SAF-Aだったわけですが、それが文献上報告されたのが2003年。もし「あたり」ならばとっくに分かっているはずだし、誰かがもう何かをつかんでいるのならばいまさらやっても仕方がない。その辺の事情を確かめようと先述の淡路島のミーティングでディスカッションする機会のあった核マトリクスの専門家、岡山大学の筒井さんに問い合わせたところ、XistとSAF-Aの関連を示唆する結果が出たという噂も聞かないし、誰かがやっているという話も聞いたことはない、是非確かめてみたらいかがですか、というアドバイスをいただいて、よっしゃこれから確かめましょうということになり、結果は、、、

一発ツモ。

例えて言うならば、チベットの秘境にあると言われる幻の草本を探しに出かけようと万全の装備で出発したところが、目的の宝物が玄関先に転がっていた、みたいなものです。「人はラッキーと言うけれども、、、」というテーマでRNA若手の会で塩見(春)さんが講演をされていましたが、強靱な意志に裏打ちされた塩見さんの場合と違い、この場合ただ単にラッキーだったわけです。

とはいえ、hnRNPUをノックダウンするとXistが染色体からはがれる、というところまでは良かったのですが、このあと思わぬ苦労をすることになりました(続く)。

1 comment:

  1. 面白いですねぇ。続きが楽しみです。

    影山裕二

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