May 30, 2010

繋がりを思う

中川研の絶滅危惧種・トキです。
先週、色々思う出来事がありまして、
卒研生だった頃のことをふと思い出しました。
おそらく、実家のおかんや、
企業戦士として一足先に社会で一生懸命働いている友人には
うまく伝えて面白がってもらうことが
ちょっと難しい話題のような気がするので
自分と似たような環境に身を置いているみなさんにぶちまけさせてください。

筑波大学の学部4年生だったころ、卒研生として
粘菌cDNAプロジェクトを担っていた、漆原研究室に身を置いていました。
研究室に入る前に、漆原先生とお話をする機会がありまして

「大学の授業はどれもちっともまじめに受けませんでしたが
細胞同士がくっつく、という話を本で読んだ時はとても感動したのです」

と言ったら(何を言ってるんだ、という感じですが)

「あら、カドヘリンは私がやってたのよ」

と、漆原先生がおっしゃいまして、えらく驚いた覚えがあります。
先生のご担当講義はゲノム生物学だったので、
まさかそんな研究に携わっていたとは思いませんでした。
(でも学部生が、自分の学部の教授の研究の変遷を知る機会がなかった
というのは、もったいないことですね)

今思うと、不思議な縁です。
中川さんと漆原先生は竹市研という点でリンクしています。
そして、私の卒業研究テーマは
今、中川研で隣の隣のデスクに座っているポスドク・石田さんが
博士課程でやっていたテーマを引き継いだものでした。
(石田さんも漆原研出身者です)

私が漆原研究室に入った年は
大きなプロジェクトの終わったあとの、
研究室としての移行期間だったように思います。
長年働いていた人が抜けたりして、ラボは比較的静かな雰囲気でした。
スタッフは先生以外おらず、博士学生はひとり。
「自分で一年間しっかり考えてやってね」
というのが、たしか実験を始めるにあたっていただいた言葉です。

研究室唯一の博士課程の学生さんは当時D3でした。
右も左も分からない卒研生でも、
しっかり仕事の出来る先輩かそうじゃないかの判断はなんとなくつきます。
優秀で、行動力のある先輩でした。
「もっと何か、違うことができるんじゃないかって思うんだよね」
と、いつかおっしゃっていた記憶があります。
漠然と、分かる気がしました。
当時は、この言葉に新しいことへの希求をぼんやりと嗅ぎつけました。

で、5年後の今、今度は私がD3(正確にはD2半ですが)です。
ふいにその先輩に連絡を取る機会があって
何となしに興味を持ってPubMedを動かしてみたら、こんな論文が出ていました。

Methylation of H3K4 Is required for inheritance of active transcriptional states.
Muramoto T, Müller I, Thomas G, Melvin A, Chubb JR.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20188556

Fig 1と2を見て、あぁ、そうだったのか、と思いました。
5年前、ぼんやりと嗅ぎつけた希求がはっきり形をとって
ぶん殴られた気分です。(しかもエピジェネって…!)
どんな過程を経て、この仕事に辿り着いたんだろう。
あの頃、ぼけーっとした卒研生だったことが悔やまれます。
きっと先輩は色々考えていたんでしょう。
もやもやした感じを抱えていたかもしれない。
ああもったいないことをした…。
もっと、意識的な卒研生であったら、
先輩のそういう一面から、もっとたくさんのことを学べたのに。


…まあそんな、個人的な回想録はこれくらいにしまして。

意識の高い論文を読むと、わくわくする反面、不穏な気持ちにもなりますが
やっぱりちゃんと論文に日々出会うって大事なことなのですよね。
理想的には休日、優雅にコーヒーでも飲みながら
論文読みを楽しみたいところですが
現実には、寝坊→コンビニ→ツタヤ→ラボ→気が付いたらサザエさんの時間
てなところです。
ついぞ、博士過程も後半になっても、
日常的に論文を読むくせがつきませんでした…。

同年代の皆さんとか、普段どんな感じで
論文読む時間をつくっているんでしょうか?
そして忘れられない論文や、はたまた研究人との出会いってあります?
この前、CDBミーティングの帰りに新幹線で同列だった岩崎くん、依田さん、
そして泊研ニューメンバーの岩川さん、どうですか?(と話をふってみる)


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May 26, 2010

再び河岡慎平です。

ブログ、リニューアルということで、盛り上がると良いですね。
書籍紹介でもしてみようと思います。

今日のおすすめは、

サイモン・シン著 青木薫訳
ビッグバン宇宙論 (上・下)

です!
サイモン・シンは物理学の博士号をもったサイエンスジャーナリストです。
「フェルマーの最終定理」や「暗号解読」なんかも有名ですね。
シンの本は構成がすばらしく、ある命題に関して科学がどのように動いていったかということを知ることができるところが、好きです。
登場する科学者たちがいきいきと描かれ、まるで、その場に自分がいたような錯覚に陥ることもしばしばです。

上のビッグバン宇宙論もその例にもれず、地動説vs天動説の時代からビッグバン理論にたどり着くまでの変遷、これからの展望が、アバターばりの迫力で描かれています(アバターみてないですけど)。
実験に疲れたりしたときにぜひ、読んでみてください。

最近、アマゾンで本を衝動買いしてしまうことが多いです。
いちばん最近買った「カオスの中の秩序」という本を前にして、DFラインでパスをまわすしかなかったサッカー日本代表の気持ちがよく分かりました。

拙文、失礼しましたー。

May 16, 2010

サッカーで言うところの

いきなりボールがきたから驚いた、という感じの、河岡慎平です。
中川先生からのパスということもあり、どうにか枠に飛ばさないといけません。

というわけで、僕も、CDBで行われた先のmeetingに参加しました。
諸事あって初日午後からの参加でしたが、大変楽しめました。
反省としては、最近はどうも守りに入るときが多く、ちょっと前であれば目立ちたい一心で挙手していたところを、こう、まわりをちらりと見渡すあいだに、機会を失ってしまうようなことがよくあった、ということです。
あげく、質問は、今回はいいや、などと勝手に決めて、外のテレビジョンで発表をきいたり、、、
あまり褒められた姿勢ではなかったと思います。
本来虫虫していたこともあってか、RNAまわりの学会、シンポジウムに出ると、どうしても、守りに入ってしまうことが多いんですね。
しかし、そういう自分は好きではありません。
正直言えば、目立ちたい、という感情のかたまりのようなタイプであるところに、中川先生のばしっとした指摘がきましたので、今度からは、全ての口頭発表に対して質問する意気込みで臨もうと思います。
河岡が参加した全演題数に対する質問回数が1/3を下回った場合には、罰ゲームをやらせていただきます。

上のような反省もありますが、一方で、とてもたくさんの収穫があったシンポジウムでした。
僕は常に、こういった会に参加するときは、「飲み会がいちばん大事だ!」と考えています。
飲み会は、いろいろな方とコミュニケーションをとり、和を広げる最大のチャンスを与えてくれるからです。
実際、とても多くの新しい知り合いができ、大変嬉しかったです。
新しい関係を築く瞬間は、いつだってすばらしいものです。

また、いろいろな分野の方の’ポリシー’に触れられることも、こういったシンポジウムの良いところですよね。
自分のポリシーのよいところ、わるいところ、とてもよく分かります。

ポスタも出しましたが、車マイケルさんをはじめ多くの方に自分の研究をきいてもらうことができました。
海外の研究者の方は、発表をきくときの相づちがのりのりなのでで、すぐに気持ちよくなってしまいます(笑)。
影山先生に、「仮説が美しい場合は、たいてい正しい!」と言われたことが印象に残っています。
自分の仮説は、もう、子どもみたいにかわいがってますので、もとより親バカになんてすてきな仮説だ、と思ってるわけですが、美しい、と言われるともう、飛び上がりたいような気分でした。

以上を要するに、全体の場での質問をしなかったことが情けないかぎりですが、それは次回必ず改善するとして、意義ある楽しいシンポジウムでした。
中川先生の記事にもありましたが、運営に携わってくださった方々にこの場をかりて御礼申し上げます。

追記として。

二日目の夜、モノポリで圧勝、まさに圧勝しました。

河岡慎平

May 15, 2010

CDB meeting

5/10-12まで神戸であったCDB meeting "RNA Sciences in Developmental Biology" ですが、大変盛況な会で、改めてこの業界の活発さを実感しました。

この会、理研CDBの中村さんと中山さん、それから当新学術の代表の泊さん、もう一つRNA関連の新学術の代表の稲田さん、それから京大の大野さんや神大の井上さんらの企画ではじまったもので、海外からの参加者が30名余り、うち招待スピーカーが13名、ポスター演題100題越え、呼んでもいないのに(?)EMBOのエディターが飛んでくるという、とっても国際色が豊かで、かつ内容の濃いものでありました。個人的には、憧れのCarmichaelさんにも会えましたし、初っぱなのトークでいきなり会のテンションをトップギアに入れたスプライシングのBlencoweさん、おしゃべり好きでいつも皆が食べ終わっているのにお昼のお弁当が一人だけ残っていたおちゃめなXist研究者Gribnauさんら、個性豊かな研究者と話が出来てとても嬉しかったです。このような会が日本で開催される、そしてそこに学生さんがどんどん参加できる(なんとCDB meetingの参加費はタダ!)ということに、よき時代を感じずにはおれません。

この会に参加して、何点か思ったこと。

今回の参加者は、特に海外からの招待講演者は、かならずしも世間的に名の売れた超著名の人ではなかったかもしれません。ただ、みなさん全部バリバリ現役、しかも会に参加することに貪欲な若い人が多かったのがミーティングをものすごく盛り上げたのは間違いないと思います。自分の発表だけその場にいてあとは神戸観光、なんてひと、一人もいませんでしたから。交流に熱心になってビールを飲み過ぎて二日酔いになっていた人はいたようですが。。。大御所はいらん。若い人を、熱心な人を、というオーガナイザーの方々の一貫した方針があったおかげで、この会がこうも「盛り上がった」のは間違いないでしょう。そこかしこで、この会はおもろい、CSHLのミーティングより面白い、とかいう声がきこえてました。

日本人の若い学生さん達。参加するだけじゃダメだというのは良くわかっているとは思うのですが、その割には質問が少なかったですねー。ただ、休み時間やポスターなど、頑張っている人は頑張っていたようです。まあ、なんでもよいから質問しろ、岡田節人先生などWhat is DNA?でも良いから質問しろ、などとおっしゃられていたようですが、ちょっと時代は変わってきているのかもしれません。かつて日本で行われていた「国際会議」はちょっとお祭りみたいなところがあって、英語が苦手な学生さんの発表や質疑応答もご愛敬みたいなところがあったような気もしますが、で、そういう場で皆練習を積んだもんですが、最近はあきらかに全体のレベルが高すぎて、かつては名物だったご愛敬質問がむしろ場に合わない、みたいに思ってしまうのかもしれません。ただ、恥をかくのは若者の特権。突撃と撃沈をもっと見たかったような気もします。

これは会全体の話とは違うのですが、大学院の教育について。僕自身は大学院教育にはほとんど関わっていないのですが、海外からのゲストと話をしていてよく出ていたのは、「大学院生はすぐ目の前の実験に夢中になるからねー」ということ。これ、ネガティブな意味なのですね。PIとしては目の前の実験に夢中になってバンバン結果を出してくれればこの上ありませんが、そりゃいかんのではないか、とそろそろ業界全体が再考しても良いような気はします。恥ずかしながら、僕自身、RIの再教育訓練や大学院の講義に全く出ずに自分の実験ナンバーワン、なんて思っていましたが、今からすると全くもって忸怩たる重いです。自分の将来の可能性をわざわざ狭くすることはないし、サイエンス全体として考えたときにより多くのバックグラウンドを持つ人がどんどん出てくることは大きなプラスです。先述のBlencoweさんの研究室がある建物。各階に異分野の研究室がわんさか集まっていて、しかもその研究室同士を直接つなぐ形で階段があるみたいなんですね。誰が設計したんでしょう。そのほか、面白い仕事をしている人はバックグラウンドが広いなあ、というのを痛感した会でもありました。

ちなみにこのCDB meeting。驚くべくことに事務仕事はほとんど遠山さんと高橋さんという、二人の方でやられているのですよね。和光の理研ではこの手の会議を開くたびに研究室全体がてんてこ舞い、なんてことになるようですが。雲泥の差です。理研CDBがうらやましー、のはそうなのですが、そんなことを言っておらずに、自分らの組織でもこういう人を持てるように努力せねばならんと、思った次第です。誰も文句を言わない実績を組織のみんなが出し続けていれば、自然とそういうふうな人を雇えるようにもなってくるでしょうから。

だらだらになってしまいましたが、ともあれ、関係者の皆様、素晴らしいミーティングをありがとうございました。

K岡君。あんまり質問してなかったから、もしこれを読んでいたら、ミーティングの参加記ぐらい書きなさい。と、ふっておきます。

中川