December 29, 2009

今年も残りわずかですね

年の瀬も押し迫ってきましたね。皆様はじめまして、鈴木研の木村と申します。

中條君からバトンを受け取ったのですが、僕もこれまでの人と同じでブログを書いたことがないので、何を書こうかと考えている内に時間が経ってしまいました、申し訳ありません。。。
ncRNAブログということなのですが、僕はncRNAでも古典的なncRNAであるrRNAの修飾について研究しています。

人に研究のことを説明する機会はよくありますが、なかなか分野外の人に分かってもらうことって難しいですよね。
特にDNAとかRNA,タンパク質、リボソームという言葉を出すとだいたいそこで「へー」ということになってしまいます。みなさんは何か決まった説明方法みたいなのがあったりするのでしょうか?

一般の人に研究の面白さを分かってもらうことは大事なことですよね。
僕は年末に帰省をするのでおじいちゃんにもわかるように頑張って説明してみようかと思います。

バトンは泊研の依田さんに渡したいと思います。

それでは皆様よいお年を!

December 22, 2009

YMW

「YMW」ってご存じでしょうか。

先日あった「さきがけRNAと生体機能」の成果報告会の特別講演で5'メチルキャップを三浦先生と共に見つけられた古市さんの講演で出てきた略語です。「やってみなきゃわからんではないか」なのだそうですが、これ以上ない直球ストレートの駄洒落ですが、心にじんと響いてしまいました。

古市さんの趣旨からは離れるかもしれませんが、僕の中ではType I YMWとType II YMWがありまして、

Type I YMW: 誰でにでも思いつくわけではない実験。がゆえに理解されない。希有の天才の心の叫び。
Type II YMW: 誰でも思いつく実験。しかし面倒くさかったり、ややこしい人間関係があって実現していない実験。

Type Iはtrue scienceで、type IIはすき間商売ですね。個人的にはType Iを夢見るType IIです。そういえばtype IIIもあるかもしれません。

Type III YMW: ミニプレップで107個拾ってあたりがなかったけれども、次の一個に人生をかける雄叫び。

type IIIに命をかけている人もいます。いや、これが面白かったりしたものです。4回生の時などは特に。本人は十分幸せなので、もしそういう人を見かけても、そっとしておいてあげましょう。

中川

December 13, 2009

冬ですね

街はすっかりクリスマス模様になり、もうそんな季節か、とわけもなく感慨にふけっています。

申し遅れました。鈴木研D1の中條と申します。
初めまして。 よろしくお願いいたします。

長谷川さんからバトンをもらいまして、百万読者のハートに響く何を書こうと思ったのですが、僕も社会問題には疎く、やはり研究に関連することを書こうかと思います。

さて、研究において大事なものとは何でしょうか?

学生の立場から考えれば、大事なのは、戦略か、努力か、それとも意外とものをいうのは執念深さなのかもしれません。
が、精神力と体力が一番の基礎となるのは論を待たないと思います。

先日ラボの先輩のD論を読んでましたら、臓器から大量のtRNAを精製しているところに出くわしました。
(以下、K野さんのD論より抜粋させていただきました)

「…最終的に57個、27kgの臓器から、195000 A260 units (=7.8g) のtotal RNA画分を得た。」

(ちょっ!!27キロの臓器?? じゅうきゅうまんごせんODのRNA??)

さらに、

「…陰イオン交換カラムによるラージスケールでの分画に関しては、カラムは口径8cm、長さ70cm弱、容量3.5Lのものを使用した」

(そんな巨大なカラムが存在するのですか!)

「…UV吸収が観測され始めたところで溶出液をフラクションとしておよそ10mLずつ、2100本回収した。」

(2100本って!!! いったいどうやってそんな量をさばくのでしょう!?)

先輩のD論を読んでいて、もう、驚きの連続でした。
先輩方は偉いです。
精神力と体力が半端ないです。
僕らももっともっと頑張りつづけて、いい仕事をせねばと思いました。


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さて、これから本格的な冬が到来するわけでして、風邪などひかれませぬよう、どうぞお気をつけください。


中條

P. S.
>鈴木研同期の木村君、バトンをお願いします。

福岡から

こんにちは,佐渡です.今こうして初めてブログというものを書いています.誰かのブログを読んだという経験もほとんどないのですが,鈴木さんから回ってきたので,恐る恐るこのブログにアクセスしているというのが正直なところです.
個人的なことですが,このほど10年半過ごした遺伝研をついに出て,12月4日に九大生医研に引っ越してきました.遺伝研で所属していた佐々木研究室が来年九大に移るので,その先遣隊ってことで,まずはひとりでやってきました.マウスを使った実験が動き出すまでにはまだしばらくかかりそうですが,それ以外のことについては1月中には何とかしたいと思ってます..

December 4, 2009

事業仕分け

影山です。タイムリーなうちに書きたくなったので割り込みます。今ちまたで話題の事業仕分けのうち、若手研究者育成事業の評価に関する話題です。色々言いたいことはありますが、一点だけ。

若手研究者育成事業への評価コメント欄に、おそらくは学術振興会の特別研究員制度に関する批判として、「博士養成に関する過去の政策の失敗を繕うための政策」「ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき」などというスゴイ意見がありました。無論誤解なのですが、この中には二つの誤解が含まれています。一つ目は、多くの研究室では、実際に研究を行っているのは PI ではなく、大学院生やポスドクであり、彼らが文字通り研究推進の主力であるということ。二つ目は、学振の特別研究員はごく限られた数の(二割ちょっとです)厳選された研究者が対象であって、ポスドク問題の解決策としてはあまり意味がなく、根本的に違う問題であること。要は全く理解されていないということです。

わたし自身もこの制度に助けられましたし、この制度がなければおそらく人生が変わっていたと思います。また、最近までわたしの研究グループにいた学生さんが、彼の研究テーマを発展させることができたのもこの制度のおかげです。若手研究者だけを括って研究支援をする意味はちゃんとあるのです。

同じように憤っている方(特に若手の方)、パブリックコメントはまだ受け付けているようですから(12/15まで)、ぜひとも不満をぶちまけてください。
[url]http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm[/url]

また、科学技術振興費の仕分けに関する情報は、以下の Wiki でよくまとめられています。御参考まで。
[url]http://mercury.dbcls.jp/w/index.php[/url]

影山裕二

親知らずと仕分け

岩崎くん、ご指名どうもありがとうございます。中川研/鈴木研の長谷川です。
バトンを持ったまま、ぼーっとしていたようで
だいぶ走り出すのが遅くなってしまいました。申し訳ないです。

くだらないことを書こうかな、と思ったのですが
それは、影山さんの書き込みの流れにちょっとだけ乗っかってからにしようと思います。

「無関心な若者世代」の言葉を裏切らず、私もやはり社会問題には疎いです。
ただ、真に無関心なのかというと、それはちょっと違っていて、
よく自己分析してみると
「本気で首を突っ込んで、自分の微力さを痛感して、
やるせない思いをするのが嫌だから、知らないでおきたい」
ということみたいです。

ただ、今回の件は、ど真ん中自分に関わることですから…。
自分の国の科学の権威がそろって声をあげているのを目の当たりにして
あー、前面に立って抗議する資格を持つ人たちの怒りに説得性を持たせるのが
現場にいる下っ端のすべきことなんだな、と
やるせない思いを逃げることなく噛み締めてみました。

で、くだらないことですが
その、噛み締めるのに使った歯を4時間ほど前に抜いてきました。親知らずです。
なので、今は口の中が血だらけで、文字通り血を吐きながらwestern blottingしています。
現場の下っ端の気合い、伝わりますでしょうか?

痛いし、だるいのに、なんで実験が終わらんのだ、という結構悲惨な状況なのですが
喉元を正しく過ぎれば、悲惨なことほど笑い話になることを知っています。
仕分けのあまりにも正確な理解に欠けた側面も
早く笑い話になっちゃえば良いのに、
なんて甘ったるいことを考えたりする金曜日の夜です。

次の走者ですが、バトンを真っ二つに割って
鈴木研の頼れる同期、木村くんと中條くん、よろしくお願いします。


長谷川

November 28, 2009

バイオ解析ツールのリンク集

割り込み出すと止まらなくなるというわけではないですが、知る人ぞ知る(?)僕が知らなかったお役立ち情報です。WABIワークショップ(http://wabi2009.nig.ac.jp/)なるものに参加して教えてもらいました。

リンク集
ライフサイエンス統合データベースプロジェクト
http://lifesciencedb.jp/

JSTゲノム解析ツール集
http://www-btls.jst.go.jp/Links/


教材サイト
統合TV
データベースやツールの使い方を動画で紹介
http://togotv.dbcls.jp/

JST Webラーニングプラザ
ライフサイエンスだけじゃないから勉強できるかも
http://weblearningplaza.jst.go.jp/


"NCBI Mini Courses
データベース使用方法紹介
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Class/minicourses/

NCBIミニコース(日本語版)
http://www-bird.jst.go.jp/minicourses/


文献検索
EBIMed
キーワードで検索して関連タームごとに分類した結果を返してくれる
http://www.ebi.ac.uk/Rebholz-srv/ebimed/index.jsp

JST Bird
文献と解析ツールを組み合わせて紹介してくれるらしい

結構充実していてビックリしました。

中川

November 24, 2009

Googleパワー

 日々の研究にGoogleを活用されている人も多いと思いますが、そのパワーにはいつも圧倒されます。あれだけのシステムが広告収入(というか最初は個人レベルの試み)だけで成り立っているところも凄いのですが、長い歴史を持つ既存の検索システムを質的に凌駕してしまっているところに驚きを禁じ得ません。文献検索などはPubmedのお家芸だったのが、今ではGoogle Scholarの方が、被引用文献まで出てくるという点で、一歩先んじているのは間違いのないところでしょう。NCBIの提供するPubmedデーターベースがインターネットの普及とともに全世界に無償で提供され、あっという間に各大学図書館で提供されていたOVIDのシステムを葬り去ったのも個人的には記憶に新しいのですが、ネットで手に入れられる知識をどう生かしてゆくか、それは研究の進捗状況を大きく左右する重大な要素であるという実感を持っている人も多いのではないでしょうか。僕自身、ノンコーディングRNAの研究ではありませんが、Pubmedでの"RPE, margin, retina, chicken"というたった4語の検索から出発して10年近く飯を食ってこれました。

 また、とんでもないヒミツ(?)情報もネット検索で引っかかってくるときもあります。RNA業界の人なら、またそうでない人にとってもHuRというRNA結合タンパク質のことを耳にしたことはあると思うのですが、このタンパク質にちょっとしたご縁があったことがありまして、そうなると発生生物屋としてはノックアウトマウスの表現型が気になるわけです。ところがPubmedで検索してもそういうマウスの報告はない。データーベースにも載ってない。そこでほんのお遊びで"HuR, knockout, mouse"とかGoogleバーに打ち込んでみるわけですね。そうするとなにやらどこかの大学の学位論文のディスカッションが引っかかってきて、「現状HuRのノックアウトマウスは胎生初期に致死となるため、、、」とか出てくるわけです。Google恐るべし。せっせとロボットがpdfファイルをかき集めている今日び、滅多なことはホームページに載せるものじゃあありません。

 しかし、ここから先が一番強調したいことなのですが、よくよく考えてみると、Google検索ではどうでも良いことは何でも分かるけれども、本当に知りたいことは一つも分からないんですね。「ノンコーディングRNA, 核, 機能, 新規」なんて打ち込んでみても、さして情報は得られません。結局のところ、本当に知りたいことは手を動かさなくては分からないし、手を動かして得られた結果は裏切りません。ちなみにちょっとお下劣なネタですが、白い鼻毛が生えてきたのを見つけまして、さっそく「鼻毛, 白髪」で、Google検索。もー、大変といいますか、ものすごくどうでも良いことが、何でも分かってしまいました。日々のちょっとした疑問には、忠実に、そして確実にGoogleは答えてくれます。

 ちなみに、我が愛すべきノンコーディングRNA、「Gomafu RNA ノックアウトマウス」あたりで検索すると、学会のアブストラクトとかが引っかかってくるので、大体の状況はすぐに分かります。ふむふむ、なんだ、ノックアウトマウスは一見正常なのかと。一昔前ならこういう機密情報(??)には箝口令を引いたのでしょうが、今の時代、すぐに分かってしまうわけですね。この、「一見表現型が無い」という状況は大変に手が広い局面で、多くの場合、「もうやらない」というのが、最善手となります。しかしながら形勢判断は難しく、今後どのような勝負手が出てくるか分かりません。そのあたりの勝負手をじっくり考える、これはまさに研究者冥利に尽きるというもので、またそういう手の広い局面こそ、研究者の個性が一番出やすいのだと思います。今後どのように研究が進むか分かりませんが、Google検索では引っかかってこない局面を、作り出したいものだと思います。長々と書いてしまいましたが、これが一番言いたかったことです。

中川

November 22, 2009

リレー第二走者。

みなさま、こんにちは。泊研究室の岩崎です。岩川さんから指名を受けたので書かせていただきます。

岩川さんと同じくブログをほとんど書いたことがないので、何をかいたら良いものか・・・と悩んでいたら指名を受けてから時間がかかってしまいました。泊さんに「何を書いたらいいですかねぇ?」と聞いたら「何でもいいんですよ。」という返事が返ってきて、ますます悩みました。

このブログの趣旨として、「領域に参加されている方々の人となりや普段どういうことを考えているか、ということがなんとなく伝わること」という風に個人的には解釈しています。みなさんのように上手いこと、高尚なことはかけそうにないので、泊研の様子について少し紹介したいと思います。

みなさんの研究室では論文がacceptさせた時、どういうことをなさっているでしょうか?もちろん、食事にいったりしてお祝いをされると思います。我が泊研究室では、first author のひとは「シャンパン」を買ってきて研究室のメンバーに振る舞い、空いたシャンパンの瓶にゴールドのペンでauthorが各自サインしラボに飾る、という風にしています。(泊さんが留学していたラボの風習らしいです。)なかなか粋な感じです。



もう泊研から出せる2009年の論文はもう打ち止めですが、来年は何本のシャンパンを空けることができるでしょうか。自分も一本ぐらいは貢献したいですが・・・

ぱっと思いつきで申し訳ないのですが、次の走者は同級生である中川/鈴木研の長谷川さんお願いします。

>岩川さん、
最近海外の学会などで「談合」に行って帰ってきた泊さんが「胃がいてぇ」と言っているのをみて、自分にはまだまだ早いと思いました。

November 11, 2009

ncRNA+Blogリレー第一走者の指名を受けて

こんにちは岩川です。

現在は京都大学の奥野研で植物RNAウイルスの翻訳・複製機構の研究をしていますが、来年からはPDとして泊研でRNAサイレンシング機構の研究をします。RNAウイルスの複製機構を研究している際、ウイルスの3’非翻訳領域に由来するnon-coding RNAと出会ってからnon-coding RNAが気になってしょうがない存在になりました。
9月の若手の会では「分節ゲノムを持つRNAウイルスの複製酵素認識機構」という発表でベストプレゼンテーション賞をいただきました。投票してくださった方どうもありがとうございます。やはり表彰されるということは嬉しいもので、これからも楽しんで研究を行う原動力となります。

 ブログに何かものを書くということが初めてなものでどうしようかなと悩みます。しかも学生最初の走者であることを考えるとさらに悩みます。悩み抜いた末、「RNAウイルスからもnon-coding RNAが生み出される」という内容にしようと思いましたが、ミニレビューのような硬い内容、しかも長文になってしまいそうだったのでやめました。これから5年もある領域ブログなので何か最初の書き込みにふさわしいものは無いだろうかとふとデスクの棚に目をやると4冊の冊子が立てかけてありました「RNA Network Newsletter」。とりあえずパラパラ読んでみるとその面白さにびっくり。泊さんが書いた「アメリカゆるゆる体験記」や佐々木君の「『構造生物学』ってツマラナイ!?」など一つ一つが個性豊かで生き生きとした内容でした。本領域ではこのncRNA+BlogがNewsletterの代わりとなります。ブログのよさはやはりライブ感、話のバランスなどあまり気にせずどんどん更新していきましょう。
 「ブログを書いた人が次の人を指名する」形式になるようなので、Newsletterで3年半前、研究・研究者への熱い気持ちを綴り、「はやくトップ研究者の談合に加わりたい」と語っていた来年からのラボメンバーである岩崎くんにバトンタッチしたいとおもいます。

岩川

October 26, 2009

打倒ノンコーディングRNA

 最近常々思うのは、ビールの缶一つにしても、見慣れたエッペンドルフチューブ一つにしても、何一つ自分一人で作ろうと思っても作れない、という当たり前といえば当たり前のことです。「君たちはどう生きるか」のコペル君に言わせれば粉ミルクの法則と言うことになるのかもしれませんが、自衛隊の一小隊がタイムスリップしたぐらいで石油精製施設が出来るのは映画の中だけの話だというのは断言できます。カエサルやアリストテレスがタイムスリップしたって、その時代をもう一度繰り返すだけでしょう。一人では何も出来ないことを可能にする社会というのはかくも複雑なものです。

 とはいえ地球の歴史をひもとけば、社会の発展など、コンタミレベルの些細な出来事です。誰が見てきたのか、もしかしたら見てきたような嘘のような話なのかもしれませんが、数十億年の時間が生物の進化に与えられていて、そこで作り上げてきたシステムは、マイクロソフトとアップルの死闘をはるかに超えたドラマを通じて練り上げられたものに違いないでしょう。一体何のためにこれがここに???。ここ数年で事務方がひねり出した複雑怪奇な納品確認システムを理解するだけで一苦労です。ましてや生物が作り出した作用マシナリーを、理解するには当分かかるような気がします。我が愛すべき永遠の恋人、ノンコーディングRNAを納品確認システムと同列にはしたくはないのですが、無くても良い(?)し、誰が何のために作ったのか後世の人から見たら良く分からない(?)点では、一緒でしょう。これもついでですから断言しておきます。

とりあえず個人的には核内に存在している高分子ノンコーディングRNAの機能ぐらいは、いや、そこまでいかなくてもその友達(結合分子)ぐらいは、明らかにしたいものです。ついでに言うと、「ノンコーディングRNA」というネガティブな名前から早く脱却したいです。名は体を現す。「こうではない」ではなくて、「こうである」という、名前を、早く、見つけたいものです。

中川

October 22, 2009

non-coding とは?

non-coding RNA とは non-protein-coding RNA をはしょったもので、文字通りタンパク質の鋳型としての情報を持たない RNA のことを指しています。概念としての non-coding RNA は比較的簡単に受け入れられやすいようで、少なくとも研究者の間では広く浸透しているようですが、実験生物学的に何が non-coding RNA かを見極めるのは実はあまり簡単ではありません。

以前にも同様の趣旨の文章を書いたことがあるのですが、ある RNA 分子がいかなる状況においてもタンパク質に翻訳されないことを示せというのは「悪魔の証明」に近いものがあります。siRNA のように数十塩基対程度の非常に短いものであれば、まず間違いなく翻訳されないだろうと皆さん簡単に認めてくださるようです。ところが、ある程度の長さ以上の、いわゆる高分子 non-coding RNA については、ことはさほど簡単ではなくて、例えば、大腸菌の 23S rRNA は 5 アミノ酸からなるペプチドをコードするんじゃないかという報告があったりします(PNAS 1996, 11, 5641-5646)。ついでいうと、真核生物で一番短い ORF は、私達を含めた3つのグループが見つけた polished rice/mille-pattes 遺伝子ファミリーのもので、ショウジョウバエでは11アミノ酸のペプチドをコードしています。単に長い ORF が見あたらないから non-coding RNA というわけにはいかないんですね。

このような事情が、当領域でも使われている「小分子 RNA」「高分子非コード RNA」という言葉にも表れているように思います。高分子の方だけ非コードがついているのは、「短いものはまぁ non-coding RNA でいいけど、長いのは研究を始める前に non-coding かどうか確かめてね」と言われているようでもあります。高分子 non-coding RNA の方は小分子 RNA に比べて extra に苦労しないといけないわけで、このハードルの高さが高分子 non-coding RNA の研究の進展を妨げているというのは、ちょっと穿った見方でしょうか。

ともあれ、本領域の発展に伴い、高分子のものを含めてnon-coding RNA 研究の裾野が広がることを期待しています。

影山

October 21, 2009

「非コードRNA」

私たちの領域名に使われている「非コードRNA」。"non-coding RNA"の訳語として、それなりに使われている言葉ではありますが、むしろ「ノンコーディングRNA」の方がよく耳にしますし、そもそも日本語として少し変な気もします。なぜ違和感を感じるのか考えてみると、反対語に対応するはずの「コードRNA」という言葉が、日本語として存在しない(全く使われていない)からだと思います。

では、なぜ私たちの領域名は「ノンコーディングRNA」ではなく「非コードRNA」なのか? 実は、新学術領域研究(研究領域提案型)では、申請時に領域名の略称を付けなければいけない決まりになっているのですが、その字数制限が8文字以内なので、「ノンコーディングRNA」では字数をオーバーしてしまうから、という(割と後ろ向きな)理由です。

そもそも、"code"という言葉の日本語訳は、個人的にいつも悩みどころなのですが、皆さんどうしているのでしょう? 「タンパク質をコードする」「タンパク質をコーディングする」「タンパク質をコード化する」「タンパク質を暗号化する」??

October 16, 2009

ncRNA+Blogについて

とある経緯から始まった、あるいはこのまま始まるかもわからないncRNA+Blogです。
テスト段階ではありますが、せっかくであれば継続的な投稿が続くよう、内容を限定しない気軽な投稿をお願いします。

指定のユーザー名とパスワードでのログインにより、記事の投稿が可能です。
#タイムスタンプ編集を現在時刻以降にして投稿してもなぜか表示に反映されません。投稿内容自体は記録されます。

非コードRNA領域ホームページは こちら から