January 10, 2013

進化のスナップショット

いつの間にか年が明けてしまいました。というか確信犯で年末年始はベンチから離れていたのですが、いい加減に始動しないと永遠に冬眠してしまいそうなので、そろそろエンジン全開したいと思います。

さすが一億総ブロガーのお国柄、安倍首相もFacebookを始められたらしいですが、当新学術領域も、キリッと、リアルタイムで活動報告をしていきます!というわけで班員の皆様、報告してください。まずは領域代表から一言。。。



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ということで、次の話題は、進化のスナップショット、というちょっと背伸びしたお題です。次世代シークエンサーは今世代シークエンサーという名言を残してサイバー空間から消えてしまった某K君の予言通り、昨年2012年はRを駆使した統計データがばんばん誌上を賑やかに飾っていましたが、今年2013年、Twitter上の噂によれば1987年以来26年ぶりに全ての数字が違う年だそうですが(来年もそうですが)、今年もますます今世代シークエンサーは当たり前の技術として世の隅々まで浸透してゆくことになるのでしょうか。

 時代についていくのは大変ですし、いい年をしたおっさんがちょっと遅れて必死についていこうとするのも若者言葉を必死で真似するみたいでみっともないところもあるのかもしれませんが、泰然自若と構えられるほど僕自身は大物ではないので、最近必死にこの手の話題にかじりつこうとしている次第です。とはいえ、コンピュータと向かい合う時間が多いのはまずい。まずい。非常にまずい。とにかく誘惑が多い。ベンチで禁欲的な生活を送っていた研究者にとって、外の世界とつながる事ができるコンピューターは息抜きという感覚が残っていて、ついつい、ダウンロードやアップロードがちんたらしているとYahooのニュースサイトや名人戦速報サイトに行ってしまうのですね。かつて修学旅行のときに家にテレビがない友人はかじりつくように必死にテレビにしがみついていたのと、そして家にテレビがある普通の中学生はなんとか番組が見れるようにいわゆる有料放送の100円玉投入口に必死に針金を突っ込んでいたのと(フロントに止められていますって)、レベルが変わりません。なんて思っていたら、うちの所長が特別講演でおっしゃっていました。
「プライベートは大切に。」
「ラボでは真剣に。」
「ラボでは新聞を読むな。窓際族になるな。」

うーむ。反省。反省。息抜きは程々に。

ともあれ、まだまだ自分で解析をする事などは出来ませんが、public databaseに落ちているどのファイルをどのアプリケーションで開くかぐらいは、なんとなく分かってきました。千里の道も一歩から。拡張子というのはベンチで禁欲的な生活を送っていたペキン原人にとってかなりハードルの高い概念で、jpgとかtiffとか中身はブラックボックスでもいちおう使っているわけですが、同様にbamとかbedとか、中身は良く分からないですけど、あ、開いた!というだけで嬉しいものです(レベル低すぎ)。

話を元に戻すと、ようやく、自分自身のプロジェクトのDeep-seqのデータが帰ってきて、一応Viwerで見れるフォーマットのファイルまで作ってくれていたのでつらつら見ていたのですが、自分のデータとは別のレベルで面白い!

え、こんなところが転写されているの?なんだ、ただのリピートか。あれっ?これは新しいUTRか。おっ、新しいlncRNA見っけ。

というような驚きがばんばんあるものなのですね。その多くは、つまらないartifactだったり既に報告されていたりするものだったり今更言うまでもない周知の事実だったりするとは思うのですが、IGVビューアでファイルを開くだけで、ちょっと大人の世界に入った気になった子供のような気分になってしまいました。

知る人ぞ知る、ミトコンドリアゲノムがホストのゲノムに飛び込んでいるという事実。それらの配列はなんとNumt (nuclear mitochondrial DNA) と言うらしいのですが(三島の細胞内共生の怪物M君情報ありがとうございます)、つらつらとChromosome1から必殺人力peak callアルゴリズムを走らせていると、突然アホみたいなピークが出てくることがあるのですね。ちなみにこれはpublic databaseで見る事の出来るマウスのMyo3aという遺伝子のイントロン部分なのですが、見事にイントロン部分にたくさんのリードが貼り付いています。これはこの部分が強烈に転写されている、というのではなく、RNAサンプルにたくさん含まれていたミトコンドリアRNA由来のリードが、全く同じ配列を持つこの部分に貼り付いている、ということなのでしょう。

種間の保存性を見てみると、すごく進化的に近いラットやヒトではこの挿入はありません。レトロトランスポゾンでは良くある話ですが。ニワトリにこの挿入があるのは何故??か良くわかりませんが、まさに最近飛び込んだばっかり!というのは、そのような気がします。我々の細胞がミトコンドリアと共生をはじめたのは太古の昔ですが、いまだに遺伝子のやり取りがあるというのはちょっとした驚きでした。というわけで、これが進化のスナップショット!

ゲノムの解析というのは究極の考古学だと思うのですが、インディジョーンズでなくても、古代の出来事を身近に感じるのはとてもワクワクする事のような気がします。自分の仕事とは全然関係ないのですが、しばらくこの手の配列をブラウザで探してうっとりと眺めてしまいました。まずい。まずい。非常にまずい。やっぱりデスクに座っていると誘惑が多いです。

中川