March 26, 2010

理研ってどんなとこ?(3)

さて、理研には学生さんも若干名いると書きましたが、実際のところ、大学の研究室と、理研の研究室と、所属したことが分からないのですが企業の研究室とはどこがどう違うのでしょうか。

話は少しずれてしまうかもしれませんが、僕自身が学生の頃、筑紫哲也さんの多事争論だったかなんだかその手のコラムで、日本の一流、二流とは何かみたいな話があったそうです。研究に関することだったとと思うのですが、一流とは、企業の研究室。二流とは、大学の研究室。当時工学部の修士課程に所属していたクラブの後輩は夢一杯で進学したはずの大学院によほど幻滅していたのか、我が意を得たりとばかりにこのネタを教えてくれて、僕の下宿に来るや口角泡飛ばしさんざ息巻いてついでに一升ほどあけていってようやっと夜明け前に松ヶ崎へと(ローカルネタですいません)引き上げていったのですが、なんで筑紫さんがそんなことを言ったのだろう、分子細胞生物学の研究の現状を知らんのかしらん、いやそんなことはなかろうに、と釈然としないまま寝付いたのを今でも良く覚えています。客観的に物を見るというのはなかなか難しいもので、今でも僕は日本で一番の花火大会は旧盆の諏訪湖の花火だと思っていますが、おばあちゃんがそう言っていたのにテレビでは隅田川の花火大会が最大の賑わいとかいうニュースを小学校4年生の時に聞いたときには、子供ながらに深く傷ついたおもいがあります。物の価値というのはあくまでも共同幻想の大きさで決められるところがあって、バブル絶頂期の時にゴッホのひまわりが53億円で落札されましたが、その数年後だったかもっとあとだったか、新宿だか池袋かであった神経学会のついでに立ち寄った東郷青児でのその絵は、なんだか寂しそうでした。もうちょっと普通にその辺に置いていてくれればよいのですけれどもね。

すこしどころかだいぶ話がずれてしまいました。で、大学の研究室、理研の研究室、企業の研究室の話です。さあどれが一流でどれが三流でしょうなんていう野暮な話はしません。ただ、ひとつだけハッキリしているのは学生さんのいる割合ですね。大学の研究室はほぼ100パーセント、企業の研究室はほぼ0パーセント、理研の研究室は上が50パーセント、下がほぼ0パーセントでしょうか。ちなみに僕が和光に来てからの割合は、最初が6割ぐらい、その後単純逓減の道をたどり、最終的にほぼ1割まで減ってしまいました。この4月からその割合は増えますが、ポスドクが去っていくからであって、絶対人数でいうと絶滅危惧種です。トキ並です。

とまれ、こういうことからも理研の中途半端ぶりがうかがえます。大学ではないのです。ですので学生はデフォルトでは来ません。でも、企業ではないのです。ですので、学生さんの参加があることを前提としないまでも期待している研究室が大半です。そうでないところもあるかもしれませんが、基礎生物学系のラボではほとんどそうでしょう。でも、これは完全に片思いなんですね。山手線の内側にいる学生さんのイメージからすれば和光は完全に島流しでしょう。百万遍から見た桂や宇治の比ではないです(ローカルネタですいません)。よっぽど美味しいエサでつらなければ、、、なんてことを言っていてはいけません。人はパンだけで生きる物ではない。薄給で働く大学院生を見よ。ポスドクを見よ。魅力あるテーマを提供できているかどうか、それが大切だ、なんて格好の良いことを言えれば良いのですが、そもそもそれ以前に出会いの場があまり無いような気がします。

さて、今度の5月に当領域も協賛でしたか共催でしたかで神戸の理研でRNA関連のミーティングがあります。
http://www.cdb.riken.jp/cdb-rna/
この手の国際ミーティングやらカンファレンスやら近頃は供給過多気味でポスターの掲示をお願いしても砂浜のなかの一粒状態になってしまうのですが、なかなかに凄い方々が来ます。どれだけ凄い人が来るかはおいおい紹介いたしますが、なにはともあれ、理研ってどんなとこ?というぐらいの気持ちで皆様ぜひお越し下さい。参加申し込みの〆切はいつでしたっけ。もしかしたらもう終わっているかもしれませんが、べつに知らんぷりして勝手知ったるふりをして入ってきて下さっても、多分大丈夫です。たぶん。

ちと長くなってしまいましたが、理研は基本的に寂しがりやで、学生さんやfreshポスドクさんとの接点を必死に求めているのです。べつに大学院の学生さんを拉致しようとか、囲い込もうとか、そんなのではないのです。ただ、企業になりきろうとしてもなりきれない理研と、大学と、もっともっと交流があっても良いのでは無いかと、僕自身は思っています。研究なんて大学でやろうが理研でやろうが企業でやろうが同じじゃあないですか。お互いに差別化しなければいけないとかいう意見もあるようですが、そもそもサイエンスに境界はないでしょう。

中川